編集長ブログ一覧
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日経はトヨタ並みの給料にすれば黒字日経の2009年12月期決算。営業赤字72億円。2010/03/24
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『激震マスメディア』生放送なのにタブーには触れず昨日放送されたNHK『激震マスメディア』をさっきみた。もちろん録画。なんかみんな当たり障りのない話に終始してた印象。問題はコンテンツじゃなくて、電波利権や再販制などによるインフラ独占。しかし、そういう論点は「構成表」から除外されている。NHKのアジェンダ設定を踏み越えないといけないのに、佐々木さんも川上さんもテレビを知らないな。なるほど。この番組みていて、ほんとイライラしていた。かったるすぎ。報道の多様性云々の話があったが、その本質的な原因である「戦後、一社も全国紙・テレビ局に新規参入がなかった」という事実や、その原因となっている電波利権、再販規制についてまったく話が出ず。ライブドアや楽天などIT企業が新規参入しようとしたら叩き潰され、楽天がTBSを経営しようとしたら法律まで変えてブロックされたという驚愕の事実に、最後まで誰も触れなかった。誰も言わないことに、ホントにビックリした。米国では80年代に『USATODAY』の新規参入があったりしたわけで。生放送ということで、そういう既得権について発言するチャンスは皆にあったわけだけど、放送事故は起こさないような造りになってるわけか。乗り越えてほしかった。そういうタブーを作り出す構造こそが、既存のテレビ新聞の最大の問題点なんだけど。私なら、楽天とTBSの話だけを徹底的に言い続ける。そこに本質があるんだから。もし今、ミキタニが経営していたら、TBSはこんな電波を無駄遣いするだけのダメ会社にはなっていなかったはずだし、新しいタイプの番組を沢山つくって、利益をあげて法人税を沢山払って、雇用にも貢献したはず。既存の使えない社員の給与は半分にされるだろうけど、それが社会のため日本のためになるんだから。2010/03/23
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週刊東洋経済セミナー「Think!キャリア」以下セミナーをやります。どうでもいいことですが、野中ともよCEOが提唱した三洋電機「ThinkGAIA」を思い出してしまいました。いい製品作る会社なんですけど、カルチャーがね…。城さんはこの職務質問受けやすいヤ○ザの若頭スタイルが好きだなぁ。似合ってるし。私はこの講演の内容をベースに2年ぶりに本(新書)を出す予定で、気合が入っています。前回(12月)と内容は被りますので、特にこれまで参加されなかったかた、是非一度ご参加いただければと思います。今回は、同世代の人事コンサルタント・城繁幸氏に加え、パネルトークでは、スタンフォード大留学をはさんで『週刊東洋経済』記者/編集者をやっている佐々木紀彦氏も参加ということで、留学とキャリアの現実、日米の違いなどについても、リアルな話を聞けるでしょう。-----【セミナー概要】------■テーマ:「Think!キャリア~20代ビジネスパーソンの仕事・会社選び」■講演者:城繁幸×渡邉正裕司会:佐々木紀彦(『週刊東洋経済』編集部記者)■対象:20代~30代前半くらいまで、定員100名応募者100名超につき、次回開催については、こちらから「他のメディアへの配信/MyNewsJapanからのお知らせ」をご登録ください■日時:2010年3月13日(土)開場13:00開会13:30第一部13:40~14:25講演城繁幸第二部14:30~15:15講演渡邉正裕休憩(15分間)第三部15:30~16:30パネルトーク司会:佐々木紀彦(『週刊東洋経済』編集部記者)第四部16:30~17:00参加者との意見交流閉会17:00懇親会17:10~18:00(無料/同フロア別会場、参加自由)■会場東洋経済新報社9階ホール(東京都中央区日本橋本石町1-2-1東洋経済ビル)■主催東洋経済新報社共催株式会社MyNewsJapan、株式会社Joe'sLabo■参加費10,000円(税込)-------【内容】--------「もうキャリア選びに正解はない。これからは自分の頭で考えないといけない時代になる」。長らくそう言われながらも、いまだに公務員や大手銀行が就職ランキングの上位に名を連ねます。こうした横並びの背景には、企業に対する知識の欠如と、人生に対するビジョンの欠如があります。今回のセミナーが、みなさんの「キャリアリテラシー」向上に少しでも役立てば幸いです。-------【講演者、司会】-------■城繁幸Joe'sLabo代表取締役、作家、人事コンサルタント。東大法学部卒、富士通人事部を経て独立。著書に『若者はなぜ3年で辞めるのか』『7割は課長にさえなれません』など。■渡邉正裕MyNewsJapan代表取締役、ジャーナリスト。慶大卒後、日経新聞の記者、IBMのコンサルを経て独立。著書に『若者はなぜ会社選びに失敗するのか』など。→ココで働け!働く生活者のための“企業ミシュラン”■佐々木紀彦:『週刊東洋経済』編集部記者/編集者。慶大卒後、東洋経済新報社入社、自動車、IT業界などを担当。2007年9月より休職しスタンフォード大学大学院修士課程留学、2009年夏帰国。------【応募方法】-------下記よりお申し込み下さい。■『週刊東洋経済』キャリアセミナー下方の「お申し込みはこちらから」より2010/03/01
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MBC(韓国文化放送)ほか連日の取材MBCは提携先であるお台場フジテレビのメディアタワー内にオフィスがある。テレビ局はどこも同じ風景。この張り紙もお馴染みで、選挙のときに推薦状を張り出す候補者事務所に似ている。衆愚政治と、衆愚放送。どちらも一般大衆のレベル以上のものは提供できない悲しい宿命。2010/02/25
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キャリアチェンジとしてのビジネススクール最近、KBS(慶應大学ビジネス・スクール)有志4名と意見交換した。私が毎年やってるキャリアセミナーでのFAQの1つが「留学やMBA取得を迷っているが今いくべきか」。帰る場所が保証されていないまま会社を飛び出し、在学中に転職先を決める必要がある人にとっては、特に考えるべきテーマだ。そもそも、そういった境遇の人がどれほどいるのか。2008年入学の同期は100人いて、うち97人は脱落せずに卒業するそうだ。内訳としては、学卒あがり(社会人経験なし)が10人、御曹司系(KBSは卒業生が社長になると実績になると考えているらしく、必ず社長になる二世を計画的に受け入れている)が20人、外国人留学生が15人(アジア系ばかり)、企業派遣および企業在籍中休職など(つまり、戻るところがある人たち)が30人強。学卒あがりの御曹司もいるから、残りはざっと30人となり、これが退路を断って、キャリアアップ/キャリアチェンジ目的で企業等に辞表出してまで国内留学した勇猛果敢な人たち、ということになる。日本における大企業の正社員既得権(大企業なら生涯賃金4~6億円)は国内でもっとも大きな利権の1つなので、特に大企業を辞めて来た人にとって、次のキャリア問題は深刻だ。2年で4百万円の学費を払い、本来なら2年で稼げたであろう1~2千万円の機会を損失しているのだ。この「退路を断った30人」は、3月の卒業を前に、どうなっているのか。「就職先は、選ばなければある。でも、目的を持って来ているから、どこでもいいという訳にはいかない。コンサル会社(ボスコン等)や外資金融(モルスタ等)、マーケティング職種(P&G等)など、これまで典型的な受け入れ先だった企業群に就職が決まっている人は、例年なら30人として、今年は現時点で5~6人ほどです」なにしろ、今は外資金融が業界全体で、完全に門戸を閉ざしてしまっているのだという。