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3.勤務先の思想性・宗教性を受け入れられる ♯【組織カルチャーが自分にフィットしている】

❐人間関係 ―生活軸『いい会社はどこにある?』

情報提供
サムネ生活の最後
第2章生活軸の構成(本稿は単行本『いい会社はどこにある?』の元原稿 《一部アップデート完全版》です)

「うちはカルチャーフィットを重視してるから、なかなか決まらないと思うんですよね」――。社長人事の件だ。ずっと注目していた、お気に入りの英国の冷蔵ジュースブランド『イノセント』が日本市場に参入して1年半が経った2021年1月、中軸社員を3人ほど取材した。前月に社長が退任し、トップが空席のまま戦略の立て直しを進めているところだった。

Digest
  • 企業なのに利益の1割を寄付
  • 「共通のモノサシ」がある会社か
  • 一言一句覚えさせるユニクロ
  • 永守イズムという宗教性
  • 京セラフィロソフィー
  • レジリエンス教育の三菱電機
  • 営業科学思想のキーエンス
  • 根底にある日本文化・教育
  • 入社後のギャップがないように

企業なのに利益の1割を寄付

イノセント※は「おいしくて、いいこと」をキャッチフレーズに、利益の1割をチャリティーに寄付すると公言している社会派の企業で、欧州のチルド(冷蔵)ジュース&スムージー市場でナンバーワンのシェアを持っている。ファン(ドリンカー)と1:1のコミュニケーションを重視し、イベントものに力を入れる。「エコ」に強烈なポリシーを持つ米国のサーフブランド『パタゴニア』を柔らかくしたイメージだ。日本は“サステナビリティ後進国”なので、こうした理念や思想を持ったブランドが、なかなか定着しない。

欧州と日本で「真逆」なジュース市場=日本市場に流通するフルーツジュースの95%超は「濃縮還元」。いったん高温で水分を飛ばしてペースト状にし、冷凍保存のうえ海外から輸送し、製造工場で、カルピスのように水で薄めてジュースに戻してパッケージングする。加熱圧縮の過程で栄養素は破壊され、味も香りも逃げて、まずくなる。不健康で人工的で水っぽくてまずいが、価格は安く日持ちする“工業製品”である。英国では逆にこの濃縮還元モノは約10%に過ぎず、日本と欧州では、真逆である。
おいしいジュース見分け方マップ(→チルド↔常温、ストレート↔濃縮還元』参照)

「イノセントは、単なる果汁商品という以上の、面白いブランドです。自然のなかでのキャンプを企画したり、音楽のバンドのイベントをやったり、自分らしく毎日を楽しもうという、ライフスタイル提案型なんです」。そう説明してくれたのは、P&G出身で、イノセントの日本市場立ち上げに参画したマーケターの女性社員であった。

そんなエッジの効いたブランドを日本で率いることができる人物など、いるのだろうか――と思っていたら、決まらないまま9カ月が過ぎた2021年秋、日本市場からスパっと撤退してしまった。市場(買う人)もいなければ、人材もいない、いいものが少し高いだけで売れない“不毛の地”として見捨てられた格好で、ニッポン終わってるな、と思った次第である。※

昨今では「パーパス」(存在目的)などと言うらしいが、21世紀に入ってから社会起業家が継続的に注目を浴びているのは、単なるカネ儲けだけでは夢がない、何のために生きているか分からない、食べていくだけなら難しくない、豊かな社会になった証である。本当に貧しい国は、それどころじゃないからだ。第一章の「やりがい」につながる問題でもある。

利益の1割を寄付するのなら、社員の給料にすればいいじゃないか――と思うのが、途上国の発想。だが、そういう会社の商品だからこそファンがついて売れて、利益が出るのである。この思いを共有できない社員なら、企業としても要らない。そういう社員、そういう社長を探すのはそれなりに難しい。

「共通のモノサシ」がある会社か

組織として何のバックボーンもない会社なら、ただのフリーランス集団にすぎないし、付加価値も生み出せない。だから、その会社のコア(核)が何なのかを見極め、そこを好きになれるか、少なくとも許容できるかは、入社前に明確にしておかないと、そもそも採用されないし、仮に入社できても不幸になるだけだ。

一言でいうと「御社の宗教は何ですか?」の言い換え、である。宗教というのは、それを信じてさえいれば死後の世界まで幸せになれるという、人類有史以来の普遍の概念であり、誰しもが、心の奥底に宗教性を持っている。それがあるから仕事を頑張れるのである。

ディズニーランド&シーを運営するオリエンタルランドでいえば、この宗教にあたるものは、「SCSE」である

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