トヨタがビデオリサーチ社のデータを物色 ABC部数不信で
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読売新聞に掲載されたサラ金の武富士の全面広告。他紙にも掲載された。よほど新聞社の経営は悪化しているのだろうか? |
メディア業界の水面下で広告料金をめぐる駆け引きが激しさを増しているようだ。その先頭を大口広告主のトヨタが走っている。昨年、広告・宣伝費の30%カットを発表したり、奥田碩相談役が、
「マスコミに報復してやろうか。スポンサーでも降りてやろうか」
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偽装紙と一緒に大量の破棄されていた東京・江東区の広報紙。全国で捨てられているチラシの数は計り知れない。![]() |
と、発言して物議をかもしたが、広告の価格交渉を優位に展開するための演出だったという見方もできる。
広告主は現在の不況の下で新聞社に何を求めているのだろうか。結論から先に言えば、それは不透明なまま放置されている新聞の発証数の公表にほかならない。発証数とは、販売店が読者に発行した領収書の数で、実配部数に極めて近い。
◇広告バブル日本ABC協会は、新聞など出版物の発行部数を調査する機関である。発行部数を定期的に調査して、新聞社や広告代理店、それに広告主に知らせることで、広告料金の価格形成に影響を与えてきた。
『広告の基本』(日本実業出版社)という本では、広告料金を決定づけるファクターが次のように説明されている。
広告料金には一応の定価がありますが、需給関係や視聴率・部数などの変化によって実勢の料金は常に変動しており、人気のある枠ほどすぐに売り切れてしまいます。
株価や不動産価格と同じように、広告価格もさまざまな要因によって変動する。とりわけ発行部数の大小は、最も重要な要因である。
その意味でABC部数は、日本の広告市場を秩序立て、機能させるうえで、キーパーソンのような存在だった。事実、少なくとも表向きは、権威と信頼を兼ね備えたデータとして評価されてきた。特に役所などの公共機関は、ABC部数に絶対的な信頼を置いてきたのである。
ところが最近、日本ABC協会に対する不信が広がっている。たとえば『週刊東洋経済』(2009年1月31日)は、ABC部数の信頼性を頭から否定してはばからない。
(略)日本ABC協会が発表するこの発行部数は、広告主からまったく信頼されていない。新聞を宅配する専売店網には『押し紙』と呼ばれる、読者のいない水増しした部数が納入されているのは周知の事実。ひどい新聞社の場合、押し紙比率は30%以上に及んでいるようだ。そんな水増しされた部数を基にした広告費設定に、広告主が納得するわけがない。値下げ圧力が激化するのはこれからだ。
このような状況の下でトヨタが広告代理店に対して、ABC部数の代わりに、ビデオ・リサーチ社の「J-READ」というデータを採用して広告料を提案するように交渉するらしいという情報を『選択』が報じた。
J-READは、ビデオリサーチの鈴木芳雄氏によると、次のような性質のデータである。
新聞の購読は世帯単位で行われるものですが、J-READのサンプリングは個人です。購読者率は、『たまたま調査対象者に選ばれた個人の家庭で取っている新聞の割合』です。 (「読売ADリポート」)
ABC部数が偽装部数を含む部数であるのに対して、J-READは実質的にどの新聞がどの程度読まれているのかを示したデータと言えよう
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日本新聞協会が定めている新聞倫理綱領。新聞関係者が言っている事と、やっている事は正反対ではないかとの批判がある。
『広告白書2008』(日経広告研究所編)に掲載された「新聞広告出稿量上位50社(2007年)のリスト。
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「新聞社が信頼を取り戻す唯一の選択肢は実配部数の公表だが、あまりにも偽装部数が多いために、踏み切れそうもない。」
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読者コメント
私はマイニュースジャパンに載っている読売暴行被害を受けた田代裕治という者です。
読売の醜さもご覧になって、広告主は適切な選択を行って下さい。
まさか新聞社がこんな悪いことをやっていたとは知りませんでした
トヨタにはビデオリサーチが出しているような低コスト低クオリティの数字に頼らず日本の広告市場の異常な状態を変革するようイニシアティブを取ってもらいたいものです。
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