オープンハウス新卒1年目社員が夏休み最終日に自殺しました ③――自宅の鍵を上司に預け、1日16時間拘束、休みは月1~2日
当時の募集資料。現場実態との乖離がすごい。年間休日104日で「ワークライフバランス」と認識している。 |
出社は朝7時10分だが、打刻は9時。退社は23時ごろでも、打刻は22時。長時間拘束によって平日は「帰って寝る」以外にプライベートな時間がないうえ、休日が月に1~2日だけ――。当時の同僚によると、自殺したタカシさんが勤務していた職場の労働環境は、逃げ出したくなって当然、ともいえる過酷なものだった。しかも、出社拒否や失踪の対策として、新人は上司に自宅の鍵を預けさせられていた。「私も、自宅の鍵を上司に預けていました。それが当り前だ、という雰囲気で言われ、従うしかありませんでした」(元同僚)。まるで、反社が借金のカタに強制労働させるかのような勤務環境のなか、逃げ場をふさがれた末の死だった。
- Digest
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- 朝7時10分出社からの1日16時間拘束
- PC2台体制で労働時間を偽装
- 「1日4~5時間の睡眠」は東京でも
- 「超過残業代は次のボーナスで引くから」
- 「業者訪問以外の仕事は、休みの日にするもの」と洗脳
- カミソリ地も固定資産税も手土産もぜんぶ自腹
- 「休みはいらない」「おまえ、何やってんの?」
- 「家の鍵を預かる」という人権侵害
朝7時10分出社からの1日16時間拘束
「私が会社を辞めて、改めておかしさに気づいた点は、労働時間の長さや休日の少なさでした」――。オープンハウス大阪事務所で2022年8月、入社4か月あまりで自殺したタカシさんの元同僚が、当時を振り返る。
まず、定時が「9:30~19:00」なのに、日々の朝礼は9時、終業会議が20時に設定されていたという。最初から時間外労働が前提だった。実際の拘束時間は、もっと長い。
「新人の出社時刻は、7:10でした。職場を掃除したり、エアコンをつけたり、その日の自分の営業活動の準備をします。打刻は9:00。PC上から、労務管理ソフトのボタンを押す方法でした。同様に、退社は23:00まで残ることも普通にありましたが、22:00に『打刻!』と幹部が叫ぶと、まだ打刻を終えていない社員たちがPC上から退勤ボタンを押して、残業を続けていました」(元同僚、以下同)
荒井正昭社長(創業者)。開示資料によると、平均勤続年数は約3年と短い。社員をどんどん使い捨てていく。サステナビリティはない。 |
そもそも「22:00」が十分に遅い時刻で、定時の19:00から3時間も残業している。3時間×20日=60時間/月。この60時間分は、予め支払われることが決まっている定額分の残業時間だから、22:00までに退勤していることにしたい。朝のほうは、自主的に早く来て勉強しているだけ――という建前で時間外にはカウントしません、というのが会社側の理屈だろう。
22:00までに打刻、つまり退勤ボタンを押す。そこから、引き続きパソコンでログインしたまま業務を続けたら、ネットワーク上に記録が残ってしまうはずで、いくら東京本社から遠い大阪の事務所といえども、上場企業として労務管理責任を問われてしまう。では、「出勤」の打刻前と、「退勤」の打刻後は、どうやって仕事をしていたのか。
PC2台体制で労働時間を偽装
「なぜ、打刻後も仕事ができてしまうのかというと、会社にあるパソコン(PC)が、1人あたり1台じゃないからです。マネージャー以上はPC2台体制で、片方を偽装用PC、もう片方を作業用PCとして使えました。兵隊社員(プレイヤー)も、2人で1台くらいは偽装用PCがありましたから、片方でログインして打刻し、その後はもう1台で仕事をする、ということができました」
これはなるほど、であった。この方法だと、サービス早出やサービス残業をしていても、どこにも記録が残らない。労基署の調査が入っても、表向きの、虚偽の勤怠記録を出して騙すことができる。
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当時の給料は、固定残業代「60時間分」込みで月給30万円
2022年の給与と冬賞与(手取り)。超過残業代が出るようになったが、その分は賞与から引かれ、実質的には支払われなかったという。
1センチのカミソリ地についての説明(元同僚)
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