東大生、売り手市場で官庁不人気 外資はキャリア官僚に迫る勢い
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東大本郷キャンパスの赤門。学生たちは、どのような進路を選択していくのか |
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- 10年前に迫る官僚不人気
- 氷河期終盤に2極化現象
- 売り手市場で公務員を捨てる
- 外資への潮流止まらず
- 外資のコンサルと証券、4~5割は理系院卒
- 自己成長重視派は公務員にならない
- いまだ断然多いメガバンク・商社・メーカー
- 能力に自信のある学生にとって魅力ある官庁に変われ
おそらく多くの方が、東大は霞ヶ関や、大手の日本企業に多くの人材を輩出している、というイメージをもたれているだろう。その進路動向を見ることで、日本のいわゆるエリートたち(このような言い方には議論があるが、深くは触れない)が将来に何を求め、どう動いているのか、その一端が見えると思い、このほど調査・分析を行った。進路データは、民間企業は東京大学公認の『東京大学新聞』、公務員は『公務員試験受験ジャーナル』を利用した。
10年前に迫る官僚不人気
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東京大学卒業生の進路変遷(1998年、2003年、2008年)。学部卒・院卒以上の統合データ。キャリア官僚はいったん増えてから戻り、外資コンサル・証券が一貫して増えた
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東大生といえば国家公務員、国家公務員といえば東大生、というイメージをもたれている方も多いと思う。実際、1980年代までは、国家公務員Ⅰ種合格者の9割が東大生だったという話も耳にする。
だが、2008年に官公庁に就職した東大生は、学部・大学院合わせて208人で、過去5年間では最低だった。特に学部卒の不人気が顕著で、3年前の2005年には160人近くいたが、今年は120人強しかいなかった。とはいえ、9年前(97年)と10年前(98年)は、ともに全体で190人だったため、一直線で低下傾向という単純な話ではない。
氷河期終盤に2極化現象
2003年(249人)、2004年(229人)、2005年(247人)の「後期就職氷河期」は、長引く不況で民間企業が採用を絞っていたことから、一時、学生全体の「公務員志向」が強まり、東大生も保守化した。98年より2003年のほうが59人も多い。
しかし、全体が保守化したのではなく、もう1つの傾向が生れた。この時期、一部の学生は先鋭化しだし、外資系企業を目指しはじめた。2003年からさかのぼること5年前の1998年の時点では、外資に就職する学生は稀だった。日本IBMに26人、アンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)に9人の学部生が就職してはいる。しかし、マッキンゼー3人、ボスコンは2人のみ。外資証券も、ゴールドマン・サックス4人、メリル・リンチ4人ぐらいだった。当時は外資の日本市場への参入も少なく、認知度も低く、就職先としてメジャーではなかった。
だが、1998年に全体で9人だったアクセンチュアは、2003年には院卒で16位(10人)、学部卒に至っては10位(12人)にまで上りつめ、合計22人になった。これは2008年の人数(21人)とほぼ同じ水準で、すでに2003年には、一部外資が人気化していた。外資証券もゴールドマン・モルガン・メリルの3社合計で、9人(98年)→21人(03年)と、この時期に倍以上に増えている。
つまり、バブル崩壊後の「失われた15年」、長引く不況と就職氷河期が続き、民間企業が激しい買い手市場となるなかで、東大生は、公務員と外資の、両極化の傾向を見せた。一つの群は、実力主義は怖いから、一生安定した身分で仕事をしていこうという学生たち、もう一つの群は
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2008年の進路状況を伝える東京大学公認の『東京大学新聞』(2008年6月24日付)
1998年、2003年、2008年の就職先ランキング(院卒・学部卒別)。院卒は、98年は上位20社中17社がメーカーで技術者志向が強かったが、いまやメガバンクやコンサルがランクイン。学部卒では98年にランキング上位40のうち13行がランクインしていた都銀天国が、今年も復活。なお東京大学の発表によると、2007年度の学部卒で就職した者は1071人、院卒以上で就職した者は2508人。
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読者コメント
周りの東大生(院生)を見ていると、外資コースの人はやりがい・成長を求めて、官庁コースの人は完全に安定志向ですね。将来は某業界に天下りをするって公言していた先輩もいましたよ。
公務員を取り巻く昨今の状況を見て、官庁にやりがいを求めて行くひとなんてそうそういないと思います。
能力のある人間には官庁に行って頑張って欲しい…なんて言う人は、他人に厄介な仕事を押しつけている自分が恥ずかしくないんでしょうか?
