【政治のホント超図解1】理念マップで見えてきた!政界再編のあるべき姿
内政の理念マップ。本記事は、『週刊東洋経済』2007年12月22日号巻頭特集の原稿です。 |
- Digest
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- 賢い有権者、愚かな有権者
- 国会議員業界の全体像
- 内政と外交がセットでなくなった
- 内政マップ:徴税と配分こそ権力
- 縮小均衡か、新自由主義か
- 内政で一応インテグレートされている民主党
- 経済成長と弱者底上げの両立
- 外交マップ:「普通の国」化を急ぐ2人
- 「9条は世界遺産」な人たち
- 与党は現実に向かわざるを得ず
- 国連・アジア中心
- 政界再編の見通し
昨年7月の参議院選挙では、民主党が大勝した。選挙後の様々な世論調査の結果はほぼ同じで、有権者が投票先を決める上で重視した政策は、1位が「年金など社会保障」、2位が「景気・雇用」、3位が「政治とカネ」。
さらに、その情報はどこから得ているのかというと、読売新聞調査で「投票する候補者や政党を決めたとき、とくに役立ったものは」との問いに、「新聞やテレビの選挙報道」が42.3%でダントツトップ、「公約やマニフェスト」は15.6%に過ぎなかった。
つまり平均的な有権者は、日々の新聞・テレビ報道を見て、直近のワイドショーやニュース番組で盛り上がっていた年金問題や松岡・赤城両大臣の事務所費問題、格差問題に疑問を感じ、現政権にノーを突きつけた。
だが、有権者はそのような近視眼的に、一時期ワイドショーで盛り上がったネタを根拠に、投票していてよいのか。選挙から半年も経たない今、報道されなくなった事務所費問題など、既に忘れている人も多いだろう。
実際、2年前の「郵政解散」選挙では、小泉政権が、民主党が地盤としていた都市部において、若年層からの支持をも取り付け、東京都の小選挙区では、菅直人氏以外の全員を敗戦に追い込み、完勝した。だが、その都市部の若年層は、小泉政権時代に切り捨てられた人たちと重なる。
小泉政権下では、労働者派遣法の規制緩和が行われ、派遣期間は延び、製造現場への派遣も可能になるなど、非正規社員が増加。格差問題に拍車をかけた。つまり、都市部のフリーターや派遣社員らが小泉政権を支持した投票行動は、自らの利益に適った合理的な行動とは、到底、いいがたいものだった。
賢い有権者、愚かな有権者
「結局、有権者というのは、『そのときの政治状況』に向かって投票するんです。有権者のなかには、現状を打破したい、ブチ壊したいというアナーキズム、ファナティズムがある。小泉さんは既得権打破を訴え、争点は郵政だけだ、と言い切って支持を得た」
元毎日新聞論説委員長の中村啓三氏は、目先の政治状況に反応しがちな有権者の危うさを指摘する。
現実の選挙というのは「政策の束」を選択する行為で、政策は多岐にわたる。たとえば同選挙の自民党公約は120項目あり、その111番目に小さく「防衛庁の防衛省への格上げ」が記されていたが、選挙で信任を得たことになり、その後、実現した。
これは小泉氏の米国寄り・軍事的貢献重視のスタンスの表れだが、「郵政民営化」だけを根拠に投票した人にとっては意外だったはず。だが政策は、否応なく実現されていく。
国会議員業界の全体像
一時的なブームや話題に乗せられたり、ファナティックな行動に出る有権者は、裏切られがちである。したがって「賢い有権者」は、「そのときの政治状況」向けに作られた選挙対策用の表面的な政策ではなく、各党の主要グループ、有力者らがどんな理念・思想の持ち主であるかを中長期的な視点でウォッチし、見抜き、読み取り、見通したうえで、投票することが求められる。
そのためには、各党の違い、党内有力者がどういう考えを持っているのかについての俯瞰図、評価軸、フレームワークを各自が持ち、理念・政策の観点から見た国会議員業界≠フ全体像と潮流を知ることが重要だ。その役に立ちそうなものを、次ページ以降、内政と外交に分けて見ていく。
内政と外交がセットでなくなった
なぜ内政と外交で分けるのか。かつて、外交で「日米安保堅持」、その核の傘のもと、内政は「自由主義市場経済推進」で経済発展を目指すという政策が、自民党の保守本流であり、両者はセットだった。それらに否定的な存在だった社会党が存在していたのが、55年体制である。
冷戦崩壊後、イデオロギー対立の時代が終焉し、社会党が解党。かつての「自民党保守」が常識となり、そのなかでとりうる政策の幅が広がった。
小選挙区制度の導入を経て2大政党制に近づきつつあるものの、その構成員の理念・政策は国民に見えておらず、選択の幅が狭いのが実情だ。政策による政界再編が起こるとしたら、どのような軸で、どういったグループに分かれるのが望ましいのか。一緒に考えてみていただきたい。
政治家が、各自の政治理念や個別政策について、明確に外部から分かるようになっていない限り、有権者は本来、投票してよいかを判断できないはずだ。だが、それがなかなか見えてこない。
まず、投票行動から判断できればよいが、日本は党議拘束が厳しいため、党単位で全員が同じ投票になってしまい、誰がどういう思想を持っているのかを判別できない。それ以前の実質的な政策決定の場である党内議論(自民の部会、民主の部門会議など)も非開示で、議事録すら公開されていないため、これも無理だ。
では各自のWEBサイトに政策が明示されているかというと、ほとんどの政治家は「暮らしの安心」や「暖かい政治」など誰も反対しないことしか載せない。一人しか当選できない小選挙区制のもとでは、敵を少なくすることが重要となるため、全員が賛成するようなもの以外の極端な政策を表明すると、選挙で一気に不利になるという選挙制度上の構造もある(「中位投票者モデル」という)。政策を明記した著書を出版している議員も少数派だ。
そこで今回は、非公式な党内議論に実際に参加している現役の国会議員、党内で裏方として政策をまとめる立場にいる政策担当職員、政治ジャーナリストなど、20人弱をヒアリングし、主要議員・グループのポジショニングを明示する試みを行った。
内政マップ:徴税と配分こそ権力
国による徴税とその配分、そして様々な法律による規制は、国家の根幹を成す権力である。そこで内政については、横軸を「経済の自由度」とし、その経済活動によって生まれた税収を、弱者に対してどれだけ再分配するかという「再分配の度合い」を縦軸にとった。その結果が右上の図である。
内政の『週刊東洋経済』(2007年12月22日号)巻頭特集掲載版 |
この図を見た茂木敏充・衆院議員が解説する。「横軸でいえば、方向がグローバル化であることは絶対的で、そのスピードが速いか遅いか、です。グローバル化を進める過程で当然、犠牲も出てくるので、セーフティーネットをどれだけ手厚くするか、その度合いが縦軸で分かれる」。
伝統的な自民党は、左上のエリアだった。その特徴は、生産性は低いが政治力が強い業界を規制で守りつつ、税金を再分配する。具体的には、農業や商店街、土建屋といった自民党の伝統的な支持基盤に支えられ、道路関連にしか使えない「道路特定財源」の一般財源化にはもちろん反対。非効率な分野に、どんどん税金をつぎ込む。
しかも、
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外交の理念マップ。
外交の『週刊東洋経済』(2007年12月22日号)巻頭特集掲載版
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読者コメント
ご回答ありがとうございます。セイワと言えば、他にも複数で名が使われていますので一応念の為確認させて頂きました。
清和会は自民等の一会派です。「清和会」で調べると出てきます。ウィキペディアがいいかも知れません。
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