読売の不正経理 販売店への補助金は事実上ゼロ、「押し紙」で丸儲けのカラクリ
東京・大手町の読売新聞本社。部数こそ世界一を誇るが、実配部数を大幅に水増ししている疑惑がある。販売の現場では、闇社会との繋がりも指摘されている。 |
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- 姑息な工作が延々と
- 商取引の仕組み
- 産経も、読売と同様に会費の集金を代行
姑息な工作が延々と
新聞ビジネスの致命的な秘密が暴露され、審判にかけられようとしている。昨年の11月にYC小笹(福岡市)の元店主が、約3500万円の損害賠償を求めて福岡地裁へ提訴した「押し紙」裁判の中で、被告の読売新聞社が苦しい立場へ追い込まれている。新聞のブラックボックスが解明される日が見えてきたようだ。
原告代理人の江上武幸弁護士らは、7月19日、裁判所へ1通の準備書面を提出した。そこにはこれまでだれも指摘しなかった新聞の商取引における驚くべきカラクリが明記されていた。
この準備書面の作成に協力した真村裁判の原告・真村久三さんが言う。
「補助金というものは、販売店を援助するための資金です。ところがその補助金の財源をさかのぼって調べてみると、実は読売が販売店から取り立てたものだった疑惑が浮上したのです。しかも、このような偽善行為が新聞業界の共通した手口とされてきた可能性もあります」
話を単純化するために、真村さんはこんなたとえ話をする。
「サラリーマンの中には、会社から旅行積立金を徴収された体験をもつ方がいると思います。ところが社員旅行はいっこうに実施されない。そのうち忘年会のシーズンになり、会社が社員たちのために宴席を設けた。
宴席で社長は、『社員の皆さん、今日は仕事のことは忘れて、思う存分に楽しんで下さい』と挨拶する。が、豪華な宴会の経費は、実は社員の旅行積立金から調達されていた。
これと同じカラクリが新聞社から販売店に支給される補助金でも観察されるのです。少なくとも読売新聞・西部本社の経理書類の上では、それが正確に立証されたんです」
真村さんの指摘が正しいとすれば、補助金は「押し紙」に対する販売店の不満をそらすために設けられたトリックということになってしまう。しかし、このカラクリを検証する前に、まず、新聞の商取引における商品と資金の流れを手短に説明しておこう。
販売店の裏庭に積み上げられた膨大な「押し紙」。日本新聞協会は、「押し紙」の問題には、関知しないという方針を取り続けている。(写真と本文は関係ありません) |
商取引の仕組み
新聞の商取引の仕組みを理解するためには、枝葉末節はあるにしても、三つのキーワードに焦点を絞るのが手っ取り早い。「押し紙」、折込チラシ、補助金である。
「押し紙」とは、新聞社が販売店に対して仕入れを強要する新聞のことである。たとえば、実配部数(実際に配達している部数)が1000部しかないのに、1400部の仕入れを強要すれば、差異の400部が「押し紙」である。
一方、折込チラシの搬入枚数は、基本的には新聞の搬入部数に準じる。従って上のケースでいえば、新聞の仕入れ部数が1400部だから、チラシは1400枚である。その結果、400部の新聞と400枚のチラシが配布されずに余る。
しかし、チラシの料金は1400枚分が徴収されるので、販売店にとっては水増し収入を得ることができる。このいわくつきの収入により、「押し紙」で被る損失を多少なりとも相殺するのだ。
なお、参考までに付け加えておくが、販売店がチラシの水増しを行っているとはいえ、チラシの搬入枚数を決める権限は販売店にはない。折込チラシの代理店が新聞社と相談して決めているのが実情だ。
しかし、チラシの水増し料金を得ても、販売店は完全に「押し紙」の赤字を帳消しにできるとは限らない。そこで頼るのが、新聞社から支給される補助金である。補助金を受けることによって、なんとか経理帳簿を黒字に保っているのだ。東京都内の店主が言う。
「補助金をカットされると経営が成り立ちません。そのために、補助金を支給してくれる担当員に対して非常な恩恵を感じている店主も多いと思いますよ」
ところが江上弁護士らが準備書面の中で指摘したように、その補助金の財源が販売店から徴収されたものであるとすれば、補助が目的というよりも、店主の「押し紙」に対する不満をごまかすための巧みなトリックということになってしまう。
◇正真正銘の「押し紙」裁判ちなみにYC小笹の裁判は、正真正銘の「押し紙」裁判である。
真村裁判の場合は、争点が地位保全で、「押し紙」の有無は真村氏を解任する理由として正当性があるかどうかが争われたのであるが、YC小笹の裁判は「押し紙」の損害賠償そのものが争われている。
読売はYC小笹に実配部数を超える過剰な新聞を提供していたことを公式に認めた上で、補助金を提供していたので、原告に損害は与えていないと主張した。
この主張を覆すために、原告側は補助金の検証を行い、その結果、補助金の財源が販売店から徴収されている疑惑に気づいたのである。
◇請求された金が、そのまま補助金に?上から2月度、3月度、5月度の請求書。協力賞(セット)+協力賞(統合)の金額と、労務対策分担金の請求額は、下一桁まで同じだ。 |
YC小笹の経理を2002年の2月度と3月度、さらに5月度の請求書を例に具体的に検証してみよう。補助金の種類は10種類を超える。新聞拡販に関連した補助金のひとつに協力賞と呼ばれるものがある。この協力賞は、セット版(朝・夕刊)を対象としたものと、統合版(朝刊のみ)を対象にしたものに2分されている。
2月度の場合、協力賞の合計は9万3050円である。帳簿上ではこの9万3050円が、読売本社からYC小笹に提供されたことになっている。ところが同じ請求書に「労務対策分担金」(諸口取立明細の項目)という請求項目があり、その額はなんと補助金として支給される協力賞の総額と下一桁まで同じだ。
つまり読売は、補助金として支出したのとまったく同じ金額を、「労務対策分担金」という名目で販売店から徴収しているのだ。
これでは差し引きがゼロになり、補助にはなっていない。補助金を支給していたから、「押し紙」の損害は与えていないという読売の主張は破綻する。補助そのものが嘘
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産経新聞・四条畷販売所へ送られた請求書のうち、「諸会費扱い請求内訳書」。
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読者コメント
読売のすごさわからくりだけでわ無いで店主自ら新年、普通に配達した新聞を抜き取りに行く、この業界でも最低のレベルです、新年も有り,これだけはやめてほしい、レベルの問題やで何時までやるねん、不配で持参したときに必ず聞きます、読者は分かています
読売だけではない。この裁判が最高裁で敗訴となったら全国の販売店は立ち上がるべきだ。弁護士も「やりがい」があるのでは?
「押し紙利権の真相」って感じですね。新聞社ばっかり儲けて販売店はタダ働きが現状なんでしょうね。なんかコンビニ業界にも似てますね。
この際、補助金制度は無くしたらいいのではないでしょうか。そんな事したら店はやっていけないってか?これからは押し紙もなし完全合売へ
請求された金が、そのまま補助金に、とあるが、これは付け取りのきちんとした補助のはず。うちは西部本社ではなく東京本社だが、協力賞を積み立て、要は請求され続けて、補助込みのその倍近いの金額が年に二回支払われている。従業員賞与のための積み立てと補助が目的だったような。西部は貧しい店が多いので、積み立てと言う手段ではなく付け取りにして単に年二回の補助を出しているのでは?違ってたらすまん。
読売は販売店に対して、このような非道を行っている疑いがあるのか・・・事実を明らかにするためにも読売は、事件の解明に協力したほうがいいと思う。
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