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中高年の闇バイト 9時間の取り調べにあった痛恨の体験記

SIMカード5枚契約、警察に届けたら「詐欺罪で自首になります」

情報提供
ソネとの最初のやり取り
生活に困った田中氏は、ネットでみつけたバイトに応募。当事者との最初のやりとり。

今年になってから、闇バイトがクローズアップされている。とくに3月にフィリピンで逮捕された“ルフィ強盗団”で注目が集まった。かつてはオレオレ詐欺など、いわゆる特殊詐欺が主流だったが、最近は強盗殺人にまでエスカレート。5月8日にも、東京銀座で往来の多い夕方に高級時計店で強盗事件が起き、その日のうちに4人が逮捕された。マスコミで報道されるのは、主に若い人たちがバイト感覚で犯罪に加担するケースだが、中高年も要注意だ。直前までコールセンターで派遣労働をしていた田中誠氏(当時60歳)は、体調を崩して失職。その後、派遣の仕事を探していたが職を得られず、『ジモティー』(東証グロース上場)で見つけた「携帯電話の販促を手伝ってほしい」という日給2万円(実労2時間半)のバイトに応募した。そのアルバイトとは・・・。

Digest
  • フリーランス風の中高年闇バイト被害者
  • 「携帯会社の代理店のノルマを手伝ってほしい」
  • 携帯電話のシムを5枚つくり他社に乗換え
  • ソネのアカウントが停止に
  • 出頭し9時間の取調べ 詐欺罪の「自首扱い」に
  • 特殊詐欺か転売ヤーかキックバック目的か…

フリーランス風の中高年闇バイト被害者

旧知の元編集者・田中誠氏(仮名)は、革ジャンにバンダナ姿で待ち合わせの駅改札に現れた。もう60歳になっているはずである。

バイトをめぐりトラブルに巻き込まれているというメールを受けて、急遽会うことにしたのだ。さっそく、カフェとも居酒屋ともいえぬ飲食店に入り、話を聞いた。

編集者時代の彼は、バリバリと仕事をこなすタイプだったが、躁うつ病を患い、それ以降は体調に合わせながらいくつもの職をこなしてきた。

店員が飲み物と料理を運んでくる間に、田中氏はバックの中から透明な書類ケースと厚めのファイルを取り出した。今回の闇バイトに関する資料である。

一連の経緯を時系列に整理した説明書、闇バイトを知ったきっかけ、直接仕事をもらった相手とのやりとりなど、きちんと証拠書類が準備されている。まるで民事裁判の主張書面と、それを裏付ける証拠類を添付したかのようだ。

編集者として活躍していた往年の姿を彷彿とさせる。きちんとして仕事をこなし真面目過ぎることも、うつ病になった遠因かもしれない。

――不審なバイトに関わる直前の様子を話してください。

「もともと長年にわたって躁うつ病による体調不良をおこしていました。躁うつ病を患ったことで十分に仕事をできず、生活費のためにクレジットカードを使い、月末の支払いがどんどん増えていったことがあります。

一時期は老人介護施設で働いていました。月に20万円ほどの給料のうち、5万円を借金の支払いに充てていました。

しかし、過労で倒れてしまい、2021年末から1月いっぱい寝込んでしまったんです。そのため、家賃支払いが遅れるなど生活費に困るようになってしまいました。

寝込んでいるときも、督促状がどんどん来ます。そうなると、支払いをどうしようとパニック状態になり、頭の中は『カネ、カネ、カネ・・・』と思考停止状態になってしまいました。

もう自己破産するしかないな、と『法テラス』という無料法律相談に行って弁護士に相談しました。案の定、自己破産しかないということで自己破産し、借金がなくなってほっとはしたのです。

いま思い返せば、連日督促状が届いたころの心情に似た状況で今度のことが起きてしまいました。

なんとか生活を立て直そうと派遣会社に登録し、2022年2月からはコロナ関係のコールセンターで働き始めました。

職場に行って若い人たちに聞くと、コロナで失業した人たちの受け皿としてコロナ関連のコールセンターがあるんだなあと実感しました。

でも、心療内科の医師からは、週四日にとどめて慣れるまではフルタイムで働かないようにとアドバイスを受けていました。

ソネとのLINE
最初はサイトに作ったメールでアルバイトの依頼者とやり取りし、その後は電話、次いでLINEで連絡するようになった。

こうして勤めたコールセンターも、2月末日に派遣先の都合で契約切れとなり、すぐに別のコールセンターで働き始めました。が、体調不良で再び寝込んでしまったのです。

それでも何とか体調が回復して、4月25日から新たなコールセンターで働きはじめたものの、現場は人間関係も含めあまりにも理不尽だったので派遣会社に相談し、翌26日に辞めました」

