記事一覧
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1.営業数字・施策VSバリュー指標 ♯【評価基準に納得性が高い】 ❐査定・評価―対価軸『いい会社はどこにある?』前回、人事評価マップの全体像を図で示した。図の上半分は、評価で報酬に差をつける以上、評価基準の納得性が、特に重要となる。下半分は年功序列の悪平等で、かつ単年度で決まるわけではない「蓄積評価」だから納得性はさほど問題にならない。なかでも、組織主義であるがゆえに、マニュアルで社員の一挙手一投足を縛る傾向が強い右上の企業群(スーパーアンドロイド集団)に対し、左上の「組織内個人商店」の会社群は、原則として社員を“ニンジンをぶら下げた馬”として扱い、活動の自由度は高めだ。2025/04/04
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熊本県警巡査の過労死裁判が浮き彫りにした「絶望の刑事職」 ❝当直は断続的労働❞隠れみのに月180時間超の殺人的長時間残業が常態化刑事になって社会のために働きたい――小さい頃からの夢を追い熊本県警に入った巡査が、採用されて5年目、念願の刑事課に異動となり、そのわずか半年後に遺書を残して自殺するという事件が2017年に起きた。県警は「原因はわからない」とうそぶいていたが、遺族が地道な調査や訴訟を通じて暴いたのは、殺人的な長時間労働だった。県警が認めた表向きの残業だけで月100~140時間、これに〝裏の勤務時間〟にあたる当直勤務を加えると、実に185時間に達した。事件発生から7年、ひたすら責任逃れを続けた県警の姿に、母親は言う。「不信感しかありません」2025/04/02
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船井総研 粗利の8割を抜かれる個人事業者集団――客に言えない年収水準「正直、やりがい搾取感あります」中小企業向けに、メンバーシップ型で業種特化の「研究会」を毎月のように開き、この生け簀に〝成功しているビジネスモデル〟というエサを撒き、コンサル契約を釣り上げる――そんな独自の手法で成長する船井総研。3~5年、この研究会メンバー相手に泥のように働いて評価してもらえるようになると、社長ともコネができ、「ウチに入社しないか?今いくら貰ってるんだ?」と誘われることもある。「でも、年収を言えないんです。安すぎてナメられるから。自分はそんなとき、『2千万円で雇えるようになったら声かけてください』と返していました」(元社員)2025/04/02
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船井総研「月次業態支援」の限界でリモート中心へシフト――粗利稼ぐための出張&長時間拘束で疲弊する社員たち船井総研のコンサルティングは、中小企業に対して、月1日の訪問で20万円~という、「月次の業態支援」型が伝統的な主力事業で、泥臭い昭和のアナログな現場主義に特徴がある。「時にはハローワーク求人の更新作業をやったり、社長の息子の進路相談に乗ったりと、なんでも屋になります」(元社員)。当然、リアル8:リモート2、くらいの比率で、リアルでの対面支援が中心だった。これを2025年から逆転させ、リモートのほうをスタンダードにしていく方針が打ち出されている、という。労基法的にも、ジェンダーバランス的にも、月次の訪問による業態支援ビジネスは曲がり角にきている。2025/04/01
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船井総研 成功事例をパクって横展開するビジネスモデルで急成長――ノウハウと顧客を持って独立するエースたちスピリチュアル・オカルト系作家としても有名だった伝説の経営コンサルタント・舩井幸雄氏が創業し、船井氏が死去して半年後のタイミングであっさり持ち株会社化してギアチェンジ、コンサルブームにも乗って、突然の急成長を続けている“謎の上場企業”船井総研。大手の「〇〇総研」とは異なり、シンクタンク(政府の下請け)でもなければ、SIerでもない。過去10年で、売上高・営業利益とも約3倍に急成長し、コンサル数も2024年に1018人と大台を突破。中小向けコンサルでトップを走る。その仕掛けは、船井氏の精神論とは真逆で、より実利的な成果を重視する「月次支援」である。2025/03/31
