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ベイカレント・コンサルティング 「コンサル会社というより、“コンサルサービスを売っている営業会社”です」

情報提供
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派遣会社時代を引きずったドメドメなデザインは手作り感満載で微笑ましい。社内報は月1回4~5ページで、プロジェクト事例紹介、社員紹介(趣味や休日の過ごし方等)、事務連絡事項、経営陣からの上から目線な訓示など、昭和感満載。
 鮮やかな“上場ゴール”に不正競争防止法違反容疑での元社員逮捕と、昨今、話題に上ることも多く知名度上昇中のベイカレント・コンサルティング。IT人材の派遣会社だった経緯もあり、つい数年前までは、営業系の研修で電通『鬼十則』を合唱し、鬼十則の意味を1則ずつ考えるディスカッションが行われていたという、コンサル会社ではありえないカルチャーを根っこに持つ。業績は堅調で2018年2月期決算も増収増益となり、今後3年で社員2千人体制を目指す(2018年4月現在、1,528名)。2014年前後に本格化した新卒採用入社組の1人で、同期を通して直近の状況も把握する元社員(辞めて半年以内)に、採用から配属、キャリア形成や報酬水準、カルチャーの特徴について、現場の実情をじっくり聞いた。
Digest
  • フューチャーから機密情報を取得し逮捕
  • 鮮やかな上場ゴール
  • コンサルティングサービスを売っている営業会社
  • 組織はぐちゃぐちゃ、属人的
  • 周りのスペックが高くないので、入りやすい
  • インターンに出てくる社員がマックス
  • リクルーター「おれたちはキャバ嬢」
  • 営業系は旧日本軍カルチャー
  • 「人から好かれる人」が活躍できる
  • 中途は高め、新卒1年目は「給料安すぎて悩みました」
  • 2018年2月期は非IT系が3割に
  • 社内営業力も必要
  • イメージコンサルのアドバイスつき、購入は自腹
  • 新卒採用で女性ゼロの年も

フューチャーから機密情報を取得し逮捕

2018年3月8日、不正競争防止法違反の容疑で、ベイカレント・コンサルティングの元従業員(岸本昌平容疑者)が警視庁に逮捕されたと発表された。容疑は、フューチャーアーキテクトの執行役員と二重雇用となっていた2017年1~2月に、フューチャーの従業員名簿や顧客向け見積書等を競合他社であるベイカレントに漏えいした、というもの。

漏えいの時期は、上場3か月後の2016年12月に業績大幅下方修正を発表して社長が交代したばかりの年明け、混乱&建て直しに奔走していた真っ最中だ。12月にヘッドハンティングでベイカレントに入社したものの、フューチャーも辞めておらず、機密情報がダダ漏れとなり、フューチャーのサーバー接続履歴等から証拠をつかまれた格好だ。

報道では、フューチャーは当該社員を解雇、ベイカレントのほうは自主退職とした、という。この扱いの差が物語るように、ベイカレントの会社ぐるみである可能性も十分に疑われるが、刑事事件に発展してなお、社会的責任が重い上場企業であるベイカレントは本件について説明していない。容疑が事実なら、この犯行でベイカレントは利益を得る立場だ。

「私は報道ではじめて知りましたが、社員に対しても、事件の内容について説明は一切なく、『報道機関から聞かれても、何も知らないと言うように』といった連絡だけ受けました。実際、現場レベルでは逮捕された人の存在すら知られておらず、知っているのは、かなり上層部の役員以上だけだったと思います。ただ、アクセンチュアと並んで、フューチャーから転職してきた人が社内にすごく多いのは確かです」(元社員)

逮捕に先立って2017年8月、同内容についてベイカレントは、フューチャーから損害賠償を求める民事訴訟も起こされており、係争中だ。

鮮やかな上場ゴール

グレーなトピックはこれにとどまらない。同社は、鮮やかな“上場ゴール”を決めた会社としても歴史に名を刻んでいる。

2016年9月2日、東証マザーズ上場 公募価格2,100円→初値1,963円

2016年12月9日、突如として2017年2月期の業績予想を利益半減&前期割れに大幅下方修正(税引き前利益39億1500万円から20億8300万円)→ストップ安→最安値808円まで下落。

ITを中心とするコンサル会社の業績予想は、大震災やリーマンショックのような大事件でもない限り、受注状況からほぼ正確に見通せる。わずか3か月で20億円も下方修正するなど、通常は、起こりえない。つまり上場時の業績見通しは、株価を一時的に吊り上げて売り抜けるための粉飾だったと言われても仕方がないものだった。

