編集長ブログ一覧
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期日前投票が象徴するディレクター不在の政治当日不在かどうかは分からないけど、行ってきた。8時半~20時まで土日もやってるというのは、なかなか便利だ。不在者投票が使いやすいのはよいが、8人に監視されながら、ただ1人で投票するのは、どうも嫌な気分だ。ネットで投票できるようにすれば、この8人の人件費もかからない。さっさとIT化すれば、日本全国で、いったいどれだけのコストが下がることか。一方でこういう非効率な無駄遣いを放置しておきながら、他方で社会保障費が毎年増えて大変だ、足りない、とか言ってるんだから、政治家って、いったいどこまでノー天気な人たちなのかと思う。企業の経営感覚を少しは持てないものだろうか。透明な競争入札で選挙のITシステムをさっさと発注すべし(もちろん全国一律)。でも、今の政治にやらせると、結局、NTTデータに随意契約、みたいになっちゃうんだろうけど。官僚に対するグリップが全くきかないのだ。自民党の政治家はホントに使い物にならない。この期日前投票は、今の政治を象徴している。つまり、方向性が間違っている。マネージの仕方をカイゼンする(土日もOK、20時まで延長…)のではなく、ディレクションを変えなければいけない(IT化)時期なのだ。マネージャーではなくディレクターが必要なのである。投票の内容について詳しくは今回も非自民第一党に投票に書いた。2009/08/29
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CyberAgentに学ぶ「経済のパイを大きくする」ということ確かに2006年ごろ、ブログはもう伸びない、というムードが流れていた。私もそう感じていた。日垣隆氏のような、それなりに売れてる論者も、4年前にそのようなことを述べていた。総合的に判断して、2年前から始まった日本におけるブログ・ブームは、終焉に向かいつつあります。人気ブログのアクセス数は頭打ちとなり(安定したとも言う)、新たに始める人とともに、更新が途切れがちな人々も激増中です。毎日毎日、人を驚かせるような出来事が起きたり、そのように見せたり、目からウロコの視点や新鮮な情報を提供し続けたり、1年に365個も話題やネタを打ち出せるような生活は、周囲からすれば迷惑な話なのではないでしょうか(おまえもな)。終焉へ、との判断に戸惑われた方もおられるかもしれません。全国紙までがブームに言及し始めたのも、そのブームが去りつつある逆説的な証拠です(朝日新聞5月3日「GWおうちでトライブログづくり」など)。流行感度の鈍い一般紙がとりあげるころには、たいていブームはピークを過ぎているというのが日本の常識ですから、そのような指標を見つけるためにまだまだ全国紙から目が離せません。--「ガッキィファイター」2005年05月10日号ところが、「人気ブログのアクセス数は頭打ちとなり」どころか、サイバーのアメブロは頭抜けて増殖したのだった。『藤田晋の仕事学』では、こう述べられている。ブログサービスは2~3年前に『もうこれ以上は伸びない』と言われました。多くの会社がブログサービスを提供し、利用者も一回りして目新しさがなくなってきたところでした。米国も日本も利用者はもう増えないと思われていました。しかし、私は自分自身でブログを使ってきた経験から、市場はまだ伸びると感じていました。そして、次の一手は何かと考えていくうちに見えてきたのが『芸能人・有名人ブログ』でした。(中略)誹謗中傷のコメントを24時間監視して削除する体制を整え、芸能人ブログ専用の営業部隊を作ってブログを書いてもらえるように働きかけていきました。それが大成功しました。先行投資してきたアメーバ事業は、アバター、プーペガール(きせかえゲーム)での課金、ブログ上でのプレゼント、アドセンス広告などで、2009年7~9月期は黒字化が確実となっている。よくもまあ、あの手この手を考えるな、と思うくらい必死なのだ。きせかえゲームにそこまで情熱を燃やせるモチベーションがどこから来るのか私には分からないが、こういう努力は、素直に認めるべきだ。このブレークスルーこそが、経済のパイを大きくするからである。子供手当を親にバラ撒いたり高速道路を無料にしたりしても、経済のパイは大きくはならない。払った税金が貧しい人に戻ってくるだけだから。だから民主党の経済政策は、ジリ貧決定なのである。アメブロは、既に著名人だけで4千人以上が利用し、圧倒的な先行者利益を確保した。著名人にカネを払ってブログ上でPRしてもらうサービスも始めている。こういった新サービスが始まり、つまり供給サイドが拡大し、経済は成長するのだ。竹中平蔵がサンプロで「経済の競争力、供給サイドを強くする政策をやらない限りは無理です。需要政策で成長力を高めることは、経済学の常識としてできません」と述べていたが、こういう経済学の常識を民主党はまったく理解しようとしない。数年前のブログと同様、「もうこれ以上は伸びない」と言われている様々な業界(新聞、テレビ、雑誌など)が行き詰っているのは、そこに藤田氏のような新しい経営者がいないからであり、新規参入できない規制があるからだ。楽天の三木谷氏がTBSを買収できていれば、あの勢いで、あらゆる策で業績を伸ばしただろう。逆に政府に守られたTBSは2009年度の赤字転落を発表した。新事業が成功する背景には、その裏に膨大な失敗がある。日常的に、社員ぐるみで様々な新規事業育成策を打っているからこそ、その中から成功するものが出てくる。サイバーでは、末端社員までを対象に行う新事業プランコンテスト「ジギョつく」があり、いまだ成功した事業は出ていないが、我慢強く続けている。毎年一回、夏に選考が行われ、優勝者は100万円の賞金プラス、事業責任者として実行することができる。2009年は過去最高の167案が出た。それに比べると、新聞・テレビ・雑誌は、自らの崩壊が始まっているのに、指をくわえて見ているだけ。規制に守られ、新規参入がないから、ゆで蛙になっている。政府の規制政策でぬるま湯に浸かっていたツケだ。別に彼らがゆで蛙になって滅びるのはよいのだが、本来ならば経済のパイを増やし、雇用を増やし、法人税を沢山払って税収に貢献できたはずの産業が、一部の無能経営者と貰いすぎ社員たちの食い物にされながら滅んでいく様は、まさに国益を失っているから問題なのである。以上の話は、私が下記で述べた政策の分かりやすい事例だ。①聖域なき構造改革、経済的規制の撤廃。既得権者にムチを打ち、新規参入を促して経済を活性化する。競争政策を促進し、供給サイドを強めないと経済は成長しない。生活者へのバラ撒き(子供手当て、高速道路無料化)は企業へのバラ撒き(公共事業)よりはましだが、同時並行で規制撤廃・競争促進政策も実施しないと民主党政権は経済の2番底にブチ当たって崩壊する。同時にできるのだから、やればよいのである。※サイバーについて、詳しくは、サイバーエージェント、「喜び組」が支えるサークル組織に書いている。2009/08/27
