「東進」ナガセの《血族・家臣・家来》身分制経営――銀行・証券出身者優遇、生え抜きは使い捨てで出世できない
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- Digest
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- まるで銀行管理下の倒産会社
- 血族、家臣、家来の3層構造
- 担任助手出身者は同期で5~6人だけ
- エリートコースはハイスクール本部
- 直営HS校舎の1日
- 担任助手が参加拒否するほどハードな夏期合宿
- 稼ぎ頭の衛星事業本部――左遷的なAC
- 身につくスキルは、泥臭い営業・マーケ
- 正義感がある人には向いていない会社
- 従順なバイトを採用するノウハウに強み
- 2極化で生き残れるか
- サービス残業を放置、裁量労働制を悪用
- 有給消化はムリ、長期連休もとれない
- 「胃酸が出る」3者面談
- でたらめな個人情報管理
- 平均年収を吊り上げる天下りの執行役員たち
- 家賃補助7割に引き上げ
- SLAPPを止められない!歪んだコーポレートガバナンス
まるで銀行管理下の倒産会社
取締役だけでなく、本部長・副本部長クラスも金融系出身者で固められている。
・専務:永瀬照久(社長の実弟)5千万円
・常務:加藤伸(みずほ銀←東大)4千万円
・平取:内海昌男(みずほ銀←東大)3千万円
・相談役:永瀬昭典(社長の実弟、元副社長←東大)3千万円
・衛星事業本部長:有安隆(みずほ銀←東大)
・衛星事業副本部長:服部哲士(証券会社)
・東進ハイスクール本部長:前田達也(旧三和銀)
・コンテンツ本部長:渋川哲矢(リクシル等←東大)
・コンテンツ副本部長:堀口桂介(三菱UFJ銀←一橋)
大学受験予備校なので東大出身者が多いのはわかるが、銀行出身者の多さは異様だ。一見すると、倒産しかけて、みずほ銀行の管理下に置かれた惨めな会社に見えるくらい、上層部を本業と無関係な経歴の役員ばかりで占めている。
上層部人事を見る限り、永瀬社長の頭のなかには、東大→旧都銀がエリートコースで一番エラい、という昭和時代の発想が染み着いているようで、そんな塾に通わせたらどんな時代遅れな教育を叩きこまれるのか、と若い世代の親ならば恐怖感すら覚えるだろう。
ナガセの社内メール「FirstClass」というグループウェアには、氏名とともに数字が表示され、それがほぼ、給与ランクに紐付く。社長は「1」、本部長「31」、副本部長「32」、上級部長・部長「4」、校舎長「5」、課長「6」、課長代理「7」、係長「8」など。これはまさに、序列を重視する銀行のカルチャーそのものだ。
自分よりもエラい人かどうかを一目瞭然に数字で示すことで、メールの言葉遣いまで考えろ、ということだろう。ナガセが、きわめて昭和的なピラミッド組織であることを意味しており、現場に権限がないことを示唆する。映像授業などITを駆使した先進的な会社に見えて、その実は、銀行のような、硬直的で、社員にとって息苦しい序列社会をよしとしているのである。
銀行優遇は、校舎の現場にまで及ぶ。社員の子供が半額なのはわかるとして、親がメガバンク勤務だと、子供の東進ハイスクール受講料が2割引きになるのだ。「三井住友とか東京三菱とか、プルダウンメニューに銀行名があって、『兄弟割』と同じように、割引が適用されます。うちの校舎にも2~3人いました」(担任助手)
みずほ銀行はナガセの大株主ではあるが(ナガセ株を5%だけ保有)、ナガセに株主優待制度は存在せず、他の銀行でも一律で割引となる。みずほがメインバンクといえども、マイナス金利でカネ余りの時代に、銀行勤務者の子息を優遇してどんなメリットがあるのか、理解に苦しむ。
永瀬は野村證券出身で、金融業界とつながりが深い。永瀬昭幸社長は、2010年に倒産した有名なブラック企業・武富士の取締役も務めていた(当時の社長は野村出身)。確かにナガセと武富士は、創業者(一族)によるパワハラぶりや営業中心の組織運営が、よく似ている。そして両社とも、自社に批判的な記事が名誉棄損だとして高額の嫌がらせ訴訟を仕掛けて敗訴した惨めな会社である点も共通している。
