サラリーマンという絶望的な働き方 〔就職・転職〕学生向け講演(上)
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業績、配当、年間給与の推移(有価証券報告書より) |
- Digest
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- 配当3倍なのに給与が減っているトヨタ
- 株主重視、社員軽視の大きな流れ
- 株主のグローバル化
- 人件費のグローバル化
- 株主にとっての「勝ち組」≠従業員にとっての「勝ち組」
- サラリーマンの9割がロウアーミドルに
- 2つしかない生き残る道
- 公務員的人生に適した企業、キャリア開発に適した企業
(本稿は10月中旬に行われた立教大学での講演内容である。終了時に行ったアンケートでは有効回答77名中69名が「満足」または「大変満足」と回答した。)
配当3倍なのに給与が減っているトヨタ
右記が、トヨタ自動車とキヤノンという、日本を代表する“超優良”とされる“勝ち組”大企業の業績と配当、平均年間給与である。これをみて、みなさんはどう思うだろうか。
一目瞭然なのは、社員が頑張って働き、企業業績が上がっても、社員には還元されずに、株主の不労所得になった、という確たる事実である。
黄色の列に注目していただきたい。トヨタは配当を3倍にしているが、給与は減らしている。キヤノンも配当を4倍以上にしているが、人件費は3%増、それも成果主義とはいえ平均年齢が上昇しているため、ほぼ据え置きといってよい。
両社ともに、4年連続で売上高が上昇し、利益も上がっている。もちろん、社員が頑張った成果だ。もし「成果主義」であるというなら、利益の上昇とともに賃金も上昇しなければならないが、特に成果主義を強調するキヤノンでほぼ据え置きというのは、どういうことなのか。
成果主義の名のもとで、労働は間違いなく強化されているのに、利益が2倍になっても賃金が据え置きとなると、実質的な減俸と考えてよい。
株主重視、社員軽視の大きな流れ
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企業業績の推移![]() |
これはトヨタやキヤノンに特有の現象ではない。
右記は、財務省の法人企業統計であり、2006年で273万社超が対象となっている国内最大規模の調査である。4年連続で売上高と経常利益は増加している。だからここ3年ほど、一般的には景気が拡大しているということになっている。
だが、サラリーマンには、あまり実感がない。
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配当と労働分配率の推移![]() |
それは、左記の同じ法人企業統計による「配当と労働分配率の推移」を見れば明らかだ。業績が向上するにつれて、株主への配当金は、まったく同じカーブで上昇しているが、労働分配率は微減か横ばいで、上がる気配がないのである。
労働分配率というのは様々な定義と算出方法があるのだが、ここでは、もっとも働く側の実感に近いものとした。すなわち、従業員給与と福利厚生費を足したものを分子にとり、分母のほうは、それに営業利益と減価償却費を足したものとした。要するに、会社が生み出した余剰資金のうち、どれだけ従業員に還元しているのか、を示す比率だ。
利益を誰に配分するかは、単年度で見ればゼロサムゲームである。「未来への備えだ」と設備投資に多くまわすか、「株主重視」をうたって配当にまわすか、従業員に報いるか、役員賞与を出すか、それとも税金を払って貯金するか(次期繰越利益)、といった具合で、カネの取り合いだ。従業員は完全に取り合い合戦に負けているといえる。
逆に、株主への配当はうなぎのぼりである。2001年度までは4兆円程度で推移していたが、その後の5年間で、なんと4倍になった。新聞報道によると、2007年度も過去最高を更新する見通しだ。
株主のグローバル化
企業は、なぜ従業員を軽視して株主にばかり手厚く配分しているのか。
これは、
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10年後の大企業社内格差
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読者コメント
役員報酬はものすごく上がってるのにね
日本企業が配当することで、儲けているのは、アメリカのファンド関係者、そして、ファンドに資金を提供しているロスチャイルド一族、バフェットなどの富豪どもである。
いっぱい給料をもらっていた団塊の世代が一斉に退職しているから平均年収が下がっているだけなのではないだろうか。
ここの記事はいろいろと勉強になりました。上場企業はすばらしい。ブランドがある会社に行けば勝ち組か?といった認識は180度変わりました。もっと情報を発信していただきたい。
また、私は傲慢な企業に投資はしたくない。将来、金を稼げるようになったとしても。