当時の萩平和巳社長は“業績悪化”の責任をとって辞任したが、雇われ社長が辞めるのは簡単なこと。オーナーにとっては、三菱商事→マッキンゼーという“ピカピカ君”を社長に立てて右肩上がりの見通しを発表させ、投資家を信用させて高値で上場、売り抜け――はストーリー通りだったのではないか。

社長の首を挿げ替えるのは容易く、挿げ替えられるほうもたいした痛手はない。萩平氏はその後、ミスミの「グループ統括執行役員」に収まり、何のペナルティーも受けずじまいだ。高値で掴まされた投資家は、わずか3か月余りで半額未満に沈められた株価(自分の資産)に対し、損切りした人も多いだろうが、訴訟も起きていないようだ。日本の証券市場の闇である。

この“上場ゴール”で、高値で売り抜けて最も利益を得たのは、創業者で筆頭株主の江口新氏である。ブックビルディング方式で1,168万4百株を総額およそ245億円(1株2,100円の計算)で売り出したうちの38%を個人で放出し、残りも、税金対策と思われるケイマン諸島の投資組合やファンドなので、大半は江口氏関連だろう。

当時の実力値を業績修正後の株価808円とすれば、全体として差額にあたる150億円余りを、不当に投資家から手にした計算になる。これを合法的にできるのが日本であり、主幹事はやはり、損失補填などで黒い歴史のある野村證券だった。

「上場すべきでない会社」が上場したままでいいのか』をはじめ、こうした株式市場の在り方に批判は多い。上場後わずか3か月で利益予想を半減させて減益決算に転落させても何らのペナルティーも課されないのなら、今後も、同様の粉飾まがいの業績見通しを公表して(オーナーが雇われ社長にプレッシャーをかけて公表させて)上場&利確することが、高値で売り抜けたいオーナーにとっての合理的な判断となってしまう。

「実際、(そういう荒稼ぎをしても)しょっ引かれてないわけじゃないですか。最近は全く表に出てきませんが、話を聞く限り、とにかくスゴい人だと言う先輩が多くて、上層部には、古株を中心に、江口さんの信奉者が多いです」(元社員)。現在も10%を持つ筆頭株主ではあるが、もはや社員の前に姿を現すことは一切なくなったという。

プロセスではなく結果の数字だけを見れば、起業家として大成功している。キレイゴトやコンプライアンスを考えていたら、カネ儲けを最大化できないのが現実社会の一面でもある。特に、これらの抜け穴(粉飾やらケイマンやら…)が政治や証券業界によって放置される日本において、「きれいに稼ぐ」のは難しい。そんな身も蓋もない現実を身近で知るのに、最適な会社ではある。

コンサルティングサービスを売っている営業会社

ベイカレントは、もともと、江口氏が1998年に創業した有限会社ピーシーワークスが母体で、今年でまだ創業20年という若い会社だ。SE(システムエンジニア)などIT人材の派遣事業を行う派遣会社として成長してきた歴史がある。

「当時からいる上層部は、バンカラ、武闘派が多い印象です。元々、コンサル会社ではなかったので、外資には入社することすら考えたことがない、というタイプ。ベンチャースピリットをもった、いわゆる叩き上げのビジネスマンです」(元社員)

外資コンサルでよく見かけるような、ピカピカな学歴を身にまとったアカデミックスマートとは対極にいる、ストリートスマートな人材だ。この“ストリートファイター”たちが、ベイカレントのコアな部分を形成しており、他のコンサル会社とは明確に異なるカルチャーを形成している。

「人材派遣業は、サービスの内容や品質というより、営業力がモノを言う業界です。業績が厳しいときは、引っ越し屋や、データ入力屋の仕事までとってきて、凌いだそうです

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『ナレッジグランプリ』を毎年開催。2017年は26のチームがプロジェクトで蓄積した方法論を発表。どのようなテーマのプロジェクトが社内実績としてイケてると見られているかが分かる。「年中無休」「珍獣園」「ルノアール好き」「ベイカレ三田会」…といったチーム名からもカルチャーがうかがえる。

ベイカレント「コンサルタント」(入社2~4年目くらい)の給与明細

ベイカレントコンサルティングのキャリアパスと報酬水準

ベイカレントの職位別役割。たとえばマネージャーで3千万円のチャージが必要。

エラい人たちには、イメージコンサルがついて、アドバイスを受けられる。見た目を重視し、「形から入るタイプ」の会社。脂ぎっていて胃にもたれそうなギラギラ系の黒光り営業集団なブランディングが、派遣の営業会社時代を思わせる。ナチュラルさやダイバーシティーは排除。上層部は、全員が中高年男性のみ、というスーパーマッチョ集団。

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読者コメント

  2018/05/12 21:43
2010年のトラブル2018/05/12 21:30
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