PwC「現場は〝やさしい、コンサル。〟でもないです」――社員が語る『採用』『儲け方』『働き方』の実情
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「やさしい、コンサル。」で逆張りの採用ブランディングを打ち出すPwCコンサルティング。もちろん現場はそんなわけがない。 |
売上優先で〝地雷マネージャー〟が昇格してしまう現実、機能しない「マネージャー評価」、みんな無視する「みまもりメール」(PC稼働が長すぎる人向けの注意喚起)。多忙な現場では有休消化もできず長時間労働が当り前だ。「自分は未消化の有休が40日たまっていますし、残業75時間つけた月もあります。同僚は月120時間、残業申請していました。対外的には休みをとれるようなことを言っていたり、『やさしいコンサル。』を打ち出して採用しようとしてますが、現場はそうでもなくて、パワハラ対策など心理的安全性も低いです」――。現役社員に、採用プロセスから、プロジェクト体制、他社と変わらぬハードな現場実態等についてじっくり聞いた。
- Digest
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- インターン採用「採点」の実情
- 具体的な採用基準
- リーダー役が命運を握る
- 性別ダイバーシティーへのこだわり
- 高給を払える「儲け」のトリック
- ①実働マネージャー50%、シニアソ100%で月900万円!
- ②実働マネージャー40%+アソシエイト100%で月920万円!
- 仕事内容の大半はSIerと同じ
- 監査法人系としてセキュリティーに厳格、自由度は低い
- 転職先は非JTCに限られてくる
- 『コンサルには、いつでも行ける』が学生に伝わってない
- 残業や休日は他のコンサル会社と同様「予算次第」
- 『みまもりメール』は、みんなで無視して終わり
- 〝地雷マネージャー〟淘汰されず「心理的安全性は低い」
- 「マネージャー評価」は任意参加で機能せず

インターン採用「採点」の実情
採用ブランディングで「やさしい、コンサル」を打ち出す逆張り戦術で、儲けの源泉となる人材集めに力を入れるPwCコンサルティング。社員の平均継続勤務年数は、開示データを単純計算すると3.4年である(男女別・組織別の単純平均→前回記事参照)。
離職率は非開示だが、少なくとも20%程度と推定される。つまり、毎年5人に1人は入れ替わる。現状の従業員5158人の規模を維持・拡大するためには、年1千人超の採用を続けなければならない。うち新卒は、例年150~200人規模で採用している(競合のベイカレントも年1200人ペースの採用で、うち新卒が約2割を占める)。
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「1DayJobは良くも悪くもリーダー次第なところがあって、6人全員が落ちたケースでは、リーダー役がダメでした」(社員) |
新卒採用のプロセスは、書類選考→適性検査→グループディスカッション→ワンデージョブ(1Day Job)→ケース面接、個人面接(数回)、の6段階で内定。大学別では、PWCはじめ総合コンサル業界は早慶が圧倒的に多く、「国立大か、私立はマーチ以上」が書類通過の相場だ。大学発表によると、2024年3月卒では、慶応54人、早稲田40人がPwCコンサルに就職した。つまり、新卒の約半数は早慶出身だ。
「理系の院卒を中心に、地方国立大はだいたい書類は通っています。私立だと、東京理科大はOKで、明治をはじめMARCHも可能です」(現役社員、以下同)
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慶応で54人、早稲田で40人が、PwCコンサルティングに就職した(早慶の就職先上位ランキング一覧=2024年3月卒業生)。上位はコンサル会社ばかりに。![]() |
プロジェクトワークは協働作業となるため、グループディスカッションと「1Day Job」(ようはインターンシップ)が選考でも重視されている。
「1Day Job」では、学生6人のグループに先輩社員が1人ついて、サポートしながら6人分の採点をしていく。午前中から夕方まで、文字通り1日がかりである。
「ごく最近も採点者を務めましたが、参加者の半分くらいが慶応でした。提案資料の素案を持ってきていたり、ロジックツリーのひな形を用意してきていたり、就活生のなかには対策している人もいました」
新卒の就活市場でコンサル人気が定番化して久しい。各種対策ビジネスも潤っているようだ。
ワンデージョブの内容は、あるクライアント(自治体、電力会社、銀行…)に対して、課題を発掘し、解決するためのプロジェクトを提案してください、というグループワークである。情報を分析し、仮説を立て、どうやってアプローチするか考え、資料を作成し、議論を進めてまとめ、プレゼンする。その過程を、現役コンサルタントが見て採点していく、というもの。
こういう内容だと、予備校的なもので対策をしていない人が不利になる。まだ社会に出て働いたことがない、学生の本分である学問に打ち込んできた学生(しかも大学3年生である)には、少々ハードルが高い。即戦力に近い人材を求めている、ということだ。
基準は、やはり5つの「アトリビュート(attribute)」(特徴・属性・行動特性)で、コンピテンシーやスキルと同じようなものと考えてよい。
1.WL(Whole Leadership)
2.BA(Business acumen)
3.T&D(Technical&digital)
4.G&I(Global and inclusive)
5.REL(Relationships)
実際、採点の現場運用としては、学生のどこを見ているのか。
採点しやすいように、評価シートでは、評価者向けに、5つの項目ごとに以下5つが記されている。「評価項目」「具体例」「B:採用基準に達していない」状態、「A:採用基準を満たしている」状態、「S:非常に高いレベルで、絶対採用したいレベルに達している」状態、である。
学生にここまで求めるのはどうかと思うが、大学時代にグループワークなどを経験したうえで訓練を受けていないと、なかなか何をしてよいかわからないだろう。この選考方法では、ポテンシャルではなく、即戦力的な、顕在化したスキルの提示が求められている。
具体的な採用基準
初任給から年俸665万円なので、待遇との整合性はあるにせよ、具体的な採用基準(下記画像参照)を見ると、すぐにプロジェクトで貢献できそうな人材でないと通過しないレベル感だ。
まだ働いたことがないはずの学生なのに、特に訓練を受けることなく〝生まれながらのコンサルタント〟みたいな動きができる人がいたら、むしろ怖い。コンサル予備校での訓練が前提になっているかのようだ。
評価者は、ジョブをサポートしながら、学生1人に対して、5つのアトリビュートごとに「S、A、B」の3段階評価をつけ、必要に応じて理由付けのコメントを書く。これを6人分なので、5×6人で、1つのチームに対して、計30か所にSABのいずれかを記入していくことになる。
評価する側としても、けっこうな作業量だ。特に、S(非常に高いレベルで絶対採用したい)をつけたら、具体的に理由の説明を求められるという。
1.Whole Leadership
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1「ハイプレッシャー下でのアウトプットに対するコミットメント力」、2「論理性・仮説設定力・提案力」、3「ITへの意欲」、それぞれの具体例と詳細な評価基準![]() |
具体例「Dueの意識はJoinしてからも学べるが評価すべき。具体的にはタスクのブレイク、状況に応じたリプランの提示ができる事等」
B(採用基準に達していない)
・プレゼン前までにアウトプットが出せない
・作業が遅延している場合にリプランを提示できない
・他者のワークをカバーする姿勢が見られない
・他者の意見には反応はするが、それを踏まえた自分の意見を提示していない
A(採用基準に満たしている)
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4「自己の考察の共有」5「簡潔・明瞭なコミュニケーション」の具体例と詳細な評価基準
入社の競争倍率(2023年度)
①実働1.5人で月900万円のプロジェクト体制
②実働マネージャー40%+アソシエイト100%で月920万円のプロジェクト体制図
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