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景品はバイアグラに女性紹介、半年契約で現金2万円提供…読売の元セールス員が語る違法な拡販実態

情報提供
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読売の元セールス員が使っていた新聞拡販時の景品。上は、ジャイアンツのぬいぐるみ「ジャビット」。下は、ミズノのスポーツ用ジャケット。景品表示法では、景品の上限額は約2000円となっている。ギリギリか、超えている可能性もある。(筆者インタビュー時に撮影)
 昨年2回、産経新聞と毎日新聞が、新聞拡販の際に使う景品が法律で決められた上限額を超えているとして、大阪府消費生活センターより処置命令を出された。偽装部数(押し紙)と強引な新聞拡販で巨大化してきた新聞社にとっては、将来展望を閉ざす行政指導であった。そこで筆者が、昨年まで現役だった読売の元セールス員とYC元従業員を直接取材したところ、読者サービスとして「バイアグラをあげたり、女性を紹介した」との証言を得た。景品の代わりに2万円程度の現金(6カ月契約の場合)を分割で渡した、とも述べた。2020年の賀詞交換会で読売・渡邉恒雄主筆は「今年中に1000万部を挽回しようじゃないですか」と語ったが、販売現場からは失笑が漏れている。新聞拡販の現場はどうなっているのか。初めてセールス員の景品置き場に、ジャーナリズムのビデオカメラが入った(会員限定で視聴可)。
Digest
  • 洗剤からビール券や百貨店のカタログへ
  • 「バイアグラや、女性を紹介したこともある」
  • 景品の代わりに現金2万円を提供
  • 読者から苦情「わたしはタダだから新聞を取ったのだよ」
  • 他紙の読者を横取りする
  • 勧誘先で、「ただでも新聞はいらない」
  • 折込広告の激減が販売店を直撃
  • 拡材(景品)置き場をビデオ撮影
  • 不正契約による新聞購読料の支払いを従業員が負担
  • 渡邉恒雄、「販売第一主義を宣言」の過去
  • 「今年中に1000万部を挽回しようじゃないですか」
  • 読売新聞広報部のコメント

全自動洗濯機、ロボット掃除機、液晶テレビ、電動アシスト自転車。読者はこれらの製品が何に使われていたか、推測できるだろうか。

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筆者のインタビューに答える元セールス員・斎藤康夫さん。高崎市内で。(撮影:山田幹夫)

かつて新聞拡販活動の際にセール員(新聞拡張団員)が購読契約者に提供していた景品は、洗剤、ビール券、米、それに商品券など。これら景品をセールス員が携え戸別訪問を繰り返し、時には恫喝して新聞の購読契約を結ばせていた裏面史から、日本の新聞は「インテリが作ってヤクザが売る」と言われてきた。

昨今は新聞産業の衰退とともに、新聞セールス団も次々と姿を消した。しかし水面下では、依然として自制のない新聞拡販が続いているのだった。

2019年の1月と12月、大阪府の消費生活センターは、それぞれ産経新聞毎日新聞に対し、景品表示法に基づく措置命令を下した。景品表示法は、新聞拡販の際に使われる景品の使用限度額を定めている。それによると、限度額は、最大でも6か月の新聞購読料の8%である。

この規則に従うと、中央紙の場合、最高限度額は2000円程度。当然、全自動洗濯機やロボット掃除機を景品に使うと景品表示法が設けた景品の限度額を超えてしまう。その意味で、消費生活センターによる産経と毎日への介入は適切な措置だった。同時にそれは、従来の販売政策に対する審判でもある。

しかし、読者は次のような疑問を抱くかも知れない。産経と毎日は行政指導の対象となったが、他の新聞社は景品表示法を遵守した新聞拡販を展開してきたのか。新聞の「拡販戦争」を展開してきたのは、産経と毎日だけではない。地方紙も含めて大半の新聞社が購読契約と引き換えに景品類をばらまいたり、景品提供の代わりに一定期間、購読料の無料サービスなどを行ってきた。

