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日清食品グループ・明星食品の工場が排出する謎の粉末で近隣民家が“公害”被害 「車や住宅の塗装が剥げる!」

情報提供
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写真①【上】茶色混じりの白い粉末。【下】皆川(仮名)さんの家の自家用車に降り注いでいた。
 『チャルメラ』などの即席麺メーカーとして有名な明星食品(日清食品の100%子会社)は、埼玉県中部・嵐山町の住宅地のど真ん中に、敷地面積6万平米超の直営工場を擁する。2014年4月、その工場内の一部が建て替えられると、隣接する民家に、謎の「粉」が飛来するようになり、自動車や住宅の一部塗装が剥げる被害が続出した。明星側は、飛来物が自社から出ていることさえ否定しているが、第三者検査機関の解析により、少なくとも粉の主成分がデンプンで、明星の工場から排出されていることは、ほぼ確定した。その調査は明星側の隠蔽工作も疑われる状況でなされたため、公正な条件で再検査した場合、それ以外の成分も検出される可能性が高い。被害を受けた車を点検した整備士は、塗装を剥がし原因が何らかの酸性物質である可能性を示唆した。こうした生活環境に危害を加える公害被害に対し、明星側は依然として自らの責任を認めず、日清食品も一部上場企業らしからぬコンプライアンス意識で、知らぬ顔を決め込んでいる。
Digest
  • インスタント麺の町
  • 空から降ってくる「謎の粉末」
  • 因果関係を否定する明星
  • ダクトの調査は全くの茶番に
  • やはり「粉」は明星から飛んでいた
  • 「水道水よりキレイ」なはずが…
  • 埼玉県の公害調停で「公害ではない」と主張
  • 町政は明星に及び腰
  • 本当に「ただのデンプン」なのか

インスタント麺の町

埼玉県の「へそ」に位置する東松山市の西隣に、嵐山町(らんざんまち)という人口約1万8千人の町がある。

この嵐山町には、『チャルメラ』『中華三昧』『一平ちゃん』など、おなじみのインスタント麺のメーカーである明星食品の直営工場(同社の完全子会社である東日本明星株式会社で、通常「明星食品嵐山工場」と呼ばれる)がある。

この工場が同地に竣工されたのは、嵐山町の人口がまだ1万人に満たなかった1961年のことで、開設当時の工場周辺は、ほぼ農地・山林しかなかったという。だがそれから半世紀以上の間に宅地開発が進み人口も流入したことで、結果的に敷地面積約6万460平方メートルの巨大な工場が住宅地のど真ん中に立地することになった。この間、明星食品の工場が工業団地に移転する話が出ることもあったものの、立ち消えになったという。

以前から全国で販売される明星商品の6割以上を生産してきたこの嵐山工場だが、2006年の日清食品による明星食品買収を経て、16年3月現在は日清食品ホールディングスの協力工場にも位置づけられている。14年2月には、建物の一部(第3工場)が建て替えられ、生産力はさらに増大。正月や盆などの一時期をのぞき毎日、24時間体制でインスタント麺を作り続けている。

この嵐山町を、筆者は16年2月下旬に訪問した。朝9時に東武東上線の武蔵嵐山駅に着き、明星食品嵐山工場に向かって歩き始めると、すぐに巨大な工場の排気口から、モクモクと煙が吐き出されているのが目に入った。筆者がそれを写真に撮り始めると、駅からの道を案内してくれていたこの町の町民・皆川和明さん(仮名・60代)が次のように言った。

「今日は曇っているので、これでも煙は目立たないほうです。普段はこれよりずっと激しく出ているのが見えますし、匂いも強いんですけどね」

「普段」の煙がどのようなものかは、皆川さん自身が撮影した以下の動画①を見てもらえればよくわかるだろう。

動画① 

なお皆川さんは「いつもよりはしない」と言ったものの、この日の工場周辺でも独特の臭気は感じられた。特に、東日本明星と隣接しているスープ工場(やはり明星食品の関連会社で、インスタント麺スープの製造をしている株式会社ユニ・スター)の脇を通ると、普段嗅いでいるカップ麺のスープを何百倍かに濃縮したような、強烈な臭いがした。慣れているはずの地元住人でさえ、鼻をつまみながら歩いているのが見えたほどだ。

