「大渕愛子被害者の会」無償世話人の山口三尊氏。
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「行列のできる法律相談所」の大渕愛子弁護士は、自身が関わる3件の訴訟と4件の懲戒請求を抱えている。法テラス(日本司法支援センター)の扶助利用者から毎月顧問料を受領し、依頼されて1年2ヵ月経ても訴訟を提起できず元依頼者に訴えられた裁判では、大渕弁護士が提出した契約書の顧客直筆署名が「別人による筆跡と認められる」との鑑定書が出されたほか、トラブルは多岐に渡る。こうしたなかで14年9月13日、「大渕愛子 被害者の会」が結成され、資格試験予備校講師の山口三尊氏(47歳)が無償世話人に就任した。山口氏といえば、個人株主の権利のためにカネボウを相手取った500人の集団訴訟の事務局長として勝利し「アリが象に勝った」と注目された人物だ。11月末には、株主として日本テレビホールディングス、フジ・メディア・ホールディングスに、大渕弁護士に関する質問状を送った。その山口氏に、被害者の会結成の真意を聞いた。
【Digest】
◇「このような人物は、テレビ出演者として適切ですか?」
◇トラブル続出、3つの訴訟と4つの懲戒請求
◇個人株主を守る無償ボランティア
◇弁護士に依頼したがための被害者たち
◇解決を伸ばせば弁護士が儲かる顧問料契約
◇最大の山は契約書の筆跡鑑定書
◇大渕弁護士に警告書、日テレに株主質問状
◇「このような人物は、テレビ出演者として適切ですか?」
「大渕愛子 被害者の会」世話人の山口三尊氏が11月20日付けで日本テレビホールディングスとフジ・メディア・ホールディングスに送付した株主質問状は、そのものズバリのストレートな内容だった。
《私は、貴社株100株を保有する貴社の株主です。また、マネックス証券が11月11日に個別株主通知を受け付けています。この質問状が届いてから2週間以内に、以下の質問に対して、書面でご回答下さい。
問1「行列のできる法律相談所」などの番組に大渕愛子こと金山愛子(以下、「大渕愛子」とする。)が出演しています。この者は、法テラスから報酬を受け取りつつ、依頼者からも報酬を受け取っており、懲戒請求をかけられています。このような人物は、テレビ出演者として適切ですか?》(以下後述)
筆者が初めて山口三尊氏に声をかけたのは2014年9月11日、大渕弁護士の元顧客のBさんが大渕弁護士を訴えた裁判の傍聴直後だった。
「依頼して2年近く顧問料を支払い続けても作成された調査報告書類は2点だけ」とBさんが主張する裁判である。
翌日の9月12日、「大渕愛子 被害者の会」を立ち上げるという素早さだ。そして11月20日、本記事の冒頭で一部紹介した株主質問状を大渕弁護士が頻繁に出演するテレビ局を傘下におく日本テレビホールディングスに送付したのである。
「被害者の会」の世話人を務める山口氏とはどのような人物なのか、そしてなぜ会を結成したのか。本題に入る前に、大渕弁護士を巡る争いを整理してみたい。
◇トラブル続出、3つの訴訟と4つの懲戒請求
このうち、元依頼者で直接大渕弁護士から被害を受けたと訴える人たちで結成したのが「被害者の会」である。
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日本テレビホールディングスに送付した株主質問状。フジ・メディア・ホールディングスにも同様の株主質問状を送っているが、両社からまだ回答はない。 |
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◇個人株主を守る無償ボランティア
―― 山口さんといえば、不当な扱いを受けた個人株主のために無償の支援活動をしている人として知る人ぞ知るわけですが、簡単に略歴を教えてください。
「私は資格試験予備校講師として、民法と行政法規を教えています。授業のほかテキストの作成もしていますが、どちらかというテキスト作成に時間を費やしていますね。
2000年のITバブルのときに先輩講師に進められて株を始めました。しばらくはマイナスでしたが、小泉さんの郵政解散(05年9月)のときにようやくプラスになったという感じです。
現在は、株主優待がある銘柄を中心に数十社株を所有しています。サラリーマン投資家なのですが、カネボウの個人株主を救う訴訟を起こしたのが社会に出るきっかけでした」
粉飾決算が発覚したカネボウでは、発覚直前の1491円から上場廃止の05年6月には、360円まで株価が下がった。翌06年2月、投資ファンドによるカネボウ株の買い取り価格が162円となったのだ。
「戦後最安値の277円のところを、162円で公開買い付けし、応じなければただじゃおかないよ、というひどい話になったわけです。10 万人の株主のうち162円の買い付けに応じたのは1万人くらいでした。
この公開買い付けに反対する集会があったので参加し、最終的に約500人で06年6月、東京地裁に価格決定の申し立てをしたのです。予備校の授業は夜で、テキスト作成はいつやってもいいわけなので時間の調整がしやすく、裁判に集中することができたのです。ボランティアで幹事を引き受け、それがもとで代表になったわけです。
これが生まれて初めての裁判だったのですけれど、この経験によって裁判のノウハウについて知ることができました」
この申し立てにより、当初の162円から、360円と認められた。個人株主たちの勝利である。そして同じ時期に、高級スーパーの「成城石井」や焼き肉チェーンの「牛角」を傘下に持つレックス・ホールディングスの株をめぐって、同じ06年に訴訟の中心になった。
「経営陣と投資ファンドが組んで、ついこの間まで33万円だったものを1株23万円で強制的に買収すると通告してきたんです。このときも、.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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訴訟を断念して具体的な案件もないまま元顧客Aさんは、顧問契約書を2回結んでいた、と大渕弁護士は主張している。人間関係までくずれクレームをつける人物となぜ顧問契約を結ぶのか。また、当時経済的に疲弊していたAさんが、なぜ毎月顧問料を支払えたのかなど、疑問な点は多い。 |
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元顧客の手書きサインの筆跡鑑定では、「別人による筆跡と認められる」という鑑定結果が出ている。同鑑定書では、似せて書いたとも指摘されている。 |
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「被害者の会」のブログなどが被告(大渕弁護士)を誹謗中傷していると指摘した大渕氏側の第三準備書面(元顧客Aさんの訴訟)。この書面では筆者が書いた記事も誹謗中傷していると主張しており、筆者の取材申し込み書に対して「回答を送付したが、林克明からは、被告又は被告代理人に対してさらなる接触は一切ないまま」記事が掲載されたとしている。
代理人からの質問状に対する「回答」は記事に反映されており、一連の大渕氏にからむ案件では、筆者は何度も「接触」を図ってきた。また、この準備書面の存在を知って以降、筆者はさらに質問状を送り再々再度「接触」を試みたが返信はない。
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「被害者の会」が大渕氏を誹謗中傷しているという主張(5番目の画像)に対し、山口氏は「これは、私の名誉を傷つけるものですので、強く抗議するとともに、次回口頭弁論期日までに撤回を求めます」と警告書を送った。返事はいまのところない。 |
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