ルネサス元社員が語る実質指名解雇の実態 「退職パッケージは年収の半分だけ、残れば追い出し部屋で3段階降格です」
|
| 国立大院卒で三菱電機に入社、勤続27年余りで昨年ルネサス退職に追い込まれた元社員(50代前半)が、若い世代のために、悲痛な〝ステルス・リストラ〟経験を伝える。 |
日立・三菱・NECの半導体部門統合で誕生し、実質国有化の末にリストラ&復活したルネサス。近年も設備増強の助成金を国から貰ったり外国人労働者を受け入れたりする立場上、表向きは手荒なレイオフができない。「現場では〝追い出し部屋〟を使った陰湿な闇解雇が横行しています。黒字の上場企業なんだから、以前のルネサスや昨今のパナのように、シニア層なら40ヶ月分以上の割増で公式に希望退職を募るとか、ちゃんと払うべきものは潔く払え、情報開示しろ、働く人たちのプライドを傷つけるな、と言いたい」――。昨年、新卒から27年余り勤務した同社を、年収の半分程度という悪条件のパッケージで退職に追い込まれた元社員が実態を語った。
- Digest
-
- プロジェクト終了、組織が解散
- 1週間以内の決断を迫る
- 退職勧奨に応じない技術者は追い出し部屋へ
- 数十社落ちから正社員内定した50代の転職活動
- 時系列経緯詳細
- 入社からの職歴
- マイコンが社内ヒエラルキーは上
私は実質的な指名解雇に遭い、院卒で三菱電機に入社してから27年5ヶ月勤めたルネサスエレクトロニクスを昨年8月末で非円満退社した、元半導体技術者(50代前半)です。「路傍の石」のごとく、ぞんざいな扱いを受け、会社にはぜんぜん感謝していないどころか違法行為だと思っていますので、歴史に事実関係を刻んでおきたいと思います。
|
退職金明細![]() |
左記が、セベランス、つまり切り離しにともなう割増退職金と通常退職金の明細、いわば手切れ金になります。
企業年金(3階部分)のほうは下記計算書のとおりで、退職時に一時金として受け取るか老後に分割で受け取るかの選択式。私は60歳以降にすべて受け取ることにしたので、辞める際に退職金として振り込まれた金額は、割増退職金を含む総額(※明細には賞与163万円も含む)で、この左記明細だけ。
|
年金計算書(ルネサス企業年金基金)![]() |
この明細以外では、iDeCo(イデコ・個人型確定拠出年金)口座に372万円が入っていました。ルネサスはDC(確定拠出)とDB(確定給付)が半々の設計になっていて、私のグレードでは1万8千円分ずつが毎月、拠出されて積み立てられます。そのDC分がiDeCoに移管され計372万円、ということです。
かつてなら割り増し分の退職金だけで1500万円以上ありました(→リストラ退職者が語る「ターゲットにされたバブル世代」)。
会社として、とても公表できないような悪条件で退職勧奨して辞表を書かせるやり方は、まったく納得できないもので、違法性が高いと感じています。これからルネサスへの入社を考えている若い人たちには、こういう体質を持った会社だ、と知っておいていただきたいのです。
以下、経緯を詳しく説明します。
プロジェクト終了、組織が解散
昨年4月下旬のGW(ゴールデンウィーク)前、突然、直属のライン課長から呼び出されました。「後輩に厳しい指導をしていたので、パワハラで怒られるのかな?」などと思って行ったら、「パワー半導体事業のリストラ対象に、あなたの業務が選ばれている」「人事部から、退職勧奨の話がきている」「社内公募への応募を検討せよ」というのです。
GWは不安な気持ちで過ごしました。確かに年初に報道(日経が1月7日電子版でスクープ、ロイターが後追い)があって、グローバルで5%未満の削減という話は出ていました。連結で約2万1千人の会社だから、また1千人も減らすのかーーとは思っていましたが、職場でも話題になっておらず、自分はプロジェクトに入っているし関係ないだろう、と思っていました。
あとで調べたら、TSR(東京商工リサーチ)が日経の6日後、削減手段は「退職勧奨」としっかり報道していました。
