地元に巨大刑務所がやってくる!? 昭島市長が住民不在の受け入れ表明
国際法務総合センターの問題点をブログで発信している堀岡勝さん。フェンスの向こうに広がるのが立川基地跡地の雑木林。以前はフェンス付近まで草が生い茂っていたが、法務省が計画を発表した昨年秋から測量のために刈り取られたとのこと。両側にそびえる煙突は、米軍基地だった頃のランドリー施設。 |
- Digest
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- 国が突然の誘致計画を発表
- 刑務所の受け入れを表明した市長
- 公的施設ありきの調査結果を基に決定
- 責任を押し付けあう都と立川市
- 6月が期限、行政と交渉へ
国が突然の誘致計画を発表
ブログ「*堀 岡 建 築 研 究 所 *」で刑務所計画に関する情報発信を続けてきたのは、堀岡勝氏(38歳)。2年前から立川市に居を移し、建築設計事務所を構える一級建築士だ。「自宅は武蔵砂川駅と東中神駅の間にあり、両方の駅を利用していますが、その間に鬱蒼として大きな雑木林が広がっているのを見て、これはなんだろうと調べたところ、米軍立川基地の跡地だとわかりました。
その利用計画をネットで調べてもひっかからないので、設計者という立場の興味本位から、都市計画として面白い提案ができないかと考えていました。
ところが昨年9月になって、法務省が国際法務総合センターの計画を昭島市に打診している、という朝日新聞の記事を読んでびっくりしました」
◆建設予定地の航空写真(上)と施設の概要イラスト(中) 国際法務総合センターが計画されているエリアは、国営昭和記念公園に隣接する緑豊な雑木林が広がる。法務省が要請している主な施設は、矯正医療センター(医療刑務所と医療少年院)、少年非行対策センター(少年鑑別所)、公安調査庁研修所などで、どのエリアにどの施設を整備するかは未定だという。 立川基地跡地の向かい側に面した住宅には地元自治会による「刑務所建設反対」ののぼりが立ち並ぶ(下)。 |
ところが2002年6月に突然、国は「原則留保」から「原則利用」に方針を転換し、「おおむね5年以内」という期限の中で実現性のある利用計画を立てるよう連絡協議会に求めてきた。その5年の期限が今年の6月だという。
この間、2004年度から2006年度にかけて、東京都はUR(都市再生機構)に土地利用計画のための調査を委託していたが、連絡協議会の結論を待たずに、2007年9月になって法務局が、都内に点在する刑務所施設を集合させた「国際法務総合センター」を立川基地跡地に建設したいと発表したのだ。
刑務所の受け入れを表明した市長
事前の説明もないままの突然の発表に驚いた近隣住民は、署名活動をはじめとする建設反対運動を始めたが、跡地の9割(約70ha)を有する昭島市の北川穣一市長は、住民に対して全くコメントをしないまま、2008年2月21日の昭島市議会で、「国際法務総合センター」の受け入れを発表した。堀岡さんは2007年12月からこの問題に対するコメントをブログに書き始めたが、新聞の告知を見て、12月11日に昭島市の小学校で開催された法務省職員を呼んでの説明会に参加した。
「ところが、法務省の職員がいきなり説明する進行だったので、まだ受け入れも決まっていないのになぜ刑務所の詳細を聞かなければいけないのか、と住民たちが反発して説明会は終わりました。その後に残った住民の方々に声をかけたのが交流の始まりでした」
そこである程度の情報交換は行ったものの、立川市民の堀岡さんには昭島市の情報はあまり入らず、自分の得た情報や思いをブログに綴り、一方で昭島市の住民たちは署名活動を続けていた。
堀岡さんが昭島市の行政にその後の経過を尋ねると、計画は法務省が一方的に発表しただけであり、市ではまだ話し合っていないし検討していないのでコメントはできない、との答えだったという。
昭島市長自身も昨年9月の計画発表以降、表に出て意見を表明することもないまま年が明け、2月21日の昭島市議会で突然受け入れを表明した。
その数日前に、昭島市の自治会から堀岡さんに連絡があり、自治会長や近隣住民と面談して、情報交換を行った。
そして3月15日に行われた民主党の衆議院議員による国会報告会で、基地跡地に関する説明と市民からの質問を受け、その後で残ったメンバーが集まって、この問題について今後取り組んでいくことになる市民グループ「昭島まちづくりフォーラム」の活動母体が発足したという。フォーラムは3月中旬から会合を重ね、法務省の案に対抗する独自の基地跡地利用計画案を作成し、昭島市に提出する予定だ。
