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医師の業務はどう変わるのか――AI時代に食える仕事食えない仕事

情報提供
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内視鏡手術支援ロボット「ダヴィンチ」。もともと戦場に近い病院にいる負傷した兵士を遠隔地から手術するという発想で開発が始まった。次世代高速通信「5G」で、さらに遠隔からの操作も技術的に可能となる見通し。
 医学部の定員抑制政策(2016年の東北医科薬科大まで37年新設なし)によって、「年2,000時間を上限に残業させてもやむなし」とする議論が政府で検討されるほどに不足感と偏在が発生し、雇用不安とは無縁なのが医師だ。10年後の2030年前後は、人数の多い団塊世代が80代となり医療需要がピークに達するため、さらに不足感が増す。もはやAIが仕事を奪うなどという話は論外で、「どれだけテクノロジーが医師を支援し、効率的に患者をさばけるか」が焦点である。
Digest
  • 外科医の10年後
  • 外科医は「上澄み」しか生き残れなくなる
  • 内科の診断作業はいずれ自動化
  • AIはバカ正直な判断しかできない
  • 放射線科医が一番早い
  • 予防医療で活用されていくAI
  • 「未病」を対象とする市場が拡大していく

デジタル化の影響は、医師の専門領域によって異なる。放射線科医や病理医は、既にAIが人間の眼を超えた「映像・画像診断」が主要業務であるため、影響が大きい。一方で、人間の心を扱う精神科医、そして、患部の立体的な認識が不可欠となる外科医・麻酔科医は、しばらく影響を受けそうにない。

外科医の10年後

飛行機や電車がオートパイロットで半自動化しているように、手術も、技術の進化で自動化する時代はやってくるのか。既に、患部を縫い合わせる手縫いに関しては、「自動縫合器」の登場によって、外科医の腕の差は、吻合・縫合についてはなくなったという。

最先端の手術機械『ダヴィンチ』を使った心臓血管手術を専門とする外科医・渡邊剛氏(ニューハート・ワタナベ国際病院院長)は、「手縫いのほうがいいんだ、と4歳上の先輩医師が言っていたのを思い出しますが、5~10年で手縫いはなくなりました」と言う。

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渡邊剛・ニューハート・ワタナベ国際病院院長(公式サイトより)。ダビンチを用いた心臓内視鏡手術の第一人者。同病院は2014年の開院以降の5年間でロボット手術実績620件と開示している。

縫合だけでなく、病巣の切除業務自体も、自動化される可能性はあるのか。「リンパ節の郭清(切除)は、今でも、医師のウデ、手先の技術が必要です。AIは、まだリンパ管と血管はおろか、動脈と静脈の区別もできません。自動手術については、まだほとんど研究が進んでいないのが実態です」(同)

ダ・ヴィンチはじめ、人間の手の延長となるツールの進化は目覚ましいが、神経・脂肪・血管といった3次元構造を自動認識し、メスや針が自動で切り進み…という段階に至る道筋は、まだ全く見えていない。現在見えていない以上、10年後もその領域までの進化はないとみてよい。

つまり、手術のコアとなる本質的な判断や手作業は人間の領域として残る。ダ・ヴィンチは“手術ロボット”ではなく、厚労省によると「遠隔操作型内視鏡下手術装置」であり、これが実態に近い。遠隔操作で、内視鏡を使って手術を行う装置だ。つまり、従来から行われていた低侵襲の内視鏡手術を、離れた場所から行うもので、その操作はあくまで人間が行う。ロボットではない。

外科医は「上澄み」しか生き残れなくなる

外科医のキャリアはどうなるのか。一見、手術機器が進歩すれば、誰でもラクに手術ができるようになるとも思えるが、現実は真逆だ。使いこなすためには熟練を要し、経験に比例して生産性が上がっていく。製造業における「経験曲線」と同じ理屈である。

「ラーニングカーブが大きい。ダヴィンチによる心臓血管外科手術について言えば、最初は8時間かかったものが、150件~200件経験すると、最後は2時間でできるようになります

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本稿は『週刊東洋経済』2019年4月8日発売号に掲載された『AI時代に食える仕事食えない仕事』P25(医師)の原文です

「むしろ検査数が増えるのでは」と予測する放射線科医(40代)

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