この30人がアンラッキーなのは、2008年春の入学だから、まだリーマンショック前。出願を決めた2007年は、まだ安倍内閣が終わった頃で、景気は悪くなかった。あの当時に、今の経済状況を予測するのは難しい。というわけで、計画が狂った人たちは、「次の次(2つ先)の転職を視野に、まずは第二希望群の中堅企業などに就職する人も目立つ」そうである。4年ほど前の好景気だった頃は、私の周りでも、電機メーカーの営業出身でKBSを挟んで外資証券にキャリアチェンジした人がいたし、AIUの営業から英国のカーディフMBAを挟んでデンソー経営企画にキャリアチェンジした友人もいる。日産自動車が2003~2004年の2年間に、MCS(ミッドキャリアスタッフ)採用と称して中途採用だけで約1,200人も採り、30代の前半・中盤世代を一気に埋めていた頃は、マイナーな中小企業→MBA→日産は1つの成功パターンといえた。上記はいずれも、MBAを挟まなければ不可能なキャリアチェンジであったケースが多い。メーカー営業→外資金融、金融営業→経営企画、マイナーすぎる中小→大企業は、採用する側にとって合理的でないから、もう一押しが欲しい。その土産がMBAで、「こいつは一通り経営を勉強してるはずだから潰しが利くんじゃないか、ポテンシャルがあるのでは」と思わせる機能がある。新卒一発勝負・再チャレンジ不可能社会の日本において、MBAに限らず国内外の留学が、数少ないキャリアチェンジの手段であることは確か。ここまで急激な採用減はそうそうないので、リーマンショックという事故に遭ってしまった、としかいいようがない。■私は一貫して、「やりがいある仕事を市場原理のなかで実現する!」ことが幸せなキャリア人生なのだ、と主張している。大企業だから、人気企業だから、といって、自分の動機とかけ離れた、やりがいのない仕事を我慢してやって、滅私奉公していても、JALみたいに倒産して、3年間ボーナスゼロ、給与もカット、さらに3年後にはまた倒産かも、という状況になるかもしれない。三洋電機だって、10年前までは優良企業といわれていたが、経営破たんしてパナソニックに救済合併された。破たん前の数年間は、破れかぶれになった経営陣による悪質なリストラも横行した。企業に人格などないので、たまたまその時の経営者が終身雇用だなどとほざいていようが、すぐに豹変するものだ。90年代半ばまではエリート街道と呼ばれた都銀は、3割以上報酬水準を下げられ、10行が3行に統廃合される過程で、多くの「将来を約束されたはずの人たち」が、ポスト減や人事権争いで敗北し、閑職に追いやられ、出向・転籍となった。「希望がカネだけ」という仕事をやっていると、環境が変化してカネが貰えなくなったら、終わり。しかも変化のスピードはグローバル化、IT化のなかで、速まるばかり、かつ予想困難。だから、仕事自体が動機にマッチしていることが第1に決定的に重要であり、その仕事で十分に稼げるようになることが第2に重要、ということだ。大企業だとか人気企業だとかいう基準で仕事を選んでも、いいのは若いうちだけ。親ウケ、友達ウケがよくたって、仕事がつまらなければ苦痛のほうが上回る日が遠からずやってくる。40代以降の長い人生が消化試合になるわけだ。■では、自分がやりたいことでキャリアを積むにはどうすべきか。以下が皆さんとの議論から得た私の答えである。・新卒で入社した会社でやりたい仕事に就くのは、ほとんど無理。そもそも何をやりたいかなど、学卒時点では分からないことが多い。・しかし、日本の大企業では、最初に配属された部署からの軌道修正がきかないケースが多く、たとえばメーカーで営業に配属になったら地方支社で最低5年以上、といった会社が一般的。マーケだの商品企画だのと希望を言っても、叶わないまま30代になり、会社の駒として人生を捧げるはめになる。(そして気が付いたらJAL状態…)・確かに、日本企業でも「異動できなければ辞める」というカードは切れるが、それはダントツに優秀な成績をあげ、かつ転職活動で内定を得た一部のデキる人にしか切れないし、そもそも今の仕事が違うと思っているのだから良い成績を上げられるわけがない。・となると、入った会社で「この仕事は絶対に自分のやりたいこととは違う!」と思ったら、入社1年目から仮面社員のまま新卒の就活に再チャレンジするか、3~4年目に在職しながら第2新卒採用にチャレンジするしかない。ただ、現在は不景気で第2新卒の窓口はあまり開いていない。・そのタイミングを逃して30代に突入すると、もはや自分の職歴を活かした転職しかできなくなるから、道は狭まる。どんどん、過去に縛られていく。・35歳ごろになると、もう新しい道はない。転職できなくなり、今ある道の延長線上を歩むしかなくなる。今ある道は違うと思いつつも、できることといえば、自己啓発本を読んで自分を洗脳し、「目の前の仕事にやりがいを見出す方法」を体得する“サラリーマン道”に精進するのみだ。結論としては、社会人3~4年目まで、20代後半までの「第2新卒のタイミングが、やりたい仕事に就く最後のタイミング」ということに落ち着いた。ここで転職活動をして、ダメなら国内外の留学を挟み、20代のうちに自分の動機にマッチした仕事でキャリアを積む。つまりMBAは、第2新卒の転職活動と同じタイミングで、動機にマッチした仕事を得るための手段の1つとして活用すべきものであって、それ以外の機能は乏しい。既に動機にマッチしたやりがいのある仕事に就いている20代のビジネスパーソンが、会社を辞めてまで行く価値があるかというと、私はないと思う。切迫した実務経験の中でのほうが血肉となるし、理論や知識、さらには志の高い仲間の獲得については、働きながら夜や土日にグロービスにでも通えば、十分、確保できるからだ。2010/02/20
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トヨタの人身売買・強制労働問題目の前にでっかい交番があったり(上)、常時、機動隊車両が待機してたり(中)、自爆テロ自動車が突っ込んできてもいいように車両封鎖する準備してたり(下)。テロ標的国の大使館は警備が大変。2010/02/16
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フリーミアム国家論自分のビジネスに関係ありそうなので『フリー』を読んだ。気合入れて読んだのだが、概ね既視感。ムーアの法則なんて今ごろ言われても。やはり、本になってる時点で情報が古い。ウェブ触ったことない人向け。ウェブ上では評価が高いようだが、単価の高い本はアフィリエイトで儲かるからamazon書評家さんたちには「売りたいバイアス」がかかるし、かつ、こういうウェブで売れそうな本は評価が甘くなりがち(そもそも、書評家の言うとおり毎週オススメの本が次々出版されていたら、こんな出版社不況にならない)。たぶん日米の市場の違いによるところだと思うが、実業の現場で「フリー」と日々戦っている私から見ると、かなりイタい記述が目立った。まず、この著者はウィキペディアを盲信している。ウィキが、紙とCDロムの百貨辞典市場を縮小させたのは確かだろうが、その先の話がすっぽり欠落。少なくとも日本のウィキはほとんど「2ちゃんねる」と同じで、西和彦氏もいうように、とにかく嘘だらけで信用している人はリテラシーの低い人だけ。まったく実用に値しない。宮台真司氏も言うように、管理人なき世界では「悪貨が良貨を駆逐する」というのがウェブ世界の本質なのであるが、その点を含め、今後、有料とウィキのポートフォリオがどうなるのかについての論考がゼロ。もう1つ驚いたのが、1セント払わせるのがいかに大変かというくだり。売上げを五ドルから五◯◯◯◯万ドルに増やすのは、ベンチャー事業にとってもっともむずかしい仕事ではありません。ユーザーになにがしかのお金を払わせることがもっともむずかしいのです。