同じ派遣会社で、職場を紹介してもらってはいたようである。ただ、最後に辞めたのはゴールデンウイーク前だったため、紹介できる派遣先がないと言われたという。

「私が登録していたのはとても良心的な派遣会社だっただけに、これ以上は迷惑をかけられないと思い、自分で仕事を探し始めました。

何度かは日雇い派遣で肉体労働もしましたけどね」

「携帯会社の代理店のノルマを手伝ってほしい」

そんなときに見つけたのが、2022年4月29日、『ジモティ―』というサイトで見つけたアルバイトだった。

「『ソネ』というアカウント名の『急遽 日払い1・5万~2万 実働時間2・5時間』という』アルバイトを見つけたんです」

アルバイトとしてはかなりいい条件で、かといって異常に高額すぎることもなく微妙な日当である。そこで田中氏は、この『ジモティ―』というサイトの専用アドレスをつくり、そこからソネに問い合わせてみた。

≪●●区に住んでいる田中と申します。そちらのお仕事をしたいと思っています。本日分はもう埋まりましたでしょうか? それと、具体的にどのようなことをすればいいのか少し分かりづらいので宜しければ教えていただけますでしょうか? 明日以降もお仕事があるようでしたらお願いしたいと思っています≫

これに対し、ソネからはこう回答があった。

≪お電話にて説明させていただいております。お時間ありますでしょうか?≫

そこで携帯電話で先方と話したところ、別の人からこのアルバイトについて問い合わせがあった際、「飛ばし」の携帯に使われるのではないかとけんか腰に言われ、その人には「正規の手続きを踏む仕事内容で、その方には依頼しなかった」とソネは話したという。

この場合の「飛ばし」とは、他人や架空の名義で契約された携帯電話。特殊詐欺や闇金融などの違法行為に悪用される恐れがある。

――その時点では、とくに怪しいと思わなかったのですか。

「『携帯会社の代理店がノルマを課せられているため、それを手伝ってほしい』ということでした。私は単純に、菅前総理が進めた携帯会社の規制緩和のために競争が激化し、ノルマが厳しくなっているのだろうなと思いました。

実は、私自身過去にノルマ営業をしたこともあって、ノルマ達成の大変さは分かっているので引き受けることにしました。

やり取りしたときにソネは23歳だと言っていました。コールセンターで働いていたときに若い人たちと話したら、コロナでアルバイトを失ったり、失業した人が多く、中には学費を払えず大学を辞めざるを得なかった人までいたんです。

私が若かったころと今の若い人たちは本当に大変なんだなと思いましたし、23歳のソネもそういう若者のひとりなんだろうと思いましたね」

携帯電話のシムを5枚つくり他社に乗換え

サカモトLINE
前日に都内のショップで楽天モバイルでシムを五枚契約し、翌日は千葉県まで足をのばし楽天モバイルからdocomoに乗り換えた。この契約をしたあとのやり取り。

「具体的な仕事内容は、都内の楽天モバイル店でシム(SIM)カードを5枚つくってくれ、ということでした。

わりと近所の店だったので、その日のうちに指定された店舗に行き、シムカードを5枚つくりました。契約が終わりすぐにソネに電話すると、『明日千葉県のA駅に行って、サカモトという人物と合流してほしいと指示されました。

翌日の4月30日、待ち合わせの千葉県内の駅に行って、教えられた携帯番号に電話するとサカモトが出て、駅前の大型スーパーのフードコーナーで落ち合いました。

これからドコモショップに行くから、隣にいて契約のときにサインなどをしてくれればいいと言われ、ドコモショップに連れていかれました。

店につくと、サカモトは二人の店員とずいぶん親しそうでした。ここで、私が前日に契約した楽天モバイルからドコモのiPhoneに乗り換える手続きがされたんです。

そのときにサカモトが4枚のモノクロコピーの免許証をショップ定員に渡したのですが、あれ、おかしいな? と思ったんです。

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携帯ショップでのアルバイト依頼者の異様に手慣れた様子などを見て不安になった田中氏は、帰宅して再度アルバイトを見つけたサイトを閲覧。すると、依頼者のアカウントが停止されていた。不安になった彼はユーザーサポートに連絡した。

携帯電話の名義貸しなどに巻き込まれる消費者があとを絶たないようだ。

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