血族、家臣、家来の3層構造
頑張って仕事をして成果をあげても、東進ハイスクール部門では、せいぜい副本部長(年収1500万円)どまり、権限もなく、報酬も上がらない。本社部門では、部長にすらなるのが困難で、プロパー上がりの上級管理職となると、数えるほどしかいない。上層部は教育現場を知らず、的外れなことを言い、数字だけを求める銀行・証券出身者が大半を占める。新卒入社組は、そういった理不尽な境遇に、あえて入社してくるのだから、奇特な人たちにみえる。
いわば、
家臣=みずほ銀を中心に、銀行・証券出身の天下り役員たち
家来=新卒を中心とする“使用人”クラスの現場労働者たち
という、厳格な身分制のような3層構造だ。
創業42年なので、通常の会社であれば、生え抜きの社員が取締役に昇格していてもおかしくないが、ナガセ上層部には、血族以外に、教育の現場を知る内部昇進組が、ほとんど見当たらない。社長が「家臣」と「家来」を明確に区別しており、家来は代わりがいくらでもいるから使い倒して、使えなくなったら捨てるものであり、功ある者にも禄は与えず、地位も与えず、という考えであることがわかる。
仕事らしい仕事がない「相談役」の永瀬昭典に3千万円の年俸が与えられる一方で、はるかに安い給料で病気になるまで違法に長時間労働を強いられる新入社員がいるのも、単に昭典が血族(実弟)だからである。
経営者人材と労働者人材を役割によって区別する欧米流と言えなくもないが、ナガセの“家臣”は、単にメインバンクの銀行出身というだけで、他社で事業を成功させたとか、MBA取得者やコンサル会社出身者といった経営のプロだとかいうわけでもないため、意味が違う。
担任助手出身者は同期で5~6人だけ
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新卒採用数と、離職率推移![]() |
ナガセで“家来採用”されるのは、どのような人たちなのか。
前回報道のとおり、組織運営が宗教団体風のため、このような組織に適合できる社員は、高校時代から東進で学び、大学生時代は東進で担任助手のバイトをし、そのまま洗脳された状態で東進に入社してくるのかと思いきや、意外にそうでもないことがわかった。
過去10年で、ナガセは30~40人を安定して新卒採用してきたが、2018年4月入社の新卒は45人と、若干多めだった。男女比では、女性のほうが少し多いくらいだという。
「大学受験のときに東進に在籍していた人は、約3分の1だけ。大半は、東進を知らずに入社してきます。担任助手出身者に至っては、私の同期は5~6人だけです」(若手社員)。担任助手出身は、せいぜい1割強。つまりバイト経験者は、新入社員が最初に配属される直営校舎の現場を熟知しているからこそ、むしろ逆に、入社を避ける傾向にある、とみることができる。
今年入社した新人は、2017年4月下旬に内定。競合は、教育産業のほか、教育系出版社が多いという。数研出版、学研、大手予備校(河合塾、駿台、ベネッセ…)などだ。
選考過程は
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「確実にブラック」と担任助手も証言する夏期合宿のスケジュール
《目標達成は「絶対」です》といった気合・根性系のメールが、土肥氏(現HS本部・副本部長)から毎日くる。半期分を一通り見たが、連日、延々と、こんな感じの内容であった。ほとんど宗教、洗脳に近いものがある。土肥氏は月次の全体研修会で司会を務める女性で、現在、研修担当の東進ハイスクール本部・副本部長として、永瀬社長の思想を全校舎に浸透させる役割を持つ。
肩書、給与ランク、報酬水準
上:若手社員(20代後半)の給与下:中堅社員(40代)の給与
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読者コメント
東進が悪質ってのは高校生の頃から勘付いてた。駿台・河合はどうなのか気になります。代ゼミはあまり良くないだろうな。
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