東京都公立中学教師 部活で土日潰れ代休なし、世界一の長時間拘束――「冷遇されすぎ、『ありえない』がまかり通っている職業です」
Caa:不良職種 (仕事3.5、生活1.7、対価1.8) |
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- 「正直、申し訳ない」コロナ禍の教員はヒマだった
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「正直、申し訳ない」コロナ禍の教員はヒマだった
これは保健体育教師の証言であるが、他学科の教員でも同じだ。英語教師が言う。「単語の練習や、文章の並べかえのドリルみたいな、紙ベースの課題を出して、2週間に1度の登校日に提出させるだけ。夏休みの宿題みたいなものです。教師も『家から出るな』と強く言われていました。車で買い物に出て、事故を起こして戒告になった教師もいました」
休校中は、公立中学校の教員がヒマすぎて、副業でバイトをして処分された例もあった。
新型コロナウイルスの影響で3~5月に臨時休校した際には10日間の在宅勤務を申請し、うち9日は勤務時間中を含めほぼ終日、配達していた。(朝日新聞)
現場教員が悪いわけでもない。原因は、昭和スタイルのままアナログにこだわり抜いて改革を拒んできた、子どもの学校教育環境にある。教育行政のサボタージュと不作為によってデジタル化が「世界最下位」水準になるまで遅れ、在宅スタディ・在宅ワークに、まったく対応できないのだ。
2018年の各国15歳児を対象とした調査では、週に1~2回以上「コンピュータを使って宿題をする」生徒は9.1%にとどまり(右記参照)、OECD37カ国平均の45.1%に遠く及ばず、ダントツの最下位だった。
2018年のOECD 生徒の学習到達度調査(PISA)より |
政府として、小中学校段階におけるアナログ教育の優位性(※紙に書くことで正確に覚えたり、発想力を鍛える、等)に確信を持ち、あえてデジタルを採用しない戦略をとっているなら、それはそれで見識であり、実に議論の余地があるテーマでもあるが、そうではない。ただのサボタージュ(不作為)、無策の結果で遅れているに過ぎない点、そして誰も責任を問われていない点が、実に深刻だ。実社会ではPCのない職場はもはや存在しない(民間では倒産する)ほどに浸透しているので、官邸と文科省が子どもの未来を潰しにかかっている事実は重い。
教員と生徒にとって、昨年4、5月は、いわば“夏休み”が2ヶ月近くも続いたようなものだった。その間も、一部の私立中や海外先進国では学習が進み、日本の公立校の生徒たちだけが取り残された。教育のユニバーサルサービスを提供するのが政府の義務(憲法3大義務の1つ)なので、もはや憲法違反といってよい状況である。
「公立は、実にノンビリしたものでした。私立はタイヘンだったでしょう、学力を上げなきゃ、というプレッシャーがありますから…。だから、2回め以降の緊急事態宣言で、萩生田文科大臣が『学校は休ませない』とした判断は、当然だと思います。私立と公立でどんどん差がついてしまうので」(ベテラン教員)
公教育のデジタルインフラ整備に投資してこなかったツケで、感染リスクがあっても全登校させる以外に選択肢がなく、ほかにやりようがない状況に追い込まれた、というのが現実だった。政府による“教育デジタル敗戦”である。
たとえば、オランダ現地校に通う親に尋ねると、スピード感の違いは明らかだ。インターナショナルスクールではなく、普通の現地人が通うオランダ語の小中学校である。オランダはITC活用で、「中学校で生徒に課題や学級での活動にITCを活用させる割合」が約50%と、ほぼ世界平均くらいにあたる。日本は参加48カ国中のワースト2位である。
中学生のITC利用率(出典:2018年OECD調査をまとめた内閣府資料より) |
「1回目のロックダウンではPC普及の問題が出ましたが、数週間以内に市からタブレットやPCの貸与がなされていました。オンライン学習はロックダウン翌日から始まり、翌週には、うちの学校は『Microsoft Teams』(※ZOOMのようなオンラインソフト)で授業が開始され、自宅から学内イントラや各学習ツールにアクセスして、反復学習やドリルを、ネットを通じて提出。数週間後には、先生が必要個所をYoutubeで説明して配信する授業も始まりました。以前から教室の黒板は『電子黒板』でYoutubeや動画教材も多用されていましたから、先生たちも慣れていたと思います」(アムステルダム在住、子どもは日本でいう小学3年生)
日本の小中学校は、世界最下位水準なのに、「GIGAスクール構想」で2023年までに1人1台体制に移行するという実にノンビリした計画となっている。現状は、23区内でも差がある。
「うちの区は、まだ生徒にPCが配布されておらず、自宅と中学校がつながっていません
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オンライン化で最下位、中学生のITC利用もワースト2位(内閣府資料より)
OECD調査「キャリアカウンセラーを置いている学校」で、日本は最下位、衝撃のゼロ(Advantaged/disadvantagedschoolswhereoneormorededicatedcounsellor(s)providecareerguidance)
東京都中学校教員のキャリアパスと報酬水準
「主任教諭」の給与明細。当月給料等内訳の「教職調整額」が給特法の4%にあたる額である。23区は2割加算の地域手当が大きい。
東京都中学校教員の評価結果と根拠
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千葉県教育委員会が2022年6月に実施した公立校の勤務時間の調査結果によると、「過労死ライン」とされる月80時間を超える時間外勤務(残業)をしていた副校長・教頭は小学校で約3人に1人、中学校で約2人に1人に達し、小学校は前年の同じ月と比べて過労死ラインを超える割合が悪化した。(中学の副校長・教頭、2人に1人「過労死ライン」超 負担重く)
https://mainichi.jp/articles/20221105/k00/00m/040/042000c
公立学校のスクールカウンセラーは「会計年度任用職員」という制度のもとで都の教育委員会に任用されて働く。任期は1年で、1年ごとに雇止めや勤務校数減少の可能性がある。任用の更新の判断は勤務校の評価者による恣意的な業績評価に基づいてなされる。心理職ユニオンの調査では、91%の方が、この先雇用契約が意に反して更新されなくなる可能性について「不安に感じる」「やや不安に感じる」と答えた。(調査期間は2021 年9月~2021 年10月、東京都)
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