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ファイザー禁煙補助薬チャンピックス 遺族が語る“自殺事件”の闇

情報提供
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チャンピックスを服用中に自殺したA氏の父親X氏(60代前半)
 ファイザーの禁煙補助薬『チャンピックス』の服用を今年6月下旬から始めたA氏(30代)は、3週目あたりから不眠や吐き気に悩まされたため、服用を止めたい、と医師に相談したが、「3か月たてば表彰されるから頑張りましょう」と言われ服用を続け、1週間後に突然、自室で首つり自殺した。同薬の副作用による自殺の疑いがある事例は、日本で3件目だ。遺族であるA氏の父親X氏(60代前半)は、当サイトの記事「ファイザー禁煙補助薬『チャンピックス』で意識喪失、難聴、自殺…」を読み、「もしそういうことを前もってわかっていれば、そんな危ない薬は止めておけ、と言っていたのに…」と吐露する。カルテや調剤明細書、ファイザーへの取材とともに、事件の全貌をX氏に聞いた。(カルテはPDFダウンロード可)
Digest
  • 「表彰状がもらえるから、がんばりましょう」医師
  • 「電話壊した!パソコンも壊した!壁を蹴ったら穴があいた!!」
  • 部屋に入ると首をつっていた
  • 「チャンピックスの副作用しか考えられない」
  • 遺族が何度聞いても「調べません」ファイザー社員
  • カルテの中身
  • 「息子のカタキ取りたい」
  • 薬事法違反の疑いのあるファイザーの対応

「表彰状がもらえるから、がんばりましょう」医師

X氏の息子A氏(30代)は、実家から遠く離れた、東日本の会社で働いていた。一人暮らしだった。

事の始まりは、実家にかかってきた一本の電話からだった。それは12年6月26日のこと。電話が鳴り、X氏がとると、A氏からだった。A氏は「明日病院へ行く」という。「なんで?」と聞くと、「いや、禁煙することにした」という。

それを聞いたX氏は、A氏が1日2箱近く吸っているのを見てきたので、「禁煙するとは絶対言わない男だ」と思っていたそうだが、X氏自身も昔は吸って止めたくちなので、息子の禁煙の決意に賛同し、「(禁煙の病院は)いくらぐらいかかるの?」と聞くと、「2万円かかる」というので、「わかった、じゃあ、明日振り込んでおいてやる」といって、振り込んだ。

翌6月27日、A氏は近所の町医者にいき、チャンピックスによる禁煙治療を開始したという。

チャンピックスの治療スケジュールは、まず、初回診療時にチャンピックスを1週間分、処方される。初日から3日間は、1日1回、チャンピックス0.5mg錠を1錠内服する。4~7日目は、0.5mgを1日2回朝夕食後に内服する。この1週間は、タバコをふつうに吸ってもかまわない。

8日目から、禁煙をスタートする。薬の処方は、通常、この日から治療終了日(初日から数えて12週間後。つまり3か月後)まで、1mg錠を1日2回朝夕食後に内服することになっている。

病院には、初診と、2週間後、4週間後、8週間後、12週間後の計5回通院することに原則なっている。

A氏も上記のスケジュールに従って通院していた。

チャンピックス治療の初診時には、「禁煙手帳」が渡される。そこには、服用記録や喫煙本数を記入する欄がある。A氏はこの禁煙手帳をきちっとつけていた。

それによると、喫煙本数は、はじめの1週間は、28本、38本、30本、30本、5本、9本、10本。

禁煙開始とれさる8日目以降は、3本、0本、3本、5本、5本、8本、8本と、なかなか、やめられてはいない形跡があるが、3週間目以降は、ずっと0本となっている。チャンピックスはこの間、欠かさず服用していた。

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A氏の禁煙手帳。服用3週間目から喫煙本数0本になっている

そして、この3週目あたりから、A氏に異変が出た。母親に毎日のようにモーニングコールを依頼するようになったのだ。

「熟睡できないので、一日中あくびが出る。朝起きられない」とA氏は訴えていたという。この期間に、X氏も何度かA氏の電話をとり、「わかった。じゃあ、お母さんに言っておくよ」と会話したという。

その後も、A氏は不眠の症状が続いた。「一日中気持ち悪いが、なんとか食事は食べている」「眠りが浅く、仕事の夢を見る」とも訴えていたという。

すでに禁煙できている状態で1日2錠飲んでいるA氏に対し、心配した母親が、「薬を1錠に減らしたら?」と言ったが、「脳をごまかす薬だから吸わないでいられるんだと思う」とA氏は述べていた。

7月下旬の時点でも、服用による吐き気、常に二日酔いのような感じのつらさ、眠りが浅く、昼眠気がきて頭がボーとする状態、現実的な夢を見る、といった症状が続いた。

7月25日、3回目の通院時(初診から約4週間後)に、A氏は医師に対し、不眠と体調不良を訴え、「もう自力で禁煙できると思う」と話し、チャンピックスの服用をやめたい、との気持ちを伝えたが、医師からは、「3か月頑張れば表彰状がもらえるから、がんばりましょう」と言われたという。

その後もA氏は、チャンピックスを1日2回、服用し続けた。

X氏は、こう述懐する。「表彰状が出るのでがんばりましょう、といわれると、性格的に、きっちりやる男なんですよ。一人で住んでいるが、本当に部屋もきれいで、洗濯したものも折りたたんでましたし」

「電話壊した!パソコンも壊した!壁を蹴ったら穴があいた!!」

8月1日午前零時40分頃、A氏が実家に電話をして、母親が出た。これが最後のやり取りだった

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チャンピックスの広告塔・舘ひろし

チャンピックスの添付文書。処方上の注意や副作用について列記している

7月25日の調剤明細書と、初診以降の薬の記録

自殺時に部屋にあったチャンピックス

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読者コメント

大友2015/04/29 03:28
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カルテを入手できたため追加した(PDF)。(2012/11/23)
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