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臨床検査技師 “顕微鏡で細胞見るのが好きな引きこもり”が多いコツコツタイプの控えめ理系集団「裏方と分かって仕事してます」

情報提供
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インタビュイーの臨床検査技師免許証。カードタイプにはなっておらず名簿登録番号で本人確認するアナログ方式。
 新型コロナ問題でよく聞くようになったPCR検査。その中心的役割を担うのが国家資格「臨床検査技師」だ。PCRは偽陽性・偽陰性の見極めにおいて専門的知識を要する検査で、被検者や検体を通しての感染リスクも高い。「うちは地域重点病院であることからコロナ患者を受け入れることになり、PCR検査の本格導入にあたって、去年から検査機器を増やして実施しています。主任が現場リーダーとして指名され、その上の技師長含め4人と、外部から6人を臨時で雇用し、10人体制で検体採取から遺伝子検査まで行っています」――。資格取得後、2つの病院で計10年超の実務経験を積んだ30代職員に、臨床検査技師業務の現場実態を聞いた。
Digest
  • PCR検査の実働部隊として
  • 健康診断や人間ドッグで会う人は「生体」部門
  • 英語科教員が「こういう職種もあるよ」
  • おとなしい、控えめな、引きこもり
  • 就職先は病院か検査センター
  • 検査ミス「3~4回みた」見落とせない緊張感
  • 裏方と分かって仕事をしている
  • 学会の専門認定取得でキャリアを積む
  • 生体検査は女性、検体検査は男性
  • 「機械はこのメーカー製しか入れられません」
  • 臨床検査技師の1日:「結構気に入ってる」月2~3回の泊り
  • 子が5歳まで時短OKで泊りナシ
  • 中位安定な給料
  • 給料高めな自由診療「体外受精」、保険適用へ
  • キャリア10年で基本給25万未満も
  • 検査数が適正なのか問題

PCR検査の実働部隊として

病院で行っているPCR検査は、全身に防護服をまとって隔離BOXに入って外気を遮断し、検査技師が手だけ出して、被検者の鼻に綿棒を挿して検体を採取するという、厳密なタイプだ。

「その検体から目的の遺伝子を抽出し、増幅させ、コロナウイルスの有無を調べます。主任は責任者として体制を決め、感染防止対策を考え、精神的にもかなりの負担だったようで、ため息ばかりついていました。私はたまたまメンバーから外れましたが、PCR担当になったら激務だったと思います」(中堅検査技師、以下同)

鼻に長い綿棒を挿す検体(鼻腔・咽頭拭い液)採取作業は、臨床検査技師のほか看護師も従事できるが、検体の分析工程は臨床検査技師が機械操作や顕微鏡目視で確認する。このPCR検査の開始は、受診控えによる減収を埋める経営上の必要性もあった。

「昨年(2020年)の春、1回目の緊急事態宣言後に、入院患者への面会も全面禁止となって、コロナの影響で外来患者の受診控えが起こり、検査数が何割も減ったんです。春から夏にかけては検査技師の仕事がヒマになって、半強制的に、有休消化を奨励され、順番で休むスケジュールを組みました。2021年に入ってからは、緊急事態宣言や蔓延防止措置と関係なく、完全にコロナ前に戻っています」

一時帰休(レイオフ)になると給料が減ってしまうが(6割以上支給が国の規定)、貯まっている有休を消化する程度で収まり、PCR検査を始めた結果、むしろ全体では増員され、現在は通常稼働だという。

健康診断や人間ドッグで会う人は「生体」部門

臨床検査技師は、PCR検査以外に、どのような仕事をしているのか。インタビュイーの勤める大学付属病院(病床数500~1千)には、総勢20~30人の検査技師が在籍しており、「技師長」1人が管理職として組織を率いる。

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ある私大付属病院の臨床検査技師の組織図(臨床検査科の現場組織)

組織は、大きく4つ。①生体検査(生身の人間が相手で、エコーや心電図をとって所見を書く)、②検体検査(痰・便尿・血液を機械にかけて分析し、輸血用血液を保存管理)、③病理検査(手術中や針の生検で取得した細胞を人間が顕微鏡で拡大して色付けして詳細に分析する)、④PCR検査(コロナ対応)、である。

大きく分ければ、業務内容は「生体」と「検体」に2分される。検体のなかに、機械にかける分析がメインのもの(便尿・痰・血液)と、人間が手間をかけて顕微鏡を使って個別分析作業するもの(病理検査)がある。

健康診断や人間ドッグで検査を受ける際に会う臨床検査技師は「生体」部門の人だけで、採血を担当する看護師を除くと、ほぼ「診療放射線技師」か「臨床検査技師」のいずれかだ。診療放射線技師のほうは、文字通り、放射線を扱うレントゲン・CTスキャン・マンモグラフィーを主に担当し、これらは臨床検査技師が扱ってはいけない独占業務となっている(※医師は法律上すべてをできる)。

臨床検査技師のほうは、資格としては放射線を扱わないあらゆる検査を担当でき、採血もできる。内臓や乳がん検診における超音波(エコー)検査・心電図検査・脳波検査・呼吸機能検査・眼底写真検査・血液の検体分析業務(採血は看護師が中心)が多い。MRI(磁気)検査と超音波検査は、どちらの技師でも担当できるが、「MRIは、うちの病院では放射線技師がほぼ担当しています」という。

患者から見た①生体検査(生理機能検査)と②検体検査の違いは、①が患者から見えるのに対し、②は裏側での作業なので見えない点にある。ひたすら「検体」に向き合うのが②で、患者から提出された尿・便・痰・血液を機械にかけて分析結果を取得する。検体と機械が相手だ。

③病理検査は、手術や生検(内臓などに針を刺して細胞を取得=医師業務)で得た検体を顕微鏡で拡大したり、薬液で色付けして標本化する。こちらも、人間ではなく相手は細胞となり、理科室での「生物」「化学」の実験みたいな仕事である。

英語科教員が「こういう職種もあるよ」

臨床検査技師になるための決断は、高校生の時点で行われる。ほぼ「キャリア教育」が存在せず、たまたま進路指導担当となった教師くらいしか相談する人がいない日本の中学高校において、マイナーな職業の存在を知るのは困難であり、偶然の要素が強い。

「自分の場合、きっかけは、中学校の同級生が白血病になって、学校に来ないな、と思っていたら数ヶ月後に亡くなってしまったことがあり、そこで医療系の仕事に興味を持ったのと、ちょうど得意科目が完全に理系で、特に数学や化学が好きだったんです」

理系が得意科目で医療系職種となると、医師・看護師・薬剤師がすぐに思いつく職種である。

「高校が進学校だったので、周りは普通に総合大学へ行くのが当り前でしたが、たまたま英語科の先生に相談したら、親切にいろいろ調べてくれて、こういう職種もあるよ、と教えてくれたのが、臨床検査技師でした」

この英語教師がいなかったら、臨床検査技師を目指していたかはわからない

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