すべてのベンチャー事業が抱える最大のギャップは、無料のサービスと一セントでも請求するサービスとのあいだにあるのです。もうそんなことは分かりきっている。その先を論じないと価値がない。今、ウェブ事業者が取り組んでいる今日的なテーマは、その1セントをどうやって課金すれば、消費者および事業者にとってストレスなくハッピーなのか、という心理経済学に移っている。有料課金で成功しているのは、日本では圧倒的にケータイだ。どうしてグリーがボロ儲けできるのか。課金されていることを忘れさせるからだ。消費者からみると、薄々知っていても、通話料と合算で請求されるために、心理的に頭に入ってこない(クレジット明細のほうが入りやすい)。ウェブでクレジット番号を16ケタも入れてもらうハードルと、ケータイでYESボタンを押してもらうだけのハードルの違いこそ、いま論じなければならない。同じ1セント課金でも、最大のギャップは、むしろこちらにある。とりあえずMyNewsJapanのビジネスモデルが「フリーミアム」(フリー+プレミアム)と呼ばれるものであることは分かった。でも、私がそれを考えていたのは7年も前のことだし、6年前から実践している。そのあたりのディテールを書いた私の本『やりがいある仕事を~』のほうが、よほどオススメできる。過去の話をいろいろ分析してノウハウを整理してみたところで、もう古い話だ。時代はケータイとか、心理経済学のほうに移っているんだから、そういう未来の話を読みたかった。ちょうど一緒に買った「サーカス」で、成毛氏がこう書いている。30代がなぜよくないかというと、いわゆる「ハウツー本」をよく読んでいるんです。典型は『○○力』といった本でしょう。成功した人というのは、ノウハウや他人の意見には全然興味がなくて、自分がやりたいと思ったことをやり抜いた人ばかりです。「ハウツー本」を読んで成功した人など聞いたことがない。まったくその通りだ!と思った。「フリー」もハウツー本の一種だろうが、過去の成功モデルを分析して名前をつけてみたところで、既に過去の話に過ぎない。電車のなかで『日経アソシエ』の特集(いつも同じ仕事術ばかり)なんか読んでるイタいサラリーマンをみると、また出版社にカモられてるよ、と可哀想になる。私も同じ号でインタビューに答えていて、自分の役割を踏まえ、新興国だのケータイだのと真面目に答えてしまったのだが、成毛さんの「もうムチャクチャやるしかないでしょう」のほうが結構、正しいかもしれないので、そっちを読むことをオススメする。さすがこの人、面白い。■フリーミアム国家を目指せところで、『フリー』に戻ると、じゃあオマエは未来をどう考えるのか、と言われれば、本書を読みながら考えたのが「フリーミアム国家論」だ。基本的な行政サービスは無料で、プレミアムサービスは有料。よい教育を受けたければ、よい医療を受けたければ、プラスα、頑張りなさい、と。これは、ムーアの法則でITコストが下がり続ければ、近未来(10年も経たず)に実現できる。行政手続きや行政サービスはIT化すれば、大前研一氏が言うようにコストを現状の10分の1にするのはごく簡単だ。既に実現しているように、住民票や印鑑証明などはコンビニで出せばよい。全国一律のクラウドサービスで、納税も電子申告、選挙は電子投票、公共事業は電子入札、とやっていけば余裕で10分の1だ。困るのは富士通やNECなど利権化しているITゼネコンだけで、国民は全く困らない。「健康で文化的な最低限度の生活」は簡単で、国民全員にエイサーの低価格PCとADSL接続権を無料配布し、電子図書館を作ってアクセスさせ、勝手にブログでも書かせてツイッターで俳句でも発信させてれば、極めて文化的な生活になる。問題は「健康で」のところだが、これは生活保護レベルのコスト(1人月15万とか)がかかるから、その分の税収を上げねばならない。そのためには、徹底的な競争戦略、規制撤廃によって、自由競争させ、優秀な人間にとことんまで働かせる。日本の現状は医療・福祉・農業・教育・建設・通信・電波・再販と規制でがんじがらめなので、優秀な能力が活かせていない。デキる人には死ぬほど働かせて、ガッツリ雇用を作って、ガッツリ納税してもらう。これで国際競争力もつき、輸出も伸び、内需も拡大し、原資ができるわけだ。このフリーミアム国家論は、ベーシックインカム論に似ているが、私は働くことが賞賛される社会のほうがよいと思うので、負の所得税を課して、働く人ほどよい生活ができる仕組みにする。つまり、フリーミアムのフリーには2つの意味があって、「無料」の行政サービスと、「自由」な市場競争。それで、プレミアムにも2つの意味がある。行政のプレミアムサービスと、競争優位な人物が自分の稼いだカネで市場で受けられるプレミアムサービス。問題は、一度、経済が完全に破壊されない限り、既得権がんじがらめの日本でこれが政治的に実現する可能性はゼロということだ。希望は、戦争。または、戦争状態に近いハイパーインフレによるゼロリセット。戦後のように。成毛氏が言うようにハイパーインフレは来そうだから、案外、チャンスかもしれない。2010/02/08
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『報ステ』トヨタ報道がデタラメな件トヨタの闇2010/02/04
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2009年度決算作業これは1年前の決算書表紙2010/02/02
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ipadで新聞はプラスサムも、出版はゼロサム必至盛んに報道されてるappleのipadは、なかなか魅力的だ。日本の会社から、こういったワクワクさせる新製品が出てくる予兆すらないことが、日本経済の閉塞感を象徴していると感じた。日本でsonyが電子書籍にいったん参入して撤退したのは、端末がダサくて、事務的で、appleのようなワクワク感がなかったからだと思う。あのデザインと楽しそうでサクサク動く操作性を見る限り、ipadは成功するに違いない。となると、日本の新聞社と出版社の対応が見モノである。■新聞はプラスサムゲームに参加せよ私なんか新聞記者時代は毎日6紙に目を通していたわけだけど、今では一切、紙の新聞を読まなくて平気になった。それでも、ipadで5紙(朝毎読産経日経)の紙面イメージのままに、ささっと目を通せるのなら、5紙合計で3千円くらいなら、払ってやってもいいかな、と思う。何をトップニュースとして扱っているのかで世論が誘導(形成・洗脳)され、それに逆らわない政策をマニフェストに掲げた政党が政権をとるので、物理的なゴミが増えないエコなipadなら、毎日所要1~2分はその作業に費やしてもいい。この場合、これまでゼロだった需要が3千円分増えるわけだから、新聞社の取り分が1紙6百円のうちの半分、3百円だとしても、3百円分が増収だ。おそらく、いま新聞を定期購読していない20代30代の若者が、今後、何らかのきっかけで突然、定期購読し始めるとは考えにくいから、新聞社にとってはチャンスだろう。私は、ヤフーニュースのトピックスが若者の新聞購読数を減らしている、とみている。あれほど便利に速報で見せられたら、紙なんていらねーよ、毎日投函されても捨てるの大変だし、となって当然だ。だから、朝日や日経がヤフーに配信しないのは当然の戦略だし、読売・産経・毎日はまったく頭が悪いと思う。ヤフーからいくら貰っているのか知らないが、生涯読者を減らすインパクトのほうが大きいはずだ。1人失えば年4万円、50年で200万である。では、ポータルと同様に、ipadへの配信もすべきでないのか。私が新聞経営者だったら、ipadへの配信は、とりあえず販売店への卸値(月2千円とか)から始めて、反応を見ながらどんどん値下げしていくだろう。月2千円でアップルに卸すなら、消費者は3千円、4千円払うことになるから、契約数はそう伸びないが、新聞社の損はありえない。