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楽天モバイル、5G基地局増設で電磁波過敏症患者を追い込む

被害当事者が語る楽天のコンプライアンス

情報提供
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楽天モバイルによる基地局問題を訴えている伊藤香さん。正真正銘の「電磁波過敏症」患者で、行政より正式な障がい認定も受けている。KDDIは2016年に基地局の工事を中止したが、楽天は2022年3月、突然、2局目を増設した。

「私は、楽天モバイルが約束を破って基地局を増設したあとも、ずっと我慢していました。障害者にとって、実名をさらし、写真入りで自分の障害を世間に晒すのはとても悲しいことです。楽天は、KDDI・docomo・ソフトバンクとは明らかに障害者に対する対応が異なります」――。電磁波過敏症患者の伊藤香さん(東京都目黒区・50代)は、楽天に騙された、と感じている。自宅近くの基地局設置をめぐり、楽天側負担で電磁波シールド工事を行っていったんは被曝量を軽減したものの、2022年3月、楽天が再び同じ場所に、無断で5G基地局を増設してきたからだ。病状悪化で苦しむ伊藤さんは、MyNewsJapanに楽天モバイルのコンプライアンスを告発した。楽天側が「一切口外をしない」「異議申し立て等を一切行わない」という口止め条項まで入れて確認書を交わし、世間に隠ぺいしたかった事実とは何なのか。

Digest
  • 5Gをペンディングにしたブリュッセル
  • 2021年と2022年で80件の相談
  • 伊藤香さんが電磁波過敏症を発症するまで
  • 自宅改装工事で化学物質過敏症を発症
  • 化学物質過敏症から「電磁波過敏症」へ
  • アンケート調査の問題点
  • 基地局周辺で癌が多発のデータ
  • ドイツの疫学調査
  • KDDIと楽天モバイルの異なる対応
  • 楽天モバイルが基地局を設置
  • 焦りが引き起こした強引な対処
  • 楽天モバイルに対する質問と回答

※確認書は末尾にてPDFダウンロード可

本件について楽天側に取材を申し込むと、「個別の事案については回答を控えさせていただきます」と取材拒否をして逃げ回っている。

楽天モバイルの業績に暗雲の兆しが出ている報道はあふれ返っているが、もう1点、巨大な企業スポンサーに依存するマスメディアが報道しにくい問題が、基地局をめぐる住民の反対運動である。

一部の化学物質過敏症・電磁波過敏症患者らが、基地局が発するマイクロ波の影響で、生活に支障をきたしてしまうという、深刻な“新世代公害”だ。住民全員に影響が出るわけではない。世の中の利便性向上に対して、少数派の権利をどこまで守るか――という民主国家ならではのテーマになる。

この問題が幅広く認知され住民の権利が強まると、既に敷設済みの大手3社はともかく、後発で基地局設置を進めねばならない楽天はコスト増となり、万事休す、となる。既に十分、モバイル環境は便利だからだ。

■マスメディア既報
 2022年12月期の連結決算で同社は3700億円超の赤字を計上。基地局を増設する先行投資が赤字の原因で、ドコモ・KDDI・ソフトバンクの大手3社に、基地局数で圧倒的な差がある。5Gの基地局数だけを比較しても、2021年度データで、大手3社が6000~7000基程度の基地局を持つのに対し、楽天は4分の1の1500基ほどに満たなかった。2022年度増設分を加えても大手3社には遠く及ばない。ドコモ約42万局、KDDI約24万局、ソフトバンク約30万局に対し、楽天は2万局だ(図表参照)。楽天モバイルの三木谷会長は2023年末までに総計で6万局を達成する目標を掲げるが、実現できてもなお、大手3社との差は大きい。大手3社は3Gや4Gの基地局を5Gへ更新することができるが、楽天は新たに基地局を設置する場所を確保する必要がある。

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「WIFI比較ナビ」より

基地局の増設は、一部の化学物質過敏症患者らにとっては、電磁波過敏症を併発する可能性があり、死活問題となっている。一方の楽天モバイルも、基地局増設は、同じく死活問題だ。まさに、やるかやられるか、という仁義なき戦いとなっている。騙し討ちのようなことまでして、電磁波過敏症の障がい者を追い込むような姿勢は、楽天の「追い込まれぶり」をも表す。

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「2023年末までに6万局」が楽天の目標(楽天発表資料より)

インフラ整備の遅れに加え、楽天は基地局設置を進めるなかで、巨額の詐欺事件も発生させ、コーポレートガバナンスの課題が発覚している。これも住民対応と同様、基地局設置を急ぐあまりの歪みの1つといえる。今月(2023年3月3日)、下請け業者に水増し発注をさせて約25億円を自身に還流させていた疑いで、楽天モバイルの元物流管理部長・佐藤友紀容疑者(46)が警視庁に逮捕されたばかりである(プレスリリース)。

