「子供たちをマイクロ波被曝のモルモットにしてもいいのか?」NTTドコモが長野県で基地局10倍計画を断行、反発する母親たち
LTE基地局(ロング・ターム・エボリューション)の10倍増計画の説明チラシ。NTTドコモは長野県で2012年に170局だったものを、2014年末までに約2000局に増やす計画を進めている。 |
- Digest
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- 子供を「モルモット」にしていいのか?
- 工事は一時的に中断したが
- 塩田美枝子さんの癌発症
- NTTドコモの住民説明会
- 反対を押し切って工事を再開
- 子供の未来に誰が責任を取るのか
- NTTドコモ広報部の見解
陸の上でも、空の上でも、縦横無尽につながるように電波を張り巡らせ、基地局を作りまくっているNTTドコモ。ところが、その裏には、マスコミがスポンサータブーで報じられない、数々の係争が隠されている。今回の1件もその1つだ。
(上)基地局設置に反対している人々。(下)問題になっている携帯基地局の工事現場。 |
山口好子さんと貴男さん夫妻(仮名)から、NTTドコモとの係争について話をうかがっていると、幼児を連れた女性たちが、次々と山口さん宅へ集まってきた。山崎さん夫妻に、複数の住民から話を聞きたいという希望を前もって伝えておいたところ、便宜を図って近所の主婦たちに声をかけて下さったのである。
長野県飯田市。東京から高速バスで4時間、南アルプスのふもとにある人口10万3000人の小都市である。
NTTドコモと住民の間に携帯基地局の設置をめぐるトラブルが起きている正永町2丁目は、なだらかな田園地帯の斜面に民家が点在する地域だ。
飯田市の基地局問題の先頭に立っているのは、女性たち。もっとも、飯田市のケースに限らず、携帯電話の基地局設置に反対する住民運動では、女性が積極的に行動を起こす場合が多い。少なくともわたしの取材体験からすると、顕著にそんな傾向が見られる。
さまざまな形状の携帯電話・基地局。基地局周辺の住民の健康被害が懸念されている。 |
たとえば2008年に兵庫県川西市でNTTドコモの基地局を撤去に追い込んだのは、女性のリーダーだった。昨年、東京都目黒区の老人ホームの屋上に、これもNTTドコモが基地局を設置しようとした際に、反対運動の先頭に立ったのも女性だった。宣伝カーを走らせて、携帯基地局がもたらすリスクを広報したのである。
さらに現在、「携帯電話基地局問題を知らせる会」の代表を務めているのも、沖縄県在住の女性である。
子供を「モルモット」にしていいのか?
なぜ、女性が基地局問題に敏感なのか?わたし自身が取材で聞き取ってきた内容から察すると、出産や子育てを体験し、幼児の生命と未来に対する洞察が深くなっている事情があるのではないかと思う。
特に、携帯基地局から発せられるマイクロ波による健康被害の問題は、2011年にIARC(国際がん研究機関)が発癌の可能性を認定したこともあり、子供を持つ親たちを不安に駆り立てている。
だがそれは単なる病的な「不安症」ではない。基地局周辺では、奇形植物も観察されている。科学的な因果関係が立証できなくても、公害について語るとき、生態系が異変した事実ほど重いものはない。
■参考:奇形ナスビの写真実際、多くの研究者が、マイクロ波の危険性を指摘している。海外では、基地局周辺で癌の発症率が高い、とするドイツなどの疫学調査の結果も明らかになっている。
IARCによる認定も、こうした研究の積み重ねを根拠として行われた。山口好子さんが言う。
「携帯基地局が設置された場合、(成長期で影響を受けやすい)子供への影響が最も心配です。設置場所が通学路にもなっていることも問題です」
山口さん夫妻には、小学校6年生の息子さん、小学校3年生の娘さん、それに保育園児の娘さんがいる。
都心を離れて、豊かな自然環境の中で子育てをするために移住を決意し、3年前に現在の場所に家を立て、引っ越してきた。
ところが、NTTドコモが基地局の設置を予定する場所は、 山口家から200メートルの近距離だった
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塩田さん一家が居住している人里はなれた山村。現在は、携帯電話の「圏内」になっているが、基地局から直接マイクロを被曝する最悪の状態は回避している。
正永寺桜保存会が編集したパンフレット。正永寺桜がある正永町2丁目は、地域住民の繋がりが強い地域でもある。
NTTドコモの説明会の後、地元の有志がNTTドコモの加藤社長宛に送付した「飯田正永基地局の建設見直しの要望」。基地局設置に合意していないことを示している。
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携帯電話の電波はマイクロ波ではない
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