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「苦」の就活で考えるべきこと就活、漢字1文字で表わすと…“苦”が7年ぶりトップ就職活動を「苦」と考えた学生が、「楽」を抜いてトップに-。来春卒業予定の学生に対し、「就職活動を漢字1文字で表すと」というアンケートを毎日コミュニケーションズ(東京都千代田区)が行ったところ、「苦」と回答した学生が7年ぶりに1番となった。100年に1度といわれる経済危機のあおりが、学生たちの就職活動の現場にも広がっていることが明らかになった。就職情報サイトを運営する「毎日コミュニケーションズ」が、来春卒業予定の学生に対してインターネットでアンケートを実施し、全国の男女812人から回答を得た。同社によると、就職活動を表す漢字に、前年3位の「苦」を挙げた学生は6・9%を占め、7年ぶりにトップ。理由は「不景気になり、行きたかった会社が定員を減らした」「就職活動が長期化した」など苦しい胸の内を明かした回答が目立った。昨年まで5年連続1位だった「楽」は3・2%で3位に急降下し、厳しい就職活動の実態を裏付けた。2位は「迷」(昨年同)だった。産経ニュース2009.8.1210:45選挙が終わって新政権になっても、新卒の「苦」は、来年も再来年も、3年は続くだろう。民主党政権には経済成長戦略がなく、よくてステイだから。自民だとステイどころかアウトで、2番底突入。もうここまで借金増えるとバラマキもできないが、既得権でガチガチになった自民にはバラマキしかできない。以下は、学生キャリア新聞10月号に「氷河期の就活をどう考えるべきか」ということで寄稿した原稿(800字)。100年に1度の不況と言われているが、この不況は、経済の構造改革を宣言する民主党以外の政権ができるまで、少なくとも3年は続く。つまり「第二新卒」になっても状況は変わらないから、まずは3~5年、腰を落ち着けて爪を磨ぐ場を見つけてほしい。公務員でもなく学生起業でもないなら、とりあえず大企業に入れれば無難だ。大企業は新人研修にかなりの投資をする。大企業の在籍経験は、20代のうちは次の転職にも有利だ。だが就職氷河期に入った今、大企業は間口を狭めている。たとえばNECは2010年春入社の新卒を前年度比88%減の100人に絞り、子会社の多くが採用ゼロとする。来期も似たようなものだろう。では、どうすべきか。1つの参考例として、私のIBM時代の後輩の事例を紹介しよう。彼が東京理科大を卒業したのは90年代後半の就職氷河期で、就職口は狭かった。そこで米国の州立大へ留学し、さまざまな分析手法を学んだ。日本に戻ったとき既に28歳だったため、外資しか門戸は開いておらず、IBMのコンサル部門に新卒入社する。年俸は23歳の学卒と同じ420万円。私は、彼が新人時代の上司だった。彼は他の新卒に比べエクセルなどを圧倒的に使いこなせたためプロジェクトでも重宝され、よく働いた。年収が2.5倍になった3年目、外資金融に転職した。そこで体調を崩すほど仕事をし、1年以内に、全日空の金融・財務部門に総合職として再び転職。2007年の終わりのことだ。今ではワークライフバランスも保ち、キャリア満足度も高い。新卒時では書類選考で落とされたはずの全日空で職を得られたのである。学卒だった90年代後半は氷河期だったが、2007年はすっかり好景気に転じ、全日空でさえ中途採用を活発化した。そして採用をかけたのは、30代の氷河期世代。大企業は世代の穴を埋めたがる傾向が強いのだ。学歴がなくとも実務経験があればよいため、実は氷河期は、学歴に自信のない人にとっては逆にチャンスだ。だから氷河期には、まずは留学なり中小企業なりでスキルを磨くことに専念すればよいのである。2009/08/12
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民主党の経済ジリ貧決定政策岡田幹事長が経団連に説明したところによると、具体的な政策手法では「成長によって(所得を)増やすという考え方もあるが、それはここ数年必ずしもうまくいかなかったことも事実。われわれは直接給付することで最低限の安心を確保していく」と述べ、自民党との手法の違いを強調、民主党は個人の所得に直接働きかけることで内需中心の成長を実現させると語った。[東京4日ロイター]今秋からの民主党政権で最大の問題が、経済や経営のことが分かっていそうな人が1人も幹部クラスに見当たらないことだ。高速道路が無料になったり月2万6千円の子供手当がもらえたら内需が拡大して経済成長??という、ありえないロジックを真顔で言っているから怖い。貯蓄に回るだけだって。増税が待ってるのはみんな知っていることだから。しかも、民主党の政策立案部門のトップ、政調会長は、トヨタ労組出身の直嶋氏だから、ますます怪しい。労組出身者というのは最も視野が狭く、経済に疎い人たちだからだ。まったく適材適所でない。モルガンMD出身の大久保氏とか、企業経営者出身の馬渕氏とか、若手には結構デキそうな人がいるのに。経済成長のために必要な施策は分かりきっている。主なものは下記だ。①聖域なき構造改革、経済的規制の撤廃。既得権者にムチを打ち、新規参入を促して経済を活性化する。②金融資産課税+贈与減税。約1400兆円の個人金融資産の7割を持ちながら貯め込んで使わない60代以上の高齢者層から、40代以下のお金が必要でかつ活発に使う世代への移転を進める。③投資減税。国内だけでなく、圧倒的に少ない海外からの国内投資を活性化する。このように、過保護で金持ちの年寄りからカネを巻き上げ、若い人や外国企業にチャンスを与えてガンガン働いて貰い、カネを遣って貰うようモチベーションを与えない限り、雇用も生まれないし、経済はよくならない。単純な減税や家計へのバラマキは貯蓄に回るだけだからダメで、「経済活動を積極化する行動」に対してお金をつけるのがポイントである。今の若い人の多くは、守りに入っている。学生の就職希望を見ても、大企業志向、お役所志向が鮮明だ。若い人が守りに入るような国は衰退あるのみである。だが民主党は、高齢者ばかり優遇して世代間格差を埋めることに関心がなく、既得権者(正社員、規制業種)の改革どころか、逆に保護に走る始末だ。既得権が守られている様を見れば、自分もそこに入るしかない、という発想になる。経済成長のために既得権者や高齢者に与えるべきなのはムチであって、アメではない。民主党が改革すると言っている既得権者は、なんと官僚機構だけだ。官僚だけ改革しても経済成長にはつながらないし、時間もかかりすぎる。その点、小泉氏はよく分かっていたから竹中氏を起用した。今の民主党に竹中氏のようなアドバイザーは見当たらない。まるで「学生社長」がトヨタを経営する、みたいなイメージである。それでも経営不在で後世からの借金をバラまくだけの絶望的な自民党よりは、官僚機構に切り込む意志があるだけはるかにマシではある。マイナス1万点対マイナス50点で民主党、みたいな寒い対決である。外需はリーマン破綻時より回復して当然なので若干持ち直すだろうが、内需はジリ貧だから、残念ながら景気は秋からも底ばいを続けつつ、ジリジリと水準を切り下げて行き、鳩山政権に耐えられなくなった国民の支持率低下→2010年後半から政界再編へ、構造改革政権の樹立となるのがベストシナリオだ。よって、うまくいけば最短で2011年後半から景気は回復期待から上昇に向かう。2009/08/06