5Gをペンディングにしたブリュッセル

電磁波過敏症は、「化学物質過敏症」と併発することが多い。無線通信に使われる電磁波(マイクロ波)による人体への影響であり、新世代公害とも呼ばれる。

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基地局の設置工事の様子。2020年にKDDIは、埼玉県朝霞市岡にある城山公園内に基地局を設置した。土地の賃料は月額で360円程度である。KDDIも朝霞市もマイクロ波による人体影響を軽視している。

既存の広告モデルメディアは楽天含めた4社から巨額の収入を得ているためタブーにしているが、マイクロ波には遺伝子を傷つける作用があり、欧米では5G推進をペンディングしている自治体も現れた。電話会社にとっては、大打撃である。

日本でも、基地局設置をめぐるトラブルは、住民と電話会社の間で、水面下では頻発している。総務省の規制値は、欧州評議会に比べ1万倍も緩やかな、電話会社に甘い数値となっているためだ。今後、規制が厳しくなったら基地局設置は難航する(だからNTTらは総務大臣や総務省役人を接待して癒着を図っている)。

ベルギーのブリュッセルは2019年から、5Gの推進を一時的に凍結している。「市民をモルモットにできない」というのがその理由だ。参議院議員として、電波行政を担当する総務省の総務大臣政務官も経験したことがある国際政治経済学者の浜田和幸氏が、海外事例を報告している。

本年4月2日、ベルギーの首都ブリュッセルでは5Gの導入を禁止する措置が発表されたからだ。ほかの欧州諸国でも追随する動きが出始めており、イタリア政府はすでに5Gの使用を制限する裁判所の決定を告知しているほどである。実は、これらの国でも欧米諸国では5Gに対する規制を強化する動きが加速している。不思議なのは、こういった動きが日本ではまったくと言っていいほど報道されないということだ。海外では、前述のベルギーやイタリア以外の、スイスのボード市やアメリカのサンフランシスコ市でも同様の決定が相次いでなされている。
次世代通信技術5Gのもつ危険性に目をつむる日本政府

基地局周辺の住民に癌の発症率や死亡率が高いことを示す疫学調査のデータも複数でている(後段で詳述する)。

今後、こうしたニュースが日本に広がった場合、後発の楽天モバイルは、計画通りに基地局を設置できる場所が確保できず、決定的な打撃を受けかねない。

大手3社は、既に基地局を十分に設置しているので、「総務省の規制値を守って操業しているから安全だ」と強弁すれば、世論を抑え込める可能性があるが、新規参入の楽天モバイルは、基地局を設置する候補地を探す段階から、住民の反発に遭遇する可能性がある。

2021年と2022年で80件の相談

筆者は基地局問題を取材している関係で、ここ数年のあいだ情報収集を兼ねてトラブルに巻き込まれた住民の相談に乗ってきた。2020年秋ごろから急激に相談件数が増え始め、2021年と2022年で80件ほどの相談に乗った。そのうち大手3社に対する苦情は少なく、楽天モバイルの基地局設置をめぐる相談が9割以上を占めた。

その大半のケースで楽天モバイルは基地局設置を断念した。住民の反対を押し切って強引に基地局を設置した場合、「基地局問題」の火種が日本中に拡散することを、楽天モバイルが恐れている事情があるのではないか――というのが、わたしの推測である。

仮に日本全国にある100万を超える基地局の周辺で基地局の撤去を求める声が広がれば、業界全体が大きなダメージを受ける。株主総会で電磁波の安全性についての質問が出されると、国際機関や総務省の見解を説明することでかわしてきたが、新しい知見が加われば、変わりかねない。

伊藤香さんが電磁波過敏症を発症するまで

以下、本題に入る。現在進行形の、動かぬ証拠ともいえる被害例がある。

東京都目黒区本町に住む伊藤香さんは、2020年11年から、楽天モバイルとの間で、基地局設置をめぐる係争に巻き込まれている。

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(上)日野厚生クリニックの坂部真医師による診断書。(下)聖マリアンナ医科大学病院の宮本康裕医師による診断書。

伊藤香さんは、俗にいう「電磁波過敏症」の典型的な患者のひとりだ。「典型的」と書いたのは、「電磁波過敏症」患者の中には、心因性の症状ではないかと思われる人も、かなり多く含まれているからだ。

伊藤さんが「心因性」ではなく、客観的な「電磁波過敏症」患者と断言できる根拠は、病気を発症するまでのプロセスが、絵に描いたように明確にわかっているからだ。伊藤さんは、事故により、大量の有害な化学物質を体内に取り込み、最初に化学物質過敏症を、その次に、「電磁波過敏症」を併発した。複数の医師の診断書もある(右記)。

自宅改装工事で化学物質過敏症を発症

 発端は、2012年10月19日のことだった。

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楽天モバイルと伊藤さんの間で交わされた確認合意書。外部への口外は禁じているが、伊藤さんは「楽天が約束を守らなかった」として公開に踏み切った。楽天が、報道されることを、どれだけ恐れているか、がわかる。

(上)最初に設置された基地局。2021年11月8日に撮影。(下)基地局が増設された後。2022年3月30日に撮影

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