「おわりに」と次の出版
『いい会社はどこにある?』
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直近の情報を追記しつつ、アップデート版をネットに連載していたら、850頁もある本なので3年かかった。最後に、紙版の「おわりに」をそのまま掲載しておく。
■おわりに
最後は、ノイローゼになりそうだった。本書は2022年春から書いたのであるが、普段の取材や記事を書く仕事を一時停止して執筆に専念しないと進まなくなり、ニュースサイトの記事更新もできず、仕事は溜まる一方。夏前に終えるはずが、結局、半年かかった。4か月以上も理髪店に行けなかった。18年間を振り返りながらで、様々な記憶を呼び起こしながらとなり、なかなかのストレスであったが、充実した時間でもあった。
気が付けば、このテーマで取材を続けて18年超になり、ライフワークになっている。社会人8年目にあたる2003年秋ごろ、コンサル会社に在籍しつつ次のキャリアを考え、当時は表参道にあった『ヤフー』のメディア部門の面接を受けたり、当時創刊したばかりだったフリーペーパー『TOKYO HEADLINE』の採用面接で社長の話を聞いたりして、結局、週末起業的に自分のネットメディアを同志らと立ち上げることにしたのが、『MyNewsJapan』だった。
一連の経緯は企画『サラリーマンEXIT』にまとめている。→『やりがいある仕事を、市場原理のなかで実現する!』参照
その核となる連載として、有料にふさわしい情報とは――と考え、自分だったら絶対にこれにお金を払いたいな、と思いついたのが、本書の元となっている連載企画「生活者のための企業ミシュラン」である。当時、会社選びの際の情報源となるものが乏しく、本当のことが書いてあるのは『2ちゃんねる』企業板くらいで、それも、掲示板だから当然なのだが、嘘が大量に入り混じって判別が難しかった。まだ今ほど転職が活発ではない時代である。
わずかにあった口コミサイトも、ごくごく断片的で、その情報の真偽を誰も確認していないので、似たようなものであった。ためしに適当な内容を作って口コミしたら、載ってしまった。そうかといって個人の人脈だけで情報収集するのは不可能だ。こんなプアな情報インフラ環境で、就職・転職の活動を進めなければいけないなんて、ありえない。私は、掲示板でも口コミでもなく、プロが一次情報を取材して裏をとり、網羅的に一定基準で評価した記事を読みたかった。
企業ごとに、カルチャーも労働時間も報酬もすべて違うのに、いったいどうなっているのか。自分が実際に働いた2社だけでも、昭和の古い企業と外資では、労務管理から報酬体系から雇用まで、完全に真逆で、労基法的にはどちらも違法な長時間労働だった。つまり、伝えるべきことは、みんな現場社員が知っているのだ。それを取材する者と、伝えるメディアがないだけ。ないなら、自分でやるしかない。これこそ、現場発のジャーナリズムである。
実際に取材すると、「縁があったから」「その会社の商品が好きだから」「研究室内のクジやジャンケンで決まったから」などという、実に曖昧な、フィーリングや運だけで最初に働く会社を決めている人も多く、全く希望の仕事内容に就けないまま辞めるしかなかったり、想定外の長時間過重労働でうつ病になった人も、ずいぶん取材してきた。
記事を読んで、趣旨に賛同し、積極的に情報提供してくれる現場社員もたくさん現れた。入社するまでこんなにスゴい(給料の高さ低さ、特異なカルチャー、ノルマや労働時間…)と思わなかったからもっと知られるべきだ、自分が働く会社がどのくらい異常なのか知りたい、後輩の就活のため、自分と同じように転職活動する人のため…と動機は様々だが、確実にニーズがあったからこそ、18年も続いている。この場を借りて、皆に御礼を申し上げたい。
現場で働く人へのインタビューは、常に刺激的で新しい発見があり、面白い。転職やキャリアの相談を受けることも多く、筆者としても、できる限りのアドバイスをしている。今後も、様々な切り口で書籍化していくつもりである。