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暴走する労働組合雇用・労働分野に興味がある人は、このタイトルから何を言わんとするか、ピンときたことだろう。『暴走する資本主義』(ロバート・ライシュ)では、「企業は市民ではなく、大量の契約の束である」とし、企業の善意に期待する無意味さ、愚かさが指摘されている。いわく、「利益を損なうような社会的善行は許されない」「株主の受託者義務に反する」のである。全くその通りだと思う。ライシュはこう述べる。社会全体の目的や目標を成し遂げるために、企業からの「自発的な」協力に頼ることもできると主張する政治家に対して疑いを持つべきだ、という私の考えもここではっきりさせておきたい。つまり、経営者に対して「労働分配率を上げろ」などと言う社民・共産の政治家には「疑いを持つべき」ということである。経営者が利益を削って市場価格以上の人件費を払う行為は、株主からの受託者義務に反し、契約違反でクビにされるだけだ。経団連の御手洗会長に給与アップをお願いしていた福田首相や、労働分配率を上げろとうるさい辻元清美には、ライシュのこの言葉がふさわしい。この政治家の非難の言葉は、問題に対して何らアクションを起こさないでいることの隠れ蓑だと考えてよい。企業とまったく同じことが、労組についても言える。労組は市民でも人間でもなく、「組合員との契約の束」にすぎない。そこに人間らしい善意を期待することはできない。そんなものはフィクションだ。「全米ライフル協会」が自動的に銃規制に反対するのと同じで、労組の目的は組合員の利益確保なのだから、自動的に、強欲な組合員の利益追求に走るのである。組合員たる既存正社員の利益を守るためには、非組合員たちを冷酷に切り捨て、搾取する。人間としては失格だが、組合という組織になった瞬間、人間性は失われる。それは、企業が人間でないのと同じである。これまでは、正社員組合が非正規社員(ハケンや期間工)から搾取するという構造だったが、昨今では、正社員が、同じ仕事をする非組合員の正社員から搾取するように“進化”を遂げた。日テレと朝日新聞が実例だ。・朝日新聞出版「同一労働三重賃金」の闇・日本テレビ「泥舟」の老害船長×士気下がる乗組員たち全く同じ仕事、同じ責任で、同じ正社員で、3割も5割も報酬水準を下げている。まさに「暴走」と呼ぶにふさわしい。日テレでは、新入社員の非組合員に対して、組合員にカンパを募って削減分を埋め合わせる動きがあったが、結局、実現しなかった。人間の心と、冷酷な「契約の束」との間での葛藤が見える興味深い事例だったが、実現しなかったという結果が示しているように、暴走する労働組合に人間の心は期待できないのだ。おそらく組合員1人1人をみれば、人間の心は残っているのだが、組織としてやっていることは醜悪だ。会社として総人件費を増やせるはずがないなかで、1円たりとも妥協を許さず、非正規労働者や新入の正社員に負担を押し付け、事実上の搾取を行っている。50代の年収2千万円の組合員は心が痛まないのだろうか。ライシュは解決策についてこう述べる。法律や規制を変えるしかないのである。改革派は、変更したい法律や規制に注力し、それを一般大衆に働きかけるべきである。本件、日本において対象となる法律や規制は、「均等待遇」の一語に尽きる。整理解雇の条件も、正社員だろうが非正社員だろうが、均等にしなくてはならない。法律で、「同一価値労働、同一賃金」を義務付け、厳格に罰則付きで運用しなければならない。現状では正社員だけが異常に規制に守られているため、均等化すれば彼らの既得権は奪われる。したがって、残念ながら正社員労組の親玉である連合が支持する民主党政権には、できそうにない。さっさと政界再編し、上げ潮派の構造改革政権ができることを望むばかりである。2009/08/03
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サントリーとキリンは水と油日経が、月曜日朝刊の一面トップでスクープ扱いとして最終版のみに突っ込んだ、サントリーとキリンの統合交渉(最終版でないと他社に漏れるため)。他社はもちろん都議選の結果が一面トップなわけだけど。最初は、「飛ばしかな」と思った。記事を読むと「少人数の統合検討チームに指示した」程度の話しかなく、具体的な話がなにも書いてないし、統合の検討くらいいつも裏でやってるものだから。産業部の食品担当記者の焦りが見えるようだった。ところが、翌日にはサントリーの社長がちゃんとしゃべってくれたおかげで他社も追いかけたから、これはもしかしたら社長賞じゃないかな。悪くても編集局長賞。こういう「放っておいてもいずれ発表されるニュース」を、発表される前に、かつ他社より先に、記事にする、というのが日経記者の「社内でもっとも評価される仕事」です。東京銀行と三菱銀行が合併します、普天間基地返還へ、も社長賞。こんなスクープをいくら報じても、社会は何もよくならない。一ミリも前進しない。こんなのはジャーナリストの仕事ではない。自分がやらないと埋もれてしまう話を調査報道するのがジャーナリストの仕事である。だから、MyNewsJapanが載せている記事はすべて調査報道。それしかやらない。それでも、マスコミのサラリーマン記者たちは、毎日毎日、社内的な評価を勝ち取って部長にのしあがるために、そして地方支局に飛ばされないようにするために、サントリーとキリンの役員宅の前で役員のお帰りを待って、「社長から統合交渉についての報告を受けましたか」とぶつけ、反応を見る。この土日に最終確認のために両社担当の記者が走り回った様子が目に見えるようだ。私にはこの仕事はできない。意味がない仕事だから。「日本投資家新聞」に就職したのなら諦めるしかないが、社長はジャーナリズムだとか言っているわけでね。日経に残っていたら、こういう合併話を、キャップとして責任ある立場でやらされてる年次だから、精神障害を起こして廃人になっていたかもしれない。ようは、既存の新聞社というのは、株価が動くインサイダー情報をとるために膨大な手間ヒマをかけているわけだ。ホント、くだらない。株情報屋さんに成り下がっている。堂々と人に言えるような仕事じゃない。そんなことしてて、何か、やりがいあんのかねぇ。■誰も幸せにしない統合ところで統合の件ですが、サントリーとキリンは全くカルチャーが違うから、絶対うまくいかないと思う。サントリーは、非上場で独自の魅力的なカルチャーを持っているのに、その強みがなくなるのは本当にもったいない。官僚機構みたいなガチガチのキリンと、やんちゃで「やってみなはれ」の自由な社風を持つサントリーは水と油です。足して2で割ったら、それぞれの強みが消えて普通のつまらない会社になるだけ。日立とかNECとか丸紅みたいな「一通り何でもあるけど無難で特徴がない」幕の内弁当みたいな会社になるか、いつまでも統合できず内部分裂が続くか。社員にとっては、どっちもハッピーではない。投資家にとっては、生産・流通・営業・販売などの統合を強引にやればコストメリットがあるから短期的には利益が増えるが、市場は競争が減っていいものが生まれなくなるから、中期的に縮小すると思う。消費者にとっては、競争がなくなって、似たようなブランドは統合されて商品の選択肢が減るわけだから、得な話はひとつもないです。3社のうちで圧倒的なシェアを握った段階で値上げもしやすくなるだろうし。朝毎読の新聞3社みたいに、証拠を残さないで闇カルテルも結ぶだろうし。公取はこの統合を認めてはいけない。ビールは税金が高いため規模の経済が必要で、今後の新規参入がほぼ不可能な市場だから、統合を認めたら、企業を怠けさせるだけです。→サントリー→キリン2009/07/17