東大卒ですが、外資には全く魅力を感じませんでした。そもそも、金を稼ぐことだけを考えて東大に行く人なんてほとんどいません。外資系に入った人が、もともと東大生なんて見向きもしなかった外資系の唯一の長所=高給であることを必死にアピールして煽っていいるだけなのでは。
今回の不況で東大生はどちらに動く?①やはり官僚か?②結局金融界は最後は政府が救済してくれるから厚遇の外資金融か?
下とは違う東大生です。↓をみると、「外資にいくなんて日本の未来を考えてない」「優秀だから稼げる外資、という発想は近視眼的すぎる」といった論調がありますが、私はその意見に強い反感を覚えます。アービトラージが組み込まれた今日の社会で日本と海外という区分けを就職観に適用して議論するのは前時代的であるし、優秀な人がそれ相応の報酬を得るのは当然のことではないでしょうか。
東大生ですが、この記事は本当です。官僚はきつい上に給料低くて叩かれるので人気ないですね。実際に辞める人多いですし。あとは意外とインフラ系企業に行って企業体質が嫌で出戻りする人が多いですね。まぁあくまでも自分の周りでの話です。
10年前と言えば私が新卒で就職した頃ですが、その頃には「優秀な東大生は民間に行くべき」という論調が一部識者の間にありました。10年たって実際その通りになったら今度は「官僚不人気は国力低下云々」ですか。民主党の小沢一郎氏は政治家主導を強く唱えています。今後は官僚はますます不要になり、東大生の外資・起業志向はますます高まるのではないでしょうか。GSなどは渉外弁護士より優秀だと言われているそうです。
日本経済の過半は官製経済だと言う人もいる。内部から浄化を図る気概なき者はキャリア官僚になるべきではない。
学歴至上主義が残っているのは最早役所位だ。その他の業界ではさして意味を持たず苦労することになるだろう。いずれも適正な扱いだとは思わないが、役所の方が有利ではある。
使命感がある学生でも、今の役所が日本を引っ張っていく仕事に就くことができる場所とは思えないのでしょう。まず外資に行くのは、もちろん給料に惹かれる人もいるでしょうが、手っ取り早く力をつけたいからだというのも大きい気がします。私は東大の文系学部生や理系院生と話す機会が沢山ありましたが、どんなに高い理想を持っていても、結局今の自分には何も出来ないのだということを歯痒く思う人も随分いるようでしたよ。
民間人さんのような温いご意見は少数派です。彼らは袋叩きの刑の対象ですよ。
もちろん立派な人物こそが国家1種に行くべきですが、どうもそういう人達に厳しすぎです。彼らも優秀で高潔だったとしても、人間ですから失望してしまうのも仕方がないのでは?それにそういう人は限りがありますので。私たちも虫が良すぎるということです。
東大出版が「暗黙知」と題した書籍を文字通りの内容で取り纏めて出版していたはず。読まれておくと良いでしょう。
昨年からのサブプライム騒動により外資の主に、金融・証券業界において、早速、相当の人員整理が行われたようです。中には内定取り消しなんてことも...
外資側から見ると比較的安価なエリート新卒は魅力的です。大量に採って、後で整理すればよいのです。一方で学生側は単に金で釣られているだけではないでしょうか。はたしてどれだけの覚悟があっての人気なのか、甚だ疑問です。
叩かれるから、自分にとっては損だから、ではなく、社会全体を考え、リードして行けるような逸材でなければ、上級エリート職に就くべきではありません。理想論ではありますが、東大の教育には完全にその点が抜け落ちている気がします。
省庁に進む方には、先輩方の尻拭いをきれいにする位の覚悟を以って挑んで頂きたいものです。
何故外資の発想になるのでしょう、優秀なら金儲けの出来る外資ですか?
