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リクルート転勤ナシ「地域正社員」の働き方 現役SE社員が語る「向いてる人、向いてない人」――ユルめなユニクロ型に

情報提供
■入館証
リクルートの社員証兼入館証

少子高齢化を背景とする人手不足と、政府が後押しする「働き方改革」「雇用安定化」の末に、徐々に広まってきた転勤ナシの地域限定正社員。リクルートにも2021年4月に制度ができ、3年弱が経とうとしている。「首都圏よりは地方勤務で、その土地が好きで、親元から離れたくなくて、副業ができて、子育てや趣味などライフのほうを優先したい人、なかでも女性にとっては、悪くない働き方ではないでしょうか」――。そう話す現職の地域正社員(SE社員、統合前から在籍)に、「内側から見たリクルート」の実態を、総合職(GE社員)やKS(契約社員=旧キャリアビュー職)との違いを含め、詳細に解説してもらった。

Digest
  • 全員が「上限100万円」に統一された退職金
  • ニューR社員は損している
  • 就活生を騙し撃ち
  • なぜホットペッパーはKSメインなのか
  • 契約社員の転職先はパーソル、エスエムエス、マイナビ
  • 地域正社員の月例給とボーナス
  • 勤務地限定型のままGMはアリか
  • 正社員の平均年収は600万円くらい
  • 部活つながりからの独立
  • 増える転勤拒否労働者
  • 「転勤イヤでGM→地域正社員に転換」は見たことない
  • よもやま、TTP…社内用語いっぱい
  • 地方のほうが低い離職率

※資料は末尾にてPDFダウンロード可

■日本最大の格差社会
リクルートが絶対に開示しない情報が、低い平均年収と高い非正規比率だった。2021年の統合を機に非正規の多くを「地域正社員」に移行したが、待遇は横滑り。結果、年収9億円超の出木場社長~300万円台の非正規契約社員(KS=最大3年半、旧キャリアビュー職)まで、約300倍におよぶ日本最大規模の超格差社会が社内に出来上がった。社員平均年収は約600万円と推定され、バラツキが大きい。それは、かつてボトムアップで有為な人材を輩出し“リクルート共栄圏”を築いてきた時代からはうって変わった、ジリ貧日本の縮図ともいえる、市場原理主義社会の成れの果てだった。

全員が「上限100万円」に統一された退職金

■2本目掲載用 SE社員契約書
処遇条件通知書兼雇用契約書(2021年4月~)より

リクルートは2021年の主要7社再統合を機に、非正規の正社員化を進めました。私は統合前から非正規社員(地域限定・半年更新・無期雇用転換アリ)として在籍していたため、自動的に「SE社員」という地域正社員に移行しました。

このタイミングで劇的に変わったのは、正社員の退職金制度でした。総合職(GE社員)も地域正社員(SE社員)も、全員共通で「上限100万円」に統一となりました。その結果、契約社員→地域正社員に移行した自分のような存在は、退職金分がプラスになって恩恵を受けました。ただ、ボーナスは業績次第で出ないこともあるので、今後はわかりません。

新退職金制度

また、3年契約で更新ナシのキャリアビュー(CV)職は、KS(契約社員)と呼び名を変え、『ホットペッパー』の広告企画営業職として、そのまま制度が残ることになりました。こちらも、元から「キャリアアップ支援金」という名の退職金が100万円あったので変更はありません。ただ、途中で辞めるともらえません。

ニューR社員は損している

大幅に待遇面が悪化したのは、総合職(GE社員)です。従来から在籍している社員は過去の契約がそのまま権利として継続しますので変化ありませんが、2022年度以降に新規で入社する社員から切り替わりました。実に大胆な変更だと思います。

その結果、「2021年までに入社したオールドR社員」と、「2022年度以降に入社したニューR社員」との間で、甚大な格差が生まれています。その差は、入社時期と統合前に在籍していた会社によっても変わるのですが、最大で1500万円や2500万円といった巨額にのぼり、主に退職金分のカットによって行われました。その分、ニューRの給与水準ベースを上げるといった埋め合わせは何もしていません。単純な人件費カットで、会社の利益を増やし、その成果で、業績に連動する経営陣の成果報酬が上がっただけです。

廃止となった「フロンティア制度」の説明=旧公式サイトより

こうした短期目線の改革を実行した出木場社長の年収が9億2千万円と聞いたときは、さすがに驚きました。労組がないからといって、社員の待遇を悪化させて目の前の利益を増やしても、今の時代、すぐにバレて、よい人材が入社しなくなりますから、リクルートの強みを失い、組織が弱体化するだけでは、と思っています。

■オールドR社員だけが持つ権利とは

2021年までのリクルートには手厚い早期退職金制度があったため、30代までに辞めて独立・起業する人が多かった。

①「フロンティア制度」=新卒で6.5年、中途で5年を過ぎると、いつ辞めても年俸1年分の退職金を貰える。歴史は古く、旧「OPT制度」を2004年に改訂してフロンティア制度となった。この歴史ある制度を、現経営陣は、まるごと壊してしまった。これは人材輩出を特徴としてきたリクルートにおける歴史の転換点ともいえるものだ。

②「ニューフロンティア制度」=通称“当たり年”。3年ごとに訪れる特定の年齢「当たり年」で辞めると退職金を追加で支給。節目で退職を後押しすることで、組織の老化を防いでいた。金額は35歳と38歳で750万円。41歳、44歳、47歳で1500万円。『フレックス定年制』の後継制度として2011年にスタートし、住まいカンパニーで500万円と1000万円など、金額が異なる分社もあった。