単純に1:1で置き換わるなら新聞社の取り分は減らず、販売店がジリジリ苦しくなって廃業に追い込まれるだけ。朝日は「ASA」にかなり出資もしちゃってるから自分の首を絞めることになって販売店の統廃合に時間がかかるが、日経の場合は販売店との資本関係は基本的にないはず(毎日の販売店などに配ってもらっている併売)だから、置き換わっても困らない。プラス、新たな契約者分が増益に貢献する。ipadでも、紙面イメージのまま配信するようにすれば新聞広告は見られるわけで、紙面広告の価値は下がらないはずだ。つまり、ヤフー配信がゼロサムゲームなら、ipadは明らかにプラスサムのゲームで、しかも確実に計算できるから(ヤフー配信はマイナス面が見えずらいが)、参加しない理由がない。■出版は絶望的…希望は、ブランドアマゾンが印税7割と言っているのは、独占販売契約を結んだ場合だろう。それは書店にも並べてもらいたい著者にとっては困る話なので、紙との併売契約になって、おそらく印税3割くらいで、appleやamazonがボロ儲けするのだと思うが、それでも私はipadでも喜んで出すだろう。流通チャネルは多いほうがいいに決まっているからだ。相乗効果で従来より紙が売れるということは考えにくいので、出版社の雑誌部門はともかく、書籍部門のほうは、確実に売上を減らすこと間違いなしだ。新聞はやりようによってはプラスサムにできるが、書籍はゼロサムゲームに突入する。新聞社は自社の正社員がコンテンツ(記事)を書いているが、出版社でコンテンツ(書籍)を書いているのは外部の著者だから、ここが決定的に違う。新聞記者が「オレの記事は価値が高いから新聞紙面に限らずipadにも売ることにしました」と言い出すことはできないが(サラリーマンだから当然だけど…)、書籍の筆者にはそれができるし、積極的にそうする十分な動機がある(多くの人に読んでもらいたいから書くわけだし、印税も増やしたい)。出版社は、自分らでipadのような魅力的な端末を開発する努力を怠ってきたのだから、もはや、どうしようもない。かなり絶望的だと思う。リストラ、身売り、合併、縮小均衡…。私としては、sonyや任天堂が参入して印税競争を繰り広げていただきたい。これまで一律10%で競争がなかったのがおかしい。では、出版社には何が残るのだろう。・目利きこれまで出版社には、新人発掘の「目利き」の機能があった。出版会議が毎月あって、そこで「我が社の出版物としていかがなものか」みたいなのが議論され、晴れて烙印を押されたものだけが、市場に流通する。だが、ipadは流通コストが安いことから参入の敷居が低くなり、市場原理が働いて、ipadからブレイクする著者も出てくるはずだ。・ブランドとはいえ、どんなに売れても、どんなに儲かっても、逆に「お金で買えない価値がある」というのも世の常だ。ipadで100万部売れるのと、岩波新書で100万部売れるのでは、仮に著者の利益が全く同じだとしても、岩波で売れたほうが嬉しい人が多いはずだ。そうなれば、印税は低くても岩波で出したい、という著者が増えるから、岩波はその差額で儲けられる。つまり、ブランド価値である。ブランドマネージメントが、ますます重要となるだろう。・営業出版社の機能としては、営業力が重要。やはり人目につく書店のコーナーに並べるのは新書でも大手なら1ヶ月は平置きされる。これをやってもらいたいから著者はその出版社から出す。電子書籍が普及すると、出版社の営業力の比重が高まるはず。・編集これは、私のように記者出身で、編集長として他人が書いた記事も編集していると、自分で編集もできるから、いらない機能。アドバイスくらいは欲しいけど、別に編集者でなくても友人でもいい。でも、本を出す人の多くは、自分で売り物として最低限必要なまともな文章を書けない人たちだから、編集の機能は不可欠となる。私は裁判経験者だが、法曹関係者の日本語はめちゃくちゃだ。判決文はまったくロジカルでないし、MECEでもない。ピラミッドストラクチャーで書けばすっきりして一部を読めばポイントを理解できるのに、もったいぶった曖昧で文学的な表現を使ったりするから、全文読んでも意味不明だ。それが司法を国民から遠ざけている。弁護士試験ではMECEを課していただきたい。同じことは大学教授にも言える。教授は、市場原理が働かない終身雇用の世界なので、どんなに日本語がむちゃくちゃでも、何かの拍子で一回教授のイスに座ったら、自己満足的な授業と、生徒に課題図書として買わせないと買う人がいない本しか書けないレベルでも、定年まで居座れてしまう。養老氏は自分で書いた本はそれほど売れていないが、新潮社の編集者によって「聞き書き」方式にしたら、内容は昔書いたものと同じなのに、『バカの壁』が400万部も売れたという。竹中平蔵氏の本もほとんど聞き書きで、自分の文章ではない。ただ、代筆者がいれば、それが編集者である必要はない。「編集者にとって一番重要なのは企画力だ」と立花隆氏が書いていた。幻冬舎の見城氏は、著者の前で原稿を読んでウソ泣きし、感動したふりをするという。つまり、売れる企画を考え付き、筆者を説得して書かせる能力が、編集者の機能の最後の砦として、ますます求められるようになる、ということだ。2010/01/29
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日経の電子新聞からみえる無能経営陣の予防線どのくらい失敗するかが見ものとなっている日経の電子新聞。その概要が発表されたらしい。そこから見えるのは経営陣の「自分らだけは逃げ切りたい」という姑息な考えだ。河内孝氏の連載によると、・創刊は3月。・電子版だけを契約すると月4000円。・紙と両方契約すると月5300円。・当初の課金はカード決済のみ。ウェブ版に月4千円も払う奇特な人はほとんどいないと思われるので、ここで売上が立つとは日経自身も思っていないはずだ。これを1~2千円にしてしまうと「ウェブだけでいいや」と紙の購読者(月4300円)が減って、広告収入も減ってダブルパンチだから、安く設定できない。紙→ウェブへの移行を極度に恐れていることがよく分かる。つまり、紙にプラスオン1000円の5300円でウェブも契約してね、ということだ。コスト構造が変えられない以上、つまり、社員の給料も社員数も印刷施設も全国の拠点も販売網もそのままである以上、全体の売上が下がるだけだから、それだけは絶対に避けたいわけだ。紙の部数を減らさなければ、経営陣は責任を追及されることもなく、数年は延命できる。だから、かなり保守的な設定にしたのである。社内向け資料で会社側が説明しているとおり、日経は販売店をフル活用するつもりでいる。300万部のうち宅配率が9割で約270万部くらいとみられるが、270万世帯にローラー作戦で営業させ、たとえば1件とれれば2万円、といったインセンティブを与えて、プラスオンの月1千円をとりにいく。1%が引っかかれば2万7千の契約になり、ネットだけに4千円払うレアな人(海外在住者など)も合わせれば1年以内に3~4万の契約はとれるだろう。それで現経営陣は「電子新聞の礎は築けた、あとは頑張ってくれ」とハッピーリタイアメントするわけだ。ただでさえ赤字の業績に莫大な販管費がのしかかり赤字幅は拡大するが、上場企業でない日経がインセンティブの金額を公表する必要はないので、経営陣は対外的には成功だと言い張れる。そのコストは他の部門につけかえればいいから、電子新聞の部門業績にも表面的には影響しない。無能な経営陣の予防線が透けて見える。ただ、販売経費のコスト増で電子新聞の初期投資も回収できないから、会社全体の業績は赤字体質はさらに悪化していく。「ヴェリタス」よりもさらに赤字体質な不採算のメディアが1つ増えるだけなのだ。確かに、現在の日経の環境で、大きなリスクをとらずに電子新聞を進める方策はこれしかないようにも見える。硬直化したコスト構造が定着し、労組はとにかく雇用と賃金を主張し、労基法は二の次、週休2日もいらない、ときどき人が死んでも容認、という姿勢なので、経営陣は最大のコストである人件費の柔軟な見直しを言い出せない。4月から人事制度を変えて、世代が変わるスピードに合わせて若手社員から給与水準を引き下げていくことくらいしかできない。本当の経営者なら、労組を説得して、抜本的なコスト構造の転換で電子新聞を事業の1つの柱に育てようと挑戦するはずだが、現在の無能経営者には、このように予防線を張って問題を先送りすることしかできないのである。2010/01/25
