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『すべては一杯のコーヒーから』9つの示唆

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よく売れて文庫化もしてる

今頃になって読みましたが、示唆に富む本であった。27歳で三和銀行をエグジットしてタリーズを軌道に載せるまでのストーリー。私も27歳で最初の会社辞めている。その頃って、アツい時期なんだ。

 まさに「 サラリーマンEXIT」の見本でした。

9点ほど、感想および読む際の注意点を記しておく。

①都銀というアナクロとマスコミ業界へのアナロジー。「20代後半で1千万円」とあるが、つい10年前の話なのに、都市銀行って、給料おかしかったんだな、と再確認。

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三菱東京UFJ(旧三和)銀のキャリアパス

今の三菱東京UFJでは入行6年目までの無役だと最高で650万円ほどと、市場価値に落ち着いた。3~4割カット。いいですか、10年後のあなたたちですよ~→新聞・テレビ・大手出版の人たち。

結局、護送船団という規制による規制プレミアムだから。頼れるのは個人の実力だけ、ということ。下記図参照。

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実力と虚飾の給与分解図
②最初から起業前提で三和銀を選んでいること。「融資の際には、事業計画から財務内容、社長の経営理念まで会社のすべてをさらき出してもらうことになる。そうした点でも将来、起業する際の勉強になると考えたのだ」。

ま、王道ですかね。私も最初の会社は長くて5年だな、と思っていたら、早まって4年目の秋に辞めることになった。20代の早い段階で動機を持つことは重要です。

③大企業同期ネットワークの価値。筑波大学時代の同級生が博報堂を辞めて販促の責任者としてタリーズに入社しているが、三和銀行時代の同期も3人、タリーズに参画して重要な役割を果たしている(共同創業者、取締役管理部長、経営企画部長)。

最初からベンチャーに入ってしまうと、こういう同期のネットワークがない。日本でベンチャーに新卒で入る人は、大企業に比べると能力がどうしても劣る。この点からも、大企業からスタートしてドロップアウトするのがよい。人は資産だ。私自身も、新聞社の同期と大学のゼミの同期が、独立に際して、決定的な役割を果たしてくれた。

④会社との衝突劇。営業成績の支店内での付け替えという、いかにもメガバンクらしいことに怒った松田氏は支店長以下5人に直訴すると、「松田くん、違うんだ!キミのためを思ってやったことだ」。

 外為どっとこむのCMを思い出してしまったよ。ほんと、コントみたいな話がビジネスの現場で普通に起きているのが銀行というところ。取材のたびに驚く。出勤で、朝8時前に支店の前で行員が並んで待ってるとかさ。三菱の話ですが。

で、衝突をどう乗り越えるか、というのは私の次の取材テーマでもある。松田氏は「それはありがとうございました」とひとこと言い残して、会議室を後にし、退行する前になってから人事部に改善を要求するという、意外にまっとうなサラリーマン的行動をとっている。なんだ、普通じゃん、かわいいもんだな、と思った。

城繁幸氏みたいに抵抗を続けて役員室に呼び出されたあげく志を曲げず退職して告発本を書いてベストセラーにしちゃったり、私のように自分のサイトで主張を続け、懲戒処分されて会社と取り消しの裁判までやって今もその延長でビジネス化してたり、というのは極端な例なんだな、と。松田氏なんか、見た感じ、支店長に殴りかかって病院送りくらいの伝説はあるかと思ったのに。国会ではちゃんと暴れてほしい。

⑤弟の死。「あのとき、もし私が金持ちだったら…」は考えさせられる。難病を治すにはアメリカに渡って移植を受けるしかない。カネに余裕があれば、可能性にかけることができた。迷っている間に病状が悪化、亡くなってしまう。一方で、カネ持ちのヤクザの組長はUCLAに寄付をして救われる。やりきれない。

⑥7千万円の借金。一店舗目のオープンのために、自己資金で3500万も集めたのがすごい。実際、上場までこぎつけてるからいいが、これはよく言われるように「千3つ」の世界。宝くじと同じで「残存者バイアス」があることを常に考えないといけない(どんなに確率が低くても成功者は必ずいる)。

