2007年通常国会における議員立法への参画者ランキング(発議者または提出者として名を連ねた数を集計)
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野党が対案として出すことで、与党案に影響を及ぼす議員立法。立案における貧弱なサポート体制や、仕事ぶりが有権者に見えにくいなどの問題はあるが、国会議員にとっての本来業務であることは確かだ。2007年通常国会でのトップは民主党の山井和則議員(9本)だった。政府に公式見解を問いただす「質問主意書」トップは、1日2本を日課に外務省の監視を続ける鈴木宗男議員。2位が辻本清美議員だった。
【Digest】
◇議員立法による対案は国政を動かす
◇貧弱なサポート体制、評価見えにくく
◇質問主意書で政府に緊張感
◇趣意書は、官僚から情報引き出す有力手段
◇問題解明の糸口に
◇ごまかそうとするから時間がかかる
(本稿は『週刊東洋経済』2007年10月6日号「数値データでわかった!働く議員VS働かない議員」の原文です。
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◇議員立法による対案は国政を動かす
国会議員の仕事を評価する一つの基準となるのが、「議員立法」である。2007年通常国会(第166回国会)に提出された法案でみると、内閣提出の「閣法」98本に対し、議員立法は71本。かつてに比べ、議員立法は、かなり活発になっている。
議員立法に熱心に取り組んでいる議員は誰なのか、これは議員の働きぶりを知るうえで重要な情報であるが、これを調べようとすると、衆参のWEBサイトでは、なんと発議者全員の氏名すら公開されていないのだ。「○○君ほか四名」という1名のみ公開という中途半端さ。
衆参の広報課に聞くと、全員の名を知りたければ議会資料室に来い、という。参院はファクスしてくれたが、衆院は現地に行かざるを得なかった。なんという隠匿体質だ。
その結果、2007年通常国会において、議員立法で発議者または提出者として名を連ねた数を集計し、ランキングにしたものが右記だ。1位の山井和則議員(9本)、2位の武正公一議員(7本)をはじめ、上位は圧倒的に民主党議員だった。
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上:発議者は通常3~5人。下:委員長提出の議員立法。
議員立法は、なんとWEB上で誰が発議者なのかすら確認できず、資料室に足を運ばねばならない。議員の負担は重いが、名前すら国民は容易に知ることができないという隠匿体質。まじめに働く議員の情報を封じる最悪の仕組みだ。 |
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議員立法は、一定の賛成者がいれば提出できる(衆議院で20名以上、参議院で10名以上)。その中心となる「発議者」は3~5人であることが多く、ほかに「賛成者」の数十人のリストが続く。これとは別に、国会の委員会の委員長が提出者になるケースがある(右記参照)。
とはいえ、せっかく法案を提出しても、議席数の少ない野党の場合は審議にさえかからないことが多く、「パフォーマンスだ」との批判もある。
与党議員は、官僚に作らせて党内プロセス(部会→政調審→総務会)で合意を得て、閣法として出せば党議拘束がかかり、最後は強行採決で法案を確実に可決できるため、そもそも手間暇のかかる議員立法の必要性が低い(衆参ねじれてない場合)。
では議員立法にはどういう意味があるのか。2007年通常国会で発議9本とトップの山井和則議員(民主党)は「議員立法の形で対案を出すことによって勝ち取れるものは大きい」と語る。
たとえば小泉政権時代に成立した、障害者に10%の自己負担を求める法律。これを問題視した民主党は、議員立法で改正案を作成、園田康博議員を筆頭発議者として提出し、昨年10月2日、鳩山幹事長が安倍総理に代表質問を実施。
その際、安倍総理は「引き続き制度の周知定着を図ってまいります」と答弁したに過ぎなかったが、代表質問に入れることで、意気込みを見せた。
4日後、生中継された予算委員会では、枝野議員が安倍首相に改めて認識を問い、議場はヤジで騒然となる。
法案が付託された厚生労働委員会では、理事会での話し合いで、「審議はしないが、参考人質疑はする」ということになった。「これは、議員立法で対案を出したからこそ、取引が成立したのです」(山井議員)
12月6日、障害者自立支援法の問題で、1日かけて参考人質疑が実施され、現場の窮状が訴えられた。
その結果、無視できなくなった政府は、下旬に補正予算で1,200億円もの特別対策を決定した。具体的な成果に結びついた形だ。
◇貧弱なサポート体制、評価見えにくく
議員立法にどれだけ関与しているかが、野党の仕事ぶりを評価する一つの基準であることは間違いない。ただ、山井議員は「議員立法は国会議員の仕事の最優先事項」と言い切った上で、問題を2点あげる。
第1に、サポート体制。議員立法は単独でできる仕事ではない。厚生労働担当は民主党の政調スタッフで4人だけ、法制局も5人だけで、いつも徹夜作業に.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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質問主意書提出数ランキング(2007年通常国会) |
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ダントツトップの鈴木宗男氏 |
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