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倒産JAL、「特別早期退職」割増退職金にはキレるべきJALの倒産ですが、もし以下の記事にあるように、特別早期退職の募集なんかで割増退職金が、たとえば12か月分出します、とか言い出したら、国民はキレないといけません。そのカネは1兆円規模で投入される見込みの公的資金から出されるわけで、税金が放漫経営・放漫組合活動の結果として倒産した会社の退職者に使われてしまうことになる。日航、1年で1万5000人削減を計画計画によると、運航乗務員は4180人から13%減の3650人に、客室乗務員は9440人から14%減の8120人に減らす。(中略)日航は人員削減を進めるため、10年度に2700人規模の特別早期退職を募集する。また、パイロットに対し、乗務時間と無関係に65時間分の手当を保証している「最低乗務保証時間」制度などを抜本的に見直し、1人あたりの人件費も引き下げる方針だ。弊社のような零細企業が倒産したって、一円も公的資金は入れてもらえません。なのに、乱立する組合が権利ばかり主張し、高すぎる賃金が浪費され続け、高コスト体質になった結果つぶれた大企業に対して、万が一、税金による割増退職金なんかを出すことを許したら、納税意欲ゼロになりますね。全くフェアでない。モラル崩壊ですよ。民間の大企業でさえ、ヤクザ研修(三洋電機)や、タコ部屋研修(富士通)といったえげつない方法で、無理な職種転換やありえない配転を強要する嫌がらせをしてまで、割増なしで自主的に退職に追い込んでいるわけです。もしJALに税金で割増なんかあった日には、血のにじむ努力でリストラしている民間企業も、割増なしで会社を去っていく退職者たちも、浮かばれない。ましてや外資では、日本国内であっても、辞めないで粘るリストラ対象社員に対しては、机とイスだけにして辞めさせるのが当り前で、指名解雇なわけです。JALは新経営陣が、業績貢献度の低い社員から指名解雇していけばよいのであって、「特別早期退職の募集」などと、何を寝ぼけたことを言っているのか。倒産会社の社員を解雇しても、法的にも全く問題がない。整理解雇の4要件を十分満たしてますから。つけ回しされる国民からみたら、無駄ガネは一切使われては困ります。パイロットは今年ボーナスゼロでも1800万円ほどにはなる年収をまず半分くらいにして、世界一待遇が恵まれていると言われる正社員CAと総合職も給与テーブルを4割くらい引き下げて、黒字化するまでボーナスゼロ、が妥当でしょう。安全性と給与水準が相関するなんてデータ、ありませんから。稲盛さん、安心してバッサリやってください。それでも、連合の圧力に屈して無駄ガネ使うことを許しちゃうんでしょうね、民主党政権は。自民党政権でも同じだったと思います。連合(社民・民主)と経団連(自民)が根っこでつながって、特定利益集団のための政策決定を茶番で行い、生活者(有権者/国民全般)の利益を損ねてきた「55年体制」という点では、政権交代しても何も変わらなかったのだ、ということが、JALの人員整理に税金をどう使うかを見ることではっきりわかるので、注目です。割増退職金を1円でも出したら、55年体制が続いている、と思ってよい。給与テーブルの抜本的見直し(大幅カット)をせず頭数だけ減らす、と言い出したらやはり55年体制の証。連合(JAL労組)という特定利益集団のために税金が使われることになる。腐っても倒産しても、大企業は税金で助けてもらえるのなら、誰も起業しなくなる。大企業にしがみつく人間ばかりになって、誰も新しいチャレンジをしなくなる。そのような社会に未来はないから、JALの人員整理の仕方は、日本の未来を占う試金石になりますね。そもそもJALに公的資金は入れるべきでなく、一度清算してしまって、代わりに国内外のLCCを新規参入させれば、税金を使わずに国内地方路線も維持できるし、消費者は安価に飛行機を利用できるようになり、需要も増える。連合と経団連の既得権を最優先させる“55年体制政治”は終わりにしてほしい。2010/01/22
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ブラック職場のANAが就職人気一位になる構造ANAが就職人気ランキングで1位だという。かわいそうに。マスコミにだまされて何にも知らないんだ。地上職の使い捨て化の話を取材し、三洋電機に続いて、久しぶりにANAをワースト認定した。マスコミは不況で、安定大口顧客であるANAの広告がどうしても欲しいから、CMでよいイメージだけ流して、ANAにとって都合が悪いことは一切報道しない(JALについてさえパイロットのおかしな年収を全く報じない)。学生はメディアリテラシーゼロだから、いい会社かも!と洗脳され、ブラック職場に自ら突撃していく。地上職狙い撃ちで、もともと高くない年収を25%もカットして230万円のワーキングプアにしてしまうとは、何ともえげつない会社だ。しかも子会社の社員は同じ仕事なのに手取り10万切るというからひどい。ある総合職は「生かさず、殺さず」で使い倒されるデスマーチ職場だと表現する。確かにそれが人材の市場価値なのだ、という判断はアリだが、高橋俊介氏がいろんな本で毎回のように書いているように、米国のサウスウエスト航空は顧客接点を最重視し、顧客サービスや接客で差別化し、それを競争力の源泉にしているという。もちろんCAやGH(地上職)が非正規社員というのはありえない。一般従業員の799万は一見普通だが、これは地上職が混じっているから。総合職だけに限定するとはるかに高く、福利厚生分を入れれば軽く1千万円超。規制産業である以上、政府が監視すべき。規制ガチガチでなければ、そういった顧客サービス重視の会社が新規参入してくるから、ANAのような接客の最前線をワーキングプアで固めて、こき使って使い捨てて、顧客に会わない総合職やパイロットが見えないところでふんぞり返って高給とってるような会社は、自然と適正な規模に淘汰されてゆくから問題ない。だが、日本のようにオープンスカイせず、規制産業であることを悪用して、パイロットと総合職が自らの「年功序列高賃金既得権」を保持するために弱者から搾取している、というのが間違いのない現状の姿だ。だから、えげつない。これがまともな人間のやることかね。亀井大臣の「鶴亀戦争」を思い出したよ。運輸大臣当時の1994年に、日本航空が計画していた客室乗務員の契約制客室乗務員としての採用に対して、「乗客の安全を守るべき客室乗務員に極端に異なる2つの雇用体系が存在すると、士気の低下に繋がり安全上好ましくない」と格差解消や安全面から強硬に反対し白紙撤回を迫った。運輸大臣としての立場から、格差解消や安全面の観点で行った発言であるにもかかわらず、「許認可権を盾にとった上、規制緩和に逆行する」として一部の反自民党のマスコミからの反発を受けた上、日本航空のシンボルマークである鶴との対比から「鶴亀戦争」などと呼ばれた。(Wikiより)全体をゼロベースで見直すのなら賛成なのだが、身分の低い弱者から切り捨てる。ANAのパイロットも「同じ労組の身内を切ってるんだから」とあきれていた。そのパイロット自身も、地上職の10倍、平均2100万円の年収で、これは国際的に見て明らかに高すぎるのに、そのまま。この会社の賃金には、何の正義もない。■会社側の言い分としては、「業務の選択と集中」の結果だ。非コア業務とみなした部門や職種を本体から切り離して、低賃金化することによって、総人件費を下げる。