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トヨタが、健康保険による〝闇治療〟で「業務上の負傷」公表値を低めに改ざんしている疑い強まる――〝労災隠しマニュアル〟発覚

情報提供
トヨタの不正行為
国交省が認定した品質データ偽造の不正行為

トヨタグループは近年、次々と、コンプライアンス上の問題が発覚している。型式認証を得るために試験データを偽造する手法は多岐にわたり、たとえば、エアバッグが衝突事故の際に正常に稼働するかを試す試験で、実際の衝突ではなく外部からタイマーで強制着火するなど、『それでは試験の意味がないだろう』というイカサマを働いている(2015年、アイシス)。大学入試でこのような用意周到なカンニングをしたら、偽計業務妨害容疑で、逮捕される。

サムネ用トヨタ1
「労災手続きマニュアル」とうたってはいるが、その実態は、知識のない労働者を、まずは100%健康保険に誘導する〝労災回避マニュアル〟だ

ただのミステイクではなく、犯罪的な意図(エアバッグが作動しなければ人が死ぬのだ)としてはビッグモーターよりも悪質といえる大胆な違法行為であるが、ビッグモーターは叩かれて倒産(民事再生法申請)し伊藤忠らに事業を譲渡したが、ビッグスポンサーのトヨタだと、短いニュースだけで、ぜんぜんマスコミが大きく報道しないのである。

法令違反をしても世間から叩かれないので、トヨタは多方面についてガバナンスがきかない会社になってしまっている。その一端が見えたのが、今回あきらかになった〝労災隠しマニュアル〟だ(右記)。

このマニュアルが徹底され、その通りに運用されているので、工場で作業中に負傷した染谷大介氏のように、明らかな労災でも、健康保険を強制されてしまう。作業中に腰を痛め一か月休業した原沢武氏(仮名)のケースでも、本人が「労災にしたい」と求めても、会社側は「健康保険にせよ」と指示していた。

つまり、品質データ偽造事件と同様に、労災認定数のデータも、偽装されている可能性が高いのだ。社内マニュアルに「とりあえず健康保険で」と明記して運用を徹底することで、明らかな労災事案であっても、健康保険で処理させ、従業員に知識がないことにつけこんで、そのまま健康保険で3割負担させてしまうケースが多い、と考えられる。

これはようするに、工場で従業員が作業中に負傷しても、自動車のリコールを〝闇改修〟で済ますように、人間も健康保険で〝闇治療〟して済ますことによって、当局や株主らに正確なデータを把握されないよう企んできた、ということである。

この運用を、なんと正式な社内マニュアルによって、組織的に、現場に求めてきたことがわかった。違法性の認識があるから堂々と表に出すことができず、裁判所に申し立てまでして、開示を拒んでいる。その点で、この文書はスクープだ。

業務上の負傷
業務上の負傷が少ないことをアピールするトヨタだが、健康保険を使って労災を回避することで実態より低い数値を偽装している可能性が高い(同社サステナビリティーレポートより)

■揺らぐ開示データの信憑性

労災認定されると、安全衛生管理ができていないことになり、労基署に調査に入られて行政処分を受けるなど、当局の介入を許すことになる。トヨタは、それを避けたい。もともとトヨタは生産現場の力が強く、カイゼン活動やQC活動で『工場のトヨタ』で売ってきた。労災が多いとなると、その看板にも傷がつく。

トヨタは労働安全衛生上の指標として、100万のべ労働時間あたりの労災死傷者数を示す「業務上の負傷」(休業災害度数率)を開示している。2023年度は「0.05」と、国内製造業平均の「1.29」や国内全産業平均の「2.14」に比べて著しく低く、安全が保たれていることをアピールする。

労災発生件数や労災死傷者数を、毎年のサステナビリティーレポートで開示し、安全衛生管理が行き届いている根拠にしている。この数値を、実態よりも低いものに偽装するのが、〝労災隠しマニュアル〟の狙いとみて間違いない。実際には、労災はもっと多い可能性が高い。

品質データ偽装事件とも共通するトヨタの隠ぺい体質が、また1つ、証拠とともに明らかになったわけである。すべて同根、コンプライアンス軽視の、官僚主義的な前例踏襲カルチャーから生まれている。そこには、数字さえ取り繕ってやり過ごせば、実態などどうでもよい、自分たちのやり方こそ絶対に正しいのだ――という、間違った「驕り」がみえる。

社外取締役や監査役、開示データの信憑性を保証している監査法人らは、あらためて労災データが実態を正確に表したものといえるのか、検証しなければならない。トヨタは、組織的に、健康保険による〝闇治療〟で、「業務上の負傷」数値を偽造している疑いが濃厚だからである。

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