この働く人のためのデータベース※を充実させるには、現場で働く皆さんの協力が不可欠だ。取材協力者を、常に募集している。現役社員・元社員のかたは、ご一報いただければ幸いである(info@mynewsjapan.com)。※連載企画記事は、約700本になった。最新記事はサイトに随時アップしているので、ご覧いただきたい。取材協力者は永久に無料で読める。
大半の人が、生涯のなかで一度は、組織に雇用されて働く。それは民間企業だけでなく、官公庁や医療機関かもしれないが、将来の独立を考えている人も、学校を出るとまずは組織に所属して職業のキャリアをスタートさせる。本書でいう会社は、それらすべてを含んでいる。より後悔のない、合理的な仕事選びに本書が役立てば本望だ。
大学1年からの友人で、ヘッドハンターの浅野健太郎・ライフストラテジー(lifestrategy.co.jp)代表には、引き続き世話になった。豊富な人脈のなかから10年超にわたって取材先を紹介してくれているが、短期的な企業とのマッチングではなく、中長期的な視点で継続的に候補者をサポートする姿勢を垣間見てきた。信頼できる人物なので、転職活動を考えているかたや、人生におけるキャリア戦略を相談したいかたは、気軽に門戸を叩いてみてほしい。
ライフ・ストラテジー連絡先:support@lifestrategy.co.jp。人材紹介業は、人を紹介することで紹介先企業から対価を得るので、候補者側は無料である。一般的に、企業としての人材紹介会社は、売上を立てるため、転職させたいインセンティブが働くため、転職を後押しする傾向が強く、中立な存在ではない(企業側に近い)。いま転職すべきなのか、タイミングを含め、ビジネスモデルを理解したうえでサービスを利用することが重要で、中長期的視点が不可欠である。もちろん、転職を思いとどまるのも本人の自由だ。
企業・職業のカバー範囲をより拡大するため、幅広いネットワークをお持ちのヘッドハンターや人材紹介事業者も含め、協業していきたいと思っているので、ご連絡をお待ちしている。
2022年11月 渡邉正裕
以下が『いい会社はどこにある?』の最新アップデート版である。
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「いい会社」はどこにある?自分だけの「最高の職場」が見つかる9つの視点
ダイヤモンド社より発売著者:渡邉正裕
本書の目的と使い方
序章:3つの軸・9つの視点で「いい会社」を見つける
第一部「仕事」軸
❐「やりがい」視点で会社を見る #【年齢に関係なく仕事を任される】1.社員の平均年齢が若い /2.重厚長大でない 3.親会社・元請け /4.所属業界の規制が少ない /5.新規事業に関与しやすい /#【自律的に仕事内容を選択できる】1. コーポレート系 VS 営業系 /2. 営業職は四分類で考える/3.ジョブ型 VS メンバーシップ型/4.職種別採用 VS 一括採用/5.やりたい仕事をやらせる VS 仕事は会社が決める
❐「キャリア」視点で会社を見る #【専門能力が身につく】1.規制に守られていない VS 規制業種/2.スキルと学問の市場ニーズが高い VS 低い /3.英語力が身につく会社VS不要な会社/ #【内外で多様なキャリアパスを描ける】1.留学、資格、社内認定など専門職キャリアが多彩/ 2.適度な離職率が保たれ、次へのステップにもなる/ 3.人材を「排出」ではなく「輩出」している/ 3.人材を「排出」ではなく「輩出」している
❐「負荷」視点で会社を見る #【労働負荷が自分にとって適度である】1.残業が少なくトータルの拘束時間が許容範囲/2.有休・連休・休日をとりやすくメリハリがある /3.「修行」要素はあるが「やりがい搾取」はない
❐「勤務環境」視点で会社を見る #【勤務地を選べ家庭生活と両立できる】1.リモートワークも選択できる/2.転勤可能性と転勤サイクルを見通せる /3.女性が子育てと両立しつつ出世も目指せる
❐「人間関係」視点で会社を見る #【組織カルチャーが自分にフィットしている】1.社員の人柄や人間関係が自分に合っている/2.対セクハラ・パワハラ、コンプラが機能している/3.勤務先の思想性・宗教性を受け入れられる