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「社内接待を盛り上げなかった反省文を書け」中小企業『上司ガチャ』リスク(続) パワハラ被害エピソード5(加賀電子)――解説:50代元社員「筧専務にも責任があるのでは…」加賀電子EMS事業部で、長年にわたって常態化しているパワハラ。情報提供者が続々と現れることからも事態の深刻さはわかる。Eさん(現30代)は、20代の若手社員時代、「叩く、蹴る」「正座で反省」「月100時間超の残業」「約20万円の経費自腹」「毎週の反省文」…と、おもちゃのように扱われ、その職場は、人権無視なパワハラのオンパレードだった。「間違えさせて、怒って、覚えさせる」という犬猫のような扱いだ。人事部長ら管理本部に改善を訴えたが、何も動かなかったという。2025/03/14
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2.組織主義VS個人主義 ♯【評価のされ方が自分に合っている】 ❐査定・評価―対価軸『いい会社はどこにある?』「年功序列VS成果主義」に加え、もう1つの視点として、20代から大きく評価によって個人の報酬に差をつけるのだったら、そもそもチャンスが平等に与えられているのか――という大問題がある。たとえば新聞記者なら、地方支社に配属される人と、本社の主要部署(社会部・経済部・政治部)に配属される人では、スクープをとれるチャンスに、天と地ほどの違いがある。どんなに頑張ったところで、田舎には全国ニュースのタネがない。筆者も、入社1~2年目のころ、社会部に配属された同期の記者が局長賞だか社長賞をとっていたのを覚えているが、そりゃそうだろうよ、としか思わなかった。これで給料に差をつけられたらやってられない。だから新聞社が40代半ばまで年功序列なのは理解できる面もある。2025/03/09
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TikTok運営バイトダンスにレイオフされました(下)――理由は「総合的判断」のみ、ヒラ社員を実質的に指名解雇TikTokで有名なバイトダンス日本法人(本社・渋谷区)に、営業職で中途入社したものの、「ロールがなくなった」とレイオフ対象になった若手社員。なぜ自分が選ばれたのか具体的な説明がないことにも、納得がいかなかった。営業成績が悪いというのならば、まだ理解もできる。目標に対する達成率でも、同僚との相対的な比較でも、具体的な説明があれば反論の仕様もある。ところが、だ。「なぜ自分なのか、いくら聞いても『総合的な判断です』としか言わないのです。その判断の内訳は一切、説明されませんでした。これも定型文句なのだと思いました」(元社員、以下同じ)2025/03/06
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TikTok運営バイトダンスにレイオフされました(上)――「あなたの役割は来週なくなる」 3対1で一方的に不利な退職合意書にサイン迫る2024年のある日、TikTokを運営する中国企業として有名なBytedance(バイトダンス)の若手社員が突然、日本法人本社を置く『渋谷ヒカリエ』のミーティングに呼び出された。出席者は、直属の上司と、その上の本部長クラス、そして社内でHRBPと呼ばれる人事部長で、1:3だという。内容は、告げられなかった。「何か、怒られるのかな?」。あまり深く考えずに会議室に行くと、レイオフの通告だった。「標準パッケージは月収3ヶ月分の退職金ですが、1週間以内に退職合意書にサインすることを条件に、5か月分を出します。退職日は来月の〇〇日で…」。前触れがなかったので、驚いたという。2025/03/04
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セブンイレブンの外国人バイト、「週28時間を超えて働くのが当り前」なカラクリ1日あたりの総来客数が約2千万人と日本一を誇り、国民の6人に1人が利用するセブンイレブン。店舗では、全国平均で約2名、計4.4万人の外国人が働き、大都市の夜勤は特に多く見かける。そのほとんどは、留学生のパート労働だ。「外国人は必須の労働力ですが、闇があります。週28時間までという上限規制を超えて働くのは当り前で、それが同一店舗でも行われています」――。元社員に、様々な意味で〝危うい〟留学生バイトの労働実態を聞いた。2025/02/26
