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実録・公立中教師が副校長のパワハラで休職に追い込まれるまで 校長・都教委は放置、加害者は昇進、360度評価やホットラインなく…

情報提供
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休職に追い込まれた30代教員「校長も教育委員会もパワハラ教員を放置し、逆に昇進させたんです」
「勤務時間中にFX取引している理科教員や、漫画を読んでいる副校長がいます。このような職場で、子どもたちの夢・目標を実現させてあげることができるのでしょうか」――。複数の東京都公立中学教員から、緩み切った教育現場の告発があった。世界一の長時間労働でメリハリがない背景もあるが、一方で“クラッシャー上司”もはびこっている。「私が受けた不当労働行為は、今でも許せないと思っています」と語る現役教員(現在30代)が、副校長によるパワハラで心の病を患い90日間の休職に追い込まれた4年前の実体験を語った。適応障害の診断書を本人から取り上げた校長は定年後も再任用され校長を続けており、パワハラ常習の副校長自身はその後、校長に昇進。都教委のでたらめな人事運用が“職員室崩壊”を引き起こしている。
Digest
  • 歯止めなきパワハラ被害の連鎖
  • 「コミュニケーション力がない」と決めつけ人格否定
  • 仕事確認で「割印」まで押させる
  • 睡眠導入剤が必要に
  • 「OJTだから、メモしたりして訴えないで」
  • 適応障害で90日間の病休も「公務労災」申請できず
  • 「インフルエンザでない証明を持ってこい」
  • 異動先でもパワハラ「1日に何回か」「被害者から相談あった」
  • 校長や労組ではなくホットラインへ、が重要
  • 給料も昇進も、評価によって変わらない悪平等
  • 骨抜きされる「学校評価」「フィードバック」
  • 意味のない教員免許「更新講習」
  • 機能しない「学校監査」
  • 弱体化し労災支援しない労組
  • 放置されてきた大人社会のイジメ問題

■教職員、心の病による休職過去最多

 うつ病など「心の病」が原因で、2019年度に休職した公立小中高・特別支援学校などの教職員が5478人、18年度に退職した公立学校教員が817人いて、ともに過去最多だったことが22日、文部科学省の調査で分かった。(2020年12月22日『朝日新聞デジタル』より)

心の病を患って休職した教員数は、過去最多にのぼっており、構造的な原因があることを物語る。象徴的な事件として、2019年には、教員4人が1人の教員に激辛カレーを無理やり食べさせるといった「カレーいじめ事件」が神戸市で発覚。公教育を担う職員室の現場は末期的ともいえる状況で、学級崩壊ならぬ「職員室崩壊」も深刻だ。

■カレーいじめ事件 神戸市立東須磨小学校で、新卒3年目25歳(当時)の男性教員が、同僚の教員4人から、いじめや暴行を受けていた事件。2019年10月に発覚。主犯格2名が懲戒解雇、残り2名は懲戒処分のうえ神戸市教育委員会に異動。

こうした状況は民間企業でも問題化し、若手社員の過労自殺にまで発展した電通と三菱電機は、ともに管理職の考課に部下や同僚からの評価を取り入れる「360度評価」を導入し(電通2017年、三菱電機2021年)、対策に乗り出した。ところが都教委は、いまだ同制度を未導入。逆に、パワハラ上司が、学校内で絶大な権限を持つ「校長」にノーチェックで昇進してしまうという、絶望的な状況が放置されている。

職員室が病んでいるなか、生徒への悪影響が生じるのは確実で、それを案じたためか、子供の私立中学進学人気は、高まる一方(2021年、首都圏の中学受験率は過去最高)。教員採用においても、ブラック職場であることが発覚するに連れ、公務員という安定職種にもかかわらず教職の志願者は減り続ける傾向にあり、まともな若手人材が集まりにくい状況だ。マクロデータからも公教育の内部崩壊が進んでいることがわかる。

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パワハラで病状が悪化した当時の日記(2017年)。帰り際にスマホにメモしたものを、ノートに書き写していた。

以下、実際に副校長からパワハラを受け適応障害を発症して休職せざるを得なくなった30代教員が、「少しでも現場実態が伝わり、公教育の職場環境が改善されるきっかけになれば」と、当時の記録や証拠文書をもとに、自身に降り掛かったパワハラ被害と、公務労災を申請しようとしても支援を受けられず、校長にすべて丸め込まれる形で現場で握り潰された経緯について、詳述した。

「異動先でもパワハラ被害者が出ていると聞いている。今でも不当労働行為をしている可能性が高い。これ以上の被害者を生み出さないため、一連の出来事の公開は一切いとわない」という。以下は、日記や録音をもとに振り返った、本人による手記である。

歯止めなきパワハラ被害の連鎖

私は教員採用試験に2回めで受かり、東京都に採用され働き始めたのが2015年4月。その初任地となったのが練馬区立豊渓中学校で、3年間にわたって、直属の管理職にあたる副校長Sから、パワハラを受け続けました。