この2つの制度に基づく権利は、同時に行使することができた。たとえば中途組なら、30歳で入社して35歳で辞めると、年俸1年分(800万円とする)+750万円で、計1550万円を早期退職金として受け取り、それを軍資金にして独立・起業することができた。年俸1千万円で41歳に辞めれば、2500万円を早期退職金として受け取れた。

従来、この1500~2500万円を手にして辞めるのが、一般的なリクルート正社員の辞め方だった。オールドR社員は「社員持ち株会」で上場前からの株式を保有しているケースも多く、資金的な余裕が独立・起業を後押しした。これが、リクルートが稀有な人材輩出企業としてのブランドを確立した、制度的な背景である。ニューR社員は、これがまるまるなくなり、一律100万円になることから、人材輩出の流れは止まる可能性が高い。

就活生を騙し撃ち

この大胆な不利益変更は、就活中の学生に対しても秘密裡に行われ、社外にもいまだ公式発表されていませんから、「聞いていた話と違う、一方的な不利益変更ではないか」――と正当なクレームをつけた新入社員との間でトラブっている、という話を聞きました。同じ仕事内容なのに、入社が1年遅いだけで取り分を減らされたら働き損ですから、当然の抗議だと思います。

結局、この圧倒的に重要な制度変更の件は、うやむやにされ、何も補償は行われなかったそうですが、年収1年分(フロンティア制度の権利)だけでも巨額ですから、『ごめん、忘れてた』で済む話ではないでしょう。そういう、情報格差のある弱い立場の社員を軽視する体質がありますので、これからリクルートに入社を考えている人は気を付けてください。

■掲載用:社員の定義
社員の種類:GEとSEのみが正社員である

全体像から説明すると、リクルートには雇用形態が様々あり、主なものは①~⑤です。ただ、人数や比率などを一切開示しないため、全体像をつかめないようになっています。社員であっても、ほとんどの人が漠然としか知りません。

リクルートの雇用形態:7種あり、①と②のみ正規雇用。

① GE社員=総合職 General Employee

② SE社員=地域正社員 Specific Employee(地域と職種が限定されている)

③ KS=地域限定の契約社員(旧CV=キャリアビュー職、6ヶ月更新、最大3年半)

④ TS=地域限定の時給制社員(6ヶ月更新)

⑤ 継続=定年後再雇用者

その他、SP、CE、カウンター、など。(『就業規則』参照)

①と②が正社員で、それ以外はすべて非正規雇用になります。もっとも人数が多い非正規雇用者はどこにいるのかというと、旧リクルートライフスタイル社の『ホットペッパービューティ』『ホットペッパーグルメ』で現場営業を担当する旧CV職(現KS=契約社員)です。ここだけは統合前の仕組みをそのまま残すという決断がなされ、最大3年半の在籍で、どんどん人が入れ替わって行きます。同じ旧リクルートライフスタイル担当媒体でも、『じゃらん』の営業職は、経営統合後、全てSE社員に切り替わっています。

KSの給与
KSの給与。地方では1年目359万円と、3年後に切られる雇用リスクを負う割に、低水準である。

このKSは現在、地域によって年収359万円(地方)~413万(首都圏)が設定されており、3年勤め上げると、退職金100万円がもらえます。そのまま地域正社員に移行する人もいて、その場合は、100万円はもらえません。なお、地域正社員(SE社員)のほうは、地方でも首都圏でもグレードが同じなら同じ給料水準という点が、KSと異なる重要なポイントです。

なぜホットペッパーはKSメインなのか

KS(契約社員)には、重要な仕事は任されません。3年後にいなくなってしまう社員に重要な情報を持たせるわけがないですし、重要な顧客との関係性も3年後に確実に切れるわけですから、「使い捨て」要員としての採用です。それを理解したうえで、お互いがお互いを利用し合う関係を理解して働くならOKだと思います。

なぜ『ホットペッパー』だけKSを残したのかというと、

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KS(旧CV)が3年勤め上げた場合は25%が地域社員になる、という

リクルート非正規(契約社員)出身のmoto氏。元リクだからmoto。『転職アンテナ』を創設。「元リク」ブランドをフル活用して成功。キャリアステップとしてリクルートを利用する参考になる。

地域正社員の月収。ボーナスは「出すことがある」と明記し、業績が悪化したら出ない。業績とボーナスの算定式が明示されておらず、胡散臭い。S05~S06がチームリーダー(TL)。地域正社員のグループマネージャー(GM)は、「将来的に可能」と曖昧に説明されている。

総合職が少ない営業現場。8割がた地域正社員が担っている。

リクルートのミッショングレード制(総合職・地域正社員)

地域正社員10年めより総合職1年目の年収が高いことも普通にある

新入社員より低い「降格用グレード」が2つずつ用意されているリクルートの給与テーブル

社員持ち株会で積み立てると奨励金5%支給。

リクルートの部活動分類と参加者数(2022年10月時点)。656個もあり、文科系、飲食系、スポーツ系の順に多い。並みの大学より活発。在籍中の副業や、独立する際のビジネスへとつながることも多いという。

リクルート「働く」重要データ。26項目のうち10項目も非開示。総合商社などはこれら項目を全開示している。

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