私立高の非常勤講師が違法「業務委託」で劣悪待遇 業者に45%ピンハネされる異常格差社会の教育現場
画像1 高井氏の2年目の委託代明細。週16コマ、1コマ月9,000円で月額144,000円。1授業あたり2,250円弱になる計算。 |
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- 「業務委託」の非常勤講師
- 年収2割減、労災なし、健康診断も自腹
- 内定後に突然、「更新はしません」
- 国が違法認め是正指導
- 「委託と派遣の違いを認識していなかった」校長
- 「是正はした」イスト
- 業務委託講師は他に5校27人、私教連調べ
「業務委託」の非常勤講師
高井栄子氏は、都内の私大を卒業後、教員免許を取得するため、科目履修生として大学に2年間通った。その2年目の夏に、私学適正検査を受けた。のちに業務委託で職を得ることになる、そもそものきっかけは、この時だった。
私学適正検査とは、都内にある私立の中学、高校が加盟する「財団法人 東京私立中学高等学校協会」が主催するテストである。このテストの受験の対象者は、「高等学校教諭免許を取得した人、または同免許状を取得見込みの人」で、テストの目的は、「私立中高の教員志望者の、資質と適性の検査」である。
このテストの試験会場で、イストという会社がビラを配っていた。イストとは都内の代々木にある会社で、教育機関に教員を派遣したり、受験生に家庭教師を派遣したりしている会社である。(旧社名は代々木進学会で2010年から社名変更)。イストのビラを高井氏は受け取った。
季節は移り、同年秋ごろ、「私立の場合、自分で教員の職を探すには限界があるので、イストの派遣で、春から私立の学校で働けたら」という気持ちから、高井氏はイストに派遣登録した。
翌2010年3月、高井氏は、イストからメールで、仕事がある、という連絡を受けた。仕事先は埼玉県深谷市にある、「学校法人智香寺学園 正智深谷高等学校」という私立高校だった。
画像2 高井栄子氏 |
高井氏は、すぐにイストに電話をして、働きたい、と伝えた。すると担当のO氏は「それでは、学校に面接に行きます」という。
こうして10年3月下旬、O氏と高井氏は、学校に行き、当時の校長と3人で話した。
面接は、なごやかな雰囲気で、校長が、おだやかな口調で、同校の生徒数約1,100人のうち8対2で男子の生徒数が多いことに触れ、「それでも大丈夫かな?」と聞いたり、うちはスポーツが強い、といった話をしながら、スポーツクラスは全員男子生徒で、そこを担当してもらいたい、と言い、「それでも大丈夫?」と聞いてくるなど、面接というより、説明のニュアンスだった。
こうした穏やかな会話の後、高井氏だけ先に帰るように言われた。そして、徒歩約5分のJR深谷駅に着いたときに、担当者O氏から「決まりました」と連絡が入った。
高井氏は後日、契約書にサインをして、10年春の新学期から授業を受け持つことになった。科目は現代社会。出勤は週2回、計10コマ。収入は1コマ当たり月9,000円で、月収90,000円プラス交通費。この契約は、派遣契約ではなく「業務委託契約」だった。
年収2割減、労災なし、健康診断も自腹
こうしてスタートした高井氏の授業は、別段問題なく推移したが、5月にこんなことがあった。教職員の健康診断があったのだが、学校側から、「高井氏は受けられない」と言われ、問診票をもらえなかったのだ。理由は、「会社から来た人だから」というものだった。
画像3 上は正智深谷高校。下はJR深谷駅 |
高井氏は自腹で健康診断を受けることを余儀なくされた。他方、学校が直接雇っている非常勤講師は、健康診断を受けることができた。この違いは一体何なのか――。高井氏が自らの待遇に疑問を持ったのは、これがはじまりだった。
さらに疑問がわいたのは、年に5回ある定期テストが始まった時だった。高井氏はテスト問題をつくり、担当した計5クラス約150人分の、採点をして、評価入力といって点数をコンピュータに入力する作業をした。さらに、生徒たちに請われて、放課後にテスト対策のための補習を行ったり、赤点の生徒には後日再試を行い、不合格者には再々試も行った。
高井氏によると、テスト問題の作成には2週間、約10時間を費やしていたという。さらに採点には1クラスにつき1時間で計5時間。成績入力に約2時間。補習や再試、再々試を含めると、一回のテストにつき、授業以外の労働時間は優に20時間を超える。1年間で100時間以上である
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画像4上は都内の代々木にあるイストのあるビル。下はイストと学校、高井氏の3者が交わした業務委託契約書
画像5指導票1ページ目全文は記事末尾からダウンロード可
画像6非常勤講師の勤務実態を調査結果(私教連調べ)。全文は記事末尾からダウンロード可