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2票持ってる公明党問題都議選の民主大勝は予想どおりだったが、驚くべきは、政権与党の公明党が公認23人全員が当選してしまい、解散前より1議席伸ばしたことだ。「麻生政権への逆風」で自民が大敗したのは間違いないにもかかわらず、同じ麻生政権を構成している公明党は、逆に議席を伸ばした。これは予想外だ。この意味するところは大きい。つまり、公明党の支持者は、どのような政治をされようが、その成果に関係なく、とにかく公明党の候補者に機械的に投票するのだ。これは、政治の成果ではなく、宗教的理由で投票していることを証明している。まるで政教一致のイスラム国家である。これは、自由投票式議会制民主主義の欠陥である。投票するか否かが自由だから、今回の都議選は高めでも投票率54%。40%台が当り前だ。つまり一般の有権者は2人に1人しか投票しない。だが、創価学会信者は全員投票にいって公明党に入れるから、一票の重みで考えれば、事実上1人2票持っていることになる。この弊害を解消するためには、たとえばオーストラリアのように、投票を義務化すればよい。無宗教の人たちも必ず投票する制度にすれば、特定宗教団体の弊害も薄まる。とにかく公明党の組織票問題は放置しておくべきではない。「幸福の科学」の幸福実現党みたいな政教一致の動きが加速してしまう。なお、今回、民主が勝った一因は、鳩山由起夫党首の献金問題についてマスコミがあまり報じなかったことも影響していると思う。鳩山は個人資産を政治団体に回すことで、相続税を脱税できる。上杉隆氏が指摘しているように、政治団体は相続税を払わなくてよい制度になっているからだ。そのあたり全く指摘しないのは、マスコミも政権交代を望んでいるということだろうか。2009/07/14
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海外で聴けないダメダメiTunes新しい街歩きはエキサイティングだ。iphone片手に探検する。例によって歩き過ぎてしまった。両足裏のマメが痛いので休養日を作り、記事執筆の傍ら出張用PCのitunesで音楽を聞こうとしたら、なんと再生できないことが分かった。自宅のPC経由でアップルストアで買って、出張用PCにコピーしてきた服部克久の「自由の大地」や「自然紀行」が、認証が通らないとかで聞けないのである。エラーメッセージは「5台以上のコンピュータを認証することはできません」と出る。そもそも私は2台しか持っていないのだから、この理由はありえないのだが。そこでアップルに質問をしようとしても、受け付けるメルアドがない。これがまずネット企業として致命的だ。客をカネヅルとしか見ていない。サイトで調べると、日本国外では使ってはいけないことになっているのが原因らしい(にもかかわらずエラーメッセージではそう表示されないから客を混乱させている)。販売規約日本国内のみの販売iTunesStoreからのお客様によるご購入は、日本国内のみで行われており、その他の地域では行っておりません。お客様は、提供地域外からサービスの使用、または使用の試みを行わないことに同意されたものとします。アイチューンズは、これが遵守されていることを確認する技術を使う場合があります。https://www.apple.com/legal/itunes/jp/terms.html#SALESこれには心底、ビックリだ。アップルってグローバルブランドだと思っていたが、1曲150円で正規に購入した客に対してこういう仕打ちをするとは。こうなると、「もう2度と買ってやらないよ」と心に誓うほかない。今後は、無料のライムワイヤーで徹底的に探すことにするよ。馬鹿な会社である。これは著作権者にとっても、音楽業界にとっても、アップルにとってもよくないことなのに、カネを真面目に払う人間を、より不便にすることによって、払う気を失わせるとは。結局、いま海外で聞けるのは、自分でCDからコピーした曲や無料でどこかからコピーしてきた曲だけになった。つまり、アップルの、この不便極まりない、グローバル化したユーザー行動を無視した自己満足な仕組みによって、結果的にユーザーの離反を招き、自ら音楽の無料化を進め、自らの首を絞めている構図であるが、この程度の簡単なロジックに気付かないのだろうか。5台までに制限するのはよい。それはまあ分かる。だが、国内でしか聴けないという条件は決定的だ。その規約を課された以上、海外で仕事をすることもある私は、もうアップルストアでは買うわけにはいかない。グローバルに移動する人は必然的に、アップルストアで曲を買わなくなっていくだろう。ジョブズって、もっと賢い経営者かと思っていたよ。2009/07/12
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イスタンブール雑感ショッピングセンターの各入口にいちいちセキュリティーゲートがある2009/07/09
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ひろゆきはなぜ逮捕されないのか僕が2ちゃんねるを捨てた理由(扶桑社新書)2009/06/09
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守旧派(バラマキ派)勝利で政界再編へ私は右上です。現在の政治家には誰もいませんが。2009/05/16
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キーエンス新卒主義の教えいつも年収ランキングベスト10の常連ながら、キーエンスは5年前から謎な会社だった。このほど取材することができ、かなり納得することができた。最大の強みは、社員の過半数を占める営業マンにあるのだが、まず、採用するのは「新卒23歳のピチピチの若い男の子©城繁幸」だけ(申し訳程度に女性もとるがすぐ辞めちゃうから、全社で1人しか女性営業はいないという)。それを親元から隔離し、借り上げマンションに集団で住まわせ、パーソナルコーチ(入社3~4年目)までつけて、純粋培養で洗脳する。朝から夜まで14時間、分単位で管理され、監査まで受ける。夕食はカロリーメイトのみで生産性アップ(食事を摂ると脳に血が回らないからだろう)。その代償として32歳で1400万円だ。その頃までいる人、つまり9年もやってる人は、“ストレステスト”をかけても、誰も資本注入必要なし、となるくらいストレス耐性が身についている。転職先は沢山ある。逆に、「全員が要資本注入」となるのが新日石の営業マン。ガソリンスタンドは場所が命だから、全国各地の「いい場所」にエネオスを配置した時点で勝負は終了。営業マンがSS周りを頑張っても頑張らなくても勝手に売れていく。他社に転職できる人は皆無だ。■人間は、最初に入った環境には容易に順応するこうしてみると、社会人1年目のスタートが決定的に重要だ、ということがよくわかる。キーエンスでは「1日14時間、分単位で管理されるのが営業の常識だ」という空気ができあがるそうだが、このキーエンス式常識をインプットできるチャンスは、新卒1年目だけだろう。