チューリッヒ、パワハラ隠ぺい&被災者を愚弄する理由で解雇強行
画像1:チューリッヒにパワハラを隠ぺいされ、被災地を愚弄する理由で不当解雇されたと訴える秋山氏(40歳) |
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上司に英語ができるふりをしたい部長
秋山氏(実名、40歳、福島県いわき市出身、本人の希望により苗字のみ公表)は、アメリカのフロリダ州のプライベートカレッジ(私立大)を卒業後、スイスに本社をおく保険会社「チューリッヒ・インシュアランス・カンパニー・リミテッド 日本支店」(以下チューリッヒ)に1998年に入社した。
秋山氏は入社してから、新規契約をとる部署や、客へ送る郵便物を扱う部署などを経て、入社から約3年すると、事故受付センターに配属された。ここは、社内ではクレームチームともいわれる部署で、CMに出ている、事故を起こした時の電話番号に客がかけると応対する部署である。それから約10年間、ずっとこの部署で秋山氏は働いた。勤務地は東京都調布市にある事業所だった。
秋山氏はここで課長補佐としてやっていたが、2009年に突然、パワハラ事件に巻き込まれた。パワハラを実行したのは、直属の部長である諸井(仮名、40代後半頃)という人物だった。秋山氏はこう語る。
「諸井は、何か責任を取らなければいけないものがあると、どちらに転んでもいいように保険をかけることしか考えません。うまくいけば『これは私が指示してやらせたんです』と言い、うまくいかないと『部下が勝手にやったことです』と言います。
いままで諸井から指示を受けて、次の日になると『オレはそんなこと指示していない』とか『知らん』と平気で言われて、責任を取らされて辞めていった人はたくさんいます。それでいて、諸井は、上には、いつもペコペコしています。
それに諸井は、英語がほとんどできません。でも上司には英語ができるふりをしたいのか、メールや書類で、しょっちゅう、私に代筆させていました。諸井は非常にコンプレックスが強い人物で、英語ができないことにもコンプレックスを抱いていました」
こういう人物と長年やってきた秋山氏は、ついに諸井の“餌食”になった。
画像2:上が帝国ホテル。下がペニンシュラホテル。秋山氏はこうした高級ホテルやレストラン、航空会社に上客として扱われている |
ことの発端は、「Zトラスト」という社内の新しいシステム導入を機に起こった。これはチューリッヒの保険金支払いの新システムで、日本支社のCEO(最高責任者)の旗振りで、数十億円かけて2009年に導入したシステムだった。
当時、Zトラストは、いっぺんに全ての部署に導入するのではなく、秋山氏のいる事故受付センターが、テストランをすることになった。この試運転直前の2009年11月中旬、こんなことがあった。
秋山氏の部署は導入に向け、Zトラストのマニュアルを作成していた。そのマニュアルの存在を、Zトラストチームのダレンという外人が知り、こう言ったという。
「このマニュアルはとてもいいから、僕らのところにも下さい」
この言葉を受けた、諸井とは別の上司である枚川(仮名)は、翌日有給だったので、枚川の指示で、秋山氏がメールを送ろうとした。すると、諸井は、突然、鬼のような形相で秋山氏をにらみつけて、こう怒鳴り出した。
「なんでこんなメールを勝手に作成しているんだ! こんなものを事故受付センターで作成して社内に出したら、ハレーションが起きるだろう。何か問題が発生した時、批難の矛先がこちらに向くではないか!」
さらに、諸井は、こう発言した。
「お前が、外で扱われているのと同じように、社内で扱われると思うな!」
この意味について、秋山氏はこう語る。「私は、私生活では、高級ホテル、レストラン、航空会社等で、上客として扱われていました。諸井は割とそういうところが好きでしたので、私にコンプレックスを抱いて、ああいう言葉が出たのだと思います」。
ちなみに、筆者が取材を重ねるなかでも、秋山氏が「上客」であることは窺い知れた。例えば、取材場所を、日比谷の帝国ホテルの会員制ラウンジに秋山氏が指定したり、銀座のペニンシュラホテルのロビーで待ち合わせして、秋山氏のいきつけの店で撮影をしたり、といった具合だった。
画像3:調布事業所の入るビル |
秋山氏のそういうところに、諸井は劣等感を抱いていた。
さらに諸井のコンプレックスについて、火に油を注ぐような事件が起きた。2009年11月18日夕方、チューリッヒ社内でZトラスト導入開始前のセレモニーがあった。その式典の直前に、Zトラスト導入の責任者だった波柴(仮名)から、諸井の内線に電話が入り、こういう依頼があった。
「調布事業所の代表として、秋山君にスピーチをしてほしい」
波柴は、諸井よりも格上のポストの人物。そのため諸井は不愉快そうに、秋山氏に対し、「なんで波柴さんが、お前にスピーチさせたがるのか? お前は波柴さんとよく話すのか? 親しいのか? よく飲みに行ったりするのか?」と問い詰めた。「いえ、全く親しくありません。会社の外で会ったことは一度もないし、Zトラストの会議でも、直接話したことはありません」と返答。しかし、セレモニー会場に向かう間も、ずっと、「なんで、波柴さんがお前を指名するんだ」とぶつぶつ文句を言い、秋山氏がスピーチしている最中も、威圧的に睨み続けていた。
ちなみに、秋山氏のスピーチは、会場で受けた。
そのあとにマイクを取った波柴は、こういってほめたそうだ。
「調布のいいところは、このような“タレント”を持った人材がいるところです。スピーチを依頼したのは、セレモニー開始のたった5分前でしたが、面白いスピーチをしてくれて」
この日以降、諸井の攻撃は加速していく。秋山氏に対する、あからさまな無視、会議に混ぜない、部下がメールで送るときも「秋山には送るな」と指示する、といった「村八分」のパワハラを毎日のように繰り返すようになっていった。
秋山氏は精神的に参ってしまい、2009年12月18日~翌年1月6日にかけて会社を休み、1月27日~2月7日も休んだ。そして、2010年2月11日、心療内科の渋谷もりやクリニックに通院し、「パワーハラスメントの影響による重度ストレス障害」と診断された。「このときは法知識が乏しかったため、診断書を取り、会社に提出することまで思いつきませんでした」と秋山氏は語る。
小部屋に軟禁してパワハラ地獄
さらに、諸井の“コンプレックス”に拍車をかける事態が起こった。2010年3月30日、調布事業所に、外国人2人が突然、サプライズ訪問した。それは日本支社のナンバー2のポートマンと、Zトラストのシステム開発のナンバー1のアマンダ・カーリーという人物だった
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画像4:秋山氏が通った心療内科の渋谷もりやクリニック
画像5:解雇理由書
画像6:都内の信濃町にあるチューリッヒ本社の入るビル
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読者コメント
うまくいけば『これは私が指示してやらせたんです』と言い、うまくいかないと『部下が勝手にやったことです』と言います。・・・・典型的なクズ人間ではないですか。なんでこんな人間が昇進してしまうのか。外資でも国内企業でも基地外上司の下についたら最悪。せめて360度評価を導入してパワハラ上司を追い出せる仕組みを導入していればと悔やまれる。
転勤願いを出すなり、直訴して引きずり下ろすなり、下らない人間を重要ポストに置いてるような会社にさっさと見切をつけて転職でもすれば体壊すこともなかったのに。同じくリタイアした僕も後悔先に立たずですが。
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