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1.年功序列VS成果主義 ♯【評価のされ方が自分に合っている】 ❐査定・評価―対価軸『いい会社はどこにある?』年功序列賃金で終身雇用の日本企業では、40歳くらいまで差がつかないので、毎年の人事評価に一喜一憂する必要はなかった。ワンショットではなく、周囲の評判や、上司からの評価が積み重なって、段々と、課長に昇進する人が決まり、そこでの成果や上層部との人脈で、部長、事業部長と出世する人が決まっていく。複数の目による蓄積評価だから、諦めもつきやすい。2025/02/10
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〝麻雀初心者狩り〟「違法賭博を強要され疲弊して転職しました」中小企業『上司ガチャ』リスク(下) パワハラ被害エピソード4――加賀電子EMS事業部4人の告発サラリーマンは上司を選べない。たまたま配属となった部署の上司がパワハラ気質で、会社のガバナンスも機能しないと、詰んでしまう。半導体商社2位の加賀電子(東証プライム上場)もそんな会社の1つで、社内では違法賭博が常態化していた。「プライベートな時間を奪われた上に、貯金も全くできませんでした」――。上司だった岡部剛男(当時は営業部長)によって徹夜の賭け麻雀に約30回も強制参加させられて約50万円を失い、金銭的にも体力的にも疲弊したDさん(現40代)は、そう振り返る。転職の予定はなかったが、ヘッドハンターの誘いに乗る形で、他社へと逃げるように移籍した。2025/02/05
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PwC「現場は〝やさしい、コンサル。〟でもないです」――社員が語る『採用』『儲け方』『働き方』の実情売上優先で〝地雷マネージャー〟が昇格してしまう現実、機能しない「マネージャー評価」、みんな無視する「みまもりメール」(PC稼働が長すぎる人向けの注意喚起)。多忙な現場では有休消化もできず長時間労働が当り前だ。「自分は未消化の有休が40日たまっていますし、残業75時間つけた月もあります。同僚は月120時間、残業申請していました。対外的には休みをとれるようなことを言っていたり、『やさしいコンサル。』を打ち出して採用しようとしてますが、現場はそうでもなくて、パワハラ対策など心理的安全性も低いです」――。現役社員に、採用プロセスから、プロジェクト体制、他社と変わらぬハードな現場実態等についてじっくり聞いた。2025/01/20
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初任給・社員数でBIG4トップのPwCコンサル、Hot Skill Bonus剥奪で7~8%減俸へコンサルバブルが続くなかでも、Big4や総合ファームのなかで新卒初任給が一番高いPwCコンサルティング。8年前と比べた年収水準は、シニアアソシエイト以下で200万円程度、マネージャーで約300万円も引き上がった。一律に上げているわけではなく、特に必要性の高い人材には「HotSkillBonus」と称して月5~6万円を上乗せするなど、きめ細かく市場競争力の高い賃金水準を柔軟に設定したり、または剥奪したり、降格もする。「2025年7月から8.4%、年俸基準額が下がります」と話す現役社員に、外部からは分からない人事処遇の運用実態を聞いた。2025/01/15
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オープンハウス新卒1年目社員が夏休み最終日に自殺しました ⑥――「2~3倍働かせて給料は1.5倍」契約ゼロならボーナスもゼロ、グループ長でやっと2千万円オープンハウスの人事処遇制度では、夏冬に支給される基礎ボーナスがゼロ。契約件数に応じたコミッションボーナスが自動的に加算される。生命保険の外勤営業職のような、いわばフルコミに近い完全成果連動型だ。ノルマ達成なら初年度から年収1千万円超も可能だが、契約ゼロなら432万円だけ。プロセス(アクション、努力)は評価せず、結果の数字だけを評価する。自殺した新入社員について、「はやく契約をとって稼げるようにしてやらないとボーナスゼロになって生活が苦しくなるので、厳しい指導も彼のためだ、という理由付けもあった」と元同僚は語る。2025/01/13
