三菱UFJ銀行〝マンハッタン計画〟の崩壊 アルムナイ出戻り推奨&『定年まで働ける』アピールへ
|
| 取材は元行員がボランティアで経営支援する居酒屋にて実施 |
支店課長、本部調査役を経て転職に踏み切った元行員(40代)。転職先の外資コンサルでは現在、年収約1600万円でプロマネを務めつつ、プライベートではボランティアでプロ野球の元ドラ1を3人集めて子ども向け野球教室を開くなど充実した日々を送る。「辞める時の面談では、『アルムナイ(卒業生)として戻ることもできるから』と言われました。これは原則として、転職する人たち皆に案内していると思います。出戻り採用を強化しているのは事実で、同年代で最近話題になったのは、東大法学部卒の頭取候補だったエースが数年前にベンチャーに転職してしまって、半年ほど前に出戻った件があります」(元行員)
- Digest
-
- 頭取候補が辞めてAIスタートアップへ
- 崩れる「銀行エリート」幻想
- 「なんとなく出世コース」が通用しなくなっている
- 広がる選択肢、官僚と似た不人気化の構造
- 出世レースのタイムスケジュール
- 職務給でポストにPGがつく
- 人気のない現場(支店)に給料を大きく張る傾向
- 〝たそがれ研修〟で知る「短い行員人生」
- 「不透明にして期待を抱かせる仕組み」の行き詰まり
- 早慶が「滑り止め」でウチの入社試験を受ける
- 商社・コンサルと比べた中途半端さ
- 退職者復帰、定年延長、50代以降の賃金引上げ…
頭取候補が辞めてAIスタートアップへ
出世レースの先頭を走るエースがやめてしまう事態は、組織にとって深刻なサインだ。それも、かつての興銀・三木谷氏のような、どうしても起業してやり遂げたいことがある、というわけでもなく、出戻っている。どのような人材流出パターンだったのか。
「本部の法人企画からシンガポールに赴任して、上席調査役(S層)にトップ昇進した、木坂高士さんです。転職先は、東大卒の経営陣たちが作ったAIスタートアップの、ニューラルグループでした」(元行員)
|
2025年5月時点の経営陣一覧。ニューラルグループは、東大の松尾豊教授が技術顧問に名を連ねるAIベンチャー。![]() |
同社は2020年に創業2年で東証マザーズに上場したベンチャーで、画像認識や生成AIを活用したソリューション開発という、いま流行りのAI企業である。その「執行役員CFO(最高財務責任者)財務管理本部 本部長」という堂々たる肩書で転職したが(右記)、三菱銀に出戻ったことで、現在は役員一覧からひっそり消えている。
前回述べたとおり(→1本目)、三菱UFJ銀の人事処遇は、KGB式の個別プロフィール蓄積管理による、中央集権的な人事評価システムに本質的な特徴がある。成果だけでなく、組織への忠誠心など人物評価が、出世において重視される。
これまでの人事運用であれば、組織を一度裏切った形で転職した木坂氏が出世レースに残るのは難しく、そもそも戻れなかった。だが、そうも言っていられないほど、メガバンクを取り巻く人材採用の環境は激変している、ということだ。
崩れる「銀行エリート」幻想
頑張っても、行内の出世競争が厳しく、評価指標も不透明で、報われる確率が高くないのが、メガバンクの労働環境である。しかも、勝ち抜いた場合であっても報われるタイムスケジュールが遅く、せいぜい50歳前後の5年間程度。
|
三菱UFJ銀の出世分布図『神奈川沖浪裏モデル』。52歳で役職定年だが、2027年から変わろうとしている。![]() |
その年収水準も、それまでの人生を賭けた貢献に比して、たいした水準ではない。現役行員によれば、同期で上位1%相当の「爆勝ち組」にあたる常務執行役員でも、年収およそ6千万円に株式報酬がつく程度だという。
であれば、世のなかにインパクトを与えるAIベンチャーに転職し、若くして億の報酬を目指す道に惹かれる気持ちは、よくわかる。
外資コンサルに転職した元行員にしても、なぜ20年もかけて手塩にかけて育てあげ、けっして落ちこぼれているわけでもなく、十分に上位パフォーマンスをあげている人物が、辞めざるを得ない環境に追い込まれるのか。
みすみす外資に奪われるのは、人材に投資したコストに比して、実にもったいない。メガバンクのモチベーション管理の仕組みは、時代遅れになっているのではないか。
「なんとなく出世コース」が通用しなくなっている
現役行員が解説する。
「私は三菱銀の人材管理が、原爆の開発過程であった『マンハッタン計画』に似ている、と感じています。つまり、最終的な目的が巧妙に隠されていて、よくわからない。それぞれの役割を細分化して、全体像をつかませないのです。その結果、『なんとなく出世コースに乗っている』状態を多くの行員たちに持続させ、
この先は会員限定です。
会員の方は下記よりログインいただくとお読みいただけます。
ログインすると画像が拡大可能です。
- ・本文文字数:残り8,894字/全文10,461字

三菱UFJ銀行の物理拠点数推移

Twitterコメント
はてなブックマークコメント
facebookコメント
読者コメント
※. コメントは会員ユーザのみ受け付けております。記者からの追加情報
本企画趣旨に賛同いただき、取材協力いただけるかたは、こちらよりご連絡下さい(永久会員ID進呈)
新着記事のEメールお知らせはこちらよりご登録ください。