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JR東日本 駅弁子会社で未払い残業が続出、労組結成も「組合入ったら旦那がクビ」と恫喝

情報提供
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JR東日本の子会社「日本レストランエンタプライズ」臨時社員で今年3月末に雇い止めされた新津三男氏(実名、59歳)。新津氏を含めた臨時社員の人々は休憩中や出勤前にタダ働きさせられていることを知り、労組を結成。新津氏は執行委員長となった。
 「NRE」といえば、JR東日本の駅にある駅弁屋などで、一度は見かけたことがある人も多いだろう。日本レストランエンタプライズ(NRE)は、JR東日本の100%子会社として、新幹線や特急、グリーン車の車内販売から、駅の売店や飲食店を幅広く手掛けている。その営業支店で、休憩中や出勤前の違法なタダ働きが発覚し、臨時社員たちが13年5月に労組を結成した。するとJR側は、「組合に入ったらクビ」などと恫喝して回り、団体交渉も拒否。そんななか、労組トップの新津三男氏(実名、59歳)が通勤中に怪我を負って入院。退院すると、就労可の診断書があるにもかかわらず、今年3月末で雇い止めされた。新津氏は現在、地位確認訴訟と不当労働行為救済を申し立て、争っている。長い労使対立の歴史を持つJRで新たに発生した組合問題を報告する。(訴状、不当労働行為救済申立書は、末尾よりPDFダウンロード可)
Digest
  • 勤務開始30分前に出勤命令、休憩なしでタダ働き
  • ユニオン結成直後、会社は組合を潰しにかかる
  • 「組合名簿を見せないなら団交しない」会社
  • 通勤途中の事故で入院手術
  • 医師が就労可能と言っているのに首切り
  • 地位確認を求めに提訴、都労委に不当労働行為救済の申立

勤務開始30分前に出勤命令、休憩なしでタダ働き

14年6月付で、JR東の契約社員の駅員が正社員試験に3回落ちると強制解雇になる実態を報じたが、JR東の子会社の社員に対する扱いは、さらに悪質である。その実例を紹介しよう。

JR東日本100%子会社で、新幹線や特急列車、普通列車のグリーン車の車内販売、駅構内の駅弁、駅そば、和食、洋食、カフェなどの店舗運営などを行う「日本レストランエンタプライズ」(以下「NRE」)では、従業員たちが、“違法就労”を強いられ、訴訟に発展している。

原告のNREユニオン執行委員長の新津三男氏(実名、59歳)や、同副執行委員長の望月ひとみ氏(実名)、JR連合の企画部長・上村良成氏への取材と、訴状や答弁書などの裁判資料によると、違法就労が表沙汰になったのは、12年1月頃だ。

きっかけは、NRE長野列車営業支店の正社員である望月ひとみ氏だった。

望月氏は、社内で以下の光景を目の当たりにしたという。

・NREの臨時社員(非正規雇用の社員)である、長野新幹線「あさま」の車内販売アテンダントの女性たちと、出勤時の点呼の1時間~30分前に勤務を強いられていた。

・長野駅の倉庫から「あさま」に荷物を配送する臨時社員たちも、同様に、正規の出勤時間の1時間~30分前に働かされていた。

・配送業務の人たちは、休憩が全く取れない状態で、休憩室そのものもなかった。

・車内販売のアテンダントたちは、ワゴンに販売品を詰める作業を休憩中にやるよう命じられていた。

公休日は法律上、24時間取らなければいけないことになっているのに、臨時社員たちは、終電後の作業により公休日にまたがって仕事をしている部分を、仕事をしていないこととして違法に処理されていた。

これを知った望月氏は、正社員なので自分のことではないが、この状況をなんとかしたい、という義侠心から、知人のJR東の運転手に相談。その運転手は、自身の所属する労組「JR連合」に状況を伝えた。こうしてJR連合の企画部長・上村良成氏らがNRE長野列車営業支店の臨時社員たちに聞き取りを始め、未払い残業などの不法就労が横行していることを確認した。

13年5月22日、日本レストランエンタプライズユニオン(NREユニオン)が結成され、NRE長野列車営業支店の全従業員36人(うち正社員6人、臨時社員30人)のうち、実に18人(臨時社員17人、正社員1人)が集った。

NREユニオントップの執行委員長には、勤続約5年の配送業務の臨時社員・新津三男氏(実名、59歳)が就いた。

新津氏がトップに立つ決断をした背景には、数年前に同僚が、超過勤務で過労に見える中、病気にかかり亡くなったことや、半年前、未払い残業の支払いなどを会社に求め、一人で闘い、辞めていった同僚の存在があった。そうした同僚の遺志を継ごう、という思いから、新津氏は矢面に立つ決断をしたのだった。

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JR東日本の労働組合状況。JR総連とJR連合は、全国的には拮抗する二大勢力だが、JR東では全く状況が異なる。

ユニオン結成直後、会社は組合を潰しにかかる

ユニオン結成直後、経営側は、潰しにかかってきた。これには、JR特有の背景がある。もともとJRには、組合が大きく分けて3つある。一つはJR総連(組合員数69,200人、07年3月厚労省調べ)、もう一つはJR連合(同76,000人、連合傘下)、三つ目は国労(14,800人)だ。

このうちJR総連とJR連合は、数字上は拮抗する二大勢力だが、実態は、JR東の組合員の大半はJR総連(政府が「革マル派が浸透している」と認識しているほう)。他方、新津氏の所属するJR連合は、JR西、東海、四国、九州の、日本列島の西側の各社で圧倒的に加盟率が高く、それらの会社では9割超に上る。

そのためNREの正社員は、JR総連系列の「日本レストラン労組」に加盟している。NREの社員の大半を占める臨時社員には、もともと労組はなかった。新津氏らは、あろうことか、JR総連のシマで、違う旗を打ち立てたことになる

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