神戸製鋼社員がパワハラ過労自殺 遺書に「会社に殺された!」「パワハラの言葉をご存じですか」
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過労自殺した早見明氏(仮名)の遺書に名指しで「パワハラ」を告発された、神戸製鋼の100%子会社・神鋼検査サービスの松本陽二常務(後に社長に昇進)。写真は『新報』HPより |
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- 「異例の昇進」から下り坂
- 「上司(松本常務)との折り合いが悪い」
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- 「退路を断て。もうお前には帰るところはない」元上司
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- 「松本常務殿 パワハラの言葉をご存じですか」遺書
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- パワハラ常務は社長に昇格していた
「異例の昇進」から下り坂
判決文や陳述書などの裁判資料によると、原告の早見明氏(1953年生まれ、死亡時52歳、仮名)は、大学院卒業後、79年に神戸製鋼に入社し、鋳鍛鋼(ちゅうたんこう)部門(電力、鉄鋼、化学、造船、自動車、航空機等の心臓部の素材の製造部門)で開発・技術、営業に従事した。
その後、00年1月1日付で神戸製鋼100%子会社の神鋼検査サービスに出向した。この会社の業務は非破壊検査がメイン。非破壊検査の歴史は次の通り。
非破壊検査とは、戦時中、兵器の増強により、特殊鋼板の溶接が多くなり、溶接部の母材に応力割れが多発したことにより、その割れの先端を突き止めるため、検査(割れ部分に軽油を塗布し、表面の軽油を拭い、乾燥した後ハンマーで振動を与えたり、光を照射したり、小型トーチ(たいまつ)であぶることで生じる油煙で割れの先端を探ったり、石油浸透検査法などの検査)をしたことにはじまる。
戦後は、工業製品などに放射線、超音波、磁粉浸透法などの検査を行うようになった。1972年頃からは、構造物の劣化診断技術や航空機・宇宙ロケットなどの微細な傷に対する新しい検査技術が活発に開発され、現在では、船舶、航空機、鉄道、橋梁、道路、建築物、鉄鋼、非鉄金属、セラミック、その他新素材など、検査対象は産業全般に及ぶ。大きく分けると、原子力発電・火力発電などの電気分野、橋梁やビルなどの建築構造物、精密機器などの工業分野、農業、医療などの民生分野などがある。そのうち、電気・ガス・石油業のエネルギー産業が45%を占める。(参考資料:社団法人 日本非破壊検査工業会より孫引き)
早見氏はこの子会社で、営業部次長、検査部部長などを経て、04年4月から検査プロジェクト室長に就任。そして05年3月には、自らの強い希望で、参事から「参与補」への昇格が内示された。これは神戸製鋼の役職で、一般の会社でいう課長から次長への昇格に当たる。
当時、早見氏は妻の雪枝氏(仮名)に「異例の昇進なんだよ」「今度62歳のベテランの人が僕のところ(部署)に来るんだよ。いろんな経験をしてこられた人なんだ。どんなふうに働いてもらったらいいかなあ」「プロジェクト室長は僕が初めてだから、どう切り開いていったらいいのか、悩むところだよね」と抱負を述べていた。同僚にも昇進を嬉々として報告していた。
だが、皮肉にも早見氏の人生のベクトルが下向きに転換したのは、ちょうどその昇進からだった。
「上司(松本常務)との折り合いが悪い」
昇進内示の直後、上司である松本陽二・代表取締役常務から、検査プロジェクト室の将来戦略の策定を命じられた
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上は関西電力・南港発電所。下は加古川製鉄所。(関西電力、神戸製鋼HPより)
ホテルの部屋には、パソコンで打ち込んだ遺書と、ホテルのメモ用紙に手書きした短文の遺書があった。これは前者概要。A4用紙につづられていた。(※筆者が裁判資料をメモして作成したもの=コピーや撮影はできないため)
ホテルのメモ用紙につづられた遺書の概要
神戸地裁
専門紙・新報HPの11年4月18日付に松本陽二社長の顔写真が載っていた。記した赤丸の箇所。同HPより
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読者コメント
鹿島製鉄所内の物流会社でも同じような事案が起きた。
まだ50歳の管理職と聞いてます。
加古川製鉄所の厚板室のO迫のパワハラがやばい。
部下にクズとか死ねとか大声で怒鳴るや、ネチネチいじめるなど
今年の3月で若い子を一人退職させ、そろそろ二人目出そう。
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