人間は、動物の「刷り込み」現象と同じく、最初に入った環境に順応しやすい。だから、新卒でいきなり非正規社員になって2年もやってしまったら、もう取り返しがつかない。人事もそこを見ている。IBMの採用マネージャーに話を聞いたことがあるが、年齢よりも、社会人キャリアをどこでスタートしているか、「ファーストキャリアが重要」だ、と言っていた。これはその通りだと思う。だから、「28歳まで学生やってた人」のほうが、「23歳で卒業してハケン歴5年の人」よりも、はるかに採用されやすい。外資には年齢給などないし、日本企業でも純粋な年齢給は朝日新聞や全日空など一部の規制産業くらいになったから、年長の非正規社員が正社員になれない理由は、年齢給があるからというよりも、むしろ社会人1年目に正社員としての教育を受けられなかったことにある。いったんついた“非正規色”を塗り替えるのはもう無理だと人事が見ており、しかもそれは事実として正しいから、やっぱり新卒が欲しい、となるのが企業にとっては合理的な意思決定である。だからキーエンスは営業を中途でとらない。なにしろ、最初の洗脳教育で「分単位14時間管理」を常識化することこそが、キーエンスの競争力の源泉なのだから。キーエンスの成功は、いかにピチピチの新卒がコロっと洗脳されやすいかを、雄弁に物語っている。外からみたら非常識なことを常識に変えられるチャンスは、新卒1年目だけなのだ。そう考えると、既に発生してしまった年長非正規の人たちは、残念ながら取り返しがつかない。社会全体として傷口を広げないためには、正規と非正規の均等処遇(特に雇用と給与)を義務付け、これから社会人になる人に対し、社会人1年目により多くの人がまともな教育を受けられるように、その絶対数を増やすしかない。現状では、使い捨ての非正規に教育費などかける理由がなく、逆に40年も雇用しなきゃいけない正社員には莫大な教育・研修・OJTを施してでも1人前に仕立て上げるしかない。この差が、その人の職業人生に与えるインパクトは決定的なものだ。この身分格差を、政府が人為的に作り出している現状は、まさに罪というほかない。雇用法制(=解雇法制)、賃金法制(=企業内同一労働同一賃金)の均等化は、今すぐにでも実行しないと、今こうしている間にも、この不況下で、不幸な非正規社員が量産されつつあるのだ。2009/05/08
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ベトナム紀行文公開連休中、ちょっと油断して外出してしまったところ、ユニクロが30人くらいレジで並んでおり、買い物すらできず後悔。サラリーマンは行動に無駄が多くて大変だなぁと実感した。「フォーエバー21」が並んでてヒットしてるとか報道していたが、単に不況で安い割にまあマシな店に殺到してるだけだと思う。今はちょうど小渕政権時代。不況でバラマキのカンフル剤を注入→もちろん1年も持たずに失速、森政権で絶望的な状況に陥り支持率1ケタに→小泉政権で根本的な治療、すなわち不良債権処理&構造改革で景気回復。だから、次の次の政権(再来年か)まで不景気は続くね。今回の不良債権は人材の不良債権、つまり貰いすぎの正社員たちだけど。私は人ごみがダメなので電車にも乗らないようにしているが、休日は人出が最悪なので家に篭り、平日にジムや映画や買い物に行く。というわけで連休は、ひたすら紀行文を書き、寝だめしていた。下記がベトナム紀行文。「旅」カテゴリに、やっとコンテンツが入った。1:文化帝国主義論ふたたび2:三井不動産化する世界3:いわくつきの土地4:サービスの本質5:ろうそくがいらなくなった街学生時代に書いたものが今読んでもなかなか面白いせいか(これは日経の人事部に出す前提で書いたから、というのもある)、あまり進歩してないような気もする。2009/05/07
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内定取り消し促進行政内定取消し、過去最悪2083人=自宅待機は1000人超-厚労省調査厚生労働省は30日、企業から採用内定を取り消された今年3月卒業の学生数が2083人だったと発表した。山一証券破綻など金融危機の影響を受けた1998年3月卒(1077人)の2倍近くに相当。現行方式で統計を取り始めた98年以降で最悪の水準となった。また、企業が内定者に自宅待機や入社延期を指示した人数を初めて公表、4月23日時点で1023人に上った。世界的な不況の中、厳しさを増す就職の実態が改めて浮き彫りになった。内定取り消し人数は4月24日時点の集計結果で、前回調査(3月23日時点、1845人)に比べ238人増えた。内定を取り消した企業(支社、営業所ベースなど含む)は427社。人数の内訳は大学卒などが1703人、高校卒が379人、中学卒が1人。(4月30日14時55分配信時事通信)まあ、そりゃあ、そうだろう。どんどん内定取り消しができるよう、政府が企業名を隠しているわけだから。企業にとって不名誉な情報は、国民の眼にふれないよう、役人がガッチリ守ってくれる国です、日本は。国民の生活よりも企業利益を優先させるという点で、この国は戦後、一貫してやってきた。いまだ戦後体制を維持しているわけです。「国民の生活が第一」と言ってる民主党は、こういう情報を公開させられるかどうかで本音が分かるので、政権交代後はよく見ておきましょう。これからも内定取り消しは、どんどん増えます。だれも監視する人、いませんから。この国には、ジャーナリズムが存在しないうえに、逆に、厚労省様の発表モノを各マスコミが無批判に垂れ流してくれるわけで。もう、ビックリですよ。こういう調査報道、ウチしかやらないんだから↓。厚労省、内定取り消し企業名を全面不開示「法人の権利害する」どうせ隠すのなら、最初から調査もやめちゃって、その分、役人を減らしたほうがよほど国民のためになる。結果を公表しない調査、役人の裁量権を拡大するための調査など、税金の無駄遣いそのものですから。2009/05/01
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IT活用で善意が活きる社会にヨセミテという会社を去年始めたお2人に会って話を聞いた。「ITを公共政策に」というコンセプトでやってる志の高いベンチャーだ。それだけなら思いつく人もいるかもしれないが、ポイントは、やる人間が技術も実績もカネもある、という点。楽天IPOと「フォートラベル」のカカクコムバイアウトでダブル成功を収めた津田全泰氏と、ミクシィ創業メンバーIPOの塚田寛一氏が経営している。既に2人ともミリオネアだから、短期的な利益などおかまいなしに、ビジョナリーカンパニーを目指せる。しかも技術も経験もあるから失敗の確率も低い。2人とも普通の会社に入らず「いきなりベンチャーに就職」という奇特組だ。塚田氏など東大法学部だから、気が狂ったと思われても仕方がない状況だったろう。津田氏は楽天三木谷氏のもとで、塚田氏はミクシィ笠原氏のもとで、社員10人未満のスタートアップ時代から成長を支えてきた超ハードワーカーだったのに、その面影を微塵も感じさせない。通常のビジネスマンや不況で汲々とするベンチャー経営者と違って、もう全身から余裕たっぷりオーラ。だから成功できたのか、成功したからそうなったのかは今となっては分からない。もう少しプレッシャーがないと事業は進まないんじゃないか、と不安に感じたくらいだ。