とりわけ朝日新聞と読売新聞は、新聞拡販の現場で、しばしばトラブルを起こすほど派手な拡販戦略を展開してきた。双方が相手を「ライバル紙」と位置付ける。

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『読売新聞百二十年史』(1994年刊)の「刊行にあたって」。渡邉恒雄社長は、読売の成長を手短に述べ、この社史を「一千万読者に奉仕するための文献としてほしい」と結んでいる。部数への異常なこだわりがある。

洗剤からビール券や百貨店のカタログへ

筆者は1月5日と18日、群馬県を中心に昨年1月まで読売新聞のセール員をしてきた男性に会い、自らの体験を語ってもらった。男性は大量の景品を使って新聞拡販をしていただけでなく、景品の代わりに一定期間、無料で新聞を配達する契約も多数締結していた、と語った。

筆者はその男性の自宅にある「拡材(景品)置き場」を、ビデオカメラで撮影した。その結果、全自動洗濯機やロボット掃除機とまではいかないが、かなり豪華な景品が在庫として残っていることが判明。新聞の無料配達を裏付ける帳簿も入手した。

インタビューに応じた斎藤康夫さん(76歳)は、昨年1月まで約20年にわたり新聞セールスチーム(新聞拡張団)に所属し、読売新聞を拡販。セールスチームは読売新聞社と資本関係はないが、もっぱら読売新聞の拡販を行ってきたという。

--拡販活動を展開していた地域を教えてください。

群馬県です。 具体的には渋川市、前橋市、高崎市、伊勢崎などです。

--斎藤さんはどんなふうに新聞勧誘をしてきましたか?

拡材(注:景品の意味)を使っていました。セールスの仕事を始めたころは、よく洗剤を使っていました。それから、サービス品が増大化していきました。洗剤では間に合わなくなったので、小田急百貨店や伊勢丹のカタログを使って、読者が希望する商品を提供するようになりました。ビール券も使うようになりました。洗剤の場合は、お客さんに銘柄の好みがあるので、銘柄によってはいらない、という人もいて、役に立たないことがありました。これに対して、ビール券であれば、銘柄に関係なく使えます。新聞の部数増のプレッシャーが異常に強く、とにかくどんな方法でもいいので、部数を増やす方針にしていました。

 昔は契約してくれるまで玄関に座り込む団員もいました。子供を借りて、子連れで拡張する団員もいました。「うちの娘なんだ」と言って同情を誘って新聞の購読契約を取り付けるのです。

「バイアグラや、女性を紹介したこともある」

--かつては強引な新聞拡販が横行していましたが。

そうです。なかには、入れ墨を見せながら拡販するセールス員もいました。これを喝勧(かつかん)といいます。脅しながら購読契約を迫る。それが常套手段でした。たとえばラーメン屋の出入口に立ちはだかって、「新聞を取ってくれるまで動かないよ」と言ったりします。これをやれば、店の営業に支障があるので、店はこまります。そうなるとめんどくさいから、契約してくれるのです。

しかし、最近はこうして新聞購読契約を取っても、販売店や読売新聞社の方に「おたくやくざ者を使っているね」と苦情が入るわけです。脅かされて契約したのだから、新聞はいらない、ということになります。

 契約や再契約をさせるためにバイアグラを提供したり、女性を紹介したこともあります。部数を増やすためには、とにかくなんでもやりました。

--「バイアグラがほしい」とお客さんの方から言ってくるのですか?

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斎藤さんが毎月、新聞代の現金を届けるために作成していいた読者リストの一部。①②・・は月を現す。赤の斜線は、支払い済みの意。

斎藤さんが便宜上作成した2019年1月から6月までの「置き勧」読者数と、それに対する予算表。一人3400円で計算して、6カ月の述べ人数は460人。予算は156万4000円になる。

昨年の1月に斎藤さんは、仕事をやめた。その際、「置き勧」読者に宛てた通知を出した。「尚、契約期の残りの月の新聞代は(注:販売店が)集金に参りませんのでどうぞそのまま読んで下さいますことをお願い申し上げます」と記している。

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