❐「報酬水準」視点で会社を見る ――日本の給与水準が上がらない7つの理由/#【手取り賃金が望む生活水準を満たしている】1.天引き後の「手取り賃金」に納得できる/2.換金性の高い権利を得られる/3.福利厚生を賃金換算すれば納得できる
❐「カーブ分布」視点で会社を見る#【給与の上がり方がライフプランに合っている】 1.Pay Now 型 VS Pay Later型/2.出世の壁」が見えている
❐「査定評価」視点で会社を見る#【評価のされ方が自分に合っている】1.年功序列 VS 成果主義/2.組織主義VS個人主義/#【評価基準に納得性が高い】1.営業数字・施策VSバリュー指標 /2.管理職の360度評価・顧客評価を実施
❐「雇用」視点で会社を見る#【雇用安定性にギャップがなく納得性が高い】1.組織依存の安定VS組織横断の安定 /2.希望退職・追い出し部屋 VS PIP解雇/3.定年に関係なく稼げる職種とスキル
→購入する
■次の出版企画
本書は、ある瞬間での「企業選び」の本であって、そこに「時間軸」の視点はなかった。企業と企業の間を、どういう順番で、どのようなタイムスパンで渡り歩いていくべきか、というキャリアパス(職歴)の話が必要だと思った。
そこで、企業と企業の間をつなぐ、転職のあるべき姿、その考え方について役立つ単行本を出すべく、この1年、取材してきた。現在はその取材をほぼ終え、執筆中である。数か月後の2026年春までには完成の予定だ。乞うご期待いただきたい。
なお、このテーマ(成功する転職)は引き続き取材を続ける予定なので、ご協力者を募集している。(永久会員IDと薄謝進呈)
新卒ではなく中途で以下企業に転職して勤務した人、または現在勤務している人を探しています。
■企業名:三菱商事、三井物産、伊藤忠商事、住友商事、丸紅、三井不動産、三菱地所、住友不動産、東急不動産、集英社、小学館、講談社、電通、博報堂、NHK、日テレ、TBS、フジ、テレ朝、テレ東、トヨタ、ホンダ、日産、東京海上、日本生命、第一生命、損保ジャパン、三井住友海上火災、ソニー、パナソニック、日立製作所、キーエンス、ディスコ、東京エレクトロン、三菱UFJ銀行、三井住友銀行、みずほ銀行(総合職のみ)、JAL、ANA(総合職とパイロット職のみ)、野村證券、日興証券、大和証券、大手監査法人(トーマツ、あずさ、新日本、あらた)、BIG4(デロイト、PWC、KPMG、EY)とアクセンチュアとベイカレントでシニアマネージャー以上のみ、野村総研(NRI)、マッキンゼー、ボストンコンサルティンググループ、ベイン&カンパニー、ATカーニー、ゴールドマンサックス証券、モルガンスタンレー証券、JPモルガン、バンクオブアメリカ、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト、セールスフォース、SAPジャパン、GEジャパン、P&G、ファイザー、武田薬品工業、第一三共、中外製薬、アステラス製薬、日本経済新聞社、三井化学、三菱ケミカル、住友化学、竹中工務店、任天堂、キヤノン、JT、東京ガス(総合職のみ)、JR東日本(総合職のみ)、JR東海(総合職のみ)
■除外方式で、以下の大学卒ではない学歴、が条件です。取材の主旨が「学歴に頼らないキャリア構築」であるため。
旧帝セブン(東京大学、京都大学、北海道大学、東北大学、名古屋大学、大阪大学、九州大学)、一橋、東京科学大(東工大)、神戸大、東京藝大、横浜国立大、横浜市立大、筑波大、東京外語大、お茶の水女子大、東京都立大、早・慶・上智・GMARCH・関・関・同・立、東京理科大・ICU・防衛大・津田塾大、滋賀大、埼玉大、京都府立大、金沢大、千葉大、東京学芸大、信州大、滋賀大、広島大、名古屋市立大、大阪公立大、神戸市外語大、愛知教育大、大阪教育大、長崎大
■連絡先は情報提供フォームまたは info@mynewsjapan.com まで。ご協力者をお待ちしております。著者・渡邉

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