My News Japan My News Japan ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

ニュースの現場にいる誰もが発信者のメディアです

“昭和の化石企業”ニコン③「労働時間のカウント方法は企業秘密だから教えない」苦し紛れに開き直る人事部

労基署は企業の言いなり『伝書鳩』で“労働管理ガバナンス崩壊”の現場

情報提供
社長の写真
サービス残業強要のパワハラを放置する昭和カルチャーに34年も染まり切ったニコン大村泰弘CEO(2026年4月就任)。社員を雇う責任者として問題解決にあたる気配は全く見られない。少子化が進むなか、長時間労働放置で社員を採用できなくなるリスクを過小評価している点も昭和だ。

約2人分の仕事を強要する一方で『36協定は守れ』(残業は年720時間以内)と、パワハラ防止法で禁止された『過大な要求』をされ続けた末、退職に追い込まれたAさん(40代)。サービス残業分だけで、過労死水準を超える月平均90時間超に及び、病んだ。あまりの理不尽さに、記録が残る未払い残業代(月平均96時間分)を請求すると、ニコンは《再調査の結果、月平均5時間だけ未払いがあった》――と根拠を示さず一方的に終結を図った。Aさんが受取拒否し説明を求めると、「企業秘密だから残業代算出の根拠は教えられない」と同社ホットライン窓口(善国寺坂法律事務所・早川皓太郎弁護士)を通じて、意味不明な言い訳を始めた。

熊谷労基署の労働基準監督官・鍋田幸四郎、高吉えり、副所長・佐藤智和、所長・木下勝規は、ニコンに独自の強制調査を行うことなく、労務データ(Aさんに対して非開示)の情報開示を命じることすらせず、ニコンの伝書鳩のような業務に終始。日本の労働管理・監督のガバナンスは崩壊している。

Digest
  • 「ガイドライン後」に繰り返された同じ手口
  • 時系列経緯:「労基署は私にサイレントなまま本件を終了扱いしていた」
  • 争点は「瞬間」か「全体」か?
  • 電通VSニコン、三菱電機VSニコン
  • パワハラ防止法違反も放置する労基署
  • 何も役に立たないニコン労働組合
  • 機能するはずがないホットライン
  • 仕事ができない産業医
  • 線引きが曖昧すぎる労基署業務
  • 裁量労働制拡大!?「絶対に悪用されます」

労働者が、自身の残業時間算出の根拠すら知ることができず、労基署もそれを追認し、「白黒つけたかったら訴訟するのがよい」と司法に丸投げして業務放棄――。これが、日本の労働者が置かれている《ブラック企業中心主義》の労働環境である。

【ガバナンス】労基署の指導票《労働基準監督官→平井実所長宛》sasikae
『指導票』。「指導しました」というアリバイ作りとなっている。結局、未払い賃金はそのままで、監督機能を果たせていない。(情報開示請求によるもの、黒塗りは労基署側が実施)

1(いち)労働者と巨大企業では資本力の差が甚大なため、いちいち裁判しなければ残業代を受け取れないのなら、体力勝負で社員側に勝ち目はなく、労働者の損害は雪だるま式に膨らむ。労基署が事なかれ主義で本来の指導業務を行わない結果、サービス残業で泣き寝入りさせられる構図になっている。労基署もまたパワハラ加害者、という構図だ。

以下が、Aさんの8か月の残業時間を1か月平均で表した内訳である。業務用PCの稼働記録上は月149時間の“残業”があり(この絶対時間が既に労基法違反)、うち96時間が未払いになっている(ダブルで違法)。ニコンはこの96時間分の乖離は認めつつも、乖離=残業と認めず、月平均5時間だけが残業と主張している。

では残り90時間強は何なのかというAさんの質問には、答えられない。乖離の内訳を説明できないため「企業秘密」で逃げている。根拠の説明なく賃金を未払いにしている点で、労基法を根底から否定する蛮行というほかない。