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写真②【上】車の塗装剥げ 【下】手すりの塗装剥げ

空から降ってくる「謎の粉末」

皆川さんの家は、工場とは幅5メートルほどの道路を挟んで、真南に面していた。家の2階のバルコニーに上がらせてもらうと、屋根越しに、今まさに煙が吐き出されている排気ダクトの形状までよく見えた。たしかにこの近さでは、風向きによっては煙が家を直撃するだろう。

問題は、この皆川家のバルコニーの、金属製の「手すり」だった。ところどころ塗装が剥げ、細かい斑点のような模様ができてしまっている。玄関先の駐車場に停めてある自家用車も、塗装の剥げが車体全体に見られ、直径2ミリほどの穴が空いてしまった箇所が、十数か所もあった。

嵐山工場の近隣民家でこうした現象が起きるようになったのは、14年4月に同工場第3工場の建て替え工事が完了し、生産力が従来の「約3倍」(明星食品による14年4月16日の報道発表より)になり、7、8ヶ月が経ってからだ。

まず15年1月ごろ、皆川家の隣に住むAさんの、新車購入して間もない車に、薄茶色混じりの白い粉末が付着するようになった。Aさんが新車の定期点検のために車を整備工場に出したところ、整備士から「普通の汚れではない」と言われたという。

皆川家でも、ほぼ同時期に被害は現れていたが、はっきり気づいたのは4月25日だったという。この日の早朝に皆川さんが玄関口に出てみると、前日洗ったばかりだった愛車に、件の粉が大量に付着していたのである。

冒頭に示した写真①は、皆川さんの妻が採取し保管していた「粉」のサンプルだ。このような粉末が、洗っても洗っても夜中に飛んできてはこびりつくため、皆川家の車や手すりは、今では写真②のようになってしまった。

皆川さんの愛車は、2007年に新車で購入して9年目。購入したトヨタ販売店の整備士によれば、車の塗装は自然界のものにはあらかじめ対応しているため、このような塗装の剥げが、植物の花粉や酸性雨によって引き起こされることは、通常まず考えられず、この塗装剥げは部分塗装での修繕は不可能で全体を塗り直す必要があるため、修理費用は最低でも50万円。損傷箇所によっては100万円以上かかる可能性もあるという。

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情報開示請求して入手した、嵐山町の相談処理簿。皆川さんが町環境農政課に粉サンプルを渡した2時間後には東日本明星の下村充弘社長が来庁。サンプルも明星に引き渡されていた。

因果関係を否定する明星

15年4月25日、皆川さんはまず自分が属する嵐山町行政区の区長を通じて町役場へ相談した。それを受け翌月5月26日には、町の環境農政課長らが皆川家を訪問し、問題の「粉」を持ち帰っている。

このとき皆川さんは、当然、町がこの「粉」を、民間の検査会社など第三者機関に預けるものと考えていた。だがそれだけに、区長から「(「粉」は)明星が調べることになった」と聞いた時は驚愕したという。

「後日、町が作成した苦情処理簿(右画像参照)を情報開示請求したところ、環境農政課長が「粉」を持ち帰った2時間後には、東日本明星の下村充弘社長が来庁し、「粉」も明星側に引き渡されていたことがわかりました。それどころか、すでに5月13日の時点で、町が明星に『会社側で検査して欲しい』と打診していた、とさえ書かれていたのです

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東武東上線・武蔵嵐山駅構内にあった町の俯瞰写真。画面右上の白い部分が明星食品嵐山工場。周辺は完全な住宅地である。

嵐山町が岩澤勝町長名で出した、陳情への回答。飛来物が明星から出たものと認め「働きかけ」をするというが…

明星食品嵐山工場

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jiangmin-alt2016/04/06 09:22

"埼玉県は嵐山工場が公害とは無関係な施設だとどうやって確認したのですか? 「届出の内容に不備がないからです」 --明星食品が県に出した届出の内容だけで判断されているのですか? 「そうです」"

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読者コメント

シート2016/03/27 17:07
隠蔽工作2016/03/27 11:25
食品公害2016/03/26 11:28
一平ちゃん大好物2016/03/26 09:30
2016/03/24 23:09
hino2016/03/24 16:57
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