生活の党・森ゆうこ氏が最高裁の闇を指摘した「一市民」を提訴、820万円と言論活動の制限求める
「検察審査委員及び補充員選定録」。志岐氏らは、検察審査委員と補充員の「生年月」(日は含まない)の開示を請求したが、最高裁事務総局はすべて黒塗りにした。「生年月」では、個人を特定することは出来ないはずだが。 |
- Digest
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- 「森ゆうこは本気で最高裁と戦っていない」
- 訴状にも情報通とjされる人物X氏の名が
- 森氏は取材を拒否
- そもそも検察審査会とは?
- 司法権力の信頼がゆらぎはじめた
- リーク情報に踊らされた新聞各紙
- 検察官がサクラに向かって説明した可能性
- 情報提供者の感想が名誉毀損に
- 第5検察審査会は架空?
- 『週刊朝日』のスクープとロシアのサーバー
- 「検察の罠」だけでは説明できない
今年の10月2日、1通の訴状が東京地裁へ提出された。原告は、先の参院選で落選した「生活の党」の元代表代行、『検察の罠』(日本文芸社)の著者・森ゆうこ氏である。
(上)志岐氏の『最高裁の罠』。(下)森氏の『検察の罠』 |
一方、被告は『最高裁の罠』(志岐武彦・山崎行太郎著 K&Kプレス )の共著者・志岐武彦氏である。志岐氏は1942年生まれ。2004年に旭化成を退職したあと、2009年から「一市民が斬る」というブログを主宰している。
係争の背景になっているのは、2009年に小沢一郎氏が市民団体から政治資金規正法違反で東京地検特捜部に告訴された事件。特捜部は、嫌疑不十分で小沢氏を不起訴とした。
市民団体は2010年2月、検察審査会に対して不服を申し立てた。これを受けて東京第5検察審査会は審理を重ね、起訴相当を議決したが、東京地検特捜部は再び小沢氏を不起訴とした。
第5検察審会は2度目の起訴議決を断行(2度目の議決が下されると、起訴される)、小沢氏を法廷に立たせることに。そして、無罪が確定するまでのあいだ政治活動を制限される身の上となった。小沢氏は2012年に無罪になるが、起訴された直後から、第5検察審査会に対する不信の声が広がった。
その理由のひとつは、第5検察審査会が小沢氏に対する2度目の起訴議決を行った日が、民主党の代表選挙の日と同じだったからだ。当時は民主党政権で、民主党代表になれば、首相の椅子が約束されていた。
小沢氏の支援者の間では、起訴議決が小沢氏を首相にしないために何者かが工作した謀略ではないかとの推測が飛び交った。
こうした状況の下で疑惑追及の先頭に立ったのが、森ゆうこ氏と小沢氏の支援者たちだった。森氏は国会議員の職権を活かして、小沢氏の支援者たちは情報公開制度を利用して、調査に乗り出した。
その果実が、森氏の『検察の罠』と、志岐氏の『最高裁の罠』である。小沢起訴を「検察の罠」とみる森説と、検察審査会を管轄する「最高裁事務総局の罠」とみる志岐説が登場した。もちろん2つの説が厳密に分離しているわけではない。森氏も国会で最高裁の責任を追及している。
しかし、森氏は、自分が志岐氏から最高裁事務総局の責任を追及していないと批判されている、と考えたようだ。一方、志岐氏は小沢氏に対する判決が近づくころから、森氏の追及が、最高裁事務総局から検察へシフトしたと感じたようだ。
「森ゆうこは本気で最高裁と戦っていない」
2人の対立はエスカレートし、2013年7月28日の参院選投票日を前にした26日、森氏は講演会で、「一市民」に過ぎない志岐氏を次のように名指しで批判した。
情報提供者・志岐武彦氏の私見に対して、講演会で見解を述べる森ゆうこ氏。「同じ志をもっているひとたちが攻撃しあってはいけません」とも述べている。(出典:YouTube) |
「志岐武彦さんね・・志岐武彦さんはここに来ていないと思いますが、『森ゆうこは本気で最高裁と戦っていない』というふうにわたしを批判してくださっているんですけども、そういうわけではないですが、その最高裁からの情報を出させる、できることはすべてやっております。(森ゆうこ新宿紀伊国屋「講演会」=ここをクリック)後は結果が出てくるのを待つだけですけども、なかなか、あの、すべて情報を向こうが握っていますから、難しい部分もありますけれど、わたしはすべて、志岐さんの組み立てた理論を否定しているわけではなく、証明するのが難しいと申し上げているわけでして、同じ志をもっているひとたちが攻撃しあってはいけません。」(森の発言:YouTube[55分20秒の時点])
「志岐さんの組み立てた理論」とは、第5検察審査会が下した小沢氏に対する起訴議決は、最高裁事務総局による「罠(わな)」であるとする論理である。いわば小沢氏を「罠」に落としたのは、最高裁事務総局なのか検察なのかが、裁判の引き金になった。
一見すると些細な個人同士の争いのようにも思えるが、公権力の「罠」が裁判の争点になるだけに、さまざまな要素を孕んでいる。この点に配慮したのか、マスコミも一切、森氏の提訴を報じていない。
訴状にも情報通とjされる人物X氏の名が
ブログの記述で名誉を毀損されたとして金銭支払いを求めたり、謝罪広告を求める裁判自体は、特にめずらしいことではない。ところがこの裁判には、著しい特徴がある。
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読売新聞・白石社長にあてた市民グループの公開質問状。検察審査会の審査員が「9月に入ってからは、平日に頻繁に集まりを行った」とする報道の根拠を尋ねたが、回答はなかった。
茨城市民オンブズマンの石川克子事務局長が、審査員に対する交通費の支払いプロセスを示す「歳出支出証拠書類」から作成した一覧。これによると、小沢事件の第5検察審査会は、9月の議決前には1回しか開かれていない。また、他の検察審査会と比較すると、第5検察審査会だけが4月(1回目の審査の開始月)と8月(2回目の審査の開始月)に審査員の交通費の「発議日」がさかのぼって設定されている。(黒かすみの部分)。審査会に呼び出しておきながら、交通費を後日、まとめ払いすれば、通常は苦情がでるはずだが。第5以外の検察審査会では、このような例は確認されていない。
特捜部の「出張管理簿」の一例。小沢事件の議決が行われた9月14日よりも前の検察審査会に、担当の斎藤検察官が出張した記録は見当たらない。検察官には議決前の説明が義務付けられているはずだが?
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検察の罠とかいう本も出しているから、としてもSLAPP裁判はないな>『謀略は最高裁事務総局なのか、検察なのか、それとも双方の連携プレーなのか?』
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読者コメント
「最高裁の罠」という本の著者である志岐氏さんは、タイトルにもあるように小沢事件審査の不正疑惑は検察はもとより最高裁にあると指摘しています。その志岐さんを森さんが提訴するということは、裁判所にとっては「待ってました」と言わんばかりの判断をするのではないかと心配です。そうあってはならないことですが。その辺の配慮が森さんになかったのが残念です。
森前議員が「言論活動の制限を求める裁判を」をという記述は,正確なのでしょうか? これは民事裁判で,私人同士の争いであれば,双方の利益侵害にもなりかねないので軽々に感想を言えないことであるので,ぜひ正確なところを続報していただきたくお願いします。
コップの中の嵐も結構なこと、どう転んでも宜しい。検察~最高裁の実体が曝されることになる裁判だから、大いに遣ってくれ給え。
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