残業時間の内訳。労働時間を管理する責任は会社側にあり、労働者にその責任はない。

業務PCのログイン・ログオフ稼働時間から月96時間も間引きしながら、ニコンはAさんが在職中、調査することはなかった。Aさんの『DMM英会話』時間(自己研鑽)は、会社側も把握している受講記録によると、月平均4~5時間でしかないため、月96時間の差は説明できない。

労働時間の適正な把握のために
『使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』

この乖離を、パワハラによって「私事在館」「自己研鑽」「休憩」などの名目で埋めさせることで賃金を支払わない手口(ニコンでいう『DMM英会話』がこれにあたる)は、電通や三菱電機といった若手社員が自殺に追い込まれた労災事件で問題となり、それらを受けて2017年に定められた新たな厚労省ガイドライン(右記)で、「自己申告により把握した労働時間と、入退場記録やパソコンの使用時間等から把握した在社時間との間に著しい乖離がある場合には実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること」と明示された。

■「ガイドライン後」に繰り返された同じ手口

ニコンは、Aさんが在職中に繰り返し異常な実態を訴えたにもかかわらず、月96時間もの乖離があるのに、実態調査を行って補正しなかった。ガイドラインがなかった時代の電通や三菱電機と同じ手口を、ガイドライン施行後に繰り返している点で、罪が重い。これを放置した経営陣と顧問弁護士は、社会情勢(政府による『働き方改革』の進行)に無知で、法的知識や認識が欠落している未熟者であるか、ガイドラインを知りながら悪意を持って無視し社員にサービス残業をさせていたかの、いずれかである。いずれにせよ違法行為と考えられ、ブラック企業・ブラック弁護士との批判は免れない。ニコンの株主は、企業価値を棄損するレピュテーションリスクを厳しく問うべきであろう。

ガイドラインでは、自己申告の時間ではなく、原則として「タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認」と明示されている。これは、自己申告の時間にしてしまうと、上司と部下の力関係(パワー)の格差を利用したパワハラによって、過少申告させる方向に情報操作できてしまうからだ(Aさんは実際にその被害に遭った)。

ニコンは、Aさんの在職中に、実態調査を実施した形跡がない。

「私は在職中からサービス残業の実態について平井実氏(熊谷製作所の人事部トップ)と芹沢まきこ氏(その部下)に再三、訴えていましたが、平井氏は労基署によるヒアリングで乖離を尋ねられると、『はて、PCのログイン・ログオフ時間から考えるとおかしいですな』と、初めて知ったような口ぶりだったそうです。退職後も、ニコンが未払い残業代を私に通知するにあたって、本来必要であるはずの実態調査はなく、私はヒアリングをいっさい受けていません」(Aさん)

『客観的な記録』として残っているのは、DMM英会話(自己研鑽)の時間だけで、月平均4時間あまりだ。まだ月92時間もの乖離があり、未払い賃金のまま、説明不能となっている。

55時間だと言ってきた文書
「未払い残業代の支払いについて」。ニコンが再調査の末、未払い残業は「55.13時間」と通告してきた文書。月あたりでは5時間になる。それが深夜残業なのか、休日なのか、どのソフトを使った時間なのか、どのファイルなのか、一切、何の内訳も示していないことがわかる。つまり「主観」で決めており、客観的な記録に基づいていない(労基法違反)。

ニコンはAさんが退職して半年後の2024年12月16日、再調査の結果、計55時間だけ未払いがあったと知らせてきたが(右記参照)、その内訳の記載すらない、ずさんなものだった。たとえば深夜残業は単価が5割増し、深夜休日残業は6割増しなど、同じ残業時間でも時給単価が国の法律(労働基準法第37条)によって変わるが、その内訳も不明。さらに、計55時間(月平均5時間)とした算出根拠は、「企業秘密」のためAさんに開示できない――と、子ども染みた言い訳をAさんに対して公式に行っている。