環境先進国であるドイツに一時期在住していた堀岡さんは、ドイツのフライブルク市を先例とした、最先端技術も取り入れた未来型のエコシティーを構想している。
「みんなで話し合ったところでは、環境と健康を軸にしたテーマで取り組みたいと考えています。また、昭島市の飲料水には、都内で唯一地下水が使われています。この良いイメージも生かしていきたい。
都心に近い約180haもの国営公園があり、それに隣接する巨大な土地を住宅地にすれば、住みたい人も多いはずです。
ここに閉鎖性を前提とする刑務所を作るのは、果たしてもっとも有効な利用法なのか。
2050年にCO2を半分にするという目標を達成するためのパイロットプランとなるようなまちづくりを、国と都、昭島市、立川市が協力して作っていけば、都市の魅力も増し、昭島市に住みたいという住民も増え、結果として税収も増えるでしょう」
公的施設ありきの調査結果を基に決定
老朽化した医療刑務所や関連施設の建て替えは必要であり、それに反対するのは地域エゴではないか、という問いに対して、堀岡さんは、今回の決定が民主的な手続きを経ていない点を特に問題視している。「本来なら、都・昭島市・立川市の3者による連絡協議会で議論を尽くし、今年6月の期限後に発表してもいいはずなのに、その期限を待たずに、去年の9月に法務局が発表すること自体が矛盾していると思います
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「昭島市都市計画マスタープラン」は、現在も在任中の北川穰一昭島市長が、市民とともにまちづくりを進めるための指針として2000年に決定したものだが、そこに掲げる「市民参加によるまちづくりの推進」という指針を、市長自らが裏切っているのが現状だ。
東京都が3年にわたって都市再生機構に依託した土地利用計画案の調査は、当初の2年間は民間住宅地として十分な魅力があるとされたが、最終年度の平成19年(2007年)3月になって突然、(新たな検討条件)として公的土地利用に関する可能性を掲げるに至り、その半年後の2007年9月に、法務省が国際法務総合センターの計画を昭島市に打診した。
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米軍基地跡地に「国際法務総合センター」を建設する計画を2007年9月、法務省が突然発表した。都内に点在する刑務所施設を集合させる予定だ。地元住民は約2万7千人の反対署名を集めたが、北川穣一昭島市長は今年2月、
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読者コメント
住民への悪影響ははかりしれない。逃走事故、収容されている人に対する暴行事件などが多発している。法務省は、社会復帰とかというキーワードを頼りに美化した情報を流しているが、忌み嫌われる牢屋ができるだけの話である。収容されている人はもちろんのこと、そこに面会に訪れる彼らの親族、それの世話をする職員の質もいわずもがなである。糞尿、廃棄物、騒音、真夜中にわたる暴走族の爆音。
東京都知事殿。あわてて刑務所を作るよりも東京オリンピックの際に利用価値の高い土地ではないでしょうか。日本一の刑務所都市昭島なんて・・・市長さんお願いします。
刑務所も少年院も退所するときには建物の門でさよならです。更正する気がなくても刑期が終わればさよならです。門から多くの出所者は歩いて東中神駅までいくでしょう。日本中の犯罪をやめる気のない者に昭島市や立川市が有名になる。市長はそれをわかっているのか。有名な猟奇事件を犯したのはみんな医療刑務所や医療少年院にはいるんだ。刑務所にいた者なら誰だって知っているそんなことだって法務省は隠している。
市民参加とは形ばかりで、実際は市民などの意見など取り入れるつもりはないのであろう。時代の流れから市民参加を組み込んではみたものの、行政側からみれば、自分達の行動を制約するものであるのは事実。しかし実際に市民参加を実現している自治体もあるので、要するに役人と議員の質の低さとそれを許してきた市民のチェックの甘さも原因の1つだと思う。
本当に独裁者的であれば地方自治法に基づく解職請求(リコール)も視野に署名を集めればと。有権者の1/3の署名を集めればOK。反対署名数くらいで大丈夫では?
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