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日本の給与水準が上がらない7つの理由

❐報酬水準―対価軸『いい会社はどこにある?』

情報提供
給料が上がらない理由
日本の給与が上がらない7つの理由

結論からいうと、四半世紀の間、ずっと横ばいに塩漬けされた日本の給与所得者の報酬水準は、今後も上がらない。それだけに、会社選びは重要である。筆者が取材した現場感覚としては、賃金が上がらない最大の問題は、社員に高い給料を払える成長産業がなさすぎる、少なすぎること。これが、第一にして最大の理由で、第二が、セーフティーネットと職業訓練(リスキル)の仕組みが弱すぎて、給料の安い仕事を辞めにくいこと、である。第三~第七は右記のとおりだが、主要な理由は上の2つである、というのが筆者の体感だ。

Digest
  • 同一労働多重賃金の実態
  • 分配と企業統治は主要な理由ではない
  • 労組は一部産業のみ有効
  • 成長産業と岩盤規制改革の失敗&封印
  • 四半世紀も賃金横ばいな日本
  • 重要な3つの順番
  • イタリア・スペイン・ポルトガル化
  • 安定はあるが挑戦が難しい日本

対価軸は、「報酬水準」「カーブ・分布」「査定評価」「雇用」の4つの視点に分類できる。

「対価」軸の評価基準 →「仕事」軸へ →「生活」軸へ

KeyQuestionsは以下のとおりだ。これに対する答えを深堀し、評価の根拠を得る。

・30歳、40歳、50歳時点の、平均的な報酬水準は?

・給料以外の福利厚生、特に住宅面の補助は?

・同年代で差をつけるのはどこから?どのくらい?抜擢人事はある?

・普通の仕事ぶりだと、どこまで昇格できて、どこに高めのハードルがある?

・「Pay now」 or 「Pay later」?

・人事処遇は年功序列?成果主義?

・360度評価は人事査定に導入されている?

・雇用は安定している?短期勝負?

・積極的な解雇制度(PIPなど)はある?その運用は?

同一労働多重賃金の実態

なお、上記7つは、あくまで「正規雇用者」という範囲内での議論である。これとは別の種類の重要な問題がある。それが、第八の理由としての、正規・非正規の身分制による差別と分配の問題(同一労働同一賃金)である。たとえばJR西日本は、新幹線の車掌に、「フルタイム非正規」を採用している。非正規の契約社員で雇用し、フルタイム勤務で仕事内容はほとんど同じなのに、年収は額面で220万円だ。取材で源泉徴収票の実物を確認済みである。

「正社員登用の可能性をエサにして集め、ほとんどが5年で使い捨てられます。登用の可能性がないなら最初から応募しません。同じ車掌所の同期は30人くらいですが、私を含め、みんな正社員としてずっと乗務の仕事をしたい人ばかり。でも、正確な正社員試験の合格率は公表されず、5人受けて、受かるのは1人かゼロ、といった確率。その登用試験は5年間で2回だけしか受けることができず、採点基準も不透明で、なぜ落とされたかのフィードバックもありません。新幹線の乗務員をしたいという若者の心につけ込んだ、『やりがい搾取』の典型だと思います」(非正規の20代元車掌)

同社には、こうした臨時従業員が、運輸業で約3千人いる。このJR西の新幹線元車掌は、5年間、無遅刻無欠勤・始末書ナシでフルタイム勤務したが、「5年を過ぎたら無期限雇用に転換」という国のルールによって、きっちり5年で雇止めされた。非正規社員使い捨てを容認する正社員中心の労働組合「JR西労組」は、組合費をこの社員からも、3千円ずつ、毎月、天引きしていた。これが現在、この国の政府と労組がやっていることである。※「フルタイム非正規」という被差別的な存在は、賃金が高い(1千万円以上など)専門職以外は国が禁止すべきだろう。

雇用が安泰で給料も高めな正社員は既得権化しており、そのしわ寄せが非正規にいっている。本来、両者の中間で統一する議論が必要である。全員が正社員並みに解雇不能になったら、企業は新規雇用ができなくなるため、現状よりも社員の権利が強まるような解雇ルール制定が必須である(=後述)。とりあえず現状では、非正規で働くと損なことしかないのが実情である。

分配と企業統治は主要な理由ではない

上記で7つあげた、正社員の給与が上がらない理由について、主要ではない下から解説していく。第五の「分配」の問題は、野党系が主張しているもので、「企業が溜め込んで社員に分配しない」という件である。

対価軸目次
本稿の位置づけと、第3章対価軸の構成(本稿は単行本『いい会社はどこにある?』の元原稿 《一部アップデート完全版》で、もとは《会社を選ぶ技術》と題して書き進めたものです)

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国別ユニコーン企業数

過去25年の、失業率と平均賃金推移(OECD主要国)

OECD加盟諸国の労働生産性

平均失業率と賃金水準の関係

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ainomiya9992024/08/31 14:57

理由は体感だと平然という。困ったものだ。誰もあんたの主観など聞いてないし、聞きてない。それがデマの始まりなるのだと言いたい。客観と主観の違いの区別を持っていない者が、言論人かのようにふるまっている。

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