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読者コメント
正智深谷高校の校長の教員免許の科目は何かご存知ですか。JAL経由で校長になりましたが、一度も教務経験がないのではないでしょうか。管理職なので、教員免許は必要であると考えられるのですが、科目が何なのか確認が必要かもしれません。教員免許更新制度がありますので、「無免許問題」が取りざたされる場合があります。
阿曽山大噴火の『盗撮犯に裁判官がアドバイス!?』では裁判官の意図は別としても盗撮容疑者にたいしてアドバイスをしたと理解される発言をしたという事が話題になっている。しかし、裁判官は発言問題で更迭されることはない。大きな「話の流れ」で誤解を解消できるからであろう。正智の教員が直面している地位確認訴訟でも「通年の教育課程における文脈」と当該教師の授業内容を考慮して発言問題を判断してほしい。
阿弥陀如来は正智(浄土宗)だけのものでhなく、各宗派に深い関係のある如来である。学校法人であるから、建学の精神が「選択・専修」でも南無阿弥陀仏をとなえれば大学推薦をもらえるわけではない。客観的な視点からの成績評定が必要である。教員にたいする評価も客観的かつ公平でなくてはならないはずである。
正智周辺の業者以外が正智のいいような「ゴロマキ」、「リップサービス」をする場合は、両親が子供を正智にいれて大学推薦をもらえる場合である。一般入試で受ける人とちがった「客観テストに基づかない価値観」が推薦をもらうためには必要である。監督へのおためごかしだけではだめらしい。
正智の体育コースは中学(公立)との連携が深い。偏差値が低くても部活をがんばれば推薦がついてくる。それは両親が生徒を正智にいれる「利点」である。ただし、体育コースの生徒や両親の方が埼玉工業大学に入学希望はしない。
正智に「やめさせ」工作があるかどうかは正智と(特に深谷・熊谷・本庄)あたりとの業者提携を疑う必要がある。あるいは、正智の学区と考えられる地域以外の業者が「風説」的な話を流布し始めたら、「おてつぎ運動」ならぬ、「ごろまき」運動の可能性あり。
正智推薦にももちろん推薦の「条件」や「基準」があるので比較的客観性を帯びたものである。そうでなくてはならない。しかしながら、しばしば実際の学力や本人の実際の希望と見合わない大学に入学する(させられる??)ことがないとはいえないような実状が確認できる。
旺文社パスナビによると、埼玉工業大学の工学部は46、東京電機大学の工学部は最低でも59である。正智推薦の場合は、必ずしも客観テストや評定が高い人が偏差値の高い大学に推薦されるとは限らない。どこにこのような一種の「ゆがみ」を生む権限があるのであるのか疑問である。
埼玉工業大学の理事はどのような人たちが就いているのか興味深い。およそ、高校における生徒の進路に良い影響を与えているとは考えにくい。もちろん、埼玉工業大学に入学したあと、正智の学生は理事に逆らえない環境にあるのだから気の毒である。確認をとればわかるが、埼工大の理事や正智の教員の子息が埼工大に入学した例はほとんどないはず。
高校の教員側からみると、情報文科系からATTACKになっても単位認定制度のような大学側の業務がなくなったにもかかわらず、情報文科系がない以前の普通化だけの状況とほぼ変わらない。ここで埼玉工業大学に生徒を送るという一種の義務を課されるのは単に負担が増えるだけである。しかも、高校の募集にプラスの影響を与えるとは考えにくい。
体育コースで埼玉工業大学以外に行きたい学生は大学で部活(もしくはサークル)で正智の部活でやっていたスポーツを続けると主張すれば埼玉工業大学以外に行ける確率がかなり高くなる。ただし、埼玉工業大学でも強いスポーツ(特にラグビー、卓球、サッカーなど)はその限りでないので、埼工大以外に行くには比較的高い評定が必要。
ATTACKは通常いわれるところの「普通科」である。正智の普通科の生徒は一般的に東京方面の大学に進路志望することが多い。埼玉工業大学はすべりどめであるというのが本音であるようだ。内部推薦の要項には「やる気があれば評定は問わない。」と書いているのだから、受験生であれば当然の対応である。
智香寺学園は「高大連携」を主張している。情報文系があったときには大学側も現桜美林大学同様単位認定制度等で実質的な制度上の連携をしていた。しかし、ATTACKクラスには単位認定制度はない。資格試験も高校教員が指導である。大学側が高校側に強制的に生徒を送らせようともくろんでいる。
体育コースのうち、埼玉工業大学に強い部活のないクラブ(たとえば、硬式野球・バレー・ゴルフなど)の進学先はいわば「埼玉工業大学以外」であることがほとんど折り込み済である可能性大(ただし、公にはいわない)。思うに、埼玉工業大学進学を強制すると、強化クラブへの入学者は減ると考えられる。