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2.「出世の壁」が見えている ♯【給与の上がり方がライフプランに合っている】 ❐カーブ・分布―対価軸『いい会社はどこにある?』PayLater(後払い)型の会社の場合、バラツキが、どの年齢から大きくなっていくのかは重要だ。ようは、「出世のハードル」(ちょっと頑張らないと突破できない壁)が、どこにあるのか、である。なぜ重要かというと、第一に、40代以降に「自分が出世できないこと」に気づいても、転職先が限られ、取り返しがつかないからである。PayNow(今払い)型の外資のように、若い段階でバラツキが大きいと、その段階で自分が向いていないことに気づかされるから、別の職種や別の企業に転職して、やり直しがきく。2025/01/09
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「こんなこと、よくあるだろ」会社ぐるみでパワハラ容認しちゃう中小企業『上司ガチャ』リスク(中) エピソード3――加賀電子EMS事業部4人の告発田舎の中小企業では、しばしば目の前の業績が優先され、サステナビリティ―や人権は無視されるため、入社リスクが高い。金沢市出身の塚本勲会長が創業した加賀電子(東証プライム、社員549人)も、コンプライアンスやガバナンスが機能していない会社の1つで、「事業部の数字が上がっているのだから」と人材破壊的なパワハラが長らく続いている。被害者の1人Cさんは、繰り返されるパワハラに耐えかね、本社で3時間も直訴したが俊成伴伯(取締役EMS事業部長=当時)と筧新太郎(取締役専務)の2人に「よくあることだ」と受け流され、やむをえず退職を決意。エース的存在だったCさんの市場価値は高く、年収2倍強の待遇で転職した。2025/01/08
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自爆営業カルチャーのセブンイレブン、おでん初日1万個納品がノルマの店も――「自腹で買って川に流す社員もいます」井阪CEO&永松社長による各種「働き方改革」によって、確かに鈴木敏文時代よりもユルくはなったが、だてにブラック企業大賞を受賞していない。その信賞必罰の人事処遇にひもづいたノルマ必達の仕掛けは今も健在で、ベテラン社員たちの思考回路は漆黒のセブン色に染めあげられている。その中心は、「催事」と呼ばれる、恵方巻・中元・おでん・歳暮・クリスマスケーキ・おせち等の、季節イベントものに課された納品数ノルマだ。2024/12/28
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セブンイレブン、脱・鈴木敏文の井阪&永松体制で〝ユルい職場〟にシフト――1人あたりチェーン全店売上は10年も横ばい、本部営業利益は14%減強権的で中央集権型のトップダウン経営に特徴があったセブンイレブンジャパン。ユニクロ・ニデック・オープンハウス等と同じ軍隊系カルチャーに属する代表企業であるが、創業者がまだ現役なこれら3社との違いは、実質的な創業者として38年にわたり同社を独裁的に統治してきた鈴木敏文CEOが退任したことだ。ホワイト化を進めた井阪隆一体制で、1人あたり売上高は4%減り、同営業利益は14%下がるなど、過去10年で労働生産性が下がってしまった。ベテラン管理職からは批判の声も挙がっているという。2024/12/26
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オープンハウス新卒1年目社員が夏休み最終日に自殺しました ⑤――「コッカラっす!しか言えなくなる」宗教的な組織運営…『行こうぜ1兆』→『なろうぜ1流』健康だった若手社員が年に1人ペースで死亡するほどの激務で知られるオープンハウス。正確には、2022年8月までの3年1か月の間に入社3年未満の新卒社員が少なくとも3人、亡くなった。『行こうぜ1兆2023』をM&Aで無理やり達成したものの、買収した2社をのぞけば2024年9月期でもまだ売上1兆円に達しておらず、成長も踊り場に。「日々の掛け声は、2023年の冬から『なろうぜ一流』になりました。自分たちが二流以下であることを、自認してるんです」――。自殺した新入社員タカシさんの逃げ場のない労働環境、「年800人採用して約400人が辞めていく」異様に高い離職率の実態など、「二流以下」の職場実態について、元同僚らの証言をベースに詳報する。2024/12/24