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航空自衛隊パイロット職「ねらい目だと思います」――45倍超の難関だった一般幹部候補生、直近10年で10倍未満に急低下

情報提供
さしかえ2
任務で訪れた先で空自の仲間たちと撮影した1枚(インタビュイー提供)

パイロット職はドリームジョブ(夢の仕事)の定番で「〇〇(職業名)になる方法」で検索されたボリュームは世界一多く、日本含む55か国で1位(Jobseeker調べ)。ボーイングによると、世界の航空需要増により、今後20年で66万人の新規パイロット供給が必要(うち3分の2が退職者補充)でニーズも高い。いわば〝食える人気職種〟の代表である。なかでもコスパがよく入口のハードルも急低下しているのが、公務員給与を貰いながら操縦士免許をとれる航空自衛官である。「一般幹部候補生コースは、ねらい目です。筆記の難易度は、一般職レベルの国家公務員試験くらい」と語る30代パイロット職に、現場の実態を聞いた。

Digest
  • 入りやすくてコスパもよい
  • 幹部候補生枠の競争率が10年で45倍→10倍に低下
  • 最初の1年、奈良で1~2割が脱落
  • 山口(防府北基地)→静岡(浜松基地)→『ウイングマーク』取得
  • 「操縦すること」自体がやりがい

入りやすくてコスパもよい

リーマンショックやコロナショックのような一時的な落ち込みはあるものの、中長期では世界中で航空旅客数が増え、パイロット職のニーズも増えると見込まれている。安全上の理由から、無人の自動運転化は不可能と考えられているためだ。

パイロットになろうと思った理由
パイロットになろうと思った理由①「空へのあこがれ」②「かっこいい」「飛行機に興味があった」(令和6年入隊時意識調査より)

日本でパイロット職に就くには、自費で数千万円の高い学費をかけて専門の学校を卒業後に民間航空会社に就職するパターン(①国が運営する航空大学校、または②私立大のパイロット養成コース)と、逆に給料を貰いながら操縦士資格を得るパターン(③JAL・ANA等の民間企業による自社養成コース、または④自衛隊)の、大きく2種4ルートがある。

大学生の約半数が奨学金(学生ローン)で大学に通うご時世だけに、後者が望ましいのは言うまでもない。圧倒的にコスパがよいのは、第一に、大手航空会社の自社養成コース(③)で、給料を貰いながら飛行訓練を受けられてパイロットになれるうえ、会社が傾かなければ平均年収2千万円という破格のおいしいキャリアがある。

ただ、あまりにコスパがよすぎるため、民間航空会社の自社養成コースの入口は選考が超難関で、倍率100倍超が当り前の狭き門となっている。

その次にコスパがよいのが、同じく給料を貰いながら操縦士となって空を飛べる自衛隊(④)。身分が公務員とあって雇用が万全で、民間大手のように平均年収2千万円とはいかないが、パイロット職に限っては、公務員のなかで特に高く、景気の浮き沈みに全く影響されない。たとえばJALが倒産した2010年にはパイロット職370人の希望退職が募集され、最終的に整理解雇も断行、ボーナスも激減した。

その割に、航空自衛隊の一般幹部候補生の入口はそれほど厳しくない。「自分は、特に予備校に通って対策することもなく、独学だけで受かりました。旧帝大や早慶の文系出身者が多い印象はありますが、(防大以外の一般幹部候補採用では)大学や学閥による有利不利もないです」(30代パイロット、以下同)

1次の筆記試験内容
一次筆記試験内容

試験内容が、一次で筆記(択一・記述)、二次で小論・口述・身体検査、三次で操縦適性検査・医学適性検査なので、学歴フィルターがかかる余地はない。キャリア官僚の採用における「官庁訪問」(面接)の類はなく、基準をクリアすれば任官(入隊)となる。

自衛隊で操縦士資格を得てフライト経験を積んでから民間航空会社のパイロットに転じるケースも、表面化させない配慮(※税金でパイロットが育成されるため)はあるものの、存在するという。つまり、入りやすい上にコスパがよい。自衛隊パイロットが「ねらい目」というのは、そういう意味だ。

幹部候補生枠の競争率が10年で45倍→10倍に低下

自衛官の倍率
2024年度の応募者、採用数、倍率。ついに10倍を切った。

航空自衛隊のパイロットになるには、①高卒18歳から自衛官の身分で操縦士訓練を受ける「航空学生」ルート、②「防衛大」卒業からの内部進学的なルート、③その他外部の大学卒業から入る「一般幹部候補生」ルート、の3つがある。

航空学生(①)は、67人(2024年度)採用。防大(②)組は、約100人。2024年度の防大卒363人のうち40人が自衛官への任官を辞退したが、残りが陸海空に分かれて任官している。

空自幹部候補の採用倍率推移
空自一般幹部候補生の採用倍率推移。10年で5倍近く入りやすくなった。

一般幹部候補生(③)の合格倍率(空)は右記のとおりで、10倍を割った。10年前までは45倍前後の高い倍率が当り前の、狭き門だった。

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全体に占める一般幹部候補生採用の位置づけ(人計ハンドブック令和5年版、令和7年度版より作成)

パイロット特有の身体検査項目。裸眼0.1以上、気管支喘息やアトピー性皮膚炎がないこと、など多岐にわたる。→2025年度採用要項

航空自衛隊パイロットになるまで(公式)

奈良市にある航空自衛隊幹部候補生学校。入隊後1年間、この古墳に隣接した地で宿舎に泊り込み、基礎訓練を受ける。

航空支援集団(邦人救助、災害支援など、非戦闘系の任務を持つ飛行部隊)の現場組織

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