大手3社の、2001年~2006年7月末までのリコール台数と販売台数。ホンダ車はリコールに遭う可能性が最も高い。
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生活者よりメーカーのほうを向く国交省は、国民の命にかかわるリコールについて、メーカー別の年次台数および改修進捗率を一切、公表しない。メーカー各社に尋ねると、三菱は相変わらずの閉鎖体質で回答拒否。残りの大手3社で過去5年半余りのリコール台数を販売台数で割った「発生率」で比べた結果、当初「記者クラブにしか教えない」など驚くべき対応をしたホンダが80.5%で首位だった。実に10台売って8台リコール、の計算だ。絶対数一位のトヨタは66.3%、日産は63.2%だった。マスコミは福井威夫社長のヨイショ記事ばかり載せている場合ではない。
【Digest】
◇「記者クラブの人にだけ出している」ホンダ
◇亡くなった人も浮かばれない三菱の対応
◇4社のなかでは最も人間的な日産
◇「外部性」を押し付けるメーカーの論理
◇01~05年ではやっぱりトヨタ
前回までにお伝えしたとおり、重症事故が発生しているにもかかわらず、トヨタも国交省も、リコール絡みの情報公開を拒む。今回、トヨタ以外の3社に尋ねたが、回答は似たり寄ったりで、リコール発生時の対応は、各社とも消費者に負担を一方的に押し付け、何も補償しない、ということも分かった。
各社には、前段で「自分が乗っていたトヨタ車がリコールされた。同型モデルがハンドル操作がきかなくなり全治50日の重症事故を起こしている。今後、どのメーカーの車を買うべきか考えるうえで参考にしたいので、各社にコンプライアンスの調査をしている」と話したうえで、顧客の立場で聞いた。
◇「記者クラブの人にだけ出している」ホンダ
【本田技研工業】 お客様相談センター 0120-112010
--リコールに遭ったら、ホンダはユーザーに対して、台車を出したり、修理期間中の迷惑料を出すなど、ホンダとして一律で決められた規定はあるのか?
「一次ユーザは、販売店からDMを出し、営業マンが電話します。二次ユーザ(転売ユーザ)は、国交省から登録データをいただき、我々からDMを出して知らせます。保証は何もありません。ディーラーが独自の判断で代車を出すくらいはあります」
--リコールの改修率は、聞けば教えてもらえますか?人命を脅かす欠陥車なんだから、どのくらい修理が終わっているのか知っておかないと、歩道を歩いてても危険ですよね?松下の石油温風器などはまだ60%未満と、ちゃんと公表していますが。
「国交省に聞かれればいいのではないですか。3ヶ月以内に何十パーセントを回収せよ、といった規定があります。法律ではなく、国交省の行政指導です。個別には答えていません」
--経年のリコール台数を知りたいです。過去5年間でいいのですが。販売台数のうちどのくらいリコールされるのかを、購入前に知りたいのです。販売台数のほうは公表されているので、自分で計算しますが。
「年末とかに集計していて、記者会見で記者クラブの人にだけ出しています。一般の人には、特には答えません」
--記者クラブに出したって、新聞もテレビもスポンサーに都合の悪い数字は公表しないんだから消費者には伝わらないんですよ。なんで記者クラブに出したものを消費者に出せないの?
「理由はありません」
--記者クラブで発表したということは、一般に公表されているということですよね。だったら教えてください。
「あるかどうか探してみます。ありましたら、ご連絡しますので」
--リコール車の「不具合件数」(クレーム件数)と「事故件数」(人身、自損…)も個別には国交省に届けていますが、経年で集計したものを教えてください。社内では当然、集計してるはずです。これは、量とともに、質を知りたいからです。人身とか火災とか、深刻な事故がどのくらい起きているのですか?
「いっさい、公表していません。これも理由はありません」
対応は、タカハシという女性が最初に受け、カトウという男性が実際には応答した。コンプライアンス意識がゼロで、極めてやる気のない対応で不快だった。私は生涯、ホンダ車を買うことはないだろう。技術的には優れているという印象があるホンダだが、人命に対する考え方が軽すぎる。
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上:ホンダのリコール発生率推移
下:ホンダのリコール台数推移
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こうした対応の仕方は、「
ザ・コーポレーション」という有名な映画(全世界の映画祭で25個の賞を受賞)のなかでは「サイコパス」(精神病質的存在)と表現されている。つまり、実際に企業を動かしているのは人間であるにもかかわらず、企業として対応する際には、常識人としての個人の心が失われるのだ。
数日後、やっとリコール台数だけファクスしてもらった。これに販売台数を並べると、右記のグラフが出来る。
三菱も、リコール隠しを機に心を入れ替えたかと思いきや、サイコパスな対応だった。
◇亡くなった人も浮かばれない三菱の対応
【三菱自動車工業】 お客様相談センター 0120-324-860
--リコールに遭ったら.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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上:日産のリコール発生率推移
下:日産のリコール台数推移
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2005年末までの丸5年で切ると、リコール王の貫禄を見せトヨタの欠陥車率が首位に |
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