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km国際自動車 現役社員が訴える残業、休出、通勤…各種手当不払いのカラクリ

情報提供
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右が首都圏なかまユニオン傘下の全国際自動車労働組合(国際全労)執行委員長の齋藤正一氏。左が原告代理人の指宿昭一氏
 『kmタクシー』で知られる東京の大手老舗タクシー会社「国際自動車・城南」の乗務員・齋藤正一氏(実名、59歳)は、退職強要や有給が取れない問題をはじめ班長による横暴などを、社員の97%が加入する「国際労働組合」に訴えたが“御用労組”は何もしてくれない。そこで同僚15人で新労組を立ち上げ、2012年5月、給料から複雑なカラクリで密かに差し引かれていた残業代、深夜手当、休日手当、通勤手当など計3600万円強の返還を求め東京地裁に提訴した。09年9月に運転手の過労防止措置を繰り返し怠ったなどとして赤坂本社が事業許可取り消し処分を受けたが、その後も懲りない国際自動車。原告2人、労組、会社側への取材に基づき「違法行為に対して麻痺した会社」(指宿昭一・原告側弁護士)の実情をお伝えする。(訴状はPDFダウンロード可)
Digest
  • “煽り行為”で退職強要、班長特権の闇
  • 体調が悪いのに出社強要され、乗務中に動脈瘤破裂で死亡
  • 残業代、深夜割増、休日・通勤手当が引かれる賃金体系の闇
  • 「違法行為に対する感覚が麻痺した企業体質」原告代理人
  • 「不当な扱い」があれば会社に厳しく…国際労組

“煽り行為”で退職強要、班長特権の闇

原告の一人、齋藤正一氏(実名、59歳)は、トラックの運転手や、タクシー会社・神奈川都市交通の運転手などを経て、05年に国際自動車(以下、「国際自動車・城南」)に入社した。(その後、国際自動車は09年4月の分社化により、城南、城東、城西、城北、東雲、赤坂本社の6社に分かれ、斎藤氏は城南の社員となっている)

齋藤氏は入社当初のことをこう語る。

「会社から『2階に組合事務所があるから、加入の手続きをして下さい』と言われました」

それは「国際労働組合」(以下、「国際労組」)だった。国際労組は、ユニオン・ショップ協定(労働政策研究・研修機構より)により、役員や管理職、嘱託・契約社員以外は、同労組に入ることになっている。そのため社員の組合加入率は97%に上る。

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国際自動車赤坂本社(東京都港区赤坂二丁目8番6号 km赤坂ビル)

「国際労組は『御用組合』です。組合員の意見も全然、吸い上げてくれないし、会社に抗議もしてくれません」(齋藤氏)

入社後、齋藤氏が所属した部署は、五反田営業所だった。営業所のトップは、所長クラスの統括課長という役職。その下に課長。各課には、4~6人程度の「班長」がいる。その下に、齋藤氏などのタクシー乗務員がいる。

このなかの「班長」が国際自動車・城南の特色である。

原告らによると、班長たちは、成績が悪くて、気の弱い社員をターゲットにして、執拗にいびるという。

タクシー運転手の勤務時間は、基本的に、1勤務21時間拘束(朝8時~午前4時など。休憩3時間)となっている。

1勤務のうち、「営収(営業収入)」4万円以上、走行距離250km以上が至上命令で、それを下回る社員が、吊るし上げられるのだ。

例えば五反田営業所では、売上が悪い社員が一人いて、仕事に行く前に個室に呼び出され、班長3人に1~2時間にわたって、「お前は辞めろ!退職届にハンコを押してサインしろ!」と詰め寄られ、仕事が終わって疲れきって帰って来てからも、「課長が来るまで待っていろ!」と命令され、またも個室に呼び出され、「辞めろ!」と脅される。このような“煽り行為”が数年にわたって続いたという。(※成績不振社員を、吊るし上げて、辞めさせようとすることを、「煽り行為」と原告たちは呼んでいる)

班長たちが煽る理由は、会社が班長同士で競争させているからだという。

「班長になったら、会社から紙が渡されます。そこには、1位~15位まで順番がついていて、1位に60万円、2位は50万円、3位は40万円…と、順位が下がるにつれて金額が下がっていきます。それが何を意味するのか、会社からは聞いていませんが、おそらく競争させているのだと思います。つまり、売上が多く、事故も苦情も少ない班長は、上位になる。

実際、私は、ある班長に、聞いたんです。『おまえ、1位60万、2位50万と順位付けして、競争していんだろ?』すると、その班長は、言葉ではいいませんでしたが、うなづいていました」(原告の1人、A氏(60代))

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原告の一人、A氏(60代)

“班長特権”は他にもある。国際自動車・城南では、一般社員が事故を起こすと、「降格」させられる。降格とは、例えば「内勤2日」を義務付けらる。その間、外回りができなくなり、売上を上げられない、というペナルティーである。また、営業車両を、通常の黒ではなく、黄色の車に乗るよう命じられることもある。黄色車両から入って来る無線の情報は、住宅街などの個人客に関するものばかりで、会社や団体といった大口の顧客情報に比べ、営収は少なくなるのだという。

さらに、普通の乗務員ならば事故を起こすと処分されるのに、班長の場合は、何のお咎めもないという。

「例えば、こんなこともありました。班長が信号無視で突っ込んで、大事故を起こし、その班長自身は骨折して、相手方も怪我をしたことがありました。

班長は、黄色いネクタイをすることになっているのですが、私たちは、『あいつは辞めるしかないな』と思っていました。すると後日、その班長が、なんと、そのまま黄色いネクタイで出勤していたのです。

あるいは別の班長も、追突事故を起こしたのですが、翌日、その班長が、新人教育で横に乗って指導をしていたこともありました。追突事故の場合、追突した側の過失割合が100%で、追突された側の過失はゼロ%ですから、本来、指導はあり得ません。普通の乗務員が同じことをやったら降格は当たり前で、首になってもおかしくありません。

しかも、その班長は、ついこの間も乗車拒否をして、「タクシーセンター」に挙げられました。タクシー業界では、タクシーセンターは身内の警察のような存在で、一乗務員であれば解雇は必至ですが、それでも、その班長は平気でした。班長は何をやってもOKなのです」(A氏)

こうした班長の横暴を訴えても、国際労組は、何ら抗議をしてくれなかった。

体調が悪いのに出社強要され、乗務中に動脈瘤破裂で死亡

ほかにも、国際自動車・城南では、有給を取らせない、ということがまかり通っているという。

「例えば

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09年9月12日、国際自動車赤坂本社は過労防止措置違反等により事業許可の取消処分を受けている。画像はそのときの国交省の文書

上は組合員の給与明細。下は国際自動車(城東・城西・城南・城北)、国際ハイヤーの「タクシー乗務員賃金規則」。給与明細上は、残業手当、深夜手当、公出手当、通勤交通費があたかも支払われているかのように記載されているが、実は歩合給から差し引かれるカラクリになっている

上が筆者の質問に対する国際労働組合の回答。下がその回答に対する筆者の再質問

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umiusi452015/09/24 17:58

東京は大変なんだなあ

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SABAKU2015/06/25 05:25

こうやって不透明な労働環境や給与体系が改善されるのはいいことのはずなんだが、なぜか労働者側にもこの動きを揶揄するものがいるようだ。社畜精神としか言いようがない。

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読者コメント

まい2015/02/22 16:04
一乗務員2015/01/30 10:26
指宿昭一(弁護士)2014/12/31 14:33
四海2014/08/03 09:33会員
タクシー利用者2013/03/30 18:44
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