ガイドラインが「客観的な記録を基礎として」と記している「客観」とは、労働者も使用者も労基署もメディアも含め、あらゆる「客」が「観」て不一致が起きない、主観ではないデータであることを意味している。使用者側が主観で数値操作して残業代を未払いにする事態から、労働者の権利を守るためだ。企業秘密を言い訳として、残業時間の算出根拠を非開示だと言い出しているニコンの手口は、明確にガイドラインに違反している。

Aさんは、「意味がわからないが、もし企業秘密の部分があるのならば、そこはすべて黒塗りでOKなのでデータを出してください」と伝えたが、企業秘密で出せない、と逃げ回っているという。

ようは、説明する根拠やロジックが存在しない、主観による精神論で動いている昭和企業だから「企業秘密」で逃げるしかないわけである。社員に人権を認めない、労働者を奴隷のごとく扱う“昭和の化石企業仕草”である。ロジックで勝てないと見るや、丸ごと隠ぺいし、《巨大企業と一労働者》という力関係の格差で闇に葬るという、実に卑怯な戦術に出ている。

月別&月平均の乖離について一覧掲載用
ニコンが説明できず苦し紛れに「企業秘密」だと言い出した乖離時間は、記録が残る8か月間で計710時間に及ぶ

「たとえば、私が業務で使用した具体的なツールやソフトの、それぞれの稼働時間などのデータ内訳を見せられて、これとこれを積み上げたらこの時間になりました、というなら、それをもとに議論もできますし、1割や2割の乖離くらいでしたら納得して解決するかもしれません。ですが、15倍超もの乖離があるのに(5時間 VS 92時間)、根拠となるデータすらいっさい私に見せられない、説明するつもりもない――という傲慢な姿勢です。ふざけんな、誰が納得するんだ、と」(Aさん)

現在は、訴訟するほかない状況に追い込まれているという。

残業代を払わず、労働者に残業時間のカウント方法すら説明しなくてよいと考える思想自体は、典型的なブラック企業体質で、これは“ブラック企業界隈”ではよくみられる。頭のなかが昭和のままアップデートできていない経営者たちと、そこに悪知恵をつけ、裁判にさせてカネ儲けを企む顧問弁護士や弁護士資格を持つ役員(※ニコン社外取締役・監査等委員の山神麻子氏=未払い残業は会計不正に直結する深刻な問題である)とセットで、過労死大国Japanの闇を形成している。

なかでも最大の問題は、それを指導・監督すべき重大な公的任務を負った熊谷労基署が、指導に消極的で、司法に丸投げする姿勢を見せている点にある。

熊谷労基署写真
司法に丸投げして監督業務から逃げる熊谷労働基準監督署(木下勝規所長)。金融庁検査(モニタリング→異常検知→立入検査)を参考に、強制力のある臨検手法を学んだほうがよい。

熊谷労基署(所長・木下勝規、担当・高吉えり)は、「業務PCの起動・終了データと、支払われた残業代との間に、著しい乖離があることは事実。どうしても行政指導としての限界があり、お力になれず申し訳ない。司法の場であればあなたが提示したニコン関係者や家族の証言を元に白黒つけることができるため、訴訟するのが良いと思う」とAさんに述べたという。

「白とも黒とも言いません。白黒つけるのは訴訟なのだ、と」(Aさん)。もちろん労基署には強力な調査権限がある。調査・指導・監督こそが労基署の本業であり、本丸の仕事だ。本業の仕事をせず司法制度に丸投げするような労基署なら廃止でよい。

こうした、寄り添うふりをして本来の仕事をしないテクニックは、広範な “お役所仕事”で見られる「たらい回し」で、当事者意識が欠落している。司法でニコンが敗訴する可能性は高いが、その場合でも、仕事をしなかった労基署が責任を問われる仕組みはない。人事評価も下がらない。だったら、ぜんぶ丸投げしたほうがラクだから、どんどん仕事をしなくなるという悪循環である。

本来、労基署が《企業秘密と残業時間のカウントは全く関係のない別々の話であるから、労働者本人に乖離の説明を行って納得を得るよう努めてください、客観的に記録したデータを示せないのならばガイドライン違反ですから、未払い残業代は労基法どおり支払ってください》とニコンに指導すれば、即解決である。