2025年に入るとルネサスエレクトロニクスが国内外の社員約2万1,000人のうち、5%未満にあたる人員削減を行うことが明らかになった。同社は東京商工リサーチ(TSR)の取材に対し、「特定のポジションごとに人員削減の退職勧奨を実施する」と応じた。(TSRデータインサイト、2025年1月13日)
ちょうど4月に、事業の一部撤退により、所属していた開発プロジェクトが終了。品種は『Contactor Driver』で、EV(電気自動車)などで使われるバッテリー用のリレイスイッチを駆動させる半導体のことです。組織は解散となって、次の配属は決まっていませんでした。
自分は、自動車向けパワー半導体の「バリデーションエンジニア」職で、まさにその『パワー30%カット』の大号令が社内で出ていました。背景はEV不振で、「パワー半導体、日米欧で投資抑制 EV不振でルネサスなど」(2025年3月24日)のとおり、工場稼働率が4割から3割に引き下げられ、開発の人材も余剰に。つまり、EV需要の見通しを誤った経営の失策が原因で、カットされることになったわけです。
GW明け、社内公募案件に応募しました。他部署にスキルをアピールして、社内転職活動をするのです。人事部のほうは、人事主導の社内マッチングで異動先を探したそうですが、「不成立だった」との連絡がありました。
1週間以内の決断を迫る
|
セベランス=退職優遇措置の内容(定年前社員向け)![]() |
退職勧奨が始まったのは6月17日から。部長級の上司との面談でセベランス(退職優遇措置)が提示され(右記)、月末までに応募するか決めよ、退職日は8月末だ、と一方的に示されました。
条件面を文書で残さない点がこの〝闇解雇〟の汚い手口なのですが、賞与は退職する8月末まで(つまり12分の8)を100%成果達成とみなして支払う、そして口頭による説明で、割増退職金は「基本給の12ヶ月分」と通告されました。
|
ルネサス社員のボリュームゾーン「技師D」(係長クラス)の給与明細。組合員の一番上のランク(国立大・院卒、入社27年目の技術者)。![]() |
12ヶ月分と1年分は、実は倍くらい違います。当時の私の給料(月収)は右記の通りで、基本給とは別に出ている裁量勤務手当が定額で月およそ8万5千円分あり、これはセベランスの1ヶ月分には含まれませんし、ボーナス分ももちろん含まれません。
つい3ヶ月前に付与されたばかりのLTI(売却制限つき株式、200株✕3年=およそ180万円相当、Long Term Insentive)も、3年後まで在籍していることが条件ですから、満額受け取れません。9割がた放棄となります。
つまり、会社を辞める損失は甚大です。
|
2023年、2024年の年収(課税証明書)![]() |
実際の前年までの年収実績(左記)と比べたら、年収の半額程度にしかならないのです。
せいぜい半年間分の生活ができる程度でしかありませんが、特別に金銭をやるから辞表を書いて辞めろーーということです。
巨額の黒字が出ているなか(直前2024年12月期で最終利益2190億円)、2025年のEV市場は雲行きが怪しくなり、需要見通しを誤った経営判断失敗の尻拭いをする形でリストラに協力して27年も勤めた会社を辞めるというのに、柴田CEOがリストラで株価を維持して巨額の年収を得る(26億7900万円=2025年12月期)一方で、リストラされる側の退職条件はわずか年収半年分では、あまりに納得できないーーと思いました。
2011年に希望退職を募った際は、50歳前後で40ヶ月分だったじゃないか、と事実を伝えましたが、「Japanで決めたことだから」「日本国内は全員一律で勤続年数や年齢にかかわらず12ヶ月分」「交渉の余地はありません」と、面談で言われました。ロジックは存在せず、決まったことだから、と押し付けるのみ。
「12という数字は悪くはない。いい条件だと思っています。我々としても」。HRシニアマネージャー・秦氏からは、退職勧奨の面談で、そう言われました。これには驚き、呆れました。いったい何と比べて「いい条件」と言っているのでしょうか。