成功するベンチャーというのは、こういう優秀な学生を惹きつけ、最大限、使い倒すのだな、と実感した。そして、2人ともタイプが似ていて、実に運の良さそうな、上司にかわいがられそうな顔をしている、と思った。いろいろ興味深いプランを聞いたが、発表前は差し障りがありそうなので、私のほうからお話したことを書きとめておく。◇私も「公共政策にITを活用する」との理念に賛同する。現在の日本は、人間の善意が生かされにくい残念な社会だ。寄付の税額控除すらろくにできないし、政治献金の税額控除もできない。生活者よりも財務官僚の裁量が優先される官僚主権国家だ。これをITの力で変え、民主国家らしくしていく余地はいくらでもある。たとえば私はコンビニで釣り銭をユニセフなどの募金箱に入れる。小銭はうざいし、募金したほうが気分がいいからだ。最近、iDやエディで決済するようになり、小銭が出なくなったから、募金額が減った。だが私の善意が減ったわけでは全くない。善意を活かす仕組みが、日々の生活から1つ消えただけだ。人々が持つ善意を、最大限いかせる社会というのは、すばらしい社会である。だが、コンビニ募金の例でいえば、募金額はIT化によって減ってしまったことになる。ヨセミテがやるべきなのは、この逆のことだ。IT化によって善意が活きる仕組みづくりである。たとえば、EDYで決済した額の1%をプールする仕組みを作る。それをどの団体に寄付するかは、自分で決めることができるようにする。環境でも教育でも人権でも、その人が興味を持つ分野の、具体的なNGO名(ユニセフなど)も指定できるようにする。その、募金→プール→募金先指定→団体の情報公開(どう活かされているのかが分かる)のウェブ上のプラットフォームを、ヨセミテが作って運営する。楽天のように、人気NGOランキングなど、CGMで培ったノウハウを適用。ミクシィのようなSNSも組み込み盛り上げていく。ここで決定的に重要なのは、運営会社だ。こういう話は、たいてい週刊金曜日などから連想される、ちょっとあやしげで間違いなく貧乏な市民団体系の人たちが考えるので、一般社会人からの信用を得られにくい。だが、ヨセミテの最大の強みは、経営者2人が、「もう私たちは億万長者だから、これ以上悪いことをしてリスクを冒して稼ぐモチベーションが、何もないんです」と言い切れることだ。そして第2の強みは、楽天とミクシィという2大CGMを成長させたというITブランドをまとっており、優秀なウェブシステムを運営してくれるだろう、という信頼感である。さらに学歴も含め、信用を担保する条件は、すべては揃っている。経団連の「1%クラブ」には嫌悪感を示す若者も、ヨセミテの2人になら運営を任せるだろう。経営情報を開示すれば誰も文句はいわないだろう。経団連のような、政治力にモノを言わせてカネ儲けをしているイメージは2人にはない。起業によるカネ儲けはリスペクトされるべき存在なのだから、堂々と運営に乗り出してほしいのである。日本では2ちゃんねるのように、負のエネルギーを増幅するITは盛んだが、善意を増幅させるITプラットフォームがない。だから、それをやるんです!と宣言してほしいのである。2009/04/28
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“子供人間”量産政策の必然的結果「若者は社内で正社員のポジションにしがみつき、できれば一生いまの会社に勤めて、社内出世を目指したい。そのためには良心に反する手段でも指示通りの仕事をするしかない。起業なんてしたくない。」生産性本部が新入社員に対して継続的に行っている調査で、上記のような傾向を示す指標が出ている(有効回答数2348通)。はっきりいって、絶望的である。サラリーマン(=正社員)というのは将来、自分でやりがいのある仕事で独り立ちするための、20代のキャリアステップ、研修期間にすぎない、というのが私の持論なので、間違った意識を持っていることに非常に残念だ。「良心に反する手段でも指示通りの仕事をする」が過去20回で最高となった(40.6%)これでは、個人も国も不幸になるばかりだ。日本のサラリーマンなど、独立した大人でさえない。自分で住むところも選べず、仕事内容も選べず、2週間連続で休むのもほぼ無理。自分の頭で正しいと思ったことを押し殺し、ストレスを溜めてでも良心に反する仕事をさせられる。その代償として、毎月一定額の小遣い(給与)を貰う。ようは、それまで親の扶養下に置かれていた学生が、会社の扶養下に移るだけであって、本質的には子供だ。自分の頭で考えず、親の命令だから、と良心に反する指示にも従う。そういう“子供人間”でいいや、と若者に思わせているのだから深刻である。その先に何があるかというと、まず個人のモラルは崩壊する。仮に人事部に配属されたとして、悪質なリストラや偽物の成果主義を推し進める担当になっても、会社の指示だから、と大人しく従う。「エノラゲイに乗って原爆落してこい」と言われたら躊躇なく従う。告発本を書いたり、私のようにウェブで会社を批判するなど、もってのほか。つまり、言論の自由がない社会になるということだ。国についていえば、新規産業が生まれないわけだから、日本の経済社会は、長期縮小・停滞へと、ただただ向かう。グーグル、アマゾン、マイクロソフトといったIT産業は日本では起きず、日本人はそのプラットフォームに組み込まれて搾取され続けるのみである。なぜこうなるのかといえば、政府が「正社員になって会社に人生を預けるのが一番のお得だよ」というメッセージを発し続けているからだ。正社員を過剰保護し、非正規との格差をこれだけ見せ付けられれば、正社員のイスをエグジットしたアウトサイダーになろうと思う人が減って当然。退職金優遇税制を残している限り、リアルタイムに実力で稼ぐよりも会社に定年までしがみついたほうがいい、と思って当然。あらゆる政策が、正社員としてひとつの会社にしがみつく人間が一番有利になるようにできてしまっていて、それを政府が全く改めようとしない。秋に生まれる民主党中心の新政権では、日本で新産業を起こし育てる、という確固とした理念を打ち出し、ゼロベースで政策を作り直してほしい。2009/04/26
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「おくりびと」のジャーナリズム「おくりびと」は悪い評判をまったく聞かない。ホリエモンは「これでもか、これでもかー、と涙、涙の連続です」と書いていた。これはハズさないと思い昨日観に行ったら、確かにそのとおりで、中盤から最後まで涙が止まらない展開であった。私は目覚まし時計を持っていない。午前中に1回しか上映してないのでケータイのアラーム機能まで使って起きて観に行ったかいはあった。あっという間に終わった感があり、ひとつも分かりにくいところもなく、鑑賞後感がとてもよい。このテの、宗教、科学、生死といった人類共通のテーマをジャーナリスティックに描いた社会派映画は私が一番好きなタイプだからツボにハマった。「コンタクト」や「もののけ姫」と同じ部類に入る映画だと思う。深淵なテーマには久石譲の音楽がまたよくハマる。アイドルグループ「しぶがき隊」のモッくんが白髪が交じる歳になり、立派な俳優になっていてビックリ。しかも、このテーマの企画立案者が13年前のモッくん自身だということで、2度ビックリ。