だが、労基署が判断を避けて仕事をしない結果、労使の話し合いの基となるデータすらもテーブルの上に出てこないため、無駄な訴訟コストを増やす結果となり、公金で運営されている司法制度に無用な負担をかけ、無用な争いを作り出して労働者と社会を不幸にし、国民の税金を無駄遣いしている。絶望的な労働行政である。

「人員不足」と言われる労基署だが、本件は全く関係がない。指導するかしないか、というやる気の問題と、本省が明確にマニュアルを作って業務を標準化していないため、「広大に放置されたグレーゾーン=仕事をしないほうがラク」となっている構造的な問題である。その結果、即解決するはずの紛争を無用に長引かせている。ブラック企業の言い分をなぞるだけの労基署なら、予算と人員を大幅にカットしたほうが日本の国益になる。

時系列経緯:「労基署は私にサイレントなまま本件を終了扱いしていた」

①2024年6月上旬 ニコン退職後、Aさんが熊谷労働基準監督署に対し、未払い残業について申告。
監督復命書(2024年6月19日)
「監督復命書」2024年6月19日付。ニコンに「申告監督」を行った記録。

②2024年6月19日 熊谷労働基準監督署がニコンに対して指導票(記事2つ目の画像参照)を通知。調べて報告せよ、というマニュアル通りの内容。事前予告のない『踏み込み調査』ではなく再調査を依頼しているだけなので、ニコンに自由裁量で判断を与えただけになっている。右記はその指導票を通知した際の記録「監督復命書」をAさんが情報公開請求によって入手したもの。「ニコン人事部が労基署に対して説明した内容の、ほぼ全てが非開示のままでした。会社側がどう説明し、労基署がそれをどう受け止めたのかを、十分に把握できないまま、というのが実情です」(Aさん)

供託通知書統合掲載用
「供託通知書」2024年12月27日付。ニコンはAさんが受け取らなかったため供託によって無理やり終わらせようと画策。
③2024年12月16日 ニコンが労基署の指導票に基づき、Aさんに対して未払い残業代55時間分を支払う意志があることを通知。(上記画像「未払い残業代の支払いについて」参照)

④2024年12月17日 通知内容がAさんの記憶とも記録とも大きく異なるため、Aさんは手紙にて受け取りを拒否する旨を、ニコンに伝達。

⑤2024年12月27日 ニコンが、自社で一方的に算出した未払い賃金相当額を、法務局に給与債務として供託し、終結を図った(右記参照)。

⑥2024年12月30日 実態との乖離が15倍超にも及ぶため、Aさんは労基署に対して再調査を依頼(右下画像参照)。

⑦2025年1月14日 文春報道「ニコンで残業月169時間の“殺人スケジュール”が横行」。
労基署への再依頼文書
労基署に再調査を依頼した文書(2024年12月30日)

同日付で、当時の徳成旨亮社長が「労基署から指摘がありました。一部不適切な事案がありました。いろいろ改善しなきゃいけないと思います

この先は会員限定です。

会員の方は下記よりログインいただくとお読みいただけます。
ログインすると画像が拡大可能です。

  • ・本文文字数:残り11,630字/全文16,999字

『決裁伺書』。2025年7月、ニコンが労基署に提出した資料一覧(PDF7ファイル)。内容はすべて黒塗りで非開示。

パワハラ防止法における6類型(労基署パンフより)。明確に「過大な要求」にあたっている。ニコンは昭和のままなので「アンケートによる実態把握」など対策もなく、令和の法律はガン無視する無法地帯。

公式SNSはこちら

はてなブックマークコメント

もっと見る
閉じる

facebookコメント

読者コメント

※. コメントは会員ユーザのみ受け付けております。
もっと見る
閉じる
※注意事項

記者からの追加情報

本企画趣旨に賛同いただき、取材協力いただけるかたは、こちらよりご連絡下さい(永久会員ID進呈)
新着記事のEメールお知らせはこちらよりご登録ください。