「警察と検察の不正と闘う」との決意を示す二本松進氏(64)。この事件、誰にでも起こり得るケースだけに、目が離せない。
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東京・新宿で寿司店を営む二本松進氏(当時59歳)が築地市場で仕入れ仕事の後、運転席で待つ妻のもとに戻り出発しようとしたところ、高橋巡査(女性、当時54歳)が立ちはだかった。「先を急ぐのでどいてもらえませんか」と言うと、その女性警官は「法定禁止エリアだ」と怒鳴り、事情を説明すると、「暴行されている」と虚偽の通報。駆けつけた築地署員は公務執行妨害と傷害の疑いで二本松氏を逮捕、19日間も勾留した。二本松氏は09年10月29日、約914万円の国家賠償請求訴訟を起こし、年明け1月以降に証人尋問が始まる予定。「ヒステリーを起こした高橋巡査が、虚偽告訴・職権濫用という権力犯罪を犯した事件なのに、築地署も一体となって不祥事を正当化した」と話す二本松氏に、事の顛末を聞いた。(訴状と被告準備書面はPDFダウンロード可)
【Digest】
◇平身低頭しない二本松夫妻に怒る女性警官
◇『謝りもしないで。今日は絶対に行かせないから!』と女性警官
◇『暴行! 暴行!』と警官が言い始めた
◇『俺だってあんな婦警に遭ったらかなわんよ』と取調べ刑事
◇左手負傷のはずが翌日は右手負傷に
◇「暴行無し、警官の傷は自傷」と検事が認める
◇「これは、脅迫だと思いました」
◇疑問点が続出 年明けに証人尋問へ
◇本当は何も起きていなかった?
◇平身低頭しない二本松夫妻に怒る女性警官
事件は、2007年10月11日の朝に起きた。
築地市場の朝は、仕入の車でにぎやかだ。駐車場では収容しきれず、付近の路上には、二重駐車や、歩道の上、交差点のなかにさえ仕入のための車が駐車してある。二本松氏は視力が悪く運転できないため、奥さんが運転し、二本松氏が買出しを終えて戻るのを車内で待っていた。
二本松氏は一度、買った食材を車に積み、買い忘れた枝豆を思い出し再び近くの場外市場で買って奥さんが待つ車へと急いだ。
「妻は、女性警察官の高橋眞智子巡査(当時54歳)が車に近づくとほぼ同時にエンジンをかけ、5mほど移動した後ハザードをつけ、私に「移動する」と知らせるため電話をかけました。電話を受けた私は『早くして』と聞くや『もう着いたよ』(車から約20m)と返事し約10秒程で車に戻ったのです。
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車に乗って店に帰ろうとすると警官が立ちはだかった。(再現写真)
エンジンがかかったままなので急いで助手席に乗り込もうとしましたが、助手席のドアが路肩のガードレールに当たらないよう、安全のため妻に『車を少し前に出して』と言って一旦ドアを閉めた時、ふと車の前に高橋巡査が立っているのを発見したのです。」
この時のやり取りを二本松氏の話から再現してみる。無言で車の前に立っていた女性警官の高橋巡査に、二本松氏は声をかけた。
『今出ますので、そこを退いてもらえませんか』
高橋巡査からは、意外だったのかなんの反応も無かった。
『すいません、先を急いでいるので、そこを退いてくれませんか』
高橋巡査はまだ無言。その真意を測ろうと顔をみようとしたが、二本松氏は目が悪く、警官の微妙な表情は読み取れなかった。だからこそ、奥さんに運転を任せていたのだが・・。
『ここは法定禁止エリアだ!』とだけ、高橋巡査は告げた。
→二本松氏と高橋巡査長が押し問答。(再現写真)
この言葉を取締りと勘違いした二本松氏は、
『法定禁止エリアでも、運転者がエンジンをかけていてすぐに運転できる状態にあるだけでなく、今出ようとしているんだから違反にならないはずじゃない。だいたい出ようとしている車を止めるのがおかしいよ』
と返した。
『いや、ここは法定禁止エリアだ』
『私も40年間免許を持っていろいろな場面を見てるけど、向こうの法定禁止エリアの放置車両には何もしないで、運転手が出発しようとしてる車を妨害して即取り締まる警察官など見たことないよ』
二本松氏は、このように納得できない旨を口にしたという。
◇『謝りもしないで。今日は絶対に行かせないから!』と女性警官
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事件現場。横断歩道の左端の柳の木の近くで二本松氏は逮捕された。 |
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実は、周辺には数十台の車両が歩道に乗り上げて駐車してあったり、T字型交差点内にも駐車してあり、その多くにはドライバーがいなかった。というのも、築地市場と築地警察署の所謂「協定」で、朝は仕入の車は取り締まらないことになっていたからだ
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築地市場周辺の朝は、仕入れの車が多数駐車されている。多くはドライバー不在で駐車しているが、このような放置自動車には警官はなにもせずに、運転手が乗車し、エンジンをかけ移動しようとする二本松氏らにだけに文句を言い始めた。 |
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現場の状況を解説した二本松氏作成の図。中央「ゴミ処理場」と書かれた少し下に奥さんが運転する車を停車してあった。 |
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勾留状。逃亡の恐れありとされているが、氏名・住所・職業はむろんのこと主要なことは警察が把握しており、二本松氏本人は不当逮捕に対し法廷で闘うと宣言しおり、逃亡の可能性などなかった。長期拘留は重大な人権侵害である。
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(上)逮捕されたときの被疑事実。「同巡査の胸を7~8回突くなどの暴行を加え」は、嘘であった判明した。さらに同巡査が「運転席側ドアの間にいるにもかかわらず」とあるが、実際は位置が逆で、車体とドアに挟まれるかっこうになったのは二本松氏の方だったという。(記事本文中の再現写真を参照)。
(下)不起訴処分理由告知書。不起訴処分の理由は「起訴猶予」と、19日間も身柄を拘束しながらたったの四文字の回答。
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