かなり現場の情報収集や確認を重ねたと思われ、まさに宮崎駿なみのジャーナリズム活動だ。そして自分で主演してしまうのだから、日本では類のない、日本版ジョディ・フォスターのような男だ、と思った。滝田洋二郎がいちおう監督だが、この映画の本質を伝えているのは滝田ではなく本木なのだ。映画の中身はネタバレ自重であまり書かないが、まあ映画だから、それはないでしょ(夫の職業を何ヶ月も知らない…)とか、ちょっと出来すぎなプロットで予想できてしまう展開(失踪親父の最期…)になっていたりするのだが、予想を越える部分の重さが感動させるのだろう。今調べて分かったのだが、クライマックスの父親役が峰岸徹だったとは。私の記憶にあった昔の峰岸徹ではなかった。そして現実の峰岸氏も昨年10月に亡くなってしまう。既に撮影の時点で癌が進行していただろうから、演技だけではなかったわけだ。この映画の示唆はいくつもあるのだが、この峰岸氏の役が象徴していた。まず、親子関係は長さではなく、深さ・瞬間・密度だよね、と。そして、命ははかない、死を意識して生きよ、と。納棺の場面はいくつも出てくるわけだが、そこで遺族や友人、後輩たちからどう送られたいのか。それを考えると日々が変わるし、職業観も変わるだろう。このテーマはキャリア形成にも深く関わり、私の興味分野だ。以下に、いくつか紹介しよう。スティーブンRコビー「7つの習慣」(キングベアー出版)葬儀で述べてほしい弔辞を注意深く見つめれば、あなた自身の本当の成功の定義を見つけることができるだろう。それは今まで考えていた成功とはかけ離れたものかもしれない。名声、業績、お金などは、あなたが本当に考えている成功と何ら関係がないかもしれない。スティーブ・ジョブズ「スタンフォード大卒業式での伝説のスピーチ」(YouTube)毎朝、鏡をみて自問自答しました。「今日が人生最後だとしたら、今日やることは本当にやりたいことだろうか。」「NO」という答えが幾日も続いたら、私は何か変える必要があると知るのです。PFドラッカー『プロフェッショナルの条件』(ダイヤモンド社)何年か前に、かかりつけの腕のいい歯医者に聞いたことがある。「あなたは、何にょって憶えられたいか」。答えは「あなたを死体解剖する医者が、この人は一流の歯医者にかかっていたといってくれること」だった。この人と、食べていくだけの仕事しかしていない歯科医との差の何と大きなことか。いろいろな人が、同じことを言っているが、その通りだと思う。というわけで、この映画は、20代のあるべきキャリア形成にも役立つだろう。私は以上のような感想だった。みんな、何を考えて観ているのだろうか?(特に、死を意識する年齢の人たち)平日午前なのに、レディースディだとかで込んでおり、爺さん婆さんやおばちゃんグループが多かったが、観察していると、私のように眼を赤くしている人はほとんど見かけず、サバサバしたものだった。達観しているというか、年とともに感受性は鈍り、涙も枯れていくのかもしれない、と思った。とにかく1万円くらいの価値はあったのでオススメしておく。2009/04/23
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週刊新潮と日テレ、虚報の教訓週刊誌というのは本当に「買って読むところがないメディア(中吊りと立ち読み1分で十分)」なのだが、また嘘がバレたそうなので、ケーススタディとしては貴重と思い、半年ぶりくらいに『週刊新潮』を買って読んでみた。だが、どうにも消化不良な内容であった。自分でスクープと題してデカデカと誤報を4回も連載し、その誤報の過程を再びスクープ扱いでトップ記事として載せるというマッチポンプ状態。もはや末期的であることは誰の眼にも明らかである。ただでさえ週刊誌は信憑性が低く、もっともネットに食われている媒体なのに、とどめをさされたかな、という印象。既に広告費ではWEBに抜かれて4位転落しているが、これまでは、かろうじてニュース媒体としての価値は残っていたと思う。だが、少なくとも私のなかでは、これで週刊誌は完全に終わったな、という感覚を強く持った。アサヒコムより週刊新潮は1月下旬から4回にわたって、島村氏の手記を掲載した。16日発売の「おわび記事」は物証が見つからない中で、「実名での告白を重く見過ぎた」「証言が詳細だった」ことを挙げ、取材した関係者があいまいな対応をしたことで「状況証拠が積み重なったように錯覚した」などと説明。一方で「架空手記」でも「捏造(ねつぞう)」でもないとし、「報道機関が誤報から100%逃れることは不可能」と抗弁した。島村氏はカネ目当てで朝日の記者を襲撃したと言っているのに、依頼したというアメリカ大使館職員からいくら振込まれたのか、といった基本的な数字が出てこないのにビックリ。ずっと疑問に思いながら読み進めても、ついぞ触れず。取材でそんなことも聞いていないんだろうか。書けないならば、その理由を記すべきだろう。ぜんぶ読んでも、結局、「島田氏が真犯人でない根拠」が何ひとつ伝わってこない。それどころか、これだけ読むと、いかにも、まだ島村氏が犯人である可能性がかなり高いと読めてしまうのに、本人が否定し始めたからといって、早川編集長は「誤報でした」と謝罪している。意味不明だ。本人による否定と犯行の事実関係は別の問題である。これで、あとから証拠が見つかってやっぱり島田氏が犯人だった、となったら恥の上塗りではないか。ということは、おそらく、とても外には恥ずかしくて言えないような決定的なミスが編集部内にあって、100%誤報である根拠が別にあるのだと思う。それを書いていないから消化不良なのだ。はっきりしないお詫び記事である。これで検証記事かよ、と思った。教訓としては、頭の中で空想、捏造することは簡単で、世の中に詐欺師はたくさんいるのだから、証拠がない状態でこんな大事件を記事化してはいけない、ということだ。当り前のことだし、私もMyNewsJapanでは証拠を重視している。■一方、日テレの「バンキシャ!」は岐阜県庁の裏金についての捏造証言を垂れ流したわけだが、取材した制作会社の人間(もちろんプロとしての訓練を受けていないアマチュア記者だ)と証言者がグルでやった可能性が高い。薄々ウソだと思っていても、アウトプットを出さないと制作費を貰えないから、流してしまえ、という話になる。日テレの社員プロデューサーは取材に立ち会わないのだから、チェックしようがない。ただ、テレビが雑誌よりましなのは、映像から判断できることだ。たとえば日テレが流したような、顔も声もボカした証言ならば、全部ウソに違いない、と推測できる。だが雑誌の場合、文字だけだと、映像が不要な分、捏造が簡単で、見抜くことも難しくなる。「経験豊富なプロの記者が証言者と向き合い、重要事項については物証を押さえる」。新潮も日テレも、こういう基本ができていなかったというだけの、極めてレベルの低い話なのだった。2009/04/17