講師の先生はご存じのはずだが、正智では講師の先生が補修や追試をさせられることがある。教諭や常勤講師も8時間労働ではすまず、部活動指導などがあり、タイムカード管理などは事実上不可能。一方、事務所ではタイムカードで8時間労働、残業等を確認をとっている。
訴訟を起こした教員は校内無線LANのセキュリティを気にしていた。総務省「国民のための情報セキュリティサイト」にWEPは安全とは言えないと書いてあり、埼工大はWPA方式、公立高校は有線回線と聞いていた。教頭に書面提出し、自宅に確認FAXを送ってもらったが、学校側はWEPのことでなく教員が信頼していたノートンセキュリティソフトに関してOAの教員を罵倒したと歪曲した事実を言いつづけている。
地位確認訴訟をおこした教員は「アスペルガー」と学校法人側から断定的にいわれています。埼玉工業大学の心理学科の教員は独自の判断をしたのでしょうか。当時、その教員は埼玉県将棋部会の理事をしており、2人の全国大会出場者をだしました。教務も客観的な評価ができるように行っていました。「アスペルガー」の論文の勉強不足の可能性ありです。アスペルガーは論文議論になるほど判断があいまいな「いいのがれ病名」かも。
教頭も全校集会で「部活だけではだめ、勉強は当然。」と発言していました。「普通科」ですから当然です。問題視された教員はこのような内容を考えて「勉強は当然、部活はオプション」と発言しました。ところが、学校法人側は地位確認訴訟を起こした教員が「体育コースの生徒はオプション」と発言したと歪曲した非難をしたのです。
現在、地位確認訴訟をおこしている教員は懲戒委員会等で「見学の精神に反する」と非難されたのです。「選択・専修」が校訓ですが、体育コースでも「普通科」なので、勉強は本分です。「称名念仏」が建学の精神に基づくものであり、朝の勤行があるのが特徴です。問題視された教員は約6~7年間朝の勤行に出ていました。一方、教頭や校長は理事長がくるときの「おためごかし」のときだけ朝の勤行にでていたのが実情です(苦笑)。
非常勤講師の人はきづいているかもしれませんが、強化クラブの先生の出勤簿は『「出勤」扱いにしても「出張」の印が押していない日の方が少ない。』という状況が2012年度でも確認が取れると思います。私立高校の特色をだすのはいいのですが、場合によってはテスト前時点で授業数よりも自習の数が多かったりすることが・・・(苦笑)。
まあ、学校における「教務上の発言問題による懲戒処分」の判断の分かれ目となる判例を出してもらう方針で進んでいくつもりですね。これからの若い世代の教員にとって上司から授業内容に関して因縁をつけられて強制退職させられる理由となる判例になるかどうかを見極めるつもりです。もちろん、場合によっては控訴しそうです。
確認をとっていませんが、正智深谷高校の校長は教員免許を持っていないのではないでしょうか。一方では教員免許更新制度があり教員免許状という「形」を重視しながら、一方では教員免許状の有無を軽視・無視した学校経営を許している傾向があるようです。この矛盾(??)点に関しては私教連や日教組がよく訴えないでいられるな・・・と思ったりします。
しかしながら、残念なことに、深谷市の教育委員会は公立高校の業務にしか関与できず、埼玉県の学事課も平常点をごまかしたかどうかに関する監査をする権限がないとわかりました。もちろん、正智深谷高校には学事課から「平常点のごまかしに関する報告があった。」と連絡してもらったのです。あるいみで、私立は「好き勝手経営」できるということですね。
また、当該教員を生徒に対する不当な行為をした教員として懲戒免職にする一方で、生徒たちの進路に大きな影響を与える評定における平常点をごまかして卒業させた疑いがあるのです。問題視されたクラスの生徒たちの進路における影響は授業中の一時的な叱責よりも平常点のごまかしのほうが「有意差」があったはずなのです。
本人は以前から熊谷労働基準監督署に「不当な扱い」の経緯を報告していました。また、授業中の生徒に対する一時的な叱責は学校に苦情を申し出た生徒の進路を阻害するものではありませんでした(本人は3年で推薦先が決まったいたし、高校教員に進学先を強制する特権も権利もなかった)。
現在、正智深谷高校と地位確認訴訟状況にある教員がいます。授業中における発言問題と本人の「アスペルガー」症状に関する判断が議論の中心になります。勤務中は私立教職員連合にも所属し中央執行委員の一員でいましたが、単組における就任一年目の書記長・委員長の協力を得られず、問題を埼玉私学教職員連合の顧問弁護士に相談できず、懲戒免職になってしまったので、地位確認訴訟に至っています。
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