2. 営業職は四分類で考える ♯【自律的に仕事内容を選択できる】
❐やりがい―仕事軸『いい会社はどこにある?』
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「営業」という響きからイメージされる最も狭いイメージは、押し売りのような、既に確固とした修正不可能なブツがあって、それをお客さんに「売って回るだけ」というもの。これは、学生からもっとも敬遠されがちな、ノルマを課され数字を達成することだけを求められる「奴隷営業」である。これに対し、筆者がコンサル会社にいた2000年初頭からよく聞くようになったのが、「マーケティング・セールス」という横文字である。
- Digest
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- ①「ソリューション営業」=マーケと営業の融合
- 営業職の「やりがい」をどう考えるべきか
- ④「ソルジャー営業」の特徴とは
- ②「独占・殿様商売」の良し悪し
- ③「来店待ち反響営業」とは
①「ソリューション営業」=マーケと営業の融合
メーカーの販売子会社が、「○○販売」→「○○マーケティング」と名前を変えるブームがあり、オリンパス販売は「オリンパスプロマーケティング」に(2001年)、キヤノン販売は「キヤノンマーケティングジャパン」へ(2006年)と、改名した。これは、営業担当者に対し、売るだけじゃなくてマーケティングもやるんだぞ、というメッセージを込めた、役割や機能の変化を意味している。高度成長期は、作れば売れた「プロダクトアウト」の時代だったが、成熟経済の21世紀は「マーケットイン」※の発想を無視できなくなった。
※「プロダクトアウト」は、開発者が自分で良かれと思うものを作り出す考え方。夜郎自大になるリスクはあるが、スティーブ・ジョブズのような天才だと、顧客ニーズを越えた感動を与えることができる。逆に「マーケットイン」は、市場や顧客のニーズに合わせたモノを作る考え方。ただし、顧客自身が気づいていないニーズを満たす製品を作れない、という弊害がある。
そもそも成功しているメーカーは、以前から営業にマーケティングの機能を兼ね備えている。関西でダントツナンバーワンの高業績と高時価総額を誇るキーエンス※は、営業マンに現場の顧客ニーズを日々、集めさせる。「これがあったら売れる、という『ニーズカード』と呼ぶ情報システムがあり、たとえば、もっと小さい製品、もっと処理スピードが速い製品、ソフトのここを使いやすくすれば…といった具体的な情報を、営業マンがリアルタイムに顧客から汲み取り、商品開発部門にフィードバックしています」(元社員)
※キーエンス=主力はセンサーなど工場内機器の企画販売。BtoBのファブレスメーカーで、自社工場を持たない。日本企業としては、時価総額ランキングトップ5の常連で、「10兆円超企業」の1角を占める。内情について詳しくは、「キーエンス 北朝鮮もビックリ!分単位で管理される営業マンたち」参照
この、現場の生きたマーケットニーズ情報を受け、「東大・京大卒の地頭のよい理系院卒のなかから、さらに経験を積んだ優秀な人たち」(同)がいる商品開発部門が、現場で発生している問題を解決できる製品を開発する。当然、ニーズを満たすものは価格が高くても売れるので、粗利率は8割強にもなり、社員に平均年収2千万円超(2182万円=2022年3月期)と、上場企業で日本一高い給料を払ってもなお、営業利益率を55%も残せている。
このように、
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営業職の難易度、差別化度合い、やりがいの関係マップ
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PIVOT総合商社編でこの図を使って解説している。https://youtu.be/xLGUzmSF5AQ?si=IpqXZENGYTi3nh2C&t=1488
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