三菱UFJ銀 世帯主7万、準世帯主3.5万の家賃補助…手厚い待遇にしがみつく中高年総合職、リストラに戦々恐々な氷河期世代
地上24階建て(地下5階)の三菱UFJ銀行・丸の内本部ビル(丸の内2丁目)。最上階にホテルオークラが運営受託する特別食堂、22階に精神科がいつも予約で一杯な「健康センター」がある。 |
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- 業務3割減、有人店舗半減、ATM2割減…
- 平均年齢や入居しているビルでわかる部署の「格」
- 人事に呼び出されて繰り返される転籍面談
- 「M2」で安定的に年収1千万円
- 「老人の溜まり場」、病人や休職者も多い
- 20代BS職の1人暮らしは厳しい
- BS職→総合職への転換にみるパターナリズム
- 三菱マン出世スゴロクのゴール
- 「残業は1分もつけられない」部署も
- シャチハタを全員携帯、「あずき色」以外ダメ
- 権威、プライド、ブランドが大好きな人たち
- IT活用で支店半減、ネットバンク促進
- 社内公募は2019年上期から証券・信託も応募可能に
- 婚活・腰掛ポジションとしてのBS職
業務3割減、有人店舗半減、ATM2割減…
「減るポスト、遅れる昇進、拡がる格差」という記事から10年がたち、その流れはますます加速している。2008年と2018年を比べると、10年で、本体社員数(33,280人→34,101人)および平均年齢(37.6歳→37.5歳)ともにほぼ横ばいながら、平均年収は826万円→773万円へと53万円下がった。ひとえに、UFJとの合併(2006年)後に重複していた支店の統廃合が進み、支店長ポストをはじめとする高給ポストが減った効果とみられる。
従業員の状況(2018年3月31日現在、有価証券報告書より) |
2017年9月には、業務のデジタル化などで9,500人分の業務量(全体の約3割)を削減する見通しを公表。2023年度までに、有人店舗を515店→約250店に半減させ、ATM台数も8,141台(2018年3月末)→6,700台に約2割減らし、客のネットバンク利用を促すことで収益力を高める。つまり、店舗や人員などのコスト削減による「縮小均衡」で利益をねん出していく。
この中期計画に沿って、新規採用も抑制。2020年4月入社の新卒採用は530人とし、前年比45%減の水準とする。
2019年4月から、総合職(グローバル転勤アリ)と特別総合職(ブロック内転勤のみ)が統合され、「総合職」に一本化。補助的な業務を行う“一般職”は、「AS(アソシエイト)職」→「BS(ビジネス・スペシャリスト)職」に呼び名を変え、地域間異動なしの実質的な“女性職”として残す。
一般職=サポート業務をする女性、という昭和時代のような露骨なジェンダー差別のコース別人事であるため、男女比は社内にも公開されないが、「私の知る限り男性はいません」(中堅BS職)というのが社内の共通認識だ。
ようは、「総合職」と「BS職」の2つに簡素化され、総合職は1年ごとに転勤アリ・ナシを選択できるようになり、BS職は昭和の一般職(転勤なし)のまま残す。世の時勢は共働きが当り前となり、転勤ナシを選択する人が増えているため、今後は「国内外に転勤アリ」を選択した総合職の待遇を従来以上に引き上げ、いま以上に出世しやすくする流れが予想される。地域間を動かせる頭数が一定数いなければ、銀行全体の雇用維持と戦略実現に必要な人事異動が、両立しなくなるからだ。
コース別採用人数推移 |
なお現状の平均年間給与773万円というのは、BS職と総合職を合算した数字だ。後述のとおり、BS職で773万円に達している人は存在しないとみてよい。
人数比は新卒で1:1~2:1の比率(2013年度で総合876人:一般803人、2017年度で総合614人:一般403人)ながら、一般職は財閥系の性格上、寿退社も目立つことから、30歳前後までの離職率が高いとみられ、在籍数では2~3:1くらいと考えられる。総合職の平均年収は1千万円をゆうに超える。
平均年齢や入居しているビルでわかる部署の「格」
そんななか、平野信行社長や三毛兼承頭取は、減るのはあくまで業務であるとして、希望退職募集のような露骨なリストラ計画は決して口にしない。統合、統合…を繰り返しつつスリム化してきた都銀時代からの“ステルス・リストラ”方式を踏襲する。すなわち、出世していない「52歳以上」の社員を、グループ会社等に出向・転籍させ、定年まで雇用は守るが給与は3割カットする、という肩たたき人事である。
支店に「店格」(主に収益規模により大店~小店)があるように、本部の膨大な数にのぼる部署のなかにも、 “花形部門”から“リストラ待機部門”まで幅がある。それは、在籍している総合職の平均年齢をみれば一目瞭然となり、その部署が入居するオフィスビルからも見当がつくという。
花形部門のほうは、「法人・リテール企画部」をはじめとする企画部門や、海外の顧客を相手にする国際部門、金融商品などを扱う市場部門で、優秀な若手が多く配属され、仕事は精神的にも肉体的にもハードだ。残業も多い傾向があり、その分、年収も高い。
「国際部門が圧倒的な成長分野なので、そちらにいる人たちは多忙で残業も多く、若い人が明らかに多いです」(中堅BS職)。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)の営業純益に占める海外事業比率は約4割(2017年3月期)を占めるが、2018年度からの3年間の中期経営計画では、これを5割に引き上げる計画。2013年にはタイのアユタヤ銀行を買収済みだ。
総合職の30代社員によれば、「TOEIC870点以上でグローバル人材扱いとなり、同期では30代に入る段階で100人くらいいて、うち30人ほどが、国際畑の部署に所属して海外ビジネスに従事しています。それ以外の大多数の同期は、
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総合職が50代を過ごす転籍先の1つ、100%子会社「エム・ユー・センターサービス東京」(世田谷区池尻)の業務内容
三菱UFJ銀・総合職のキャリアパスと報酬水準(2019年3月時点)
中堅BS職の源泉徴収票。一般職としてはかなりの高水準と言える。
中堅BS職(2019年3月までのAS職=いわゆる一般職)の給与明細。2016年よりPDF化された。
三菱UFJ銀BS職のキャリアパスと報酬水準(2019年3月時点)
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三菱UFJ銀行は2023年度までに、本部に所属する社員数を半減する。東京の本部には企画や管理などを担当する6000人程度の社員がいる。単純な事務作業では「RPA」(ロボティック・プロセス・オートメーション)と呼ばれる自動化システムの導入を進める。23年度までに約3000人分に相当する業務量を減らせる見込み。(2019年4月28日、NIKKEI)
三菱UFJ銀行は2019年5月、2歳未満の子供を持つ国内全ての男性行員に1カ月の育児休業の取得を強く促す制度を導入する。夫婦で作った育児計画を直属の上司に提出させ、仕事の配分などを管理する。
さすが日本一のメガバンクと言えるだろうか。しがみついた先に待っているのが出向(40代から)なら報われないのではないだろうか。就職先の人気も激下がりの銀行業界に明るい未来は無い
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