アメリカ的なファイナンス理論は株主により多くの配分を!との主張を難しい数式で証明しているが、簡単に言えば、資本家(金持ち)によこせということなんですよね。数式も信じられないです。
ブラック企業で働くくらいなら非正社員として働いた方が人間的な生活を送れます。
ブラックにしがみ付く人にも問題があります。
皆が離れて行き、悪い噂が広がればそういった糞会社は消滅するでしょう。
メデタシメデタシ。
>続きブラックな会社で、酷使されているサラリーマンは確かに絶望的な働き方だが、後は企業選びの問題で、サラリーマンがすべて悪いとは思わない。逆に選ぶ側の目が肥えれば、必然的に会社は変わり、絶望的では無くなるだろう。トヨタなんかは黙っていても人材が集まるからできる技。みんなトヨタに応募しなければこうはならないわけで。
でも、俺はまだサラリーマンという稼業に絶望していない。大きな組織でしか得られない知識もあれば、大きな力がバックにあるが故に個人では絶対に(超優秀な皆様ならわかんないけど)できない仕事だってある。
貰えるお金は少ないけど(同期の10~20%?)でも相応に節制すれば余裕。ストレスもずいぶんと少ないし、やりがいはあるし、成果は横取りされないし(^-^A;、精神的なタフさは要求されますけど、慣れれば殆どの人は、いつかは強くなれるものだと思います。リーマン時代の発想にしがみつかなければ。
サラリーマンが絶望なら起業するしかないのか?→ 答えはYESだと思う。能動的に知識や経験を得ていく努力(実はこれが一番楽しい)はサラリーマンにはあまり求められていない。そこが難しいところだが、時代は第一次大戦後の農業衰退と同じく現状のオールドエコノミーの衰退を迎えている。個人レベルでの知識労働者への変換が求められているのだ。
われわれ、零細個人事業主の鼻くそみたいな額の収入など税務署の連中は屁とも思って無いって!なにしろ、「人生いろいろ」だからね。苦労して細かい領収書なんぞかき集めていちゃだめだよ。そんなの、見やしなよ。税金をはらえばいいのは企業で、領収書を集めなければならないのは、政治家でござい。
個人事業主さんへ、うらやましいのは、もっともだけど、対抗策として税務署への申告を調整するといいと思うよ。おれも個人事業主で、これくらいの額になるときもあるけれど、申告額はいつも100万円ちょっとさ。
トヨタ.キヤノンとも社員がこれだけ給料もらえたらうらやましいよ。
どこかのメガネチェーンの社長の給料が月100万円が上限で、残りの利益は全部社員に還元するという、ニュースを見た。すごく業績が伸びているとのこと。そのような会社に就職するのが真の「ビジネス」マンかな。「サラリー」マンに将来はない。
これは名言、おもわず唸った。----- 利益を誰に配分するかは、単年度で見ればゼロサムゲームである。「未来への備えだ」と設備投資に多くまわすか、「株主重視」をうたって配当にまわすか、従業員に報いるか、役員賞与を出すか、それとも税金を払って貯金するか(次期繰越利益)、といった具合で、カネの取り合いだ。従業員は完全に取り合い合戦に負けているといえる。
株主重視のスタイルは上場企業にのみあてはまるので、非上場企業の動向が気になりますね。
株主>社員、平均年収低下とはいえ、今のキャノン、トヨタ水準の給料が貰えているなら、文句はない。正社員以外でここまで稼ぐのは難しい。サラリーマンが絶望なら起業するしかないのか?株主重視なら社員持ち株とかもあるわけで、会社の中でいかに働くか、人生設計をどうするかがより大事なのでは。大概の人間は望んでも望まなくても大部分がサラリーマンにならざるを得ないわけで。
とうとう正社員で働いたら負けの時代です。騙すと言っても新卒でも、飲めないか見破ってしまう内容です。履歴書に、希望給与をうんと低く書いて、転勤はどこでもいいですよと書いて、残業はいくらでもしますよと書いて、さらに契約社員でいいです、と書く。一つでも首を横に振ったらアウトです。教授に恫喝ものです。
これから就職活動をする学生に、月額1890円払って登録するように勧めました。ここで働け取材班の記事も全部熟読せよ!っと言っています。こういうジャーナリズムが育つことで、ブラック企業が淘汰されることを望みます。最も優秀な学生層がそのうちトヨタに行かなくなれば、トヨタも考えを替えるでしょう(優秀な学生が来なくなれば長期には衰退します)。
いや、立派なジャーナリズムですよ。暗黙知と化しているおぞましき社会の実態。若者がそれを知らない状態は危険ですから、適齢期になれば知っておくべき事柄かと思いますよ。しかし、一部の当のサラリーマンからは反発が避けられないかもしれませんね。当たり障りのない主張では価値がないですし、難しい所ですね。
素晴らしい記事だと思います。うちの学生が、一生泥水をすすって生きる下流サラリーマンになって欲しくないです。
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