10年後に食える仕事-6 「グローカル」――日本市場のプロとして
「グローカル」の職業群 |
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人事はグローカルの典型職種
2011年の2月、インド・ニューデリーに隣接し急成長中のグルガオンという都市に赴任中の、財閥系の中堅商社マンに話を聞いた。現地の子会社に日本から1人で出向し、会長を務めている。「2年間で100人前後のインド人を採用したり年俸交渉をしたりして分かったのは、現地人の優秀な人事部長を雇うことが最も重要だ、ということ。従業員からも人気があって、『ボーナスでどのくらいをエクスペクトしてるのか』といった非公式な情報が正確に上がってくることが必要」
インドの労働市場は中国と同じく、流動性が極めて高い。「平均在籍年数は1.5年くらいで、毎年半分は辞める。だから毎日、面接です。みんな自分の給料を見せ合っちゃうし、競争心もすごい。それで『給料が20%上がらないなら親戚の会社に転職する』などとオプションを用意して交渉してくる。辞められると困る人材の場合は、今回だけは特別だ、と引き止めなきゃいけない。しかも安易に認めていくと、周りの社員に伝わって収拾がつかなくなる」
そういった駆け引きは流動性のない日本ではありえず、感情の機微にもかかわってくる。現地のカルチャーを深く理解していないと、どんどん人件費が上がってしまう。そこで優秀な人事部長の有無が、経営のカギを握ることになるわけだ。インドでは、超有名大学は別として、普通の大卒者は、まず月1万円ほどでトレイニーとして雇い、半年~1年後に年俸30万円ほどからスタートして、あとは交渉次第だという。2年目にいきなり60万円に上がることもあるというから、年功序列的な日本の感覚は全く通用しない。
同じく人事については、中国でも似たような状況だ。現地に赴任する日本人にとって共通の課題は、やはり現地人の扱いなのである。
「日本企業が中国に進出しても、ある程度の規模になると、ストなど労働争議が起きそうになったときの対応を考えると、現場の人事部長は中国人、それも党員(=共産党員)でないと管理が難しい」。前出の大手生保の北京事務所を取り仕切る40代部長は、日本人には人事は無理だ、と言う。
「保険を売りに行っても、どこの人なの?と戸籍を聞かれる。北京の戸籍はステータスが高く、信用があるんです。だから、営業の人を採用するにも、戸籍が関係してくる」。こうした戸籍感覚は、外国人である日本人には理解が難しい。
採用だけでなく、教育も難しい
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