それ自体は間違っていない。グローバル化のなかで、その流れは止まりようもない。「職種のデパート」と呼ばれる新聞社が製作部門(=印刷所)や出版部門を切り離してきたのも同じだ。既存社員が守られすぎて、世代が変わるスピードより速く変化できない、という問題はあるが。朝日新聞社の出版部門は、2008年4月に分社化されて、「朝日新聞出版」として再スタートを切った。新社が採用する社員は、朝日本体に比べて生涯年収を半分にされたが、社員の8割は本体からの出向。同様に、日経新聞も2007年1月、出版局を分社化して「日本経済新聞出版社」を立ち上げた。やってることは朝日と同じ。読者のかたは、同一労働同一賃金にすべきだとか均等待遇でないのはおかしい、みたいにエラそうに書いている記事を読んだら「オマエら、言う資格ないだろ。社内を見てからモノを言えよ」と編集部にクレームの電話を入れてやって欲しい。■コア業務を外部に丸投げすると、競争力を失う。その例が出版社で、週刊現代や週刊ポストは、取材記者というコア業務を自社の正社員がやらず、下請けのライターや非正規の契約記者に丸投げしているので、肝心の記事がつまらない。部数がどんどん減っている。航空業界においては、GHやCAの接客サービスがコア業務の1つであることは疑いがないだろう。ANAもJALも、やってることがアベコベだ。総合職を非正規化して、全員を1年契約のプロフェッショナル契約社員にすれば、もっと真面目に働くようになり、高収益企業になれるかもしれない。正義の味方・亀井先生にもう一回出てきてもらって、かき混ぜて貰うしかないか。2010/01/21
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「7割は課長にさえなれません」という事実に若手正社員は気づけ『7割は課長にさえなれません終身雇用の幻想』2010/01/17
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卒業生がベンチャーを作った大学に補助金by永守さんなんとJALのCEO(会長)になるという京セラの稲盛氏。京セラは安い賃金(平均638万円)で雇用を守る会社なので、平均年収が1900万円のパイロットがどこまで賃下げされるかが最大の見モノだ。→京セラ“賞与支給式”で全社員に明細手渡し「貰えることに感謝しなさい」さっそく「自分は無給でいい」と言ってるからね。CEOのオレが無給なんだから、君たち、分かってるよね、というメッセージだ。利益が出ている京セラでさえ、ボーナスがあることに感謝しなさい、と教えられてますから。京セラみたいにフィロソフィー理解度とかが人事評価指標になるのだろうか。稲盛氏は社員を最大限働かせて(コキ使って、とも言う)収益化する仕組みづくりの天才だから、JALの「ゆで蛙カルチャー」は180度の転換を迫られるはずだ。稲盛会長は、社長にも京セラ出身者を登用して、完全に体質転換(洗脳、とも言う)してほしい。ところで京セラは創業時、「京都セラミツク」といった。同じく京都で36年前に創業したのが、日本電産社長の永守重信氏である。正月の録画番組を見ていたら、NHKで、永守氏がいいことを言っていた。永守「ベンチャーが出てこない国というのは必ず衰退しますよ。新しい企業が出てこなくて、現在の事業が栄えても、限界があるんですね」菅「まったく同感です」永守「大学生が、一流企業に入って、大企業に入ろうとする、これを変えないといけない。卒業生のなかから新しい会社を作った人が出たら、大学を表彰したり補助金を与える。そういうことやれば効果大きいと思いますよ。これが出てこない限り、菅さんの成長戦略は無理だと思いますね、新しい事業をやる人が出てこないと」菅「それはまったく同感です」あまりにも当り前のことすぎるので菅直人も反論しようがないのだが、けっきょく、ベンチャー支援なんて一番票にならない政策だから、分かっていてもやらない、ということだろう。この為政者の不作為の罪は大きい。エコカー支援、エコポイント支援で、トヨタやパナソニックに補助金撒いてるほうが労組の組織票をがっぽりとれるし、ついでに経団連もてなずけられる。労組栄えて国滅びる、だ。既存大企業が税金で助かって、ベンチャー企業は芽も出ない。既存企業を支援するということは、相対的にベンチャーに負荷をかけて起業を邪魔していることになる。菅が作った成長戦略では、絶対に、この国の経済は成長しない。必ず衰退する。中長期的な成長戦略というならばベンチャー支援(というかむしろ邪魔をしない環境整備)は必須項目で、ボーリングのセンターピンだ。なのに何も出てこないのだから、この国の政治家の志の低さとIQの低さは何とかならないのか。経済オンチの菅氏が成長戦略担当から抜けて財務大臣になったのが一縷の望み。仙谷氏は規制緩和の理解者だから。2010/01/14
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内側から見た築地セリの様子。結構馴れ合いでだらだらやってる。2010/01/12
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「悪いことしたモノ勝ち」な犯罪企業社会を促進する民主党政権過労死を発生させた企業名、残業代を不払いにしていた企業名、就職内定を取り消した企業名。いずれも、当局が正式に確認し、認めた案件にもかかわらず、「企業利益を守るため」、すべて情報公開せず。過労死残業代不払い内定取り消しこの国の労働市場の歪みは、いったいいつになったら正常化するのか。事実上の「開発独裁政権」だった戦後の自民党一党支配から、まったく変化の兆しなし。私自身、日経で奴隷やらされてたときに被害に遭ってるから、被害者の1人として許せない気持ちだ。共産党の穀田議員が朝生で言っていたが、ヨーロッパの多くの国は183あるILOの条約のうち150は承認してるのに、日本は48しか承認していない。ILO1号条約の8時間労働の条約すら批准していない。企業利益を徹底的に最優先するのだ。それが戦後の奇跡的な高度成長に寄与したわけだが、もう欧米へのキャッチアップを終えてシフトチェンジしていなければいけない時代なのに、政治家の不作為はひどすぎる。ILO条約一覧132号の連続2週間有給取得なんて、日本では未来永劫ありえないんじゃないか。ドイツでは当然の権利とされているのに。フランスでは最低5週間の有給休暇保障だ。まずは徹底した情報公開で、国民が個別企業を監視できる仕組みにするのが第一歩である。「情報を公開した役人を人事で高く評価する仕組みにした」と長妻氏が言っていたが、そういうレベルの問題ではない。法律に組み込まれているから、法律を変えないといけない。情報公開について、「原則公開」「企業利益と国民利益が相反した場合、国民の利益を基準に情報公開するかを決定する」と、法律に明記しないとダメだ。現状、民主党政権は情報公開や労働者の権利保護について、何もしていない。ほんとにダメな政治家ばかりで、吐き気がする。今こうしている間も、サービス残業をさせられ、過労死に追い込まれ、内定取り消しに合っている人がいて、長妻厚労省はその企業名を知っていながら共犯者となって隠す。共同正犯、単なる犯罪政権じゃないか。2010/01/02