練馬区立豊渓中学校。「閉鎖的な職員室」に驚いた。

なお、このS副校長は、副校長になる前、「主幹」時代の石神井中(練馬区)でも、女性教員を病休に追い込んでおり、豊渓中の次の異動先でも副校長としてパワハラを働いて被害者を生み出していたことが、労組支部委員長の教員や、職員室に近い学校事務職の職員といった、複数の証言によって分かっていますが、それでも2020年に、より権限の強い「校長」ポストに昇進し、現在も荒川区で校長をやっています。

私のパワハラ被害は、民間でいう職場の「安全配慮義務(労働契約法)」違反にあたります。当時、相談に乗っていただいた臨床心理士のスクールカウンセラーを通して区教委に報告書があがっていますし、労組を通して一度は直訴しているので、教育委員会が本件を全く知らなかったわけではありません。それでも、昇進の審査で考慮されていないことがわかります。

現在、校長への昇進を決めるのは試験だけで、人格・人物、同僚を含む周囲からの評価は全く問われないため、パワハラで部下を潰すという、職場の安全配慮義務違反の常習者、いわゆる「クラッシャー上司」が、強い権限を持つ校長のポストに就くことについて、歯止めがないのです。被害の連鎖を食い止めるためにも、当事者として実態を伝えなければ、と思った次第です。

「コミュニケーション力がない」と決めつけ人格否定

まず着任翌月、5月21日のことでした。臨海学校の打合せで、飲み会があったのですが、私が近所の葬儀があったため参加しなかったら、延々と嫌味を言ってきました。当時の日記には、S副校長の発言をメモしてあります。

「なんで昨日、飲み会来なかったの?」「上司が誘ったら来いよ」「俺も校長も、酒飲めないんだよ、でも俺は行ったんだよ」「校長から(葬儀の件は)聞いてるよ、そんなもの後でどうにかなるんじゃないの?」「君は不運だな。今後も同じような不運は起きるな。というか、打合せに来ていれば仕事スムーズにできていただろうから、もう不運が起きているな」

そもそも業務に必要な打合せならば学校内で勤務時間中にやるべきなので、飲み会への参加強要自体が違法な要求です。飲み会については、同時期に、春の運動会があったのですが、その反省会をめぐってもハラスメントがありました。反省会も、学校外の「飲み会」でやる習慣があるそうです。発言は、以下の通りです。

「教育公務員としての職務45のチェック」なる自己申告書

「なんでN先生が、君に運動会の後の反省会の人数集めを頼んだか分かる?君、これ(副校長が作成した自己申告書の『コミュニケーション力』を指して=左記の通り)がないからだよ。君、コミュニケーション力ないからね。だから、飲み会頼まれているんだよ。わかる?先生たちが、指導してくれようとしているんだよ。そこのところ分かって飲み会やってね」

これには、人格を傷つけられました。生徒や親との関係で問題が起きているわけでもなく、何ら、コミュニケーション上の不備は起きていません。

飲み会のような、業務時間外の仕事を業務命令で強制すること自体が、そもそも違法です。反省会は、学校内で規定の業務時間内にやるべきものです。

仕事確認で「割印」まで押させる

5月26日、おかしいと思ったので、こうした件について校長に相談しましたが、校長は何も動かず、改善は見られませんでした。この、仕事をしない校長は、退職後もまだ再任用されて校長の任にあり、同様の問題が現場で放置されているのではないかと心配です。

こういった、私に対する根拠のない否定を、毎日のように仕掛けてきて、それはボディーブローのようにダメージとなり、病んでいきました。この副校長は好き嫌いが激しく、ターゲットになった教員を集中的にイジメるのだ、ということを後で知りました。

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契約書のような割印を押させられた。法的根拠もない、パワハラだと感じている。

7月2、3日。いきなり応接室に呼び出され、単なる『仕事内容の確認』を目的とした文書2つに、2日連続で、押印させられました(右記のとおり)。まるで借金の借用証でも作るかのように、『割印』まで押させて、片方を副校長が持っていくというもので、これは、嫌がらせというほかないです。

そのようなことは一切、他の中学校で行われた形跡はありません。このパワハラ副校長だけがやっている、独自のやり方です。業務命令を逸脱した、嫌がらせ行為だと思います。従う必要はなかったと思っていますが、疑問を呈すると、「つまらない質問してるんじゃないよ」と罵倒されました。

7月24日。臨海学校では

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「インフルエンザでない証拠を持ってこい」と言われ病院に行かされた。意味不明なパワハラを受けたと思っている。

上段:都教組支部委員長からのメール下段:学校事務職からのメール

明らかな「公務労災」で休職したのに、本人の意向に反して、現場でもみ消され、病休扱いにされてしまった。残念ながら、都教組に相談したものの力不足で、校長の思惑通りに。労働基準監督の機能を持つ「人事委員会」ホットラインなどに直接連絡し、その対応も含め、すべて録音することが重要である。

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