2009年度決済の新聞社へ支払われた裁判員制度PR広告の価格。ABC部数に準じて偽装部数(押し紙)を含めた、ほぼ定価の「言い値」で設定されている。最高額は、読売の年間約1億円=全面広告2回。
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最高裁から電通など広告3社に4年間で約25億円の税金が広告費として支払われていたことが、情報公開で入手した資料により明らかになった。その大半が、偽装部数を含む「ABC部数」に準じて、各新聞社に実勢取引価格を大幅に超える、ほぼ定価通りの高額な「言い値」で支払われており、その最高額は、読売に対する年間約1億円(4年で計3億8,961万円)だった。読売が過去10年で広告収入を半減させたことからも明らかなように、実際の取引相場からはかけ離れており、入札ではなく随意契約または談合とみられる。国の借金が1千兆円を超えるなか、日本の最高権力の1角である最高裁自らが、国民の税金を広告会社や新聞社にとめどなく無駄遣いし、癒着を深めていた。政治はこの無駄遣いを容認し、事業仕分けの対象にもしていない。(2007~2010年の情報公開資料4年分は記事末尾からダウンロード可)
【Digest】
◇最高裁と新聞社が世論を誘導
◇偽装部数の増加で広告収入も増
◇新聞離れも広告の価格は上昇
◇裁判官が新聞に登場
◇請求書の黒塗り部分
わたしの手元に電通、朝日広告、それに廣告社の広告代理店3社が最高裁に送付した請求書のコピーがある。情報公開制度を利用して最高裁から入手したものである。各年度の広告代理店と広告費は次のようになっている。
決済年度 |
広告会社 |
広告費 |
2007年 |
廣告社 |
5億9997万円 |
2008年 |
朝日広告 |
6億8664万円 |
2009年 |
廣告社 |
5億6228万円 |
2010年 |
電通 |
6億5835万円 |
このうち電通の請求額は6億5835万円。この資金で最高裁は、電通に何を依頼したのか。請求の「件名」は次のようになっている。
裁判員制度広告(新聞広告、インターネットバナー広告)の企画、制作、広告掲載等実施業務
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裁判員制度のポスター。モデルの上戸彩に支払われた報酬は、情報「非公開」になっている。 |
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請求書に添付された見積もりは、6億5835万円の内訳を示している。
それによると支払い先は電通のほかに、全国の新聞社、雑誌、ウエブサイトなど。その大半が広告費で占めている。そこで本稿では、新聞広告を中心に中身を検証する。
◇最高裁と新聞社が世論を誘導
裁判員制度とは、有権者から選ばれた6人の裁判員が刑事裁判に参加する制度で司法改革の目玉である。そのためのPR手段のひとつとして、最高裁は新聞広告やネット広告などを選択し、多額の資金を投じてきた。
こうした状況の下で2007年には、前代未聞のスキャンダルが発覚している。
最高裁と地方紙が全国各地で「裁判員制度全国フォーラム」というタウンミーティングを開き、それに連動するかたちで新聞紙上に裁判員制度の「PR記事」を掲載したのである。実質的に記事を装った「広告」である。タウンミーティングに千葉日報など一部の新聞社がサクラを動員していたことも分かった。地方紙と最高裁が結託して世論誘導を行ったと言っても過言ではない。
裁判員制度をめぐるスキャンダルに、産経(千葉日報と同様にサクラ問題で関与)を除く中央紙の関与が取りざたされることはなかったが、このほどわたしが入手した資料によると、少なくとも広報戦略に関しては、中央紙にいわくつきの巨額な広告費が流れていることがわかった。
公開された資料をもとに、2010年度(09年度分)に電通からおもな新聞社へ支払われた広告費をあぶり出してみよう。広告のサイズは中央紙は全面15段、ブック紙と地方紙は5段、掲載回数は各紙2回ずつである。
【2010年度決算】
読売:1億 510万円
朝日:8962万円
毎日:6274万円
日経:4400万円
産経:3090万円
北海道:1650万円
中日:3850万円
西日本:1392万円
東奥日報:618万円
静岡:1054万円
京都:910万円
中国: 919万円
沖縄タ: 518万円
電通を通じて裁判員制度の広告を掲載し広告料金を得た地方紙は、36社。ブロック紙と中央紙を合わせると、総計44社が最高裁をスポンサーとする広告で利益を得たことになる。金額にすると、約6億2487万円である。
広告代理店は、問題の多い随意契約によって選ばれたのか、それとも公正な競争入札によって決定されたのか.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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公共広告の価格はABC部数に準じて設定される。それが偽装部数がなくならない原因でもある。写真は、販売店の店舗に保管されている「押し紙」(偽装部数)。 |
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裁判員制度に疑問を投げかける世論も強い。特に刑事裁判よりも、民事裁判の公正化を求める声が多い。 |
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読売に登場した加藤新太郎裁判官。加藤氏は、池田大作を被告とする裁判では、訴権の濫用で原告の訴えを棄却している。(YOMIURI ON LINEより) |
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情報開示請求で開示された資料には、黒塗りの部分も存在する。 |
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