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ウォールは「日本で唯一の成果主義で記者に報いる年俸制集団」をうたって日経の競合になれ日経が駅売りを14%も値上げするのは「どうせ経済紙で競合がいないからウチを買わざるを得ないだろう」と高をくくっているからだ。だから、ウェブで読ませるのは見出し程度にして情報量を減らせば、値上げしても売れると見ている。日経の社内では「ウォールが本格的に読売と手を組んで経済紙市場に打って出てきたら脅威だという話があった」(中堅記者)。もちろん、圧倒的なブランド力があるからである。だが、発行元のダウ・ジョーンズ社は、2009年3月から読売新聞の販売網でWSJのアジア版を印刷・販売するにとどめ、読売は紙面内容には関与せず。読売の経済部記者がダウジョーンズに出向・転籍してウォールの紙面を作り出したら日経にとってはいいライバルになりえたはずだが、そうはならなかった。ならば、独自に記者を集めて国内取材体制を組めばよいのだが、ダウジョーンズも経営不振で資金的な余裕がない。6月に設立された「ウォール・ストリート・ジャーナル・ジャパン」の資本は、米ダウ・ジョーンズが60%、SBIホールディングスが40%とかろうじて外資系の体裁を保ってはいるが、社長がSBI北尾氏で、編集長が元ウォールの東京支局長だったという小野由美子氏。で、今月始まったのが、この日本語版サイトである。期待していたのに、現状見る限りでは、どうも日本に関係する記事を日本語に翻訳して載せて、あとは時事通信の配信記事でごまかす、という程度のもので、それ以上のことはやっていない。日経もこれを見て胸を撫で下ろしているだろう。痛くもかゆくもない代物だ。1カ月1980円の有料記事も、無料部分が短すぎて読む価値があるのか判断できない。これなんか、2行しか無料で読めないんじゃダメだ。全然やる気が感じられない。これでは、証券業界やシンクタンクのアナリストくらいしか会員にならず一般のビジネスマンに広がらない。→ウォール・ストリート日本語版サイト開設1カ月1980円■100人解雇くらいでは何も変わらないというわけで、日経は安心して値上げに踏み切った。何しろ、実質的な市場占有率が、ほぼ100%なのだ。東電・東ガスみたいなものである。ほかにフジサンケイビジネスアイというのが一応あるが、ブランド力が全くない。誰も知らない。名前からしてセンスがなく、終わっている。この失敗メディアは、さっさと潰して清算したほうがいい。公称16万部は、もちろん嘘。私は、読んだことがあるという人に出会ったことがない。さすがに産経も何かしなければと思ったらしく、今年、50人ほど「希望退職」という名のリストラで社員を減らした。現役の記者によれば、実態は「割増退職金2千万円のおみやげ付き指名解雇」だった。来年もやるという。「実際には、退職に応じなければとんでもない部署に飛ばされて仕事を取り上げられるから応じるしかない、というものでした」(中堅記者)。40代で新聞記者のキャリアしかなくて突然、社外に出されたら、再就職先なんかもちろんない。合計で3千万円貰っても、それを食いつぶしたあと、どうやって食べていくのか、他人事ながら心配になってしまう。何しろ同じ業界内は、本来の競争市場ではありえないほどの社員の頭数と人件費を抱え込み、余りまくっている。おそらく再販などの規制がなければ、頭数は半分で人件費は3分の1くらいに落ち着いていたのではないか。建設業界が本来の2倍の規模になっていると竹中平蔵氏が言っていたが、それと同じで、政治的理由で規制に守られてぶくぶくに膨れ上がってきた業界なので、いらない人(社内失業者)が社内に溢れており、業界内で吸収される余地はゼロ。自由競争市場でない歪められた業界というのは、常にこういう悲劇を生む。今回のリストラ対象は、主に旧日本工業新聞社の人たちだったという。2009年7月1日に日本工業新聞社が産業経済新聞社に吸収合併されて、フジサンケイビジネスアイの発行元が産経に変わったので、その機会にいらない人はおさらば、ということになったわけだ。新聞業界の先行指標として参考になる。電機業界では、ソニーでも普通に5年前に実質指名解雇のリストラが行われている。■『ウォール』に記者を結集せよ話がそれたが、2年で100人減らす程度のリストラでは話にならない、ということだ。産経が、『ウォールストリートジャーナルジャパン』に部門ごと売却し、会社分割制度を利用して、記者付きで売り渡すのである。そして、ブランド力のある『ウォールストリートジャーナル』が、他社でくすぶっている優秀でやる気のある記者をどんどんヘッドハンティングする。うたい文句は、「日本で唯一の成果主義で社員に報いる年俸制の新聞記者集団」である。日経以外の全国紙では、経済部の社内的立場がそう強くない(やはり政治部、社会部が出世コースだ)し、社内の派閥争いではなく、実力で勝負したいという記者も多い。だが、日本には外資系の新聞社がないために、そういう人材の行き場がない。私なんかその口で、やむなく外資コンサル→起業の道を選んだ。東洋経済やダイヤモンドにも、年功序列の古い体質でやってらんねーよボケ、という記者はたくさんいる。国内の取材体制ができれば、海外ネタは圧倒的に強いのだから、日経に十分、対抗できる。「経済はグローバル時代。まだマルドメ新聞を読んでるんですか?」をPR文句に、市場を開拓していく。マードックよ、頼む。そもそも、競合がいないのはおかしい。経済関係の情報が日経を通してしか流れないのは問題だ。このままでは、健全な市場にならない。現状を打開するには、ウォールストリートジャーナルに頑張ってもらうしかないのだ。2009/12/27
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「デフレ下で駅売り14%も値上げ」の意味ぜんぜん気づかなかったのですが、ひそかに値上げをたくらんでいたとは。まあ読んでないから関係ないんですが。日経新聞の店頭売り定価改定のお知らせ日本経済新聞社は2010年1月1日から、駅売店、コンビニエンスストアなど店頭で販売する日本経済新聞の定価(消費税込み)を現在の朝刊140円から160円に、夕刊50円から70円に改定させていただきます。米国では2007年、2008年と値上げラッシュがあった。米有力紙が相次ぎ値上げに踏み切る。ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)は7月28日付から約3割値上げし、ニューヨーク・タイムズも8月中旬から2割値上げする。米新聞業界では景気減速の影響で広告収入が落ち込んでおり、両紙は2年連続で販売価格を引き上げ、広告収入の減少を補う。WSJは店頭で販売する1部当たりの価格を従来の1.5ドルから2ドルに引き上げた。NYタイムズは1.25ドルから1.5ドルに値上げする。両紙は昨年7月にそれぞれ25―50%値上げしている。(日経ネット2008/07/31)米国の高級紙が値上げに踏み切ったのが2007年。同じことが2年のタイムラグを置いて日本で起きている。佐々木俊尚さんが『2011年新聞・テレビ消滅』(文春新書)で書いているとおりの展開、消滅へのカウントダウン。90年代後半の長銀とか日債銀とダブりますね。消えるのは業界の人はみんな分かっていて、あとは時間の問題、どんな潰れ方するんだろう?みたいな。日経は300万部のうちの約1割と、駅(コンビニ)売り比率が全国紙のなかではもっとも高いので、「宅配命」の他紙に比べ、20円も値上げしたら、瞬間的には、習慣で買っちゃってるバカリーマンも多いから、一時的な増収効果は見込める。ただ、物価が下がり続けるデフレ不況下で、全く同じ商品を14%も値上げなんて、他では聞いたことがない暴挙だ。中身を変えないばかりか、むしろ海外支局を閉鎖したり社員を10年で1千人減らすなど、どんどん提供体制はチープにしている。価格は高い、品質は低い、というダメ商品になり下がることを承知での値上げ。もうファイティングポーズをとらない、撤退準備に入った商品です、と宣言したようなものだ。問題は、この値上げが、来年春に始める予定の電子新聞事業を含めた、全体の経営戦略の一環なのか、それとも、バカ経営者の思いつきなのか、である。プロダクトライフサイクル図(Wikipediaより)読者には割高感は、すぐ伝わる。モノの価格が下がるデフレ経済下では、名目価格が据え置きでも、実質は値上げと同じなのだから。値上げで、部数は確実に減る。間違いなく来年は300万部を割ることになる。それを覚悟のうえでの値上げだから、本来、相当の深い考えがなければいけない。