つまり、残りの99.7%は失敗するのが現実なのだ、ということ。自己破産して再起不能になるのが日本の現実だし、そのうちの何人かは自殺してるだろう。だからこの国に限っては「情熱があれば実現するから頑張れ」とは私は言わない。むしろ、才能がない分野では失敗するから辞めとけ、才能がある分野で着実にキャリアを進めながら挑戦を重ねよ、というのが私の理論

 政府が税金からリスクマネーを提供するわけにはいかないから、もっとエンジェルからリスクマネーが調達できるようにならないといけない。現状では、私のようにリスクヘッジしながら確実に船出するのがよい。私なんぞ、最初は300万しか出してないし、会社も辞めてない

⑦動機の発見。どうしてコーヒーごときにそんなに情熱を傾けられるのか、と昔は思っていたが、ライフストーリーを知って納得。セネガルとアメリカにいれば、日本の食文化と世界の架け橋に、という使命感が生まれてもおかしくない。10代の生活環境が激しいと、自分のコア動機に気づきやすいということ。

実際、輸入モノのタリーズだけでなく「KOOTS」のように日本独自の緑茶メニューを展開したりもしたのだから、その言葉に嘘はない。タリーズもクーツもよく利用させてもらってます。

⑧幸運と情熱。「情熱が運を引き寄せる」「運は人が運んでくるもの」「人は無意識に情熱の発信者に引き寄せられる。だから運も、自然と情熱を持った人間のもとに集まってくるのではなかろうか」。これらは、その通りだと思う。

私の理論では、この情熱というのはコア動機の強さから生まれる。そりゃあ、志高いほうが信用されるし、周りも助けてくれるさ。それが偶然や運に見えるわけだ。

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よい偶然を計画的に起こすには、無数に流れていく幸運に気づき、受け止めなければいけない。そのためには、コア動機を中心とした円形の、受け止めるためのアンテナ、風呂敷のようなものを拡げておかないと、「もったいない幸運」を取り逃がしてしまう。この受け止める最大値が小さい人、動機が不明瞭な人の周りには、左記のとおりビュンビュンと幸運が通り過ぎてゆく。この運は、主に人との出会いで発揮される。

・で、その情熱というのは、使命感から生まれる、と。このあたり全く同意。動機は眠っているので、顕在化させていくべきものだ。
使命とは、ある日突然、天から雷のように落ちてくるものではない。ふとしたきっかけでそれを発見する幸運な人もいるが、ほとんどの人の使命は奥底に眠っているものを自分で探し出さなくてはならない。(中略)私たちは生まれたときから特別な存在であり、1人1人に必ず「天意」が授けられている。それに気づかずに生きるのは、自分に与えられた一生の半分も全うしていないのと同じではなかろうか。

 ただ、私も似たようなことを前著で書いたあと思ったのだが、誰もがみんな、使命感を持って生きよ、というのは、言うは易し行うは難し。この“人生の意味や目的論”は、正論であるがゆえに逃げ場がなく、若者を追い詰める。

よくある反論として、精神科医の香山リカ氏らによるものがある。いわく、若者が人生に意味を求めすぎて「自分探し症候群」を生み出している。いわく、そういう社会的なプレッシャーがウツの原因になって若者を精神的に苦しめている。いわく、就職難でエントリーシート50枚書かなきゃいけないのに、それぞれの会社の仕事について意味や目的なんか書けるはずない…。

これは「自分は何がしかの人にならねばならない、それが自己実現であり、人生の目標なのだ」と大それた誤解をしている人が多いことによる。この誤解とは、客観的に目に見える成功こそ目標にすべきだ、と考えている点にある。

使命という言葉は重いので、欲求とか夢とか価値観という表現のほうが現実的である。コア動機は、もっと多様で自己満足的なものでよい、というのが私の考えだ。

⑨起業の最中に、ゼミの恩師と母と弟が亡くなっている。そういう稀有な確率を生きる星の下に生まれた人なんだな、と。これ、普通は起こりえない確率。私の周りの人たちは全員ピンピンしてるし。

以上

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2011/09/29 02:21
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