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ブラよろ作者が自身のWEBで直接連載課金宣言、漫画週刊誌の終わり『ブラックジャックによろしく』のコミックが累計1000万部超も売れている社会派漫画のトップランナー・佐藤秀峰氏が、4/13の日記のなかで、自身の漫画をオンライン連載することを明らかにした。『ビックコミックスピリッツ』に掲載後1ヶ月を経たものを、自身のWEBサイト上に有料で閲覧できるようにするとみられる。僕は「新ブラックジャックによろしく」をオンラインで連載をすることにしました。雑誌に掲載されてから1ヶ月後に、こちらのホームページでも読めるようにするつもりです。いわば、雑誌とホームページの同時(に近い)連載です。(中略)恐らく、僕が雑誌で連載をするのは「新ブラックジャックによろしく」と「特攻の島」が最後かもしれません。もう雑誌から声はかからないでしょうから…。漫画制作日誌よりこれは、大ニュースだ。ダントツの成功事例を示して、過去の漫画資産で不労所得を得てボロ儲けし続けている小学館をはじめ、大手出版社の「漫画家搾取型ビジネスモデル」に喝を入れてやってほしい。圧倒的な第一人者が、あえて新しいことにチャレンジすることに意味がある。絶対に成功すると思う。私は「雑誌は読まない&単行本は必ず読む」カテゴリーの読者だ。つまり、既に「リピーター」を越えて「ファン」になっている。新刊が出て本屋で見かけると、半自動的にレジに持っていく層である。(ほかに『働きマン』もそうやって読む)熱心なファンはその作品だけを効率的に、1話も漏らさず網羅的に読みたい。抱き合わせ販売された「モーニング」なり「スピリッツ」というブランドには反応しない。だから、ネットでの連載が適している。このカテゴリーが、ネットのターゲットとなるはずだ。私は1本300円なら確実に払う。それが10本あるとすると、計3千円だ。500円の単行本はきっと買わないが、消費者1人あたりの総支払額は6倍にも増える。では、佐藤漫画製作所の手取りはどうか?単行本なら印税50円、WEBなら、WEBへの移植作業費など顧客1人に割ったら50円くらいのものだろうから、2950円が粗利となる。実に、利益率は59倍にもなるのだ。WEBを見ないファンは単行本を買うわけで、いずれにせよ、週刊誌で連載などやっていようがいまいが、「佐藤秀峰ブランド」の本が出ればファンは買う。圧倒的な利益率の違いがあるため、ネットの革命的なビジネスモデルは間違いなく成り立つ。頑張ってブレイクスルーしていただきたい。そして、スタッフの待遇を改善し、漫画業界を拡大し、日本の誇る漫画文化をより進化させてほしい。1つ成功事例ができれば、漫画はネットで読んで、単行本をコレクターズアイテムとして欲しい人だけ買う、という流れができる。そのとき、漫画週刊誌は、ご臨終となる。私がジャーナリズムで実践してきて十分な成功を収めているモデルを、既に実績のある人が漫画でやるだけだから、成功間違いなしだ。2009/04/14
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サラリーマンを辞めるとカードを作れないのか?&消費者利便性保護法を制定せよ海外に行くことを考えて、カードを再考した。まず、海外旅行のたびに保険に入る手間を省き、利用額の上限を気にするストレスから解放されるために、ゴールドカードに。そして海外でキャッシュを引き出しやすいように、citibankのカードを作った。両方ともデザインも含め気に入っている。と思っていたところ、元シティバンク社員に話を聞いたら、海外でシティバンクのカードで現地通貨をおろすのが、為替手数料が高くて、もっとも損をするのだという。一番オトクなのは、現地で必要な額だけキャッシングし、日本に帰ってすぐに返すことだそうだ。さらには、トラベラーズチェックがなぜなくならないかというと、マネーロンダリングで利用されているからだとか。申告しなくてよいから脱税に利用されるらしい。なるほど、と思った。デザインも気にいってる2枚。メガバンクなど日本系のカードは特にダサい。「ハイコンセプトの時代」なのに…。カード問題を片付けるにあたり、電子マネーを使うと小銭を使う手間が省けるため、iD、edy、suicaをオサイフケータイに導入。この小銭払いの活動コストは、チリも積もれば、で非常に高い。日々のことなので、1回10秒としても、ABCコストは年間で何十万にもなる。ここで問題が発生した。なんとQuickPayを導入できないことが判明したのだ。セブンイレブンで使える電子マネーはQuickPayのみで、edyもiDもsuicaも使えない。オサイフケータイにQuickPayを導入するには、JCBカードを作らないといけないので、やむなく申し込みをしてあげたら、何と審査で落としやがった。申込時に「お勤め先」を書かせたがっているのがアリアリだったから、ようは、定期収入があるサラリーマンじゃないから落とした、ということだろう。なんど問合せても、審査の内容は教えない、の一点張り。自営業は、キャリアや収入に関係なく審査で落とされる可能性が高いという神話は、未だに生きているのだった。サラリーマンは、こういうときは強い。私は最近、ダイナースカードも作れたし、VISAのゴールドカードも作れたから、そんなに関係ないんじゃないの、と思っていたが、さすが旧態依然の日本だ。未だにサラリーマンは支払いが安泰で小規模事業主は不安定だと思っているダメダメな会社は多い。それが、ミスターニッポン企業、日本のクレジットカード業界の最大手であるJCBであるところが、「変われないニッポン」を象徴している。別に一生、JCBなんて使いたくもないのだが、Quickpayをお財布ケータイで使うための必須事項になっているのが問題だ。VISAもマスターも使えない。こういう社会的インフラを一社独占で利益をむさぼり、他社の参入を排して消費者の利便性を損なうのはいかがなものか。これは電子マネーを使うには漏れなくJCBカードを作らねばならない、という一種の抱き合わせ販売だ。かつて「緑の窓口」ではJRのビューカードしか使えず、消費者の利便性を害していたが、批判に応えて今ではどのカードも使えるようになった。それと全く同じ悪質な抱き合わせを、セブンイレブンが今、やっている。競争政策上の問題はないのか公取(03-3581-5471)に話を聞くと、抱き合わせ販売は事業者間での法律で、この事例のように対消費者では問題がない、とのこと。独禁法という点では、他のカード会社の事業が困難になるほどの排除でない限り、取締り対象にはならない、と言われた。日本は消費者の視点が欠落しているのだ。法務省の相談窓口「法テラス」(0570-078-374)に尋ねると、弁護士に回された。まったく専門知識がない人間が出て、「自分が知る限り法律が思いつかないので、対面の相談を申し込んでください」という。この程度で、税金で相談員やってるのか、という対応だ。「消費者庁ができたら問合せてみてください」という。おまえは本当に弁護士か。弁護士も知らないのだから、日本には消費者の利便性を考えた法律はないということなのだ。企業のカネ儲け主義をベースにすべての法体系ができあがっている、ということを改めて認識した。このままでは、私は一生、セブンイレブンでは小銭から開放されないということになる。「小銭支払いABCコスト」を一生、支払い続けなければならないのか?消費者庁ができても関連法律が変わらないのなら、消費者の利益を考えた行政など期待できない。JCBのカネ儲け主義と消費者全般の利益がバッティングした今回の事例で、たとえば他のカード会社(VISA等)の参入を保証したり、他の電子マネー(edyやiD)の参入を保証し、健全な競争と消費者の利便性を確保する行政が行われるための、消費者利便性保護法を作らねばならない。2009/04/08