読売新聞本社による販売店イジメを告発した黒薮氏への報復ともとれる今回の削除要求は、報道機関として自らの首を絞める愚かな行為だ
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読売新聞の法務室長、江崎徹志氏が弁護士に送った文書をジャーナリストの黒薮哲哉氏が自分のサイトで引用したところ、法務室長から「削除せよ」との催告書が送られてきた。そこで、その催告書も掲載し報道したところ、法務室長は著作権を理由に催告書削除の仮処分申立を行い、東京地裁は削除命令を下した。この言論妨害行為の代理人は喜田村洋一弁護士。江崎法務室長は取材拒否し、逃げ回っている。読売と司法の暴挙に対し本裁判を起こす黒薮氏に話を聞いた。
【Digest】
◇読売法務室長からの削除要求
◇削除の仮処分命令を下した東京地裁
◇九州の仇を東京で討とうとする読売
◇取材の電話を一方的に切る法務室長
◇能天気な読売側回答、黒薮氏本裁判へ
削除命令を受けたのは、MyNewsJapanでも「押し紙」問題をはじめとする新聞批判報道を続けるフリージャーナリストの黒薮哲哉氏。仮処分の申立をしたのは、読売新聞西部本社法務室長の江崎徹志氏。
問題となったサイトは、黒薮氏の主宰する「
新聞販売黒書」 。
◇紛争相手の読売法務室長からの削除要求
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■催告書(黒塗りは編集部)
12月21日の新聞販売黒書に掲載された回答書を見た江崎氏から、同じ21日に送られてきた催告書。著作権法が拡大解釈されれば、報道には不可欠な資料や文書も将来このように黒塗りされるおそれがある。
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事件の経緯について黒薮氏が言う。
「発端は2002年頃までさかのぼります。当時、読売新聞社の販売店であるYC広川(読売センター広川)は、読売新聞西部本社から廃業を迫られていました。しかし、同店の店主である真村久三さんは、読売新聞社の申し入れを拒否します。
その結果、真村氏は読売関係者からさまざまなハラスメントを受けるようになったのです。YC広川を訪問して、業務上の打ち合わせをすることすらも中止したのです。『飼い殺し』、あるいは『死に店』扱いと言われる扱いです」
真村氏は2002年9月に地位保全の裁判に踏み切った。そして2006年の9月に地裁で勝訴を勝ち取った。2007年6月には福岡高裁でも真村氏の訴えが認められた。その後、昨年の12月25日に、最高裁判所が読売新聞社の上告受理申し立てを受けつけない決定を下し、真村裁判での読売新聞社の敗訴が確定した。
黒薮氏が続ける。
「最高裁の決定が下る少し前の時期、つまり2007年の12月に入ってから、読売新聞社は真村氏に対して、訪店を再開したい旨を申し入れてきました。真村氏はだたちに、江上武幸弁護士に相談しました。と、いうのもこの時期にはまだ最高裁の判断が下っていなかったために、真村氏は『自分は読売新聞社と係争中である』という認識があったからです。
江上弁護士は読売新聞社の真意を確認するために、内容証明の郵便をおくりました。その結果、法務室長の江崎氏から次のような回答があったのです」
「 前略
読売新聞西部本社法務室長の江崎徹志です。
2007年(平成19年)12月17日付け内容証明郵便の件で、訪店について回答いたします。
当社販売局として、通常の訪店です。
以上、ご連絡申し上げます。よろしくお願いいたします。」
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(上から)
■江崎氏の代理人喜田村弁護士が出してきた仮処分命令申立書。江崎氏の催告書をサイト上から削除することを要求している。
■仮処分命令申立書に対する黒薮氏の答弁書。催告書は著作物にあたらないので申立を却下するよう求めている。
■喜田村氏準備書面
江崎氏の代理人喜田村弁護士による準備書面。著作者は、読売新聞西部本社ではなくて江崎氏個人であること、は読売による仮判決の申し立ては言論弾圧には該当しないということなどを強調している。
■江上弁護士陳述書
黒薮氏の弁護士による陳述書。読売側がなぜ今回の仮処分申立を起こしたのかを、真村裁判からのいきさつを踏まえて検証している。
■江上弁護士準備書面
黒薮氏が弁護団のアドバイスを得て作成した準備書面。著作物とは何かを明快に説明するとともに、江崎氏の回答書も催告書も職務上作成した文書であり、江崎氏個人の創作物などではないと断定している。
■東京地裁が出した仮処分決定書。主文のみで、本来必要な理由が記載されていない。

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真村氏は、裁判を週刊誌やネットで報道してきた黒薮氏に対しても、読売新聞社の新しい動きを報告した。そこで黒薮氏は、"真村裁判"における大ニュースとして、自分が主宰する新聞販売黒書で読売新聞社がYC広川の訪店を再開する旨の記事を掲載し、その裏付けとして江崎氏の回答を引用したのである。
すると即日、江崎氏から黒薮氏に宛てて催告書が送られてきた。その内容は次の2点に集約できる。
1、江上弁護士に対する回答書は、江崎氏の私的な文章である。
2、著作権法18条1項にもとづいて、新聞販売黒書から回答書を削除してほしい。
「1」について言えば、回答書には「読売新聞西部本社法務室長の江崎徹志です」と肩書きを明記した一文があるうえに、「当社販売局として、通常の訪店です」という明らかに読売新聞・販売局としての見解があり、とても私的な文章とは思えない。
「2」については、回答書の文面は、著作権法でいう著作物には該当しない。著作権法によると、著作物とは「著作物
思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」である。
黒薮氏は、念のために江崎氏に同氏が考える著作物の定義などを問い合わせた。しかし、江崎氏からなんの返答もなかった。そこでこの催告書の全文を「悪質ないたずらメールの可能性も?」というタイトルの記事と一緒に新聞販売黒書に掲載したのである。一種の迷惑メール防止策である。
これに対して江崎氏は、12月28日付で「新聞販売黒書から催告書を削除せよ」という仮処分命令申立書を東京地裁に提出してきた。最初に引用した回答書については、削除を要求しなかった。
仮処分命令申立書の江崎氏の代理人は喜田村洋一弁護士。読売新聞社が完全敗訴した真村裁判でも読売側の代理人に名を連ねていた弁護士だ。
◇削除の仮処分命令を下した東京地裁
大新聞の法務室長が傘下の販売店とのトラブルの件で回答した文書に、著作権や公表権が認められるはずがない。筆者を含めた周囲のライターは当初はそう思っていた
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読売に送った質問書と読売からの回答書。今回の裁判では、著作者は江崎氏個人と主張するので、江崎氏への質問として送ったのだが、回答にはわざわざ「読売新聞西部本社広報宣伝部」とある。不可解な使い分けだ。
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