『あなたの能力に対して』というならば明らかな侮辱発言ですし、同規模の国内他社と比べてというなら、人事部員としてあまりに無知・無能すぎです。〝闇解雇〟ではなく、上場企業が経営に失敗して希望退職を募集する場合、15年前のルネサスも、昨今のパナソニックも、アラフィフが希望退職に応じる際に大手メーカーが提示する相場は40ヶ月分以上ですから。
12ヶ月分というのは、むしろ外資が入社2年目のルーキー社員を削減する際の条件に近い。AWSが2023年に日本で入社1年以内の社員を対象に指名解雇(レイオフ)断行した際は「計10ヶ月分」だったが、ここでいう1ヶ月分は、基本給が低いルネサスよりも多いので、実際には同等である(→AWS、新卒2年目もレイオフ断行に「それはねーよ」)。新卒2年目と勤続27年のベテランが同等では、「いい条件」どころか、外資未満の悪条件というほかない。
その後、社内公募も不成立となり、3回の面談を経て退職に追い込まれました。そもそも全社で5%カットを進めているタイミングでは、採ってくれるわけがないのです。
6月23日に社内公募で落ちたことがわかり、『セベランスパッケージで辞めるなら30日までに退職願を出せ』と言われ、その間、1週間しかありません。外部の専門家と相談する時間がなく、考える時間も、ありませんでした。
退職勧奨に応じない技術者は追い出し部屋へ
形式上、こちらが退職願を出してセベランスパッケージを受け取る条件で自己応募して辞める形ですが、実質的には指名解雇ですから、違法性が高いと思っています。なぜ指名解雇といえるのかというと、辞めなかったら次にどうなるか、先輩社員や周囲の人たちを見て、わかっているからです。
当時、同じ境遇にあった人、ついこの前まで一緒に仕事していた50代の半導体技術者が、退職勧奨に応じず残ったら、『SSC』(シェアードサービスセンター)という追い出し部屋のような部署に異動になって、宅急便の仕事をさせられていました。SSCは、配送室にモノを送り届けたり、入館カードの発行作業をやったり、完全にこれまでのキャリアとは関係のない、庶務のような作業を担っている部署です。
これは、見せしめだと思います。半導体設計者としてキャリアを積み重ねてきた50代の元技術者が、新入社員たちの入社式で椅子を並べる仕事をさせられたりしているわけですから。プライドを持って半導体開発の仕事をしてきた技術者にとっては、名誉を傷つけられる嫌がらせ、パワハラ(過小な要求)だと思います。
|
ルネサスのキャリアパスと報酬水準![]() |
給料も、大幅に下げられます。このSSCに異動になって、給与グレードが3段階落とされた人を、身近なところで2人知っています。年収で、約200万円下がるそうです。
具体的には、技師D→技師Aに降格になる(右記参照)、ということです。
これを見せられていましたから、『この機会を逃すと追い出し部屋だな、12ヶ月分でもいいから、貰って逃げないと終わる』と危機感を持ちました。つまり、選択肢は「退職勧奨に応じる」以外に、存在しないのです。ルネサスは組織ぐるみでこれをやっているのですから、実に悪質だと思います。
数十社落ちから正社員内定した50代の転職活動
私は、プライドは高いので、追い出し部屋に異動になるくらいなら転職しよう、と決めました。それで7月に転職活動を始めました。やってみてわかったのは、
この先は会員限定です。
会員の方は下記よりログインいただくとお読みいただけます。
ログインすると画像が拡大可能です。
- ・本文文字数:残り4,631字/全文8,938字

人員削減を通告する柴田CEOの従業員向けメール

3月12日の『MessagefromToshi』(柴田社長メール)

プロジェクト図(現場組織)

退職勧奨の面談を繰り返したシニアプリンシプル高木氏&HRシニアマネージャー秦氏

Twitterコメント
はてなブックマークコメント
facebookコメント
読者コメント
※. コメントは会員ユーザのみ受け付けております。記者からの追加情報
本企画趣旨に賛同いただき、取材協力いただけるかたは、こちらよりご連絡下さい(永久会員ID進呈)
新着記事のEメールお知らせはこちらよりご登録ください。