「犯罪行為でも上から命令されたらするのが当たり前」と言われた――無断放水&水道料金不正徴収の第一環境、内部通報者に聞く検針の現場と「通報者が全く保護されない」実態
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「健全な会社になってほしい、との思いから、見過ごすわけにもいかず行動に移しました」と語るAさん(40代正社員) |
- Digest
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- 過大徴収を隠すために漏水
- 天下りを通した水道局との癒着
- 止められて「おんどりゃー」とクレームつけにくる市民
- 門に鍵、庭に犬、水道管が破裂する…
- 検針員殺人事件も発生――人間が検針するリスク
- 水道メーターは電気で動いていない
- 健全な会社になってほしい
- 無断放水2件だけに矮小化も、「ゆうに3桁はやってる」
- 17億円落札の前月に社内通報
- 内部通報者は、全く保護されない
過大徴収を隠すために漏水
報道とは、これである。朝日・読売・毎日・NHK・山陽新聞などが2016年秋、一斉に報じた。
過大徴収:委託会社が水道検針ミス 無断散水でつじつま 岡山市
岡山市水道局からメーター使用量の検針業務を委託されている第一環境(本社・東京都)の岡山営業所(北区)が、検針の誤り22件を最長2年半放置していたことが、水道局などへの取材で分かった。うち4件は誤りの帳尻合わせで実際の使用量より過大に料金を徴収していた。水道局は10月31日付で同社を書類で厳重注意とし、一部については差額を返金した。
水道局や同社などによると、同社は2008年から検針業務を請け負い、市内で年間約180万軒のメーター使用量を確認している。22件はいずれも社員が検針の際、使用量を誤って過大に読み取っていた。過徴収があった4件のうち2件は長期間不在の契約者宅の敷地内に無断で入り、数十分間、庭の散水栓から水を流し、誤った値まで使用量を増やしていたという。
同社は、内部通報を受けて9月中旬に社内調査。誤りについて10月に始末書として水道局に提出した。同社は岡山営業所と管轄する中四国支店の幹部ら6人を社内規定に基づいて処分したという。(2016年11月29日『毎日新聞』)
第一環境は水道事業受託大手で、31都道府県、約3千万人の水道料金徴収や検針業務に関わっている。
その会社の検針員が、水道使用量のメーターの数字を転記ミスした場合に――それは人間がやる以上は一定の確率でミスが発生するので仕方がないのだが――、その帳尻を合わすため、勝手に顧客の庭の散水栓から水を流し、間違って記した数値に合わせて何事もなかったかのように料金を請求していた、というのだ。
水道泥棒を、水道の検針業者である第一環境が自ら、組織的に行っていたわけである。それも、Aさんによれば、少なくとも3ケタ、100件以上はあるはずだが、ろくに調査もせず「2件だけ」に矮小化し、終息させてしまった。
ミスがあったら、それを利用者(水道契約者)に伝えてお詫びし、過大徴収分は返金するなり、次回の徴収分から差し引くなりすればよいと思うのだが、この検針業者「第一環境」は、発覚を恐れた。岡山市水道局からの委託事業なので、ミスが多すぎると職務怠慢で、仕事の受注に支障が出ると思ったのだろう。
発覚の発端は、2年前の夏に遡る。内部通報者のAさん(40代正社員)は、岡山営業所の検針班に配属された2016年6月、こう言われてとまどったという。
「検針員さんが間違えたから、直しに行ってよ」
Aさんは中途入社後、10年以上のキャリアがあったが、料金徴収の部門にいたため、検針の部門は初めてだった。直しに行く先というのは、公園の水道メーター。よくよく聞くと、「直す」というのは、間違って転記した数字に合うまで散水してこい、という意味だった。Aさんが自身の体験を証言する。
「そのとき、心のセンサーが鳴って、やりませんでした。これはやってはいけないことだろう、と。なのに上司は、『コンビニに買い物いってきて』というくらいの軽い感じで、みんなに流しに行かせてたんです」
公園は、岡山市庭園都市推進課の管轄であり、その水道代は公金から支払われている。ミスを隠すために市民の税金が無駄遣いされてきた構図だ。しかも、その仕事をこの会社(第一環境)に発注しているのは、岡山市水道局自身である。もちろん公園だけではなく、一般の家庭でも、転記ミスが起こると、散水にいっていた。
「一般家庭などで、庭に散水栓がない場合は、送水管のナットを緩めて流す、という高度な技も使っていました。少しずつ漏水させて、翌日、締め直しに行くんです。平均すると、毎月5件はミスがありました
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「1日230件検針をすると日給5000円+加算給=日給1万円!」で募集がかかっている
2016年11月28日付の宮崎克己社長によるお詫び
第一環境は、17億7300万円で水道事業を落札。内部通報は、その前月のことだった。
2017年7月の社内報で「流した水量は最大で約100リットル」と何の根拠もない数字が常務から報告され、Aさんは驚いたという。
保護されない内部通報者。政府内でも問題意識はあり、日経にリークして様子見している。通報制度に詳しい光前幸一弁護士は「いまの制度は実効性が乏しい。従業員は報復人事を気にして通報をためらう」と指摘。(2018/2/13『日本経済新聞』)
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