何だか寒気がしますね、コレが東大生の発想ですか、国民を引っ張る気概が無いですよね
多くの国民が政府に対し反抗姿勢を示しているのですから、今更外資に行く人たちを責めてもしょうがないでしょう。
どうせ省庁に行ったら、国民から叩かれるのは目に見えてますから。
外資に行く連中は上げ潮派的発想にコロッと騙されて洗脳されてしまうのだろうか。増税派と言い、国民にとって良い選択肢が存在しない。まずは経費削減をしないといけないことは分かっているはずなのに、マインドがぬるま湯体質で切り込まない。
加えて、中央銀行の仕組みを知れば、何時か政府が中央銀行の株主らに支配される運命にあるという子供騙しのカラクリが仕掛けられていることに気付くはず。誰も逆らえないのだろうか。
ボロ官僚は、どこから生まれたのでしょう。
他大学よりぬきんでて、潤沢な投資額に見合わない高学歴とは如何せん。
あと、弱みを握られないということも重要ですね。弱みを悪用してくる輩もいますから。
餌で誘惑してくる輩は蛇だと思って警戒した方が間違いないでしょう。
良い人もいれば悪い人もいて、それは国籍を問わず同様ですが。
東京自体が欲望に塗れた街だからかもしれませんが、影響力の大きい東大卒の方々には誘惑に負けない訓練を積んでおいて頂きたいものです。
また、研究職タイプの方が多い気がしますが、特に文系の方には、押しの強さやリスクテイクする挑戦心も持ち合わせて頂きたい。
一方で、東京一極集中は是正すべきでしょうね。搾取する側や頭脳ばかりが大きくなっても限界がありますし、地方が疲弊しますから。
外資に人気が集まるというのも近視眼的ですね。日本国の行く末を考えていない気がします。端的に言えば、金に目がくらんで、日本の支配権を外国資本に手渡す片棒を担いでいるようなものです。
新聞報道によれば、大学新卒者の傾向としては、振り子が戻って保守傾向が強くなり出しているそうですよ。
公務員を正当化する気などはサラサラありません。但し、役人から政治家に主導権を移そうとする昨今の動きに対しては、まずは政治家の売国奴ぶりを是正してからでないと危険極まりないと感じています。
エリート以外の方にもチャンスを用意するのは当然として、エリートの習性を理解した上で更に伸ばす配慮や工夫を施すことも大切だと思います。職場環境が鍵になるでしょうね。
エリートの自惚れや腐敗も害悪ですが、所詮はエリートと低学歴者とでは相容れないものがあるかと思います。同じ職場で働こうものなら、かなりの確率でエリートの足を引っ張ることでしょう。
上司が低学歴で、部下がエリートの場合、うまく行かない気がします。特に見識のない上司なら最悪ですよ。
東大の新卒就職動向ニュースとしては分かり易いと思いますよ。
学部卒よりも院卒以上での就職者が2.5倍もいるとは驚きですね。
選り好みや就職難で院に進学している方が多そう。
>社会人から見れば疑問に感じる部分があります。外資は終身雇用的ではありません。
今の若者は終身雇用で仕事選んでないし。必死に公務員を正当化したいのは分かるけども。
就職希望先の分布の変化よりも、学部新卒への就職市場の集中と日本の「文系エリート」全般の低学歴との相関関係のほうが日本に大きな長期的なダメージを与えているのではないでしょうか。
外資に人気が集まるというのも近視眼的ですね。社会全体を考えていない気がします。
端的に言えば、支配権を外国資本に手渡す片棒を担いでいるようなものです。その意味合いやマイナス面が分かっていない。
所詮、それが島国日本の限界なのでしょうか。世界の権力構造について教えられていないのでしょうから学生に責任はありませんけど。
国家財政難や経済の低迷を招いたまま打開出来ず、相次ぐ不祥事も露呈した役所の体たらくぶりと共に、その中心を占める東大法学部卒者に対する国民の視線もさぞかし白目掛かってきていることでしょう。
如何に上手く美味しい所取りを出来るかばかり考えている印象を受けます。
凄腕の政治家でも輩出して、汚名を挽回して頂きたいものです。
東大生と言えども、学生の就職人気ランキングは、社会人から見れば疑問に感じる部分があります。外資は終身雇用的ではありません。
入社時だけでなく、先輩方のその後の進路も調査して参考にされると良いでしょう。
満足度では、公務員>日系企業>外資と正反対になるかもしれませんよ。
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