現在、製品ライフサイクルの図でいうと、情報産業における「紙の新聞」という製品は、既に成熟期を過ぎ、確実に、一番右の、衰退期に突入している。この段階に入ると、左記図のように、急降下するのが特徴だ。ラジオがそうであったように、なくなりはしないが、あまり誰も気にしないものになる。だから最終段階で、少しでもこれまでの投資を回収する方向に走る。だから、次の製品(電子新聞など)のメドが立っているなら、撤退への道として値上げは正しい。だが、紙をやめる決意をしている気配はまったくない。まだ紙で稼ぎたいなら、無駄に高いリスクを負っている。ユニクロやニトリに代表されるように、デフレ下では低価格・値下げが成功する。同じ商品を値上げして成功した例など聞いたことがない。たとえばタクシーは、初乗り660円から710円に7%値上げしただけで利用者がそれ以上に減って、運転手もタクシー会社も消費者も「三方一両損」で全員不幸になったことが証明された。交通市場のなかで、「電車・バス・徒歩」という競合に客を奪われたのだ。日経の値上げとタクシーの値上げの違いは、日経には目に見える競合がいない、ということ。経営的にいうと、競合がいない場合の値上げ戦略は間違っていない。毎日新聞や読売新聞が値上げしたら朝日新聞に客を奪われて即死決定だが、日経には業界内に競合がいない。経済紙で一社ほぼ独占市場。電通みたいなもんだ。それでも、日経の価格弾力性は1を超えると思う。つまり、値上げで需要は14%以上減る、ということだ。なぜかというと、日経は「NIKKEINET」という競合を社内に抱えているからである。面白いことに、自社内に敵がいて、しかもその敵は収益力がない。経営不在なので、自社内でカニバってることに気づいていないのだ。日経は、春には電子新聞を始めると宣言しているので、ネットでの収益化を本気で考えているのかもしれないが、だったら値上げと同じタイミングでスタートしたほうが分かりやすくてPR効果もあるのに、そうしていないのは、単に目前の売上増が欲しいというバカ経営者の思いつきということではないか。社内を取材した限り、経営者の無能ぶりは予想以上で、経営戦略について深く考えている兆しすらないのだ。競合がいない日経の場合、電子新聞によって、自社内での食い合いを交通整理し、収益を最適化さえできれば、今のペースでリストラを続けていけば(つまり毎年100人ずつ正社員を切って、成果主義の名のもと若手から給与水準を切り下げていく)、生き残れる。ただしこれは、社外に競合が現れなければ、という条件つきであるが。経済ニュース市場に競合は現れるのか。(つづく)2009/12/25
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『一蘭』で思い出す奴隷時代私は社会人になって最初の赴任地が福岡だった。博多の西部支社というところで新人記者(奴隷とも言う)として物書きのキャリアをスタートしたわけだが、月に3回は「泊り番」という、労基法に堂々と違反した業務を強制されていた。今おもえば、労基署に訴えたり、流行りの残業代返還訴訟でもやれば、絶対に勝てた。違法という点で、懲役刑よりもひどい労働だと思う。普通に朝から仕事をして、取材して記事を書いて、午前0時を回り、そのまま泊り番に突入。これはデスクの手伝い仕事が中心。お悔やみ(死亡)ニュースが共同電で流れてくると、遺族や会社に電話して確認。「別に悲しそうにする必要はないから、淡々とな」(デスク)みたいな取材。デカい火事とか突発的な事件が起きて朝刊に入れる必要があれば当局に確認とって記事化。さらに、殺人とかデカい事件が起きたら現場に出て行くわけだが、一度もそういう事件はおきなかった。だいたい午前0時回っても半分くらい記者がオフィスにいるわけだし(異常)、それから朝刊締切の午前3時過ぎまでの間に、そんなにデカいニュースめったにおきないって。一度、テレビが中継するくらいの火事が、中洲という歓楽街で起きたことがあった。編集部に、電話がかかってきた。「ウチの主人は、無事でしょうか?」。筆頭デスクの奥さんからだった。いつも中洲で遊んでいるから、心配になったのである。そういう会社だった。何か起きたら、呼び出せばいーじゃん。要するに、ポケベルやケータイがなかった時代の慣習が、惰性でそのまま続いているのだった。前例踏襲をこよなく愛す官僚組織なので、軽く事業仕分けしてやれば、蓮舫氏に「記者は不要だから廃止」と一蹴されたはずである。死亡記事とか共同電の確認とか、いま思えば、デスクが1人でやればできるような簡単な仕事ばかりだ。年収1500万円も貰ってるんだから、机に足のっけてタバコふかしてないで、年収に見合う仕事をデスクが1人でやればよい。新聞社は本当に無駄の塊のような組織だった。それで、深夜3時15分。朝刊の締め切り時刻になると、「じゃーな」とデスクがタクシーを呼びつけて、悠々と帰っていく。デスクはローテ勤務で夕方17時出社だからピンピンしてるが、こっちは朝から働いてんだから、意識が朦朧としている。それから、セブンイレブンに行って夜食を買ってくることもあったが、コンビニ飯はすぐ飽きる。そういうときは、24時間営業の『一蘭』(天神)までタクシーチケットを使って行くのだ。疲労した体に、あの唐辛子入りの秘伝のタレと、臭みのないとんこつスープが染み入る。替え玉もよく注文した。底に見える「この一滴が最高の喜びです」という文字は当時からあったが、容器は黒ではなく白地に赤だった。そのとおり!と思いながら、最後の一滴まで飲む。すると、いつも底にザラザラとした何か(とんこつ?)が残っていた。これは東京の店では見たことがない。原材料を変えたのだろうか。味も若干、淡白になった感がある。そもそも博多のジモティーが当時言っていたのは「店によってずいぶん味が違う」というもので、私が福岡の4店舗ほどに行った限りでも、確かに違いはあるな、と思ったものだ。社に戻って、上の階に上がって、大風呂(一階が印刷所だから製作部門の人とかも入っている)に入って、仮眠室へ行くと、もう4時を回っている。でも7時には起きて朝刊をチェックして抜かれていたら担当記者に電話を入れないといけない。そして、そのまま夜まで通常業務が当り前なのだった。担当企業が記者会見をやるとなれば、当然行くしかない。3時間睡眠で48時間拘束って、奴隷制度下の奴隷よりひどいんじゃないか。「新人は奴隷だからな!」と先輩記者も自虐的に言っていた。社会のことを何も知らない新人時代に、圧倒的な負荷をかけてショックを与えることで、「これが社会の常識なのだ」と脳を塗り替える、つまり洗脳することを狙っているのだろう。部長も知っていて何も改善しようとしなかった。会社ぐるみだ。意識は朦朧としていて、正常に頭が働くはずもなかった。週に1回、泊り番があると、生活のサイクルが崩れ、ずっとおかしい状態が続くのだ。仮眠室にあるカレンダーを見つめながら、いったいおれはこの絶望から、いつになったら抜け出せるんだろう、まだまだ先は長いじゃないか、と暗澹たる気持ちになることが多かった。だが、いきなり飛ばされた福岡に知人もおらず、同期すら1人もいない隔離状態。労組は会社べったりの役立たず。仕事は毎日、理不尽な命令ばかりのパワハラ。だから、新人が北海道で自殺としか思えない亡くなり方をしたとき、「よく分かるよ」と思った。私はけっこう、強いほうだと思う。反骨心も強い。体も丈夫だ。こんなむちゃくちゃな労働環境でも、一度も病気で会社を休まなかった。でも、弱い人はどうだろうか。精神的にも肉体的にもおかしくなって、死を選ぶのではないか。社会人になったばかりの最初の数年で、「弁護士に相談しよう」などと思えるはずもない。知識もなければ、調べる時間すらない。休日は寝続けないと次の一週間が持たないのだ。会社は、そこにつけ込んで奴隷労働をさせる。その後、21世紀に入って東京に『一蘭』が続々と進出し、都内各所にできた。『一蘭』を訪れると、奴隷だった頃の思い出がよぎる。あの「新人奴隷洗脳システム」は、おそらく今でも変わっていない。民間